“プロレスvs相撲”の異種格闘技戦を制したのはリングアナのシャイニング・ウィザード?!新宿の路上に響くプロレスLOVEの福音
22日、東京都・新宿三丁目プロレス広場にて『末広通り商店会プロレスフェスティバル2023』が開催された。
『末広通り商店会プロレスフェスティバル』とは、末広通り商店会会長の石川国由氏が音頭を取って行っている商店街活性イベントの一環であり、公道にリングを立てて行われるオールスタンディング形式かつ観戦無料のプロレス大会。
商店会プロレスは令和の世に1990年代のインディープロレスの魂を語り継いでいる現TTTプロレスリング代表のガッツ石島がプロデュースしており、昔プロレスを見ていた人にも馴染み深いベテラン勢の出場、お笑い芸人によるライブなどを交え、初めてプロレスを見る人を含む老若男女が幅広く楽しめる大会を展開している。
コロナ禍に見舞われて一時は開催が途絶えていたものの昨年より復活。
末広通り商店会、たかの台地区商店会(小平市)、東久留米駅前商店会(東久留米市)の都内3箇所の商店会を周遊して各街を活性化させる『闘強商店会プロレス』を昨年から2年連続で開催するなどさらに勢力を拡大している。
もはや“地元のお祭り”と呼べるほどに定着しているこのイベントには朝から多くの観衆が集まり、街のど真ん中に立ったリングを見て通行人も足を止めて眺めたり、子どもたちがリングを触って大はしゃぎしたり、外国人観光客が物珍しそうに写真を撮ったりと、いつもイベント開始前から平和な光景が広がる空間となっている。
21日&22日の2DAYS開催となった今回のイベント。前日には泥酔客がリングに乱入してきたり試合中に自転車でのひき逃げ事件が発生したりと魔都・新宿の名に恥じない事件が起きたものの、この日は警備スタッフを増員し厳戒態勢で行われたためリング外での事件は起きず平和にイベントは終わった。
しかし、リングの中では“プロレスvs相撲”の異種格闘技戦が勃発。
第2試合で行われたビューティー吉田vsバナナ千賀vsトランザム★ヒロシの3WAYマッチでは、相撲ファイトを仕掛けた吉田が女子ながら圧倒的な体格差を活かして男子2人をちぎっては投げちぎっては投げの大暴れ。
そんな空前の相撲ブームを見てリングに飛び込んできたのは、父親が相撲部(本人は帰宅部)であったという弥武芳郎リングアナ。
弥武リングアナは、かつてU-FILE CAMPで田村潔司に師事していたこともあり、現在も高い身体能力を保持。武藤の日(6月10日)がデビュー記念日であることからか武藤殺法を得意としている。
弥武リングアナは吉田に幾度もぶつかっていくが、吉田の圧倒的なパワーの前に何度もマットに叩きつけられて死んでしまう。
慌てた吉田&ヒロシが賛美歌312番をデュエットすると、2人の聖なる歌唱によって蘇生。一度死に、復活することで完全なる存在となった弥武リングアナはまるでシモン・チェホヴィッチの『復活』に描かれたイエスの如きプロレスLOVEポーズを取り、千賀の蹴り足を取ってドラゴンスクリューから見事なシャイニング・ウィザードを叩き込む。
聖なる閃光魔術を受けて倒れた千賀にビューティーがボディプレスを見舞って試合は終了。裏方である弥武リングアナにスポットライトが強く当たる試合となった。
弥武リングアナはリングアナウンサーの他に音響スタッフなども務めてプロレス界に貢献しており、こうした技術を持った人間は業界で希少であることからメジャー・インディー問わず様々な団体で引っ張りだこ。その有能ぶりから興行戦争が起きる際には水面下で“弥武さん争奪戦”も同時に起きていることが珍しくない。プロレスを“興行”として成り立たせるためには、こうしたスタッフの存在が必要不可欠だ。
活躍を評価されづらい縁の下の力持ちとして大会を支え続ける裏方が一躍脚光を浴びる。プロレスのリングにはそんな魅力もあるのかも知れない。