【インタビュー】3歳からの格闘英才教育!現役王者の“シンガーソングファイター”とは何者なのか?

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 格闘技一家として3歳からの英才教育を受けた瀧澤博人は、昨年11月にタイ人のムエタイファイターを倒しWMOインターナショナルフェザー級王者に君臨。
 プライベートではシンガーソングライターとしても活動し、プロレスリングNOAHのリングで歌を披露したこともある。
 そんな“歌うキックボクサー”として活躍している瀧澤とは一体どんな選手なのか?
 緊急事態宣言中の試合を目前に控える中、今の思いを聞いた。

■試合に出場する心得をスーパー・タイガーさんから教えていただきました

――キックボクシングをなぜ始められたのでしょうか?
「自分の父が格闘技の先生で、柔道と空手をやっていました。母方の祖父がボクサーでして、生まれた時から家が格闘技家系ということもあり、物心ついた時には家にグローブやサンドバッグやミットがある環境でした。遊びのような感覚でだいたい3歳ぐらいから格闘技を始めていたというのが経緯ですね」

――その頃は誰を目指していたのでしょうか?
「僕が小学校上がる時ぐらいに、当時ヘビー級のK-1が盛り上がり初めて、特にジェロム・レ・バンナというヘビー級のファイターに憧れて、いつか戦いたいなって全然階級も違うのに憧れてトレーニングしてました(笑)」

――今でもバンナ選手とエキシビジョンでもいいから戦いたいという思いはありますか?
「いやーどうですかね(笑)スタイルも全然違うんですけど、今でもジェロム・レ・バンナの古い試合の動画とか見ると当時の、ただ格闘技に憧れていた時の気持ちが蘇って来たりとかするので、会ってみたいという気持ちはありますね。(バンナは)プロレスも挑戦されてるんですよね?試合会場で会いたいですね」

――プロレスへの興味があるんですか?
「僕がプロレスに出るっていう気持ちはないんですけど、プロレスラーへの憧れというか、ほんと強さの象徴だと思っていて。僕らキックボクシングはいかに攻撃をもらわないかだと思うんですけど、プロレスはもらう技術だったりするので、そういう所へのリスペクトがすごくありますね。僕はちょっと、あまり痛いのに強くないので自信はないですけど(苦笑)。素晴らしいなとリスペクトしてます」

――プロレスは見られているんですか?
「試合会場では何度か見させていただいています。親交があるのは(初代タイガーマスク・佐山サトルの弟子の)スーパ―タイガーさんとは仲良くさせていただいていて。三沢さんの団体であったNOAHのリングで歌わせて頂いた事がありました。(2009年7月)ディファ有明で歌わせていただいたんですが、昼間にNOAHの興行があって夜に僕の試合があったり、控室で重なる瞬間があったりしてお話させていただいたこともあります」

――スーパー・タイガー選手とは練習を?
「まだしたことはないですね。練習に対しての気持ちとか、怪我をしていても試合に出場する心得みたいな精神的な部分をタイガーさんから教えていただいたりしました」

■キックボクサー瀧澤博人がムエタイを攻略していきたい

――当時のK-1と今のK-1だとだいぶ変わりましたが、今目指されているところはどこになるのでしょう?
「今僕が持っているベルトはムエタイのベルトで、打倒ムエタイというのを目指しているんですけど、今巻かせてもらってるWMOのインターナショナルの上にある、WMO世界っていう名前のベルトをまずとることが第一の目標。その次にさらに上にある立ち技世界最強・ムエタイ二大殿堂と言われているラジャダムナンとルンピニースタジアムのランキングに入ること。最終目標としてはそこのチャンピオンに輝くこともそうですけど、現役のムエタイチャンピオンを倒したい。そこが自分の選手としての最大のテーマですね」

――改めてこのベルトはどんなベルトなのでしょうか?
「WMOって団体自体はかなり前からある古い団体でして、ムエタイの世界王座の中でも一番加盟各国数が多い団体らしくて。ただランキングが1位から20位まである間に、ほぼほぼ9割以上タイ人がランキングに連ねている中で、外国人を取り入れたタイvs外国人の中で一番を決めるっていうのがこのインターナショナルタイトルです。ナショナルタイトルで各国のチャンピオンは決まっているみたいですけど、その国のチャンピオンを代表した選手と世界ランキング。そこを争うのがこのベルトの位置づけだって聞いてます」

――以前参戦されていたKNOCK OUTはムエタイとの戦いを日本でやられている肘ありの大きな大会でした。今また出たいという気持ちはありますか?
「機会があれば。ただやっぱり僕はムエタイルールというか、肘打ちあり、首相撲無制限のルールにこだわっていきたいので、今のKNOCK OUTがどういったルールでやられているのかわからないですけど、自分がやりたい環境が整っていてタイ人と戦えるのであればKNOCK OUTのリングに出ていってもいいのかなと思います」

――次回の対戦相手もまたタイ人ですが、今までの対戦相手と比べて次の相手を驚異に感じますか?
「今までほんとにめちゃくちゃ強い相手とずっとやってきたので、正直そこから考えると・・・油断できない相手ではあるんですけど、勝つことは大前提で内容にもこだわった勝利が必須になってくる相手だなと。ただ、相手もマックスムエタイのチャンピオンで、同じチャンピオン同士の戦いなんで意地と意地のぶつかりあい。どっちが真のチャンピオンか決める、その戦いになるんじゃないかと思うので油断はしてないですし、いつもと変わらず全力で、この試合が最後になってもいいぐらいの覚悟で挑もうと思ってます」

――肘打ちありのルールですと日本ではラウェイの大会も行われていますが
「ラウェイはちょっと痛そうだなと(笑)僕がムエタイを目指すきっかけになったのは、実際にプロデビューして、ムエタイ修行でタイに行ってラジャダムナンスタジアムに行った時に、レベルもそうなんですけど、観客の試合に対する熱量というか、感情移入する姿に衝撃を受けたんですよね。僕は自分がキックボクシングが好きで、ただ強くなりたくて始めましたが、タイでは賭け事としてなりたっていて、応援者の生活も変えかねない、そういったところに魅力を感じましたし、どうせ闘うならこの舞台で一番になりたいなと、ここに挑んでいきたいなというのをラジャダムナンスタジアムで初めて試合を見て思って。そこから打倒ムエタイを目指すようになったので、危ない競技をしたいと言うよりは、ムエタイを倒したいですね。僕はこの打倒ムエタイと掲げている中で、自分はムエタイ選手だと思っていないんですよ。自分のことはキックボクサーだと思っていて、ムエタイを攻略しているような感覚でいるので、最近はずっと対戦相手がタイ人ですけど、タイ人選手と試合が決まると、そのタイ人選手のムエタイをどうやってキックボクサー瀧澤博人が攻略していくか、そういったものがテーマなので、ムエタイをやりたいというよりもムエタイを攻略していきたい。そういった気持ちで試合に臨んでいます」

――日本人でムエタイ選手を倒してきた選手といえば那須川天心選手がいますが、天心選手のことはどう見ていますか?
「すごいと思っています!動きもそうですし、結構スピードとか、カウンターテクニックとかが注目されがちなんですけど、僕はなんか人間的な部分がすごいなと思っていて。インタビューとか動画とか見て、那須川選手が発言する言葉を聞くと、昨日今日で思いついた言葉じゃなくて、格闘家を志した頃からずっと考えて毎日自問自答してきた人の言葉のように感じるんですよね。那須川選手がどれだけ腹をくくって格闘技に人生賭けて来たのかっていうのは尊敬に値すると思っています」

――天心選手は来年格闘技を引退されますが、そのポジションに自分が入ってやるという思いはありますか?
「そうですね。僕は打倒ムエタイでやっていますけど、初めた理由は一番になりたいだったので、目の前に一番になるチャンスがあるんだったらやりたいと思ってます。ただ打倒ムエタイを掲げているので、欲を言えばムエタイルールがいいなと思ってますけど、目の前に一番になれるチャンスがあるんであれば、そこは選んでいきたいと言うか。必ずものにしていきたいなと思ってますね」


■玉置浩二さんと槇原敬之さんが僕に最も影響を与えてくれた歌手

――プロフィールにはシンガーソングライターでもあると書かれていますが、こちらを初めたきっかけは?
「これも幼少期なんですけど、父が格闘技の先生をやりながら、バックバンドみたいな仕事をしていたんです。家族の遊びといえば家にあるカラオケの機械でみんなで歌って褒め合う家庭で育ったので、遊び道具の一つとしてサンドバッグとギターがあって。僕は格闘技と音楽以外何やっても続けてこれなかったんですけど、その2つだけはずっとできてきていて、それがいつの間にか自分を表現するツールの一つとなっている。そういった理由で今でもやっています。ほんとに生活の一部として」

――普段はどんな歌を唄われているんですか?
「自分のオリジナルソングではあるんですけど、ラブソングから、最近すごく多いのは練習とか試合とかで色んな感情を言葉にしてメロディーにノセたりとか、自分の今の心境とすごくあった誰かの曲とかを歌っていることが多いですね。基本的に聞くのは洋楽なんですけど歌うのは邦楽が多いです」

――影響を受けた歌手はいますか?
「全然リンクしないんですけどボーイズIIメンが大好きで(笑)アメリカのR&Bのコーラスグループが好きでああいうなんかこう洒落洒落なところを聞いて、でも歌うのはどストレートなJ-POPど真ん中。玉置浩二さんとかめちゃくちゃ好きなんですよ。あと槇原敬之さんとかが僕に最も影響を与えてくれた歌手じゃないかなと」

――今の入場曲もご自分で歌われているんですか?
「自分で作詞作曲して、タイトルがTRUST、信念って言う意味なんですけど、僕の座右の銘が『一念通天』という言葉で。自分をとにかくずっと信じ続ける。それがいつか天に願いが届いて、夢が叶うというのが座右の銘で。あともう一つ、自分の人生のテーマなんですけど『自分を信じろ。信じられる自分を創れ』というのが、僕の中学校の時の担任の先生が言ってた言葉で、今でも自分の人生のテーマになってるんですけど、その思いを載せて描き下ろし、入場曲にしています」

――ここ一年コロナ禍でしたが、コロナ禍の環境が自分に与えた影響というのはどのようなものがありましたか?
「そうですね、コロナでやっぱりこう、ジムが約2ヶ月ぐらい閉鎖になって、トレーニングしたくてもできない日々が続いたんですけど、その時期はひたすら毎日毎日走り続けるしかなくて。その時に改めて思ったのは、何を失ったかじゃなく、自分にとって何が残されたか。あったものに対しての感謝の気持ちをもう一度再確認できた日々ではあったので、いかに練習できることがどれだけ幸せだったか、当たり前の日常がどれだけ幸せだったか、大切だったのかを再確認できた日々だったので、もしかしたら選手としては立ち止まってしまった期間ではあったのかもしれないですけど、人間としては前に進めた。人間としてはより強くなれたなと自分は感じていて。もしもまた、今後緊急事態宣言が発令されてジムが閉鎖になったとしても、立ち止まらずに前に進める。今ならそうなれるんじゃないかなと思ってます」

――緊急事態宣言が発令されて、無観客での試合も考えられますがお客さんが居ない場所での試合の経験はありますか?
「アマチュア大会ぶりじゃないかなと。フルリングのサイズではあったんですけど観客は出場選手とそのセコンドぐらいしか来ていない中で、ただ結果だけを争うアマチュアの大会に出させていただいたのが最後で、あれがもう10年以上前かな・・・それぶりですね」

――後楽園ホールで無観客というのは想像できないですね
「さっきもちょうどその話になってたんですけど、なんかこう、我々格闘家は明日試合があったとしても、究極言っちゃえばその日に家族が死んだとしてもリングに立たないといけないと教わってきて。プロとしてそう教わってきた中で、いつでも戦える準備はしてきてますけど(お客さんの前で)戦いができなくなる準備というのはしてきたことなかったんで、ちょっとなってみないとどんな心境になるかわからないです・・・でも求められるんであれば試合はしたいなと思いますけど、ただプロスポーツ選手として考えると一戦一戦で人生が大きく変わってきてしまう、特に格闘技は何百戦できるというわけではなく数ヶ月に一回しかできないという中で、試合をするという良くも悪くも人生を左右されるという事を考えると、無観客試合をやるっていうよりかは、僕は全く同じ対戦相手と全く同じ環境で同じルールで、お互いより力を蓄えてやりたいなと。それはなぜかって聞かれると僕はプロなので、お客さんの前で試合をする事が仕事なので。ただ勝った負けたを争ってるわけじゃないので、そう考えると皆が楽しめる環境で戦えるまで、また力を蓄えるべきなんじゃないかなとは個人的には思います。」

――次回の試合はノンタイトルですが、防衛戦はタイ人だけですか?
「タイ人もしくは世界の加盟国のナショナルチャンピオンたちと防衛戦をやっていく予定です。あまり僕は防衛戦を考えていなくて、まだまだこの上に道があるので守りに入るというよりも攻める試合をしていきたい。このベルトを片道切符にしてどれだけ強い選手と戦っていくかを考えてます」

――ありがとうございました。改めて見に来てくれるお客さん、インタビューを読んでくれてる方へこういう自分を見て欲しいというメッセージをお願いします
「前までは背伸びしてたと言うか、お客さんに僕の夢への共感を強要してしまっていました。ですがいろんな挫折だったりとか、スランプだったりを経験して今思うのは、僕が一生懸命頑張ってる姿にそこに夢を見ると思ってるので、まず僕ができる仕事としてはリングの上で全力で戦う事だけだと思っているんです。そこでお客さんがどう感じとるかは、観客の皆さんにお任せするので、僕は全力で命を賭けて戦う事に集中しているつもりではあります。ただ一つ、僕が格闘技から与えられた思いとしては、やっぱり格闘技を見るとまた明日から頑張ろうと思えるんですよね。リングの上ってその人の生活だったり性格だったりとか、嘘とかメッキはすぐ剥がれるし、人間としての本質がリングで出るので、そういったところを見て、また明日から、僕も私も、瀧澤のように頑張ろうと感じてもらえるような試合をしたいと思っています。」

『CHALLENGER2』
日程:2021年5月9日(日)→5月29日(土)へ延期
開始:17:30
会場:後楽園ホール

▼日泰国際戦57.5K契約3分3R
瀧澤博人(WMOインターナショナル フェザー級王者・元日本バンタム級王者/ビクトリー)
vs
クン・ナムイサン・ショウブカイ(MAX MUAYTHAI 55kg王者/タイ)

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