【インタビュー】砂辺光久が『PANCRASE 342』で戦線復帰!「勝ち続けなきゃ説得力もないし、愛も伝わらないですよ。」とパンクラス愛を語った!
パンクラスに、あの男が帰ってくる!
砂辺光久(reversaL Gym OKINAWA CROSS×LINE)が、『PANCRASE 342』で復帰戦を行う。
砂辺といえば、なんと言ってもフライ級、スーパーフライ級、ストロー級と3階級の初代KOPを制覇した、パンクラス軽量級のパイオニアだ。この人の存在なくしては、パンクラス軽量級は語れない。また、砂辺ほどパンクラスに対する深い愛情を持ち続ける選手はいない。
2019年7月の北方大地戦でベルトを失って以来、5年ぶりの参戦。今、砂辺は何を思うのか。計量を終えた砂辺に話を聞いた。
――お久しぶりです。カードが決まったとき、発表会見にいらっしゃるかと思っていました。
「そう、そうなんです。最初は行く予定だったんですけど、めっちゃ飛行機が高くて。それで、なんかやめときましょうかと。自分もわざわざ行くあれじゃないかなと思って」
――そんなことはないと思いますよ。いないんだ、と残念に思った人も多かったと思います。さて今回、5年ぶりに参戦が決まった経緯はどのようなものだったのでしょうか。
「今回は、30周年だから(出場したい)っていう感じですね。30周年大会が1回じゃなくて何回かあるって聞いたので、そこの中には出させてくださいっていうのを伝えて、今回になったって感じですかね」
――パンクラスの歴史において、砂辺選手は外すことのできない存在だと思います。今回の相手の印象はいかがでしょうか。
「相手は、まあまあなんでもできる選手だなっていう感じですかね。計量オーバーしてましたけど、100gだったんで、多分もう落としてると思います」
――今回は、練習はどのようにされてきたのでしょうか。
「練習は、試合がなくてもずっとやっていました。ずっと変わらず練習していて、休んだことはないですね」
――以前のように東京で練習はされましたか?
「東京には来ていないです。もう今、沖縄でも相当いい環境で練習ができているので」
――5年の空白の間、どんな心境だったのでしょうか。
「北方(大地)選手との試合(2019年7月)で、『なんか、最後かも』って思ったんですよ。リングから去る時に、これが最後かなって思って下りました。今、あの試合を見ても、なんか最後かもって思うんです。
そのあとは、なんだろうな……話が来たらその時考えるか、ぐらいでしかなかったっていう感じですかね。うん。
なんかね、疲れたんですよね。すごく疲れてたんです。試合に向かう過程もそうだし、体重が落ちなくて、約1ヶ月ヘロヘロで、みたいな。そういう生活がしんどい、みたいな。
今思えば、あの時からあの体重上げときゃよかったなと思います。今は本当に健康的に格闘技を楽しみながらやっているので。あの時はね、本当になんかうまくいかなかったんで、体重落としたせいもあって、なんでこれをやってるんだろうみたいなことはずっと思ってたんです。だから、階級を上げてよかったなって思ってます。
北方選手との試合が終わって、パンクラスへの恩返しとして地元大会を開くっていうまではやりきって、その後はその後で考えようみたいな感じで思ってたんですけど、コロナでなくなって。外国人の暫定王者と、というのもあったんですけど、コロナでなくなって。でも、焦らなかったです。今は僕の出番じゃないんだなって思っただけで」
――格闘技界にとっても、コロナは大きかったですね。
「そうですね、コロナは大きかったです。でも、だから『今じゃないぞ』って(何かに)止められていたんだと思います」
――最近のパンクラスはどう見られていますか? パンクラス愛を口にする選手もチラホラいます。
「ほんとですか。えー、そっか。わかってないです。僕には伝わってないですね。自分が試合に出なくなったっていうのもありますし、知り合い以外に一喜一憂することもないし、へー、あの選手勝ったんだ。へえ、そうなんだ、ぐらいしか。ちょっと俯瞰して見てましたね」
――今回久しぶりに試合をして、また気持ちが変わるというか、パンクラスに対する気持ちが変えあることもあるかも知れない?
「それはあると思いますよ、全然。そうですね。タイミング。タイミングがあれば全然もう出ないってことでもないですし。30周年記念大会って、まだ何回かあるんですかね?」
――いや、どうでしょう。ないかも知れません(※聞き手の間違いで、7月24日立川大会も30周年を銘打っている)
「俺、勝手になんか30周年記念大会が、もう1回、2回あるかなと思ってたんですよ。他の人の取材でも言ったんですけど、稲垣(克臣)さんとやりたいなと思って。稲垣さんは、パンクラスの旗揚げで鈴木(みのる)さんと幕を開けた人ですから。前田吉朗の引退エキジビションの時、まだイケるっしょ、稲垣さん、って。すごい体だったし、前田吉朗をどんどん攻めて。
旗揚げ戦に出た人とやりたかったんですよ。で、今、誰がいるかなって考えたら誰もいない。とりあえずいないじゃないですか。そこで、動ける人って稲垣さん、現実的に稲垣さんかなみたいな感じで思って」
――あの第1試合は衝撃でしたからね。私も前田選手の引退エキシは見ましたが、稲垣さんは肉体も動きも驚くほど素晴らしかったです。砂辺選手との対戦はすごく興味あります。
「いや、見たいっていう人はすごく少ないだろうし、別にそれはそれでいいんですよ。異色のものを見せてやればいいと思うんで。
今、盛ちゃん(伊藤盛一郎)がチャンピオンでいるんだから、自分がベルトを目指して、盛一郎のベルトを獲ってやるぞっていう気は全くなくて。俺は俺にできる仕事があると思ってる。それをやろうと思ってるだけですね、うん。
未練とか、思い残したこととか、やりたい選手とか特になく、もうほんとに自分のパンクラス愛を貫くだけでしかないので。
もうそうじゃないと負け続けてるので、勝ち続けなきゃ説得力もないし、愛も伝わらないですよ。だから、見ててください」
「去る者は日々に疎し」ということわざがあるが、砂辺ほどの選手を忘れられるものではない。ただ、若い選手にとっては、よく知らない存在であるかも知れない。
しかし、試合数やベルト獲得など、これほどのキャリアを残している選手はいない。また、砂辺ほど、観る者を驚かせ、ワクワクさせる試合をする選手は多くない。
ベルトを狙う云々のステージを超え、砂辺はパンクラス愛を貫く新しいステージへ進んでいこうとしている。明日はその第一歩。砂辺を知らないファンも、ぜひ注目してほしい。
(写真・聞き手/佐佐木 澪)