【インタビュー】デビュー25周年興行を実施する池田大輔が語るフーテンのプロレス人生 ~ライバル・石川雄規と師匠・藤原喜明~

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 『池田大輔デビュー25周年記念興行~今日から俺は格闘探偵か?~』が4・7新木場1stRINGで開催される。バトラーツ時代の後輩・日高郁人のプロデュースで行われるこの大会のメインイベントは「池田大輔&アレクサンダー大塚vs石川雄規&モハメド ヨネ」に決定。池田と縁のある3人が出揃った。25周年を迎えた池田の心境は? ライバル・石川雄規と師匠・藤原喜明への思いとは? 記念興行直前に池田本人にざっくばらんに語ってもらった。

――凄くベタな質問ですが、25年間で一番の思い出はなんですか?
「それは私の試合を観ている人たちがいろいろと頭に想い描くべきことなんで。まあ、ふとした瞬間に試合をやっている時の残像が出てきたら、「ああ、こういうことやったなあ」と思うぐらいですよ。「これはよかった。あれはよかった」みたいな感覚はないですね」

――「この試合はよかった」と手応えを感じた瞬間はないと?
「私は手応えを感じない……という言い方はおかしいんですけど、いつも「今日のこの試合はよかったんだろうか?」という思いしかないんですよ。「みんな試合を観て満足してくれたはずだ」という自信は逆にないんです。

――特に“バチバチスタイル”は「凄い試合をやってやった!」みたいな気持ちになっているのかと想像してました。
「自分で『バチバチ』(池田が2005年から2015年までに行っていた興行)をやっている時は細かい仕事が大変だったんで、反対に「ようやくメインまで終わった。よかったなあ」という思いで泣いてましたよ。カードを組むのも大変だし、各所に気を遣ってましたから。映像の編集も、当日のスケジューリングも、会場を押さえるのも全部私ですよ(苦笑)。ポスターを作るのもデザイナーに頼んでいたのに、全然ダメだったから、「じゃあ、自分がやる」って言って、イラストレーターを自分のPCに入れて、フォトショップで写真を加工したりして。で、ようやく当日を迎えて、ようやく試合ができて、「やっと終わった」ってよく泣いてましたね」

――実は感情の高ぶりではなく、安堵の涙だったと(笑)。25年間を通じて、池田さんが思う「やりたいプロレス」ってずっと変わってないんですか?
「そうですね。ファンの頃に思っていたものからそのまま変わってないです。そこに出会いがあって、デビューできたという縁があってのことだと思いますけど」

――様々な団体に出場し、いろんな選手と対戦しても、そこはブレないんですね。
「普通のプロレスのスタイル……という言い方があっているのか分からないですけど、そういう普通のスタイルは自分の中に違和感がずっとあるんです。それって「全世界のプロレスはこのスタイルだよ」っていう考え方じゃないですか。でも、片や「プロレスっていうものは自由だ」っていう言葉もある。その自由な考え方で「自分がこういう風に戦えば、プロレスが嫌いな人を相手にしても納得させることができるんじゃないか?」と実践して、模索してきたのが自分のスタイルですね」

――それこそ全日本プロレスに参戦したり、プロレスリング・ノアに所属していた時期は、その“普通のプロレス”に合わせてみようとしていたんですか?
「そう思ってやってました。だって、ことあるごとにジャイアント馬場さんに叱られましたから(笑)。「お前は上から飛んだりせんから、試合がつまらんのだ」と言われたら、「じゃあ、飛べってことかな?」と思って飛んでみたり」

――そこは意固地にならずに挑戦してきたと。
「自分は皆さんが思っているほど意固地ではないです。それは馬場さんにやれと言われたからやっていたことなんですけど、「お客さんが観たら果たしてどうなんだろう?」という部分は考えないようにしてました。でも、お客さん目線でちゃんと考えてみて、「やっぱりこのプロレスは違うんじゃないか?」って思いがノアにいた頃に爆発して。もう自分のやりたいことはできないし、「プロレスを辞めるまでこのままずっとこれが続いていくのかな?」と考えたら、「ずっとはできないな」と感じたから団体を辞めたんです」

――この25年間でプロレス自体を辞めようと思ったこともありました?
「何回もありますよ。なんなら世界中が今のプロレスのスタイルになっていますから。こういうことを言うと「昭和のジジイだ」みたいに言われかねないですけど、一応平成デビューなんですけどね(笑)。ノアを辞めた時もそういうことを考えていたので、「最後に石川雄規さんにお礼参りして辞めよう」と思ったんです」

――とはいえ、紆余曲折ありながら、今もレスラーとしてリングに立ち続けているわけで。なんで続けてこれたんだとご自分では思っていますか?
「20周年の時に、週刊プロレスさんがインタビューをしてくれて。「藤原組の事務所でインタビューしましょう」って話になったんです。「お気持ちは嬉しいんですけど、組長(藤原喜明)がそばにいたら何も喋らないですからね」って念を押して。結局、インタビューした後、記者の方に「本当に何も喋らないですね」って苦笑されたんですけど。そこで、藤原さんに「何が20周年だよ」って言われて。周りも「これは辞めるなってことですよ」と言うし、「ああ、私は辞められないんだ」って実感したんです。でも、それがあったから、5年間続けられたのかなと。そういう出来事がところどころであるんですよね」

――石川選手の件もそうですよね。引退を意識してお礼参りしたことが『バチバチ』立ち上げに繋がり、旗揚げ戦では一騎打ちで対戦して、それが先の興行に広がっていって。
「あのスタイル独特のことなんですけど、あのスタイルが好きなレスラーなら、試合後は凄いハイテンションになるんですよ。反対に嫌いな人ならテンションが下がるという。バトラーツの頃に控え室で見ていてそれがよく分かって。意外にやるほうは大変なんです。そういうノリで、あの時も自分のテンションが凄く上がっちゃって、それで続いていっちゃったんですね」

――藤原組長の「何が20周年だよ」という発言もそうですが、良い意味で言うと“いいタイミングで人との繋がりが活きてきた”わけですね。悪く言うと“運悪く活きてしまった”のかもしれないですが(笑)。
「自分の思惑通りにはいかないってことですね。だって、生涯現役なんて言いたくないですもん(笑)」

――確固たる意志を貫いてきたわけでないと。池田さんは映画『男はつらいよ』の主人公・フーテンの寅さんを敬愛していますが、まさにフーテンのプロレス人生ですね。それでも、やはりプロレスが楽しいからこそプロレスラーであり続けているんですか? 「リングに上がるのが快感」と言う方もいますが。
「今思うと、バトラーツの頃はそう感じてましたね。自分のやりたいこのスタイルが受け入れられて続けられる。幸せなことだなって思ってました。だけど、「カウント1、2、3」の普通のプロレスに入ると、型にはめられちゃう感じで、自分には不自由さしかなかったです」

――全日本やノアで東京ドームや日本武道館の大会にも出場していたじゃないですか。例えばああやって何万人の観客の前で試合をするよりも、100人にも満たない観客の前でやるバトラーツスタイルのほうが快感なんですか?
「そうですね。観客数は関係ないです。地方で50人ぐらいのお客さんしかいなくても、そっちのほうが快感度的には高いですね。プロレスラーでよかったって心底思います。他の選手のことはわからないですけどね。大勢の人に見てもらって「ほら、俺は有名になれた」って思うレスラーもいるだろうし」

――今、プロレスに臨む時の感覚はどうなんですか?
「今は「もう他に合わせるのはいいや」って思ってます。これで「お前はいらない」って言われるならいいやって。そしたら私も辞められるかもしれないし(笑)。もうジジイだし、最後のあがきじゃないですけど」

――今はプロレスをやることにストレスはないと。
「そうですね。定期参戦しているA-TEAMさんのおかげです。旗揚げから出場させてもらっているんですよ。振り回されている部分もありますけど、それもまた楽しくてね。不思議な縁です。代表の橋本友彦選手を『バチバチ』で使ったことが繋がっているんですね」

――25周年興行のメインイベントは「池田大輔&アレクサンダー大塚vs石川雄規&モハメド ヨネ」に決定しました。ここでまた石川選手が対角線のコーナーに立つわけですけど、お二人の関係って不思議ですよね。一般的にはライバル関係だと見られてますけど、記者としての勝手な印象では「石川さんは池田さんのことが大好き」だけど、「池田さんは石川さんのことをそこまで思ってない」という気がしてます。
「石川さんは自分自身が大好きなんですよ。そこに付き合わされている自分がいると、凄く醒めた目で見ちゃうんです。だけど、プロレスって1人じゃできないし、お互いがあってできるものだから、こっちから石川さんの戦い方に寄せると、向こうは「ほら、できただろ? 俺たち凄いだろ?」ってなるんです。「何を言ってんだよ」って(笑)」

――でも、池田さんの中には「石川雄規が好き」という思いもあるわけですよね?
「私が1人のプロレスファンだとしたら、レスラーとしての石川さんはそんなに好きじゃないです。でも、人間的には嫌いじゃないですね。それは他の選手にも言えることで、私ってレスラーを人間的に見てるんですよ。三沢光晴さんもプロレスラーの部分は関係なく、人間的に凄く好きだったんで」

――傍から見ていると、「この人たちは何回お互いのことを殴っているんだろう?」と感じずにはいられません。
「そうですよね。それはそういうスタイルですから。石川さんのスタイルがああいうプロレスというか、あれしかできないというか(苦笑)。石川さんはそれを「これが本物のプロレスだ」って言って、周りから支持を受けてきたじゃないですか。「本物のレスリングはこれなんだ」みたいによく言っていて。でも、私のほうは“本物のレスリング”なんてことは考えたことないんですよ。「本物のレスリングって言ったら、アマレスじゃないの? オリンピック競技だし」って思っちゃいます(笑)」

――全力で前のめりになる石川雄規と、それを一歩引いた目線で受け止める池田大輔という対比が試合の面白さに繋がっているんでしょうね。池田さんはあえて寄せた戦いをしていても、石川選手はまったくそんな風には感じてないかもしれません。
「そうですね。石川さんは「池田大輔は俺に引き寄せられている」って思っているでしょうね(笑)」

――バトラーツでは「石川、池田がツートップ」みたいに見られてましたけど、石川選手のほうが先輩ですよね。
「自分のあとに入ったのは藤原組だとヨネとアレクで、バトラーツになってからは日高たち。だから、扱い的に他の選手はみんな先輩風で当たってきましたね」

――池田さんの中で「石川雄規は先輩」という意識だと。それがあってこその、さっきの「石川さんに寄せる」という感覚があるのかもしれません。
「石川さんは歳が1つ上なんですけど、他の先輩方は年下なんです。だから、そういう目で見ていたところはありました。上からいろいろ言われて、「はっ?」って思ってもそれをグッとこらえて。それが染みついているから、石川さんからいろいろ言われても、何とも思わないんでしょうね」

――ヨネ選手はバトラーツの後輩であり、ノア時代はタッグを組む機会も多く、『バチバチ』にも定期的に参戦していました。深い繋がりのある相手ですね。
「後輩なんですけど、もう立派なレスラーですから認めてます。ヨネはここぞとばかりに、試合の時は「大ちゃん」って言ってきたりするんですよ(笑)。「はっ?」って思うところもあるんですけど、あいつはそういうのを狙って言ってるんでしょうね」

――ヨネ選手は池田さんのことを凄く慕っている印象があります。
「まあ、こっちはあまり愛情を表に出さないタイプなんで……。そのスカしている感じゃないと、自分じゃないんだよなって思っているから、そういうことは言わないだけで」

――ヨネ選手には思い入れがあると。
「それもプロレスラーだからということじゃなく、人間的になんです。この間もこんなことを聞かれたんです。「なんで藤原組長が好きなんですか? 強いからですか?」って。そこじゃないじゃないですか。人としての魅力じゃないですか」

――プロレスラーの間にも人間関係があるわけで、強さよりもまず人間性が重要になってくると。プロレスはある意味、人間関係をリング上で映し出すものと考えるならば、人間として好き・嫌いがあったほうが面白いですよね。人間的に好きだからと言って、いい試合できるわけじゃないのも面白いところですし。
「そうとは限らないですからね。嫌い合ってても、プロレスのセンスが同じような感じだからスイングするんであって」

――池田さんの中で「人間として好きか嫌いか?」というのは重要な要素なんですね。
「だって、人生は出会いじゃないですか。プロレスをやってますけど、プロレスラーとしてだけで相手を見る目線だとちょっと私はダメな気がします」

――パートナーは大塚選手となりましたが、バトラーツ時代を除くと、そんなに絡みはないですよね。
「ほとんどないですね。フリーになってからは、石川さん個人がやっていたバトラーツでちょっと絡んだぐらいです。彼も自分の好きなものじゃないと気持ちに出さないというか。そういうところが彼にもありますね」

――そこにはシンパシーがあると。
「バトラーツの頃は会社命令で一緒に営業に行ったりはしてたんですけど、あんまり喋らない人なんですよね。思っていることをあんまり言葉にしない。こっちが先輩だったからかもしれないですけど。でも、レスラーとしてはよく投げられていた印象があるので、プロレス的には合うんだと思います」

――そういう大塚選手と組むというのもマッチメイクの妙ですね。
「ヨネとはノアになってからよく組んでいただけで、自分の中には違和感もあったりするんです。あと、対戦カード以外でもバトラーツやバチバチファンが喜ぶちょっとしたサプライズがあるかもしれないと言っておきたいなと」

――興行より後の話になりますが、25周年の先はどう考えているんですか?
「つい先日、日高郁人さんに言われました。「続きはどうするんですか?」って(笑)。「もう続きの話なの?」って面を食らいましたけど。もう20代じゃないし、世間の目がありますから、「ジジイが何をやってんだ?」と言われたら終わりだと思っていますけどね」

――でも、今日の話を振り返ると、自分の思惑通りにはいかなくても、周りから時に影響を受け、時に振り回されたりしながら、25年間フーテンしてきたわけで。
「本当にそうですよ。バトラーツでも島田裕二さんに振り回されましたから。「今度は北尾(光司)選手とやりなよ」と言われて、ご本人に直接対戦要求するようにって連れていかれたりとか。全日本で馬場さんと組んだのも冗談で言ったことから実現しましたからね。最初は戦いたいと思ってたのに……」

――フーテンの寅さんと思いきや、その手足には紐が付いているという(笑)。
「まあ、本人は気ままに生きているんですけど、誰かに捕まっちゃうんですよ」

――でも、それが面白いんですよね。
「面白いですか?」

――いや、ご本人からすると大変かもしれないですけど、観るほうからするとそこもまた池田さんの魅力ですから。そこには人との繋がりもあるわけですし。
「そもそも藤原組に入ったのも不思議な縁なんですよね。ヘルニアになって、地元で治療していた時、母親には「整体師を目指せ」と言われて、自分でもそれは悪くないと思って勉強してたんです。当時はまったくプロレスを観てなかったんですよ。で、中学の同級生に「鍋をやるから食べに来いよ」と言われて。その友達の家に行ったら、藤原組の東京ドーム大会のビデオを見せてくれたんです。それで「ああ、藤原さんが好きだったなあ」って思って。友達からも「大輔、もう1回やれよ」と煽られて、それでまた考えるようになったんです。当時からいろいろと感化されやすかったんですね(笑)」

――そもそもプロレスラーになった時からそうだったわけですから、いくら振り回されようとも受け入れてください(笑)。ご自身で興行はやるつもりはないんですか?
「『男はつらいよ』が全48作なので、『バチバチ』としての興行も48回やったら終わろうと思っていたんです。それで、4年前に区切りを付けたんですけど、また寅さんの映画ができるじゃないですか(※年末公開予定)。だから、どうしようかなって(苦笑)」

――とにかく今後も自由気ままにやっていくと。シビアな話、ご自分としてはあと何年ぐらいプロレスができると思っていますか?
「結構できそうな気がするんです。最近、所々で組長と絡むことがあって、普段の生活のことを聞いているんですけど、未だにヒンズースクワットとプッシュアップはやられているみたいなんですよ。「やばい、自分もやらなきゃ」って。私の倍ぐらいキャリアがある組長に負けないように、自分もそのトレーニングをやるようにしてますよ」

(取材・文:村上謙三久)

『池田大輔プロレスデビュー25周年記念興行~今日から俺は格闘探偵か?~』
日時:2019年4月7日(日)
開始:18:00
会場:東京都・新木場1stRING

▼オープニングマッチ シングルマッチ 30分1本勝負
田中純二(九州プロレス)
vs
阿部史典(BASARA)

▼アクトレスガールズ提供試合 シングルマッチ 30分1本勝負
SAKI(Color’s)
vs
清水ひかり(Color’s)

▼今時スペクタクル浪漫対決 タッグマッチ 30分1本勝負
SUGI(ZERO1)/奥田啓介
vs
のはしたろう(みちのく)/大和ヒロシ(フリー)

▼永遠のライバル対決 シングルマッチ 30分1本勝負
日高郁人(ZERO1)
vs
伊藤崇文(パンクラスism)

▼レジェンドマッチ タッグマッチ 30分1本勝負
藤原喜明(藤原組)/中野巽耀(フリー)
vs
スーパー・タイガー(リアルジャパン)/橋本友彦(A-TEAM)

▼二世タレントvsバラモン兄弟 タッグマッチ 30分1本勝負
徳光正行/ロッキー川村(パンクラスイズム横浜)
vs
バラモンシュウ(フリー)/バラモンケイ(フリー)

▼池田大輔プロレスデビュー25周年記念試合 タッグマッチ 30分1本勝負
池田大輔(フーテン)/アレクサンダー大塚(AO/DC)
vs
石川雄規(フリー)/モハメドヨネ(NOAH)

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