【インタビュー】64歳の藤波辰爾は久々の王座戦に向け気合十分!山本小鉄の引退式以来の川崎の地にドラゴンが再臨!「努力して得られる“勲章”の価値を若い人にも伝えたい」
某日、6月23日にHEAT-UPユニバーサルタッグ王座に挑戦する藤波辰爾がパートナーの田村和宏と対談を行った。
藤波辰爾は、1971年に日本プロレスでデビューし、新日本プロレスで活躍。現在はプロレスリング・ドラディションを率い、今年でプロレスラー生活45周年を迎えた。
2015年には、アントニオ猪木に次いで日本人で二人目のWWEホール・オブ・フェームに迎えられ殿堂入りしたリビング・レジェンド。
今年で65歳を迎える藤波だが、現在もレスラーとして精力的に活動。今月23日に行われるHEAT-UPカルッツかわさき大会では、田村和宏とともにHEAT-UPユニバーサルタッグ王座に挑戦することが決まっている。
プロレスリングHEAT-UPは、プロレスの興行だけでなく、神奈川県川崎市の地域密着団体として、障がい者支援・福祉活動・警備活動・子供達への支援などの社会貢献活動をプロレスを通じて行っている団体。藤波もHEAT-UPのこうした活動を「中々出来ることではない」と評価し、協力を惜しまない。
藤波がこの王座戦に勝利した場合、2012年のKO-Dタッグ王座以来の王座獲得となるため注目が集まっているが、この戦いに臨む藤波の心情はどのようなものなのか意気込みを聞いた。
――今回、田村和宏選手とタッグ王座に挑戦することになりました
藤波「いやぁ、選手権試合なんて久しぶりだから『俺でいいのかな』って気持ちだよね。ベルトかけてどういうっていうのは僕の中ではあまりピンと来てなかった。パートナーとして指名を受けたときも『LEONAの間違いじゃないか』って思って(笑)」
――藤波選手が最後にチャンピオンとなったのは、2012年にMIKAMI選手と獲ったKO-Dタッグ王座まで遡ります
藤波「あのときも同じような感じで挑戦が決まったんだったね(笑)新日(新日本プロレス)を離れてからずいぶん経つんでね、新日で第一線だった頃は色々あったけども、今は違った形でリングに関わっているからね。その中で得難いオファーではあるんで、嬉しさはあるんだけど、ファンの方から見たらどうなのかなっていうのはあるよね。あんまりそういうのは気にしなくていいんだろうけど、こういうの(ベルト)がかかるとやる気は出るよね。僕も64歳で、僕より先輩の選手が今ベルトに関わっているのかは分かりませんけどね(笑)まあ、話をもらったときは『えっ』って感じだったね(笑)」
――王座戦が決まってからの意気込みは
藤波「僕は常にベルトがかかろうとかかるまいと、スタンスは一緒なんでね。今回はパートナーが田村くんなので、田村くんの足を引っ張らないようにね(笑)」
田村「いやいやいや……(笑)」
藤波「サポートをするんじゃなくて、サポートをしてもらわないとね(笑)」
――現在のコンディションはいかがですか
藤波「そこですよ。問題はそこだけ。僕も3,4年前にヘルニアから狭窄症の手術をして、本来であればもっとじっくりとリハビリして行くんでしょうけど、手術して二週間でリングに戻ってますからね」
田村「復帰は早かったですよね」
藤波「あのときは医者もえらい剣幕で怒ってて(笑)普通はありえないことだからね。いくらレスラーで強靭な体を持っていても無謀は無謀だから。本来は半年、一年かけてリハビリしなきゃいけないところを二週間で戻ってしまうというのは、僕らの宿命と言うか、たまたま三年前の9月に手術をして、その頃にWRESTLE-1の武藤(敬司)とリングに上がる記念大会があったんでキャンセルがきかない状況だった。その前も腰の状態が良くなかったんでいくつかオファーをキャンセルしてた状態だったんですけど。でも、リングに上ってしまえばレスラーはご存知の通りケガとか言ってられないから自分の動ける範囲で精一杯動きますよね。武藤も今、リハビリの最中でしょ?彼も僕のそういう無謀を見ているから大丈夫でしょう(笑)次のMASTERSまでには復帰して欲しいね」
――武藤選手も術後にスクワットをして右膝膝蓋骨にヒビが入ってしまうという事件がありました
藤波「それニュースで見たよ(笑)僕のときも、『あんたはもうレスラーの藤波じゃないんだ』って医者に怒られて。怪我のあとは普通の生活だったらまだしも、プロレスの生活だとやっちゃいけないことだらけじゃない。僕は腰だったしね。でも、今回みたいに試合が決まれば頑張れる。あまりオーバーワークはしないようにしないといけないね」
――身体もボロボロの中、藤波選手が現役生活を続ける理由はなんなのでしょう
藤波「自分はレスリングが大好きなのもあるけど、やっぱり自分に対する挑戦だよね。通常なら万全の状態で時季が来たら引退って人もいるでしょうし、大きな怪我を理由に引退する人もいるでしょうけど、プロレスラーって“現役”であることにものすごくこだわるんですよね。この仕事は、ある意味壊し合いみたいなものだからアレだけども、自分の健康のためにもリングに上っているようなものですよ。現役でリングに上がるということは、それだけ自分の体の状態を保たなければならないということですし、節制も必要。“現役である”という意識は、あらゆる気持ちが引き締まるからね。ましてや人前に出るわけだから、そういうのはものすごく大事だよね。だから自分は現役というものにこだわっていきたいよね。今64歳だけど、70歳になってもこの体をキープしてリングに上がりたいなっていう気持ちはあるよね。70歳になったら、『75歳になっても』という気持ちになるんだろうね(笑)」
――“生涯現役でありたい”という意識が藤波選手を支えているということですね
藤波「やっぱり、自分はプロレスに人生をすべて捧げてきているし、プロレスからすべてを経験してすべてを得てきているからね。今はプロレス以外のことも色んなことをやっているけど、それは自分が“現役”だから出来ていると思うんだよね。やっぱり気持ちは違うと思うから。そういう意味ではすごくこだわりたい。今は試合数が減っているけど、現役である以上は常にリングに上がれる状態を保っていたいよね。色んな人に色んなことを言われて『こんちきしょう!』って思うことはあるけど、それはもう聞かないようにしています(笑)自分自身ではそういうものは超越してリングに上っていると思っています」
――64歳になっても“現役”であり続けることは中々出来ることではないと思います
藤波「プロレスラーでない同世代の人も『64歳でもリングに上ってやってるんだ』って姿を見せたいよね。それなのにヨボヨボの姿じゃエネルギーを与えるどころか違ったものになっちゃうから。同世代の人に勇気を与えるためにも、いい状態を保っていきたいというのはあるよね」
――王座戦に臨むに当たり、パートナーの田村選手への印象はどうでしょう
藤波「今の僕にとっては申し分のないパートナーです。何度も一緒に試合もしたし、うちのリングにも上がってもらってるし、長く見てますんでね。当日はやってみないと分からないけど、相手が相手だけにね、元気のいい相手だから多分僕を集中砲火してくると思うんで気をつけないと」
――現王者は新井健一郎選手&ヒデ久保田選手ですが、以前の会見で新井選手から「藤波が負けたらリング上で『マッチョ・ドラゴン』を歌ってもらう」という言葉がありました
藤波「貴重なんだよ?マッチョ・ドラゴン(笑)中々聞けないんだから。本人の生マッチョ・ドラゴンなんて中々聞けないよ(笑)もう覚えてないもん。実は、色んな所からオファーは来るんだよ。この間LEONAがテレビに出たときも、その番組でマッチョ・ドラゴンが流れたみたいだけど(笑)」
――カルッツかわさきは3000人規模の大会場ですが、久々の大舞台で試合をすることについては
藤波「僕はもうこれまでに東京ドームとか武道館とかアメリカの何万人っていう会場でやってきてるし、会場の規模っていうのはもうまったく関係ない。ただ、プロレスラーだからお客さんが多ければ多いほど燃えるんでね。でも、お客さんがレスラーを乗せるんじゃなくて、レスラーがお客さんを乗せていかなきゃいけないよね」
――この会場はかつて川崎市体育館と呼ばれた場所ですが、この会場についての思い入れは
藤波「あぁ~、久しぶりだね。山本小鉄さんの引退式以来だ。タイガー・ジェット・シンが初めて登場したのも川崎市体育館だったんだ。観客席の中でお客さんと一緒に座ってたタイガー・ジェット・シンがリングに駆け上がってきて……アレでフィーバーしちゃったんだなぁ。新日本の歴史の中では結構ゆかりある場所ですよ」
――このHEAT-UPカルッツかわさき大会では、障がい者支援や外国人住民による物産展などが行われます。こうした活動についてはどうお考えでしょうか
藤波「大事なことですよね。そういうのは思っても中々実行には移せないですよ。各団体もそういうジレンマがあると思うけど、これを一つ一つ積み重ねていくっていうのは大事だよね。我々は色んな所で勇気を与えてきているから、それを行動で示していくことは大事だよ。なにか大きなことをやるんじゃなくて、持続していくことだよね。それに少しでも僕がお役に立てるのであればそれは光栄なことなので」
――藤波選手も選手生活45周年を迎え、プロレス界の変遷を見てきたわけですが、今のプロレス界や選手に対して思うことや伝えていきたいことはありますか
藤波「あまりそういうのはね、口を挟まないようにしてる。今は今で時代の流れがあって、自分たちの形を作っているものがあって、お客さんもそれに一体化している。我々の世代とはプロレスに対しての見方も変わってきているでしょうから。僕は今、年に2回、春と秋に海外からレジェンドを呼んできて試合をしているけど、それはそれで、昔の熱い時代を見てきたファンが少しでも和むような試合をやっているんだ。長州くんも『POWER HALL』っていう、若い世代との交流も考えたようなレジェンド興行をやっているけどね。武藤の『MASTERS』も同じような考えなのかな。だから僕は少し違った、海外のレジェンドを呼んでこようって。大変なんだよ?レジェンドだから限りがあるから(笑)僕はWWE関係での繋がりがあるから呼べるんでね、次に向けて色々選手を選んでいかないとね。まあ、僕は今のファンも昔のファンも喜んでくれるような試合を作っていきますよ」
――今、WWEの話が出ましたが、参議院議員の今井絵理子氏の息子さんがHEAT-UP道場に通い、「将来はWWEスーパースターになりたい」という夢を語っています。彼は耳が聞こえないハンディキャップを持っているのですが、WWE殿堂入りを果たした藤波選手から彼に対してのアドバイスやエールをお願いします
藤波「夢を持ってね、それを膨らませていくことは、どこかで実を結ぶ。夢を持たないと出来ることも出来ないからね。リング上は無法地帯のようなものだけど、最低限のルールがあるからね、彼にとってそれがハンディになる部分もあるかもしれないけど、彼には我々にはない違った感覚があるはずだから、僕らが見つけられなかった戦い方を見つけられるんじゃないかと思います。人間っていうのはね、持っているもので戦っていかなきゃいけない。僕も腰やらなんやら痛めましたけど、違った何かでリカバリーしていくんです。ハンディを背負っても、別の何かを生かして戦っていかなきゃいけない。それがレスラーだからね。だから彼もね、我々にはないものを見つけられるんじゃないかな」
――田村選手も藤波選手とのタッグ王座戦ということで、並々ならぬ覚悟があると思います
田村「僕が藤波さんをパートナーに選んだのも、HEAT-UPは社会貢献というのを強く打ち出しているので、藤波さん世代……僕の親世代でもあるんですけど、60代以降の方々にも『まだまだ出来るんだぞ!』という姿を見せるためにも、藤波さんには頑張っていただきたいです!(笑)」
藤波「もうね、相手と戦っているだけじゃなくて、会場に来ている同世代のお客さんとも戦ってるようなものなんだ。僕はもう64,5歳で、会場にも同じくらいかもっと上の人もいるから『お前には負けないぞ!』って姿を見せて戦っていかなきゃいけない(笑)」
田村「僕もそういう姿を伝えていきたいんです。藤波さんはまだまだ出来ると僕は信じているんです」
藤波「僕らもね、長年かけてやっと自分の夢だったプロレスのリングに上がっているわけだからね。だからね、僕は簡単にあきらめたくないというか、簡単にリングを降りたくない。早々とリングを降りる人も、怪我を理由にやむなくリングを降りる人もいるけど、ああいう決断をする勇気っていうのはすごいよ。辞める勇気っていうのはどの勇気よりも強い。僕らは逃げられない環境に追い込まれてやってるというか、どんなにコンディションが思わしくなくても試合の日が迫ってくるとそうも言っていられなくなる。そういうプレッシャーというか、刺激もまたいいんだよね。
LEONAにも言ってるんだけどね、彼も若くして右も左も分からない中でデビューして。最初に船木(誠勝)をぶつけたときも、あれだけボコボコにされればプロレスの厳しさも分かってくれるでしょうし。あのときも彼は試合の2,3日前から緊張で飯が食えなくなってた。それは誰でもそう。僕も今でも大なり小なりそういうプレッシャーはある。そういうものを楽しみながらこれからもリングに上っていきたいよね。
僕らも猪木さんをずっと見てきたけど、あの人も会場に入れば“プロレスラーの猪木”になってるから、もう誰も寄せ付けない雰囲気をまとっちゃう。それでいざガウン着てリングに上がるときっていうのはもう顔も変わっている。そういう姿がお客さんの中の印象を創っていく。だから僕も、緊張感なくリングに上がる姿を見せたくはない。常に緊張感を持ってリングに上る姿をお客さんに見て欲しい」
田村「そういう藤波さんの姿を僕らも吸収していきたいと思っています」
藤波「我々は演出は出来ないからね。僕も格闘技の経験なしにデビューして、何年も身震いっていうのか、ホント身体が震えながらリングに上っていたんだ。そういう心情とかをお客さんにも伝えていけたらいいよね。プロレスっていうのは、終わりが無いからね。同じ選手でも若いときとは違う戦いをするし、負担も大きいから自分の体との戦いになっていくし。でも、お客さんの歓声っていうのは何にも代えがたいね。これはリングに上った者にしか感じられないからね」
田村「僕はとにかく藤波さんのエッセンスを吸収してもっとデカくなって、藤波さんの築いてきたものっていうのを超えるのは大変なことなのかもしれないですけど、それが一つの目標としてあるというか、藤波さんが目標なので二人で今回は力を合わせて大会を成功させてベルトも獲って、子どもたちにベルトを見せてあげたいと思います」
――最後に、藤波選手の王座戦を楽しみしているファンに向けてメッセージをお願いします
藤波「田村くんとの二人の戦いが子どもたちの夢となり、子どもたちの胸に響くようなものになればいいなと思います。この戦いに勝ったときに与えられるものはベルトだけじゃなくて“勲章”だからね。単なるモノじゃなくて、“勲章”というものは簡単には得難いものなんだということを伝えたい。そういうことを伝えられるきっかけになれば幸いだしね。
昔の人のそういう勲章っていうのは今はあまり評価されていない部分もあるからね。昔僕が入った頃っていうのは馬場さんと猪木さんの全盛期でね。馬場さんのインターナショナルのベルトっていうのは、今は三冠ヘビー級の中のたった一本でしょ?馬場さんのそのベルトなんてのは僕ら若手は触れなかった。いつもは事務所のケースの中に保管されてて、選手権のときにしか見る機会もなかった。ベルトっていうのはそうやって奉るべきなんだよね。そういうものの価値は自分たちで創っていくものだから。壊すのは簡単。創っていくのが大変なこと。どんなガラクタでも奉っていけばそれが本物のベルトになっちゃう。我々が汗かいて血を流して得るものの価値をお客さんにも伝えていきたい。そのためにね、選手権までもう日も無いから、今日もこれからトレーニングをしてきます!」
プロレスラー生活45周年を迎えた64歳の藤波だが、プロレスラーとしての強い姿を見せていくという覚悟は何一つ衰えてはいない。
現王者組の新井健一郎&ヒデ久保田は、「こんなベルトに価値なんて無い」とベルトを放り投げて足蹴にするなどの悪逆非道な行為を繰り返しているが、藤波は「努力して勝ち取る“勲章”の価値を伝えていきたい」という認識の違いを語った。
思い入れ深い川崎の地で王座戦を行うドラゴンが再び王者として飛翔することが出来るのかに注目が集まる。
障がい福祉青少年育成チャリティー大会
『川崎炎上シリーズ〜カルッツの乱〜』
日時:2018年6月23日(土)
開始:18:00
会場:神奈川県川崎市・カルッツかわさき
▼開幕!カルッツかわさきサミット㈵〜〜日印プロレス同盟vs名古屋〜 タッグマッチ 20分1本勝負
渡辺宏志/バリヤンアッキ(インド)
vs
ノリ・ダ・ファンキーシビレサス/伊東優作(DEP)
▼がんばれ!川崎ヒーローズ!子供たちに夢と希望を! 6人タッグマッチ 20分1本勝負
プリンス・カワサキ/イナダマン/高梨将弘(DDT)
vs
PSYCHO(フリー)/CHANGO(フリー)/石田慎也(スポルティーバ)
▼我闘雲舞提供試合 タッグマッチ 20分1本勝負
さくらえみ/紺乃美鶴
vs
里歩/駿河メイ
▼カルッツかわさきサミット㈼〜世界が震える性戦〜 6人タッグマッチ 30分1本勝負
藤田峰雄(チンコプロレス)/飯塚優/井土徹也
vs
ニック(シンガポール)/グレッグホー(シンガポール)/レッド・イーグル(ポルトガル)
▼カルッツかわさきサミット㈽〜ド根性的国際交流の巻〜 8人タッグマッチ 30分1本勝負
ガッツ石島(GOING-UP)/マスクドミステリー(GOING-UP)/大谷譲二(GOING-UP)/室田渓人(GOING-UP)
vs
近藤“ド根性”洋史/ジューケン(イギリス)/ジェフマン(香港)/ケヴィンマン(香港)
▼HEAT-UPユニバーサルタッグ選手権試合 60分1本勝負
【王者組】新井健一郎(DRAGON GATE)/ヒデ久保田(フリー)
vs
【挑戦者組】田村和宏/藤波辰爾(ドラディション)
▼HEAT-UPユニバーサル選手権試合 60分1本勝負
【王者】兼平大介
vs
【挑戦者】阿部史典(BASARA)