これが世界トップクラスだ!堀口恭司が圧巻のKOでバンタム級トーナメント1回戦突破
格闘技イベントはメインイベントがすべてと言っても過言ではない。メインで「もの凄いものを見たな!」と思わせたら、観客は気持ちよく家路につける。逆に、メインでグダグダの試合を見せられると、それまでが好勝負の連続でも「うーん…」と何かスッキリしない思いを抱えて会場を後にすることになる。
12月29日、さいたまスーパーアリーナで開催された「RIZIN」は好勝負の連続だった。杉山しずかとの筋肉美女対決を制した『ニューヒロイン』渡辺華奈、才賀紀左衛門を豪快にぶっ倒して大応援団の歓声を浴びた『アウトサイダー朝倉兄弟の弟』朝倉海、バンタム級トーナメントでは大逆転の一本勝ちを収めた大塚隆史、的確な一撃KOを決めた石渡伸太郎、野性味あふれるヒザ一発で大流血TKO勝ちを収めたマネル・ケイプ。どれも素晴らしい試合だった。
だが、せっかくのイベントに水を差したのが神取忍対ギャビ・ガルシアである。試合前日の計量ではギャビが前代未聞の12.7キロオーバー。その後、主催者側からアナウンスはなく、大会開始1時間前にようやく「試合中止」が発表された。
その後の対応も首をひねるばかり。オープニングから会場内に何の説明もなく、第4試合の後、唐突に「神取対ギャビ」の煽りVTRを流した後、神取忍、高田統括本部長、ギャビ・ガルシアがリングに上がり、試合中止の経緯の説明と、ギャビからの謝罪がおこなわれた。
なぜ中止となる試合の煽りVTRをわざわざ流し、高田統括本部長の長い長い経緯の説明と、ギャビの涙ぐみながら正座しての謝罪(こんな姿を見たいと思う観客はいないと思う)をさせたのか。この長い長い中断により、第一試合からの流れは分断されて場内の空気は冷めきった。試合がおこなわれるものと思って、わざわざさいたままで取材に来たプロレス担当記者は「帰ります」と会場を去っていった。
こうしたモヤモヤをすべて吹っ飛ばしたのが、メインの堀口恭司だった。独特の広いスタンスから、鋭い右ローを打ち込むと、思い切り良く飛び込んで右ストレート。出入りの尋常ではないスピードに「どうしていいか分からなくなった」と対戦相手のオリベイラ。
堀口の攻撃は止まらない。右ハイキックから右ストレートでオリベイラを吹っ飛ばすと、フィニッシュは右ストレートからの左フック。大の字になって倒れたオリベイラを見て、すぐさまレフェリーが割って入った。川尻達也をKOしたオリベイラに、ほぼ何もさせない圧巻のKO劇だった。
堀口は「メインの仕事、出来ましたかね? (大歓声を聞き)ありがとうございます! 31日、もっと盛り上げるんで見ててください!」
その後、リング上にはバンタム級トーナメント1回戦を勝ち抜いた石渡、大塚、ケイプが登場。それぞれ意気込みを語ったが「これはオレのトーナメントだ」とケイプが宣言すると、堀口はすかさず「いやいや、俺のトーナメントでしょう! 何言ってんだい!」と突っ込み、意気込みを問われると「また?(笑)31日、もっと盛り上げるんで待ってまーす!」
KOから明るく笑い飛ばすマイクまで、堀口劇場で締めたこの大会。31日は、バンタム級トーナメントの準決勝、決勝以外にも、那須川天心出場のキックボクシングトーナメント、RENA出場の女子トーナメント、さらに五味隆典vs矢地祐介、ミルコ・クロコップvs高阪剛、真珠・野沢オークライヤーvsチェルシー・ラグラースがラインナップされている。大みそか決戦にぜひ注目を。
(スポーツライター茂田浩司)