【インタビュー】2・23全日本プロレス・後楽園ホール大会で諏訪魔の三冠ヘビー級選手権に挑む!いま初めて明かされる『ネコと酒が好きなおじさん』佐藤耕平のプロレス哲学
佐藤耕平のtwitterアカウント(@KoheiSatoZero1)を是非ご覧になっていただきたい。そこにはネコと酒と一緒に笑顔を浮かべる佐藤耕平の写真がズラリ、だ。しかしネコと酒の写真ばかりで、そこから佐藤耕平のプロレスに対する考え方は微塵も窺い知ることができないのだが…2月23日(水)全日本プロレス・後楽園ホール大会で諏訪魔が保持する三冠ヘビー級選手権への挑戦を控える、そんな佐藤耕平に話を聞いた。
――最近の活動状況を教えてください
「去年の7月にプロレスリング・ゼロワンを退団しフリーになりまして。プロレス以外にも『一般社団法人ONSTEP・いのちを学ぶ教室』の理事として、小学校とかスポーツクラブとか、少年院とかでプロレスを通した活動をしてます。僕と岩崎(永遠)とSUGIとでやってます。活動開始から一年が経ちますけど、コロナで思うように活動できてなくてもどかしいのがいまの現状ですね。もともと子供と動物、特にネコが好きなんです。動物全般好きですけど。いまはネコ3匹と暮らしてます。もともと小学校のときに拾ってきた猫をずっと飼ってまして。それが子供を生んで増えて。実家ではいまでもそのネコの家系をずっと飼ってます。いま飼ってるネコはその家系とは違うんですけど」
twitterでいつもネコと一緒に写っている佐藤耕平。その理由が判明した。やはり無類のネコ好きだったのだ。それにしても、ネコや酒との写真ばかりで、プロレスについて文章でほとんど語らないのはなぜなのだろう。
「もともとSNSに興味がなくて。だけど前の団体の活動の一環として、どうしてもSNSをやる必要に迫られまして。で、使ってた携帯がガラケーだったので無理だと言ったんですけど。なら代理の者がやるから、と。だけど、そういうのは代理なんかがやっちゃダメじゃないですか。だったら写真だけでもいいなら自分でやります、と」
――全日本プロレスに対する印象は?
「全日本プロレスさんは、もともと中学生の頃からテレビで見てました。土曜の4時からは新日本、日曜の深夜に全日本という時代ですね。新日本と比べて、デカいレスラーが多いイメージです。キャラ的にはグレート・ムタが凱旋した頃の新日本が好きだったんですけど、プロレスごっこをやると最後は必ず全日本のマネになってました。僕は中学2年生のときには180cmありました。高校2年生で192cmになって」
――いきなり時代は飛びますが、ゼロワンを退団しフリーになったとき、全日本は意識していたのでしょうか?
「いえ。ゼロワンを退団した時点では正直、全く頭になかったです。そもそもフリーになったときは、何も考えていませんでした。だけどとりあえず大日本さんがレギュラーで使ってくれることになったので、あとは活動の幅をどんどん広げていくしかないなと。そんな中で声をかけていただいたんです」
――佐藤選手の全日本初登場は昨年12月13日の後楽園ホール大会、vs大森北斗戦でした
「初めて全日本に参戦して、若い北斗選手と戦って。どんな団体も、若い子と戦ってみればだいたいわかるじゃないですか?で、北斗選手が激しくぶつかってきたので『全日本のリングは自分に合ってるな』と思いました。北斗選手は、当たりが強いと言われてる大日本の選手と変わらないくらいバチバチきてくれたので。戦ってて面白かったですね」
――実際参戦してみた全日本にどのような印象を抱きましたか?
「プロレス団体って、時代と共にカラーが移り変わっていくじゃないですか?だけど全日本さんは、僕が子供の頃に見てた頃からあまり変わってないんだな、と感じました。それはいい意味で。それぞれの試合に新しい独自の色がいまはあるけど、セミとメインにはしっかりと王道があり、それをいまでもしっかり守ってるんだな、と」
――最近は『全日本から王道色が薄れている』と嘆くファンもいるようですが?
「いや、僕は逆に、そこは諏訪魔選手がしっかり守ってると思いました。秋山選手時代の王道は味わったことがないので全く知らないですけど、昔、ゼロワンと全日本の抗争があった時期の感覚で言うと、いまの全日本も全然軸はブレてないというか、全く変わってないと思います。それは子供の時に見た全日本と同じで全く変わらないと思います。これは変な意味でなく『重い』というか『重厚感のある』プロレスですね。あと、ちょっとヤボったいというか。だけど、それがあってこその全日本だと思います。そこがなくなったら全日本じゃなくなる。王道色が薄れてるとか言ってる人は、実際いまの現場の空気感を知らない人たちだと思います。僕は秋山選手時代は全然知らないですけど、それ以前はよく知ってます。で、その頃といまの全日本を比べてみて、そこはいい意味で全然変わっないと、実際上がってみてそう思いましたね」
――そんな全日本で三冠を狙おうと思った理由は何なのでしょう?
「そんな変わらない全日本の空気を感じて。それは僕にとって子供の頃に見た憧れの対象ですから。その象徴である三冠のベルトはやっぱり狙わないと。そう思ってこそのレスラーですし。あと昔、橋本(信也)さんが巻いてたベルトだから、というのもありますね。橋本さんの弟子vs武藤さんの弟子。僕が諏訪魔さんに対戦要求した後そんな見られ方もされましたけど、そういうイメージで見た方がファンにとっては面白いですよね。橋本さんの弟子という自覚?もちろんありますよ。受け継いだのは破壊王のプロレススタイルと、ヤンチャさですかね」
――佐藤選手のヤンチャ伝説ですが、酔っ払って某選手をコンテナのゴミ箱に投げ込んだという話を聞いたことがあります
「それは話した人が盛ってます!コンテナじゃなくポリバケツのゴミ箱です!コンテナなんて、さすがにそこまではやらないですよ!」
――話を戻して、諏訪魔選手の印象はいかがでしょうか?
「諏訪魔選手とは…確か二回戦ったことがあるのかな?タッグで触った程度ですけど。根っこがしっかりしてる印象ですね。アマレス出身者は軸がしっかりしてるなと思いました。そして僕の三冠挑戦表明が決まったことで、全日本の所属選手の中には『フリーのくせになんでだよ』と思ってる人が絶対いると思うんです。そういう気持がないとおかしいと思いますし。だけど僕が獲ったら、そんな彼らのターゲットが増えるわけなのでそれはそれで面白いと思いますね」
――諏訪魔選手以外の全日本所属選手への印象は?
「しっかり把握してるわけじゃないですけど、宮原、青柳、ジェイクとか。彼らは重厚な、ガッチリした試合してると思います。諏訪魔選手を主軸に、彼らがしっかりと王道のパーツを担ってると思います。彼らの試合、この前も見てて僕は『オーッ!』となりました」
――三冠選手権を奪取したら、佐藤選手の人生はどのように変わるのでしょうか?
「まず確実に、嬉しくて酒の量が増えます!そして多分、酒を割るモノの種類が増えます!これまでは炭酸一択だったのが、ちょっと高級なウーロン茶なんかで割るようになるかも!それは冗談ですけど!」
――本音の部分では、全日本を変えていく推進力になるつもりでしょうか?
「ここからは真面目な話しします。さっきの王道色が薄れたとか言ってる人もそうですけど、僕の周りでも最近の洗練されすぎたプロレスが面白くないと言ってる人がいることも事実なんです。だけど、僕がいたゼロワンも相当古臭いプロレスと言われてたんですけど、僕が昨年フリーになって色んな団体に上がってみて、全日本と大日本だけは、昔と全くブレてないと肌で感じたんです。全日本は諏訪魔選手を、大日本は(関本)大介を筆頭に。全日本に新しい人が入ろうと、古い人が去ろうと。王道と呼ばれるスタイルが軸にあって、その周りに新しい色は付いてるけど、軸は全然ブレてない、そう感じたんです。ファンが何を言おうと、業界にいるレスラーたちは全日本に対しいまもそういう思いを抱いてると思います。だから思うんですけど、全日本や大日本のブレてない泥臭いプロレス見たら、そういうファン達がまた戻ってくるんじゃないですかね?また好きになるんじゃないかと思うんですよ、プロレスを。いまの全日本は、ブレずに進めばいいと思います。そうすれば、離れた人達も戻ってくると思いますよ、自然に。そして、逆にそういうファン達を戻せたら、これって凄く面白くないですかね?」
ネコと酒が好きなおじさん…おトボけムードで自身をそのように称してこそいるが、佐藤耕平は三冠へビー級選手権を必ずや奪取し、自身の思い描く理想のプロレスを業界に取り戻そうと、実はとてつもなく壮大な野望を企てているのかもしれない。三冠王者・諏訪魔にとって、これまでにない理念を抱くタイプの強敵だ。2月23日、全日本プロレスは歴史と伝統を背負い、また新たな領域へと一歩を踏み出す。
文…日々樹アキラ