30分で新型コロナウイルス陽性判断ができるLAMP法検査を格闘技団体PANCRASEが採用!10月からの有観客大会再開のため万全の対策を発表!

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 9月18日夜、都内新宿区のパンクラスにて、今後のパンクラス運営についての記者会見が行われた。
 先月は『PANCRASE 317』が、コロナ陽性選手が出たため開場10分前に中止となった。会見には、苦渋の決断を下した酒井正和代表が出席。今後を見据えての新しいコロナ対策や、パンクラスの開催予定について発表した。

「格闘技という競技は、超濃厚接触せざるを得ない競技です。パンクラスは、その中で様々な対策に取り組んできました。しかし、先月はコロナ陽性の選手が出てしまい、開場10分前に中止という判断をしなくてはならず、選手、ファンの皆様はじめ多くの人にご迷惑をおかけしてしまいました。
 そこで、今後、選手が安心してケージに上がれ、ファンも安心して来場できるように、9月は無観客で大会を行うことにしました。また、今後の安全を考え、さらに様々な対策を取って行きます」

 今後の対策について、ポイントは4つとなる。

▼選手をコロナから守る体制作り
エアトリグループが提携するクリニックの協力を得て、9月27日大会当日に、レフェリー・セコンド・選手全員約130人にLAMP法検査を行う。

「試合1週間前や前日にPCR検査を行なって陰性であっても、選手がそのまま隔離された状況で過ごせるのであればいいですが、それは難しい。となると、試合までにどこで感染してしまうか分からないということになります。つまり、試合を安全に行なうには、当日に検査をして陰性を確認しないと意味がありません。
 そこで今回は、LAMP法という方法を使用し、レフェリー・セコンド・選手全員約130人に対して検査を行います」

 LAMP法は、PCR検査と同様、唾液などの検体を使って検査を行なう方法。しかし、PCR法に比べて簡便で、ターゲットとするDNAを短時間で確実・大量に増幅できることが特長だ。結核を始めとし、マイコプラズマ肺炎やインフルエンザ、SARSなどの感染症の遺伝子検査に利用されている。

「実は、9月大会を行うかどうかも悩みました」
と酒井代表は続けた。
「良い検査方法がなければ、開催を中止する選択肢もありました。しかし、前回大会の中止で、多くの人に迷惑をかけています。そのため、9月は無観客で行いますが、10月はできる限り、ファンの皆さんに試合をお見せしたい。そのために何をするべきなのかを考えました。
 LAMP法はPCRなどと同様、以前からある検査法です。PCR法でもいいのですが、当日、130人検査することを考えて、PCRより早く結果が出るLAMP法を採用しました。
 もう一つ、前回と違う点は、前回は検査を建物の中でしてしまったのがミスだったと思っています。陽性の人を会場に入れてしまったために、会場を使うリスクが高くなったということです。
 その教訓を生かし、次回は室外にテントを張って検査を行うことにしました。もし陽性が出た場合は、別に用意する隔離スペースに隔離して、その人を安全に送り返す方法やケアを考えます。もし陽性が出ても、会場の建物の中に入れなければ安全なので、その試合が中止になっても、ほかの試合は行えるということになります。
 コロナに関しては、まだワクチンや薬も開発されていない現在、絶対的な『正解』はないと思います。ただ、濃厚接触が必至である競技である以上、試合直前の検査が今のところはベストだと思います」

▼試合会場の飛沫・空気感染リスクの低減
 エコ革 京都テクノロジー事業部の協力により、試合会場やリング周り、控え室の飛沫シミュレーションを行う。
 これは、会場や控え室などの空気の流れを「見える化」するもの。この検証により、飛沫・空気感染予防対策を行なう。

「よくテレビで、飛沫の広がりをわかりやすく映像にしていますよね。エコ革 京都テクノロジー事業部さんは、そういった試みを行なっている企業です。
 スタジオコースト内の空気の流れや飛沫の広がりを見える化して、どこに席を設営するのがいいのか、どこに空調を置くべきかなどに活かします。また、選手の控え室も、空気が通りにくいところがあれば使わないようにするなどの対策をして行きます。
 これは宝塚さんもやったようですが、会場内の空気の流れを検証することで、適切な環境を作るためのものです。そして、これらのデータを整理して、観客を入れる10月大会に生かしたいと考えています」

 しかし、検証の結果、ネガティブなデータが出た場合はどのように対応するのか。
「これまでこういった検証を行なったことがないので、どういう結果が出るかはわかりません。しかし、それに対して、どこに空調を置くかなど検討して行きます。もともとスタジオコーストは風通しのいい会場なので、開催が難しいという状況にまで行くとは考えにくいですが、その中でもさらに万全を期すべく努力して行きます」

▼10月以降の大会開催について
 10月25日大会は通常開催となる(ただし、客入れは通常の50%とする)。
 11月は、15日に大会が予定されていたが、10月25日大会からの期間が短いこと、選手を12月13日大会に振り分け集中させていくため、11月15日大会は開催しないことに。12月13日大会は通常開催の予定。

「10月25日の開催については、政府のロードマップを基準にしています。これは、いつ変わるかわかりませんが、ロードマップに従って開催します。50%の客数で行います」

▼パンクラス史上初のクラウドファンディング
8月大会の中止に伴い、パンクラスはチケットの払い戻しや選手へのギャラの支払いを行なった。さらに9月大会は無観客で行われる。ここには莫大な経費の問題が重くのしかかっている。
 そのため、パンクラスでは、新たな試みとしてクラウドファンディングを開始した。

 CAMPFIREクラウドファンディング
「コロナに打ち勝つ希望となる大会を皆さんと創りたい」
開始:9月18日18時30分
終了:10月19日23時59分
目標金額 :1000万円
クラウドファンディング ページ
https://camp-fire.jp/projects/view/321238

「先月は、地方から来た選手が、試合ができずに泣いていたという話も聞きました。そして、私自身も、選手やファンの皆さんに迷惑をおかけしたという思いが強いです。しかし、見えないコストが相当かかっています。この逆境を越えるために、新しいチャレンジとしてクラウドファンディングを行うことにしました。
 コロナに打ち勝つ希望となる大会を皆さんと一緒に成功に導きたいと思います。是非、多くの皆さんのご支援をお願いできればと思っています。よろしくお願い申し上げます」

 格闘技は、たとえ無観客であっても、やはり大会を開催してナンボと言える。
 先の見えない状況の中、何もしないでいれば、選手はただ年を取って行くだけ。若い選手であっても、心中穏やかではいられないはずだ。
 選手のことを考えれば、大会は1つでも多く行いたい。しかし、それには経費が必要だ。プロスポーツ団体に対しては国の支援がない状況の中、大会を開催するには格好をつけてはいられない。今回、パンクラスがクラウドファンディングを行うことは、パンクラスの歴史としては初めて。なりふり構わず、選手のために、そしてファンのために、大会を行いたいという代表の気持ちが強く伝わって来た。
 酒井代表は「正解はまだ分かりませんが、選手を守ることを第一に考えると、現時点ではこれがベストだと思います。来年にはオリンピックも予定されています。コロナに打ち勝ち、希望となる大会を皆さんと作って行きたい。そして、これがスポーツ界のスタンダードになっていけばと思っています」と話した。

 これまで日本では、様々な格闘技の大会が行われて来た。月にいくつも格闘技の大会があることは、ファンにとって当たり前だった。それが当たり前でなくなった今、もしかしたら私たちは、格闘技への愛を試されているのかも知れない。
「格闘技が当たり前にある毎日」を守り、取り戻すためにも、ファンも動く時なのではないだろうか。
 パンクラスのみならず、すべての格闘技団体が、安心して通常開催できる日常が1日も早く戻ってくることを祈ってやまない。

(写真・文/佐佐木 澪)

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