【インタビュー】「8000人の会場になると小さいなって思う自分がいる」世界で戦い王者にもなった女子レスラーが感じた苦悩!日本でもう一度挑戦するその意味とは

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「1万人とか毎週当たり前で、8000人の会場になると小さいなって思う自分がいるんです。でも自分の団体がやってるのは40人の会場」
 そう言って悩むのは、アメリカの団体『AEW』を中心に世界で戦う女子レスラー・さくらえみ。

 日本女子プロレス界で選手育成のトッププロデューサーと言えば、まず間違いなく彼女の名前が挙がるだろう。
 女子プロレス大賞を受賞したアイスリボンの藤本つかさや、アメリカ・AEWで戦う里歩や志田光、ディアナの若きエース・梅咲遥や、東京女子プロレスの瑞希、COLOR'SのSAKIらもさくらの指導を受けて輝いていった。
 そのさくらが「世界一のレスラー」と絶賛する最高傑作が、女子プロレス団体『我闘雲舞(ガトームーブ)』のエース・駿河メイだ。

「楽しいことだけでプロレスをやったらどうなるかっていうことをメイと一緒にやっていきたいと思ったんです。よく苦しいことや辛いこと、何かをバネにして不屈の精神でって言うじゃないですか?それらを一切無くしてプロレスやったらどうなるのかって6年間体現してくれた選手です。本当に私はこれでやっていきたいと思ってるんです、プロレスを。その中にもちろん悔しさとかもあると思うんですけど、それを見せずにやってったらどうなるのかなっていう団体を作りたくてやってます」

 メイは試合中もくるくると表情を変え、勝敗に関わらず対戦相手も視聴者も笑顔にする。アメリカ・イギリス・タイ・バンコクなど様々な国にも笑顔を届け続けている。
 海外での活躍はさくらの尽力もあるが、新型コロナウイルス禍で始めたYoutube団体『チョコレートプロレス(ChocoPro)』の効果も大きい。
 「海外インディー団体のプロモーションに行くと、AEWのさくらえみじゃなくてチョコプロのさくらえみが来てくれたって絶対なるんですよ。テキサス、イギリス、カナダ、どこに行ってもチョコプロって言われる。この市ヶ谷の40人の会場が世界に繋がってるんです。日本の先に世界があるみたいな言われ方もしますけど、全然フラット。『最初からみんなにチャンスあるから、最初から世界のレスラーとして全員デビューしてるよ』ってチョコプロの選手にはそう教えてます」


 さくらが手掛けている『我闘雲舞』・『ChocoPro』は、“世界で1番小さいプロレス会場”として市ヶ谷にあるビルの一室を拠点としている。
 所属選手も10名以上おり、年齢も10代から40代まで、職歴もプログラマーやデザイナー、栄養士など幅広い。
 それはさくらが女性なら誰でも参加できるプロレス教室『誰でも女子プロレス』を主催しており、フィットネス感覚で始めた女性たちが“長所を活かして”プロレスラー活動も行い始めているからだ。

「プロレスラーになると何でもできるんですよ!真っ直ぐに挑戦していくよりもすごく簡単にいろんなことができる。たくさんの道はあるので本人がどこまでそれに乗るか。なのでプロレスラーデビューしたい人たちに最初に聞くのは『いつまでやるの?』って。どこを目指すかで過程がすごく変わるので、一年楽しんであとは辞めますでもいいのかも。今ならメイとプロレスをやったらどこの団体でもプロレスをやっていける、どんな人生も歩んでいけるような考えになれる。メイと1年でも2年でもいいから一緒に何かを作るっていうことを経験してほしいって全ての女の子に対して思ってます」

 社会が変わり、仕事一つではなく副業が当たり前になった。女性でも働き、年齢、容姿、人種、言語が全く関係ない世界でさくらは今生きている。
 AEWは慰問も多く、本人がYES or NOを選択するだけで学校の講師やフードロスの配布、障害者の方とのボウリングなど社会貢献活動に自動的に参加できる状況になっているという。

 「社会に参加できるという事は、プロレスが当たり前に生活にあるということ。それってそこで試合しなくてもプロレスラーであるだけで喜んでもらえる。例えば映画祭に出てコメントすれば、試合をやらなくてもその人がコメントしてくれることで喜んでもらえる。プロレスラーがプロレスをやらなくて誰かに笑顔になってもらえるところまでいきたい。チョコプロはそこを目指していきたいし、私もそういう人を養成することを目指していきたい」

 プロレスというジャンルには限界がある。それは日本においてマイナースポーツであるからだ。でも今のチョコプロには海外がある。
 「日本で100人のうち10人しかファンになってもらえなくても、他の国でやることによって10人ずつでも知名度が高くなる。ジャンルに囚われていると世の中についていけない。モデルってSNSで誰でもなれる、歌だってWEBにアップすればいいだけ、文章なんか誰でも書いてX(Twitter)で今すぐにでも表現できる。その中にプロレスがあるんです。プロレスをもっと身近にしていきたい。ジャンルを越えられるところに今チョコプロはいるんです。プロレスを使ってもっと多くの人に出会っていきたい」


 かつて8歳でデビューした里歩の“小学生レスラー”、ひきこもりからデビューした真琴の“無気力ファイター”など、世間から注目されるキャッチコピーでさくらは選手のキャラクターを売り出してきた。
 そのさくらが8月31日に後楽園ホール大会を8年ぶりに開催する。それは今の日本市場に改めて我闘雲舞やチョコプロを知らしめることになる。

「小さい団体が大きくなって世界をめざします、世界を見てきました、チャンピオンを目指してチャンピオンになった先に何があるのかなっていうのを一巡して見た後に考えると、日常があるだけだった。アメリカで活躍すれば日本での知名度が下がるし、日本で活躍すればアメリカの人は遠い世界の人だなって思うし、日本語でSNS書けば英語の人は離れていくし英語で書けば日本の人が離れていくし、どこに行っても別に一緒。でも今の日本では後楽園ホールでやるって大きいことだったんだなっていうのを思い出したんです。雑誌に一コマ写真が載って、家族が喜んだりとか、取材をしてもらってすごく嬉しかったみたいな日々の積み重ねを、ハレの場として所属選手に体験して欲しい。そういう場っていうのがないとダメだと思い直しました。この団体でいろんな経験をしてほしい」


 駿河メイの我闘雲舞時代を多くの人に見て欲しい。それが日本の女子プロレス界のためにもなる。その最高の駿河メイを最高に引き出せるのは師匠であるさくらえみであるのは間違いない。
 そうして8・31のメインイベントは、さくらえみの持つスーパーアジアのベルトに駿河メイが挑戦することになった。 

「後悔すると思います。どんな結果でも。だから一分一秒を楽しみたいです。楽しむための準備をしています。一人でも多くのお客さんにご来場いただけるように、お届けできるように。ガトムでプロレスラーになりたいと一人にでも思ってもらいたい。後楽園が終わればまたアメリカに戻るのですが、そこではまた目標があります。AEWのベルトを取りたいし、ウェンブリースタジアムで試合をしたい。私にも勝たなくてはいけない理由があります。For The Future 未来のために」

 毎週市ヶ谷のマットプロレスがあり、月一回程度リングの大会も行い、世界に羽ばたいていった団体が8年ぶりに後楽園ホールで興行を行う。
 ビッグマッチと言えば東京ドームであり、さいたまスーパーアリーナであり、両国国技館であり、日本武道館であるかもしれないが、歴史や知名度のある会場の中で1番日常に近い会場は聖地・後楽園ホールだろう。
 日本の女子プロレス界に一つの接点として交わる事で、我闘雲舞とチョコプロが新たな一歩を踏み出す。
 「はじめましてを沢山聞きたい」というさくらえみがつくる、社会と共に変わっていく新しいプロレスを是非その目で確かめて欲しい。

我闘雲舞『For the Future』
日程:2024年8月31日(土)
開始:11:30
会場:後楽園ホール

▼スーパーアジア選手権 30分1本勝負
【王者】さくらえみ
vs
【挑戦者】駿河メイ
※第5代王者は3度目の防衛戦

▼アジアドリームタッグ選手権 30分1本勝負
【王者/ふたりは #ウサポポ MaxHeart♡】SAKI(COLOR'S)/瑞希(東京女子)
vs
【挑戦者/Popcorn Carnival】帯広さやか/小石川チエ
※第14代王者組の初防衛戦

▼シングルマッチ 30分1本勝負
バリヤン・アッキ
vs
石川修司(フリー)

▼タッグマッチ 30分1本勝負
[CDK]クリス・ブルックス(DDT)/高梨将弘(DDT)
vs
[相方タッグ]日高郁人(ショーンキャプチャー)/藤田ミノル(フリー)

▼6人タッグマッチ 15分1本勝負
桐原季子/沙也加/四ツ葉ミヤ
 vs
奏衣エリー/山下りな(フリー)/高瀬みゆき(フリー)

▼6人タッグ4wayマッチ 15分1本勝負
[新北京プロレス]趙雲子龍(新北京)/真琴姫(新北京)/夏実もち(フリー)
vs
[チーム・ガトム]鈴木心(フリー)/瀬戸ノノカ/谷綿ヒヨリ
vs
[チーム・タイ]モノモス(SETUP)/シーバム(SETUP)/サワディー仮面
vs
[アジア連合軍]ドクター・ゴア(SPW)/JDL(フリー)/アントーニオ本多(フリー) with UMA

▼広海カホ デビュー戦 15分1本勝負
広海カホ
vs
水波綾(フリー)

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