【試合詳細】10・22 みちのくプロレスびんご安田大会 新崎人生&MUSASHIvsシーサー王&OSO11 日向寺塁vs大瀬良泰貴 ザ・グレート・サスケ&アジャコング&HANZOvsスペル・デルフィン&のはしたろう&郡司歩

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『みちのくプロレス びんご安田大会
日程:2023年10月22日(日)
開始:13:00
会場:広島県・三次市吉舎町安田 旧安田小学校グラウンド 
観衆:550人(満員)

▼シングルマッチ 15分1本勝負
○エイサー8
8分7秒 ダイビングダブルニー→エビ固め
●山谷林檎

▼シングルマッチ 20分1本勝負
○道端剛史
9分43秒 蜘蛛絡み
●鎌倉慎司

▼6人タッグマッチ 30分一本勝負
ザ・グレート・サスケ/○アジャコング/HANZO
15分52秒 裏拳→片エビ固め
スペルデルフィン/●のはしたろう/郡司歩

▼シングルマッチ 30分1本勝負
○日向寺塁
14分31秒 ダイビングエルボードロップ→片エビ固め
●大瀬良泰貴

▼タッグマッチ 時間無制限1本勝負
新崎人生/○MUSASHI
17分13秒 エストレージャフトゥーロ→片エビ固め
シーサー王/●OSO11

人口300人の町に550人が集結!“なにも無いが有る町”びんご安田でみちのくプロレスが町おこし!新崎人生が継続開催を熱望し「来年もスケジュールを空けておく」

オープニング


 10月22日(日)、みちのくプロレスびんご安田大会が三次氏吉舎町安田、旧安田小学校グラウンドで行われた。
 みちのくプロレスが東北からフォッサマグナを越えてくることも稀なら、山また山に囲まれた単線が日に4本しか停まらないびんご安田でプロレス興行が開催されるのはこの日が初。
 地元の人々はもとより遠く関西からも多くのプロレスファンがつめかけ、会場の駐車スペースは満杯。キッチンカーにぐるりと囲まれたさながら秋祭りの如き会場のリング回りは、試合開始前には人また人の老若男女で埋め尽くされた。

 選手入場式のあと、大会実行委員長鳥井実香さんがリング上から挨拶を行った。

鳥井「みちのくプロレスびんご安田大会実行委員長の鳥井と申します。本日はみちのくプロレスびんご安田大会ごに来場いただきまして、まことにありがとうございます。今回なぜこの安田にプロレスを呼んだかの簡単なご説明をさせていただきます。私がこの吉舎町安田で18年間生活をいたしまして、大学で徳島に行きました。大学を卒業した後に、四国放送というラジオ局にたまたまパーソナリティではいることができまして、そのときは音楽番組を担当させていただいていたのですが、ある日のタイミングでみちのくプロレスが東北で旗揚げをするというニュースが入りまして、地方に夢をというコンセプトで旗揚げをしました。そのタイミングでうちのラジオのディレクターが、プロレス番組をやってみないかと声をかけてくれました。そのとき力道山 ジャイアント馬場、アントニオ猪木から勉強して、ゼロから番組のパーソナリティをさせていただきまして、そのとき新崎人生選手が徳島でみちのくプロレス旗揚げをした初めての大会がありまして、それから、みちのくプロレスと新崎人生選手とのおつきあいが始まりました。この安田小学校が2019年に閉しまして、それがきっかけで町おこしで徳島をたたんで帰ってまいりました。カフェとマルシェをやっているんですが、今回なにもない安田にプロレスが出来ないかと新崎選手に相談させていただきましたら、快く行っても良いよと言ってもらえて本日の運びとなりました。日頃なにもないところに作り上げていく、みんなの気持ちがわくわくする、楽しかったね、また行きたいと言ってもらえるイベントをたくさんやっていきたいということで、本日はみちのくプロレスびんご安田大会を開催することとなりました。きょうは東京の方からも来ていただいたお客様もいらっしゃいます。きょうは本当にたくさんのみなさんありがとうございました。それからキッチンカーのみなさん、なんの保証もないのに安田を選んでいただきましてきょうはご出店ありがとうございます。そして何よりこのオレンジのTシャツを着たスタッフ、私がプロレスをやりたいとただただ言い続けた私の泥船に乗っていただきまして本当にどうもありがとうございます。みなさんに一番感謝しています。きょう楽しかったね、また安田に行きたいねと言っていただけることがこの大会の成功です。 どうぞみなさん最後まで楽しんでいってください。本日はどうもありがとうございます。」

 また福岡誠志三次市長も来場、プロレス大会開幕に相応しい体育会系のスーパーポジティブな挨拶に大きな拍手が起こった。
 選手が退場したあと、のはしたろうが会場の子どもたちに呼びかけ希望者を集めて、リング上でMUSASHIと大瀬良泰貴の指導で子どもプロレス教室が開催された。
 このときだけ保護者に特別にリングサイドで我が子を撮影する許可が降り、保護者が大喜び。地元のお客さんと選手たちの距離が近くなり会場の空気が一気に和んだ。
 プロレス技のデモンストレーションをひとつ披露しただけで拍手が起こり、思いがけないことにMUSASHIが照れ笑いする一幕も。

第1試合


 この日は篠塚誠一郎リングアナも駆けつけた。みちのくプロレスでのリングコールは実に10年以上ぶりとのこと。

 プロレス初開催の地で露払いに相応しい勇壮な太鼓の音色響かせエイサー8が入場。実行委員会スタッフが全員着用している大会Tシャツを律儀に纏い、リングコールを受けた後脱いだら丁寧に畳んでエプロンに保管する所作で観衆のハートを掴む。

 癖が強めな先輩方に日夜揉まれ成長著しい気鋭の新人山谷林檎とのシングルマッチ。
 血気にはやる山谷がロックアップから押しまくりエイサーにロープを背負わせブレイク際にエルボーを見舞うとエイサーも張っていき、ヘッドロック。逃れようとする山谷のリストを取って搾り上げる。山谷が回転して逃れいったん離れる。素早い攻防、山谷がアームドラッグからドロップキックに繋いでエイサーを飛ばし、背面にストンピング攻撃。エイサーもすかさず山谷の腹へキチンシンクからロープ際にセットしてスワンダイブ式ダブルニードロップ。フォール、2カウントで山谷キックアウト。
エルボーの打ち合いとなり、山谷がコーナーに追い込まれる。エイサーは山谷をリング中央にセットし、ダブルニードロップ。山谷がカウント2で返すとボディシザーズで山谷の胴を締め上げる。余裕の呈で笑顔振りまくエイサーともがき苦しむ山谷の好対照。観衆からの「山谷」コールに励まされロープブレイク。
山谷はエイサーの油断を狙ってカウンターのドロップキックを浴びせ形成逆転を狙う。青コーナーへエイサーを追い込んで串刺しのドロップキック。ボディプレスでフォールは時期尚早、返したエイサーが山谷の腹に膝2発目入れてミルクムナリで顔面をマットに叩きつけ、ニュートラルへ押し込んで串刺しランニングダブルニー。対角線上のニュートラルにセットして、ダイビングダブルニードロップ。
 腹を抑えて尻もち状態の山谷に立てと言わんばかりの蹴撃。立って激しいエルボー合戦、エイサーまたも山谷の腹に膝。山谷が堪えてエイサーをブレーンバスターで投げるとリングセンターのロープにセットして619、飛距離とって弾丸ミサイルキックと畳みかけフォール。エイサー、カウント2で返して前から後ろからダブルニーラッシュ。それでも決まらず粘る山谷にコーナーポスト最上段からダイビングダブルニードロップ2発目でとどめを刺した。

第2試合


 当初参戦が決定していた椎葉おうじ負傷欠場によりNPWから鎌倉慎司がみちのくプロレス初参戦。
 鎌倉は弱冠24歳、2021年2月21日プロレスラーデビューの2年目。デビュー戦の相手はNPW主宰のイデア。恵まれた体格を活かしたパワー系のファイトスタイル。
 対する道端は2015年ジャパンプロレス2000大阪コムボックス光明池大会でデビュー。2017年12月フリーランスとなってからは様々な団体のマットで武者修行を積んできた。道端もみちのくプロレスは初参戦。

 デビューしたての頃とは風貌がまるで変わり果て、曲者感が強めの道端。スイープして距離を詰め寝技から関節狙いを鎌倉も読んでか素早くヘッドロック。グラウンドに持ち込まれると切っていったん離れる。ロープにもたれて薄笑いを浮かべる道端の不敵さ。
 リング中央でのショルダー合戦は鎌倉の圧勝。フォールを返し立膝状態の道端を鎌倉のブートが襲う。再び激しく打ち合うが、鎌倉が道端を高々と上げボディスラムでマットに叩きつけフォールも返されるとボストンクラブ。道端の背骨があり得ない角度にエビぞる。
 なんとかロープブレイクした道端がグロッキーを装いDDTで鎌倉の脳天をマットに突き刺す。不意打ちを食らいふらつく鎌倉にキックの応酬。さらにニュートラルコーナーへ押し込んで串刺しボディアタック。鎌倉のボディを裏返して背面への串刺しランニングダブルニー。腕を取って十字固めに入ろうとするが極めきれず。ならばとクリップラー・クロスフェイスで搾り上げる。
 ロープに逃れた鎌倉は、ブレーンバスターで道端を投げるとコーナーポスト最上段から全体重をかけたミサイルキックで道端を吹き飛ばす。それでも決まらず。ならばと道端を抱えてオクラホマスタンピードで叩きつけるがそれでもダメ。コーナーに押し込まれた道端が鎌倉の突進をかわして自爆を誘い蹴撃ラッシュ。トラースキック、踵落としで決まらずバズソーキックでも返される。ならばと関節地獄。蜘蛛絡みで、鎌倉に引導を渡す。

第3試合


 選手6人全員勢ぞろいしたところで、アジャコングが開口一番「このカード誰もまともな奴がいない。」
 すると郡司がレフリーにアジャの一斗缶を取り上げろと指摘。アジャが一斗缶は自分の体の一部と主張するとレフリーがこれを認め、逆にアジャから試合中の飲酒は厳禁と、郡司の酒を没収させるがレフリーが中身を確認したところ、「この日」郡司が持参してきたペットボトルの中身はただの水だったことが判明。アジャも「水なら普通に飲むから良い」と納得し、試合開始。

 先発はサスケと郡司。サスケが例の如く「コオオオ」と気をため込んでこね始める。丸めて球にして投げるが、郡司に当たらず流れ弾がエプロンのアジャの脇腹あたりをかすったらしく、アジャが「痛い。なんか当たった」とつぶやく。
 こねて伸ばして切った何かをセコンドに託したあと郡司に突進。リング中央で手4つの態勢に。サスケがリストを取ってねちっこい攻防を繰り広げるが互いに離れてデルフィンとHANZOに交代。
 リープフロッグで飛び越えて返ってきたHANZOをデルフィンがラリアットで一撃して見栄を切る。
 コーナーポストに振られたHANZOが倒立して固まると「隙がない。どうしたら良いんだ。」と狼狽するが、ロープをグラグラゆするとHANZOが滑り落ちてきて「それやっちゃダメ!」と言いながらデルフィンにドロップキックを放つ。しかし、再びコーナーポストに振られると倒立。攻めあぐねたデルフィンが放置したままのはしを呼び込みアジャコングにアタックを仕掛けるが、ダブルラリアットでふたりともなぎ倒され、のはしひとりに任せて退散。
 あとを任されたのはしは果敢にアジャとショルダー合戦。ヘロヘロののはしをあざ笑いながら倒してポージング。
 あれからずっと倒立を続けていたHANZOが疲労困憊状態で青コーナーに捕まり、のはしと郡司に踏みつけに。力なくぐったりとした状態のHANZOを郡司がニュートラルコーナーへ押し込んで上からグーパンチを打ち下ろす。
 HANZOいじめはなおも続く。
 デルフィンが逆片エビ固めで痛めつけた腰にのはしが「頭!」と叫びつつヘッドバッド。散々な目に遭いつつもフランケンシュタイナーからのはしをフォール。カットに入って来た郡司もろともにドロップキックではじき倒してサスケに交代。、アジャのサポートを受け郡司をフォールするがデルフィンにカットに入られる。
 HANZOとデルフィン再び。
 今度はHANZOが攻勢に。クロスボディアタック、セントーン、コーナー最上段からダイビングボディプレスと畳みかけてフォールするがデルフィンはカウント2で返して反撃。勝負を決めにかかる。

 デルフィンはスイングDDTでHANZOを飛ばして「終わりーっ」と見得を切り、デルフィンクラッチ。決まったかに思われたがサスケがデルフィンの背面に突き刺さるように飛んできてカット、割って入って来た郡司にスピンキック、ひるんだところを背後に回りスリーパーホールド。
 もうダメかというとき、エプロンののはしがレフリーの気を引いている隙に郡司がサスケへ急所攻撃。
 のはしがサスケを羽交い絞め、郡司が隠し持ってきた凶器の標識でサスケを打とうとするが、すんでのところでサスケが逃れのはしに誤爆。狙いすまして乱入してきたアジャ。一斗缶が郡司、のはしの脳天直撃。
 凶器を2発頭で受けふらつくのはしにアジャが裏拳を炸裂させフォール、3カウント。

 反則攻撃を見逃したレフリーにデルフィンが抗議を行うが勝敗は変わらず。
 のはしたろうはこのあと休憩時間中アジャコングと「お楽しみ抽選会」の進行役を務めた。

第4試合


 いつしか体格も日向寺と肩を並べて華も引けを取らない大瀬良だがプロレスラーデビューは日向寺から遅れること10年の2017年3月。デビュー戦は八戸市八食センターで、対戦相手は昨年メキシコ遠征中に2022年12月31日契約満了を以てみちのくプロレスを退団した川村興史。

 日向寺が非情の腕攻めを展開。リストを取られ絞られながらも切り返しアンクルを取るが、ほどなく態勢が入れ替わり、今度は足関地獄に悶絶。辛くも脱出した大瀬良がティヘラで日向寺を飛ばしてストンピング、サンセットフリップでフォール。カウント2。再びリストを取られてグラウンドに引き込まれる、腕十字からチキンウイングアームロックと腕攻めフルコース。劣勢の大瀬良に観衆が大声援で応援。呼応するかのように渾身の力ふり絞りロープブレイクに成功。
 大瀬良はアームブリーカーで形成逆転の兆し。日向寺をコーナーポストに押し込んで串刺し。肘を打ち下ろしリバーススプラッシュ。
 リング中央で激しく打ち合う。大瀬良が勝機と攻めスイングDDTで日向寺をマットに突き刺す。 再びグラウンドの態勢に引き込まれアームを取られる大瀬良。日向寺の目の色にアントニオ猪木の闘魂が映る。
 日向寺、猪木アームバーで勝負に出るが、大瀬良からギブアップは取れず。大瀬良は逃れて連続丸め込み攻撃から鮮やかにジャーマンスープレックスホールド。惜しくも3カウントならず。
 咆哮一声、気合を入れてコーナーポスト最上段に上がるが、追撃の日向寺が逆に雪崩式ブレーンバスターで大瀬良を投げ落とし、間髪入れず青コーナーポスト最上段からとどめのダイビングエルボードロップで、3カウント。
 珠玉の全力プレイを見せつけたふたりを大観衆が拍手と歓声で讃えた。

 歌舞伎の役者は世襲制だが、プロレスラーにそれはなく、ジーニアスは一代限りだ。だがその魂は、脈々として次世代に受け継がれ語り継がれる。
 闘魂は死なず。アントニオ猪木は、リング上で闘うプロレスラーの魂の中に生き続け、浮遊し、プロレス会場を渡り歩きときにプロレスラーに重なり合って姿を現す。
 びんご安田の奇跡。だが本当の奇跡は、プロレスとまったく縁のなかったこの山間の小さな町の廃校になった小学校のグラウンドでプロレス興行が開催され、かつまたそこに多くの観衆が集まったことだった。

第5試合


 メインイベントは、新日本プロレスYOHのパートナーとして『SUPER Jr.TAG LEAGUE 2023』に参戦が決定したMUSASHIと、『30周年は通過点。引退はない』と豪語する永久不滅の南無大師遍照金剛新崎人生がタッグを結成。沖縄の神獣と里の村人が恐れおののく狂暴クマ、コードネームOSO11の駆逐に挑んだ。

 MUSASHIとOSOでスタート。
 普段通り敵が誰かの認識が不確かなOSOがレフェリーを威嚇してコーナーポストに押し込める。
 ようやくMUSASHIと相対すがショルダータックル一撃で飛ばして、場外へ叩き落としてしまう。
 興奮MAXのOSOをシーサー王がなだめて、鮭を抱かせていったんブレイク。
 シーサー王と人生。ロックアップから押される人生に観客席のオールドプロレスファンから野太い「人生、押せ」「人生頑張れ」と声援が飛ぶ。
 かつてハヤブサと天竺(全日本プロレス)のマットに上がり、お釈迦様=ジャイアント馬場に拝み渡りからブレーンチョップを敢行した偉業はオールドプロレスファンには忘れがたいものがあるようだ。
 近年はNOAHに参戦したこともあってか若い女性にもファン層を拡大してきている様子で、この日もオールドプロレスファンの野太い「人生」コールに交じって若い女性ファンの声援も聞こえてきた。
 ロープ背負った人生から、シーサー王がクリーンブレイク。
 この日の人生は、いつになく早い段階で側転からシーサー王の手を取り流麗な所作でコーナーポストに駆け上がって拝み渡りを敢行。神獣の脳天にチョップを突き刺した。
 替わって入ったMUSASHIがシーサー王をコーナーに追い込み逆水平の嵐。串刺し、うつ伏せ状態のシーサー王の背中にフットスタンプと猛攻。両雄激しくエルボーを打ち合うが、腕力勝負ではやはりシーサー王に軍配。仰向けのMUSASHIにエルボードロップを落とすとOSOと交代。
 MUSASHIにストンピング攻撃、コーナー踏みつけ、ついでに赤コーナーの人生に突進し、リング下に突き落とす。
 再びシーサー王。リング中央にボディスラムで叩きつけ、背中に乗っかり全体重かけながらグリコポーズで「はい、メンソーレ」。
 MUSASHIはズタズタだが、観衆は大受け。
 ズタズタのMUSASHIに追い打ちのサソリ固めで腰を痛めつけ空中殺法封印作戦か。
 完全にMUSASHIに的を絞り込んだ息ぴったりの肉獣コンビがダブル攻撃で仕上げにかかるが、瀕死のMUSASHIはOSOを自爆に誘い延髄斬りを叩き込んで逃れる。
 人生がOSO、シーサー王とボディスラムで叩きつけ、シーサー王にダイビングショルダーアタック。続いて念仏パワーボムを狙ったが、シーサー王に力技で跳ね返され、スーパーラリアットで倒されフォール。なんとか返したシーサー王はコーナー最上段からダイビングニードロップ。危ういところをMUSASHIが救助。
 MUSASHIとOSO再び。MUSASHIが激しくチョップを叩き込むが、OSO効いているのかいないのか。持ち上げようとしたが、ウィリー・ウィリアムスでもクマを持ち上げることは出来なかったと思われる。
 逆に思い切りボディスラムで背中から落とされ、序盤からダメージを蓄積してきたMUSASHIの表情が苦痛に歪む。コーナーに押し込み串刺しエルボー、ボディプレス、閃光の如きスピアー。
 クマの暴走をドロップキックでストップかけたMUSASHIだったがフォールもカウントは2。
 コーナーポスト最上段から伝家の宝刀、エストレージャ・フトゥーロ狙うが、シーサー王が阻止。デッドリードライブで投げ捨て、交通事故のようなラリアットでMUSASHIを轢き倒してフォールするがこれも決まらず。
 するとOSOと垂直落下式ダブルブレーンバスターでMUSASHIを投げ飛ばした上に、おんぶプレスでのしかかる。
 かなり危ないところを人生のカットが間に合い、OSOとシーサー王を誤爆させる。人生がOSOをチョークスラムでマットにセット、今度こそのMUSASHIがコーナーポスト最上段から狙いを定めて、エストレージャ・フトゥーロ。
 場外のシーサー王を人生がブロックしている間にMUSASHIがOSOをフォール、3カウント獲ってクマ討伐完遂。

 試合終了後、人生がマイクを取りびんご安田の観衆に熱く語りかけた。

人生「本日はびんご安田大会、たくさんのご来場本当にありがとうございます。ここ吉舎町安田の人口が約300人位と聞いています。この300人の土地にきょう400人以上の方がいろんなところからご来場いただいたと思います。広島市でいうと、マツダスタジアムに100万人位集まったようなそういった感覚かと思います。去年実行委員長の鳥井さんから、プロレスをやりたいという話があって、実行委員会、有志の方々に集まっていただいて、天気もすごく良い大会になって、我々も気持ち良く試合ができました。我々東北・岩手県を拠点でプロレスをやっていますんで、距離もかなりあります。交通費とかもたくさんかかります。なので、今年は実行委員会の方々の情熱でできましたけど、これは是非続けていかなければいけないイベントだと思います。是非みなさんのご協力のもと、来年も10月ごろスケジュールを空けておきますので、さらにパワーアップしたものをお見せしたいと思います。本日は本当にありがとうございました」

 後日主催者側よりこの日集まった観衆の数は550人との発表があった。

 本興行の実行委員長である鳥井実香さんにびんご安田の魅力を尋ねると「なにもないので、なにもないということを楽しむ、ないがある町として楽しんでいただけると認識しています」という答えが返ってきた。その何もないところに突如として出現した非日常空間は、壮観というより限りなくファンタスティックで、歓声と人々の笑顔であふれかえっていた。

 ここには本当になにもないのか。

 共にリングサイドに立った地元のカメラマンさんが言った。「ここの人たちは喧嘩しないんですよね、みんな」「それぞれがてんでに勝手に出来ることをやりだすけど、誰も文句言わないで、なんとなく自然にまとまっていく」

 なにもないびんご安田にはかけがえのない人との繋がりがあり、それが太い一本の絆となって人を招き、夢を叶える力になった。

 今日のこの日は、鳥井さんにとってゴールなのか、始まりなのかと尋ねると力強い答えが返ってきた。「ひとつのスタートです」

 「ひとりでみる夢は夢に過ぎないが、皆でみる夢は現実になるだろう」と言ったのは、オノ・ヨーコだ。
 確かにひとりで見ているだけの夢は叶わない。だが、皆が共感し皆でその夢を描き実現に向け力を尽くしたら叶わない夢はない。人との繋がり、プロレスの無限の可能性を改めて思わずにいられなかった。
 「ないがある町」びんご安田にプロレスの種は蒔かれ芽吹いた。この芽が枝葉を拡げ大輪の花を咲かせ結実する日をプロレスの力を信じて見守り続けたい。

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