【インタビュー】ガッツ石島が“インディープロレス統一”を掲げた新団体『TTT』旗揚げを前に野望を語る!「インディー統一は理想ではなく結果」
1月下旬、都内・花園神社にて今月25日の新団体『TTT(TOTAL TRIUMPH TEAM)』の旗揚げ戦を控えたガッツ石島が先人の成し得なかった“インディープロレス統一”への野望を語った。
ガッツ石島はターザン後藤に薫陶を受け、ミスター雁之助を師に持つ黎明期インディープロレスの後継者的存在であり、TTTとは旗揚げから13年4ヶ月続けたガッツワールドプロレスリングを解散した後にHEAT-UPに合流して別ブランドであるGOING-UPを13ヶ月運営した後に再独立し “インディープロレス統一”を掲げて組織した集団“真GUTS軍”を団体化したもの。
昨年12月にガッツが自身のデビュー15周年記念大会で新団体旗揚げと、TTTの団体名および中央に稲妻マークが入ったロゴを発表すると、インディープロレスの歴史をよく知る観客からは悲鳴とともに団体旗揚げ自体の成否を危惧する声が上がっていた。
TTTは、石川国由CEOの経営する株式会社イロノハのスポーツ事業部内の組織として運営され、地方自治体および商店街・町会を中心にアプローチをかけイベントでのプロレス興行や子供向けの体操教室を開催していく構想を発表。既に調布市のつつじヶ丘触れ合い夏祭り、JR板橋本通り商店街、新宿末広通り商店街などでの大会開催実績があり、これを企業活動の一環として本格化させていくという。
ガッツはTTTで最も重要視していることは「レスラーの待遇・環境」であると語り、これを整備することで全国から良い選手が集まってくることが“インディー統一”であると語っている。インディープロレス界の新たなシステムを作るという野望をぶち上げ、新宿・花園神社で必勝祈願を行ったガッツ石島に話を聞いた。
――まず、ガッツワールド解散後に旗揚げされたGOING-UPはガッツ選手にとってどういうものだったのでしょう
「GOING-UPをやっていた時期は俺にとって有意義な時間だったと思っています。ガッツワールドを13年やってた中で、基本的に俺はエースではなかったんですけど、GOING-UPではキャリア13年で結果的に初めて自分がエースとして引っ張る形になったと思うんです。俺はそういう感覚はなかったんだけど、結果的にエースになってました。そういう経験は初めてだったんで、レスラーとしては9ヶ月間だけだったけど貴重な時間でしたね。“プロレスラー”ガッツ石島を見つめ直すには非常にいい時間でした。やっている間は充実していました。ガッツワールドでは責任者としての業務も並行してやらなきゃいけなかったんですけど、GOING-UPでは自由にやらせてもらってたし、選手として専念できましたね」
――その後、GOING-UPが解散されてフリーになり、真GUTS軍というユニットとして1年弱活動してきました
「真GUTS軍は一ユニットに過ぎないし、限界はあるなとやっていて感じてたんですよ。点にしかならない、線にならないと感じたと言うんですかね。お客さんの中には団体として見ていただいていた方もいたんですけど、結局フリーと他団体の選手をかき集めてやっていただけで、1試合1試合が面白くても、団体としてやっていないと記録にも記憶にも残らない。やっぱり所属選手がいて、みんなで同じ方向を向いて突っ走っていくという“団体”の形を取らなくちゃ限界が見えてるなと。GOING-UPを退団したときには、団体設立という目標は持っていたんですけど、その思いが強くなった時期でしたね。でも、この時期は所属になる選手はどういう選手がいいのかとか、他団体・フリーの選手たちと信頼関係を築く時間に充てられたので必要な期間だったと思ってます」
――改めてTTTの旗揚げについてですが、“インディー統一”を掲げて新団体を作ろうと思った理由はなんだったのでしょうか
「まあ今言ったようにユニットとして動くことに限界を感じたというのが第一なんですけど、実はガッツワールドの頃からインディー統一という目標は掲げていて、基本的にはそれはブレてないんですよ。でも、GOING-UPを出てから、改めてインディープロレスの歴史を勉強して、FFFが掲げた“インディー統一”という構想を勉強したんです。古い書籍をいっぱい読んでみて、FFFがどういうものを理想としてたのかを調べたんですよね。その中で、ただ団体を作っても人って集まってこないなと思ったし、理想だけ掲げても人はついてこない。じゃあこの時代に何が一番沿ってるのかなと思うと、レスラーの環境づくりだなと思ったんです。“インディー統一”っていうのは理想ではなく、結果なんだと思ったんです」
――良い待遇・環境を求めて全国から良い選手が集まってくることが“インディー統一”という結果として表れると
「そうそう。でも環境づくりって俺一人であがいてもどうにもならないんですよね。だから、そういう環境が整わない段階では旗揚げはしたくなかったんですよ。ガッツワールドのときみたいにまた1から俺が一人で代表なり社長なりになってやったとしたらまた同じこと、焼き直しになっちゃう。そもそも俺は現役レスラーが社長とか代表になるのは好きじゃないし、それはもうガッツワールドで散々やったし。だから、ちゃんとした企業の経営者がいて、それで俺が現場を預かるという形でやりたいと思っていたんですよ。お金の管理をする人が別にいればレスラーファーストの環境を作ることにつながると思ったし、その準備が整ったからこそ今回旗揚げに至ったんです」
――レスラーファーストの環境というのは具体的にどのようなものなのでしょう
「どこかの団体に所属している選手と、フリーの選手にはそれぞれメリットとデメリットがあるわけですよ。団体の後ろ盾があるから安定する部分もあるけど、逆に団体に縛られるという部分もある。フリーの選手は保証はないけど自分で全部自由にやれて売れっ子になると団体に所属するよりも稼げることもある。それで言うと、今売れてるいいフリーの選手が団体に所属するメリットってないんですよね。だから、人を集めるためにはそこを取っ払う必要がある。TTTという団体に所属することで、フリーで活動する利点を上回る、フリーの選手が所属したいと思える環境ってどんなものかなっていうのを考えたんです。それは収入面や自由度を両立した環境だと思うんですけど、それを用意できたなという自負はあります」
――昨年の旗揚げ記者会見では「選手を集めるためのリクルート活動は個々の選手たちに任せる」といった発言がありましたが、それに関連しているのでしょうか
「そうそう。基本的にTTTは所属選手が他団体に出ていくことを推奨していて、そこで見つけたいい選手をTTTの大会に呼ぶという方針を考えています。TORUも佐山もフリーとしてかなり売れっ子で、すごくたくさんの団体さんに参戦してる。TTTとしては彼らがフリーとしてやっていたときの自由度を奪うつもりは全く無いし、『ギャラを何割団体に戻せ』とかうるさいことを言うつもりもない。これまで通りいろんな団体さんに出て、そこのお客さんを魅了してTTTにも見に来てもらえるような試合をして欲しいってくらいかな。
俺もフリーになってから色んな団体さんに呼んでもらって、今まで知らなかった色んないい選手がいることに気付いたんですよ。去年、アライヴァルの大会でタッグを組んだ北都プロレスの河原選手(河原成幸)とかいい選手だなあって。だから今回TTTの旗揚げ戦でも河原選手を呼ぶし、こういう感じですよね」
――今後、こうした形で全国のインディー団体から選手が参戦していくのでしょうか
「まだ分からない部分もありますけど、TORUが関西の方で試合をしていたのもあって人脈もあると思いますし、佐山もホントに全国の団体さんに出ているので色々な出会いがあると思います。うちの中では特にこの2人の活動範囲が広いので、東京で試合をしたいと思っているのに機会に恵まれていない選手にどんどん声をかけていってもらいたいです」
――TTTへ参戦を希望する選手からの自薦は受け付けますか?
「自薦も受け付けましょう!(笑)ただ、インディー団体を見続けている目の肥えたお客さんを満足させる自信がある選手にお願いしたいです」
――目標として後楽園ホールで大会を開催することを語っておられましたが、それはいつ頃になりそうでしょうか
「目標としては2021年中に行きたいですね。今年の6月7日の新宿FACE大会を成功に導ければ後楽園ホールが見えてくると思う。この大会の裏に別の会場で大きな大会があるので、それとは違った魅力を出していきたいですね。ただ、後楽園ホールに打って出るにはまだまだ力が足りていないので、所属選手を増やしていきたいですね。当面の目標として、所属20人を目指しています!」
――今現在所属している3人の選手についてガッツ選手の想いはいかがでしょう
「元々TORUはガッツワールド時代からいい選手だと思ってたし、デカくてヘビー級の試合もジュニアの試合もできるオールマイティな選手だと思ってる。そういう選手ってとても貴重だし、自分が思い描くプロレス団体はベビーフェイスのトップがいる団体で、TTT自体が彼がいないと始まらなかった。
佐山に関しては、若いし未来がある。それに格闘技仕込みのキックとか他の所属選手にはない味がある選手ですよね。キャリアはまだ浅いけど、これから経験を積んでいけば間違いなく未来のエースになる逸材になると思う。佐山が来てくれたことも大きいですね。俺とTORUとミステリーだけじゃなにかが足りなかった。佐山が来てくれたことでやっと1つの形になったという感覚がありました。それくらいこの2人には期待をかけています。
TORUにも佐山にも、色んなところから『なんでTTTなんかに入団したんだ』という声が上がっているのも知っています。ただ、2人ともTTTに賛同してくれて、自分の意志でこの団体を選んでくれたんです。だからこそ2人には良い環境を提供しなきゃいけないですよね、俺としては」
――マスクドミステリー選手に関しては……
「ミステリーに関しては付き合いも長いし今さらなにも言うことはないんですけどねえ(笑)ただ、ツーカーの仲というか、お互い言葉に出さずともお互いの言いたいことや考えていることは分かるし、俺が新しい団体を旗揚げしようと思ったときにミステリーが隣にいる前提で考えていたっていうのはありますよ。それでミステリーも当たり前のように付いてきてくれた。これからもずっと一緒にやってく仲間だと思いますよ」
――TTTには早くも藤原秀旺率いる“渡鳥連合”が外敵として宣戦布告をしてきていますが、秀旺選手についてはどのような想いがあるのでしょう
「まあ、憎たらしいやつでこないだの会見もメチャクチャやってくれましたけど、俺が13年やってて初めて純粋に“ライバル”だと感じた選手なんですよ。自分はずっとライバルにダイスケの名前を挙げてたけど、ダイスケはライバルでもあり戦友でもあったから。俺も直感で『コイツだ!』と思ってGOING-UPの旗揚げ戦から呼んだんだけど、藤原秀旺がいたから自分はGOING-UPのエースになれたと思うんですよ。だから藤原秀旺とはキッチリ戦っていきたいですよね。ガッツ石島vs藤原秀旺をどこか大きい会場のメインイベントでやれるような。外敵と言うよりはライバルですよ。あと、外敵といえばGWCの6人タッグのベルトもガン☆プロの連中に持っていかれてるんで、そこも決着付けないといけないですね」
――旗揚げ発表記者会見では「TORUと佐山の若い二人に任せる」という発言がありましたが、ガッツ選手は一線を退くことになる?
「いやいや、一線を退くわけではないんですよ。現に俺はCCWカナディアンヘビー級のベルトも、WBCタッグのベルトも持ってますからね。二人に任せるって言ったのも、変に世代交代をするアレじゃなくて、ガッツのワールドにしないための施策ですね(笑)だから団体名からもGを外していますし(笑)
若い二人が『これぞTTTだ!』という戦いを見せてほしいと言うか、今は無色透明な団体なので、そこをどう色付けしていくのかを二人に任せたいと思ったんです。自分が一歩引くときは実力で退けられたときなんで。イチから新しいものを作っていこうとするときに、ガッツワールド、GOING-UPと違うもの、違うアプローチを見せるためには最初の一歩で俺が前に出るべきじゃない。でも今後の流れによっては俺が出てくる場面もあると思うし、俺もまだまだ40前だからね。ガンガンやっていきますよ!」
――現在は所属の4人が“真GUTS軍”という正規軍的なユニットを組んでいますが、ユニット内での闘いも展開されるのでしょうか
「今は真GUTS軍でやってますが、TTTの中で彼らが真GUTS軍から独立して自分の軍団を持つことも将来的にあると思うんで、俺はいい意味でTTTの中で競い合えればいいと思うし、彼らが独立することに関しては逆にいいことだと思ってますよ。団体だけではなくユニットにも縛られる必要はないですからね。自分でいい選手を集めてユニットを作るということも大いにやってくれて構わない。そうなったら俺は俺で真GUTS軍として迎え撃ちますよ!」
――まだまだ最前線で戦うという言葉がありましたが、ガッツ選手の個人の目標はなんでしょうか
「去年フリーになっていろんな団体に出させてもらったんですけど、今まで13年くらいガッツワールドとかGOING-UPの代表だったから外に出ていくことってあまりなかったんですよね。だから俺もレスラー個人としてもこれからいっぱいよそに出ていきたいですね。試合をいっぱいしたいです。レスラー兼代表だったから選手として専念できなかった部分があったけど、これからはしっかりとした基盤があるから俺も安心して外に出ていける。プロレスラーとして100%専念できるようになったんで、むしろ一選手としてのガッツ石島はこれからだと思ってます」
――TTTという団体名から90年代のインディープロレス界の歴史を知るファンからは早くも旗揚げ自体の成否を不安視する声が上がっていますが大丈夫でしょうか?
「大丈夫ですよ。もう旗揚げも目の前です!旗揚げ戦が終わるまで旗揚げ前夜です!気は抜けません!」
――親会社が付いて資金面の心配のない万全の体制での旗揚げということで90年代のインディープロレス界の歴史を知るファンからは早くも団体の存亡を不安視する声が上がっていますが大丈夫でしょうか?
「大丈夫です」
――本当に大丈夫ですか?
「大丈夫だって言ってるでしょう?!オーナーが変な新事業に手を出さなければですけど……」
――それでは、旗揚げ戦に向けた意気込みをお願いします
「TTTというインディー統一連合ということで、インディーのいい選手を集めて、最終的には所属選手を20人まで増やしてインディーの中で一つ大きな勢力を形成したいと思っています。業界の序列をいい意味で破壊できるようなシステムを構築していきつつ、“おもちゃ箱をひっくり返したようなプロレス”というインディーらしさを忘れずにやっていきたいと思いますので、皆さん応援の程よろしくお願いします!旗揚げまでが勝負だから!新たな伝説を作るので旗揚げ戦を絶対見に来てくれよな!」
『TOTAL TRIUMPH TEAM 旗揚げ戦』
日程:2020年1月25日(土)
開始:19:00
会場:東京都・新木場1stRING
▼オープニングマッチ
※当日発表
▼「渡鳥連合vsアライヴァル」 30分1本勝負
[渡鳥連合]木村太輔(フリー)/塚本拓海(BASARA)
vs
[アライヴァル]松崎和彦(フリー)/怨霊(666)
▼「インディージュニア闘争」 45分1本勝負
バナナ千賀(フリー)/忍(666)
vs
アルティメット・スパイダーJr.(フリー)/政岡純(紫焔)
▼「NWA認定ミズーリ州ヘビー級選手権試合」 60分1本勝負
【王者/真GUTS軍】マスクドミステリー
vs
【挑戦者/渡鳥連合】藤原秀旺(アライヴアンドメジャーズ)
※王者ミステリーは初防衛戦
▼「インディー世代闘争」 60分1本勝負
ガッツ石島/黒田哲広/バッファロー
vs
ウルトラソーキ(琉球ドラゴン)/阿部史典(BASARA)/河原成幸(北都)
▼「THE NEW LEGEND」 60分1本勝負
[真GUTS軍]TORU
vs
[真GUTS軍]佐山駿介