ラウェイ初参戦の蓮實光はTKO負けも心は折れず!「栃木の殴り屋」は決意を新たに復活を誓う!

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 “地上で最も過激な格闘技”と呼ばれる、ミャンマーの国技「ラウェイ」。
 パンチは拳にバンテージを巻いたのみで殴り合う。ヒジ、ヒザはもちろん、頭突きも使うことが出来、さらに意図的でない場合はローブローも許される。この危険なルールが、地上で最も過激と呼ばれる所以だ。
 ラウェイは、ミャンマーの国王を護衛するための武術がもととなっている。身を挺して国王を守る格闘技が危険なのは、当然のことなのかも知れない。
 ここに、1人の総合格闘家が名乗りを上げた。

 蓮實 光。
 2013年よりパンクラスに参戦、パンチで一歩も退かないファイトスタイルで「栃木の殴り屋」の異名をとる。
 2015年にはパンクラスで、土肥潤、ヤマモト・ショーへイ、田村一聖といった一癖ある強豪と闘いを繰り広げてきた。しかし、節目の30歳を迎えた昨年は2戦2敗。さらに、両目網膜剥離という大ケガを負い、引退を考えるまでに追い込まれた。そんなとき、蓮實の脳裡にこの危険な格闘技のことが浮かんだ。

「このままじゃダメだ。新しい挑戦をしよう。そこから何かを変えたい。そして摑みたい」
 
 そう決心した蓮實は、自らラウェイ事務所に電話をかけ、参戦を訴えた。

 こうして決まった対戦相手は、「ミャンマーラウェイ・トラディショナル」と言われるター・テ・タプインだ。タプインは、昨年10月から始まったラウェイ日本大会に連続参戦。今年2月の第2回大会では1ラウンドでKO勝利を挙げている。
 殴り屋にとっては願ってもない相手だ。技術ではかなわないだろう。でも、自分がどこまで出来るのか、自分にとって格闘技とは何なのかーーそれは、自らの身体で痛みを受けなければ分からない。蓮實は全身に闘志をみなぎらせ、リングに立った。

 1R。ゴングが鳴るやいなや、飛び出す蓮實。いきなりパンチでラッシュし、ヒザを当てて投げる。ラウェイではグラウンドでの寝技はないため、ブレイクとなる。タプインは鋭い左ハイキック。蓮實もハイキックを返し、組んで投げ、削っていく。タプインは前蹴り、そして左ハイ!
蓮實は下がらず、激しい打ち合いとなる。蓮實がバックキック。このまま蓮實の健闘で終わるかと思った残り45秒、タプインのパンチで蓮實がダウン! 蓮實は立ち上がり、再開。組んで投げる作戦でゴング。
コーナーに戻った蓮實の鼻の横が薄く切れ、出血している。

 2R。タプインは、前蹴りで蓮實を前に出させない。そしてものすごい圧力のパンチを浴びせ、蓮實から2回目のダウンを奪う。
ここで、蓮實陣営はタイムを取る。ラウェイでは、途中でタイムをかけ、2分間のインターバルを取ることが出来る。しかし、その代わり、ダウン1回としてカウントされるルールだ。

 インターバルが終わり、蓮實が再び向かっていく。ラッシュ! しかし、タプインはパンチで再びダウンを奪う。蓮實は立ち上がるが、あとがない。ラウェイでは、1試合を通して4回のダウンでTKO負けとなってしまうのだ。
 しかし、やるしかない。蓮實は前に出るが、タプインのパンチでダウン! 蓮實の初挑戦は、TKO負けに終わった。
 思わず溢れそうになる涙をこらえる蓮實。その胸に、未来の道は見えたのだろうか…。

 試合後の蓮實は、意外にも明るい表情だった。
「感想ですか? いやー、痛かったですねえ。でも、自分は嫌いじゃないなと思いました」と笑った。

 試合については、
「作戦はありましたけど、打ち合って負けたので納得はしています。もちろん悔しいですよ。負けたままでは終われない。ラウェイでリベンジしてやる、という気持ちです。足りないところは…うーん、全部ですね。技術に関しては、参戦が今回初めてなので及ばないのは仕方ないと思いますけど、相手ははるかに、うわてでした。気合いと根性でいくしかないと思っていましたけど、想像以上でしたね。でも、全部出し尽くして負けたわけじゃない。今回は相手が強過ぎたということだと思います」と話す。

 改めて参戦のきっかけを訊くと、
「これまで総合格闘技で20戦してきて、年齢も30歳。もうベテランの域に入りますよね。もっと出来ていていいいはずなのに、結果がついて来ていない。しかも、網膜剥離というケガもあって、引退という文字が頭をよぎったこともありました。
でも、僕は諦めきれませんでした。まだやれるんじゃないか、という気持ちがどこかにあって。だから、自分への挑戦として、このラウェイという世界に飛び込んでみようと思ったんです」と言う。

 蓮實は、進退を考える瀬戸際に立ったからこそ、総合より厳しく危険なルールのラウェイを経験することで、自分の気持ちを確かめたかったのだ。

 また、蓮實は、3年前にパラエストラ栃木を設立し、代表になっている。ジム関係者や大応援団のためにも、何かを変えなくてはならないと強く思った。それには、ラウェイ参戦という荒療治が必要だったのだ。
 「今日も、平日なのに、こんなにたくさんの人が応援に来てくれて……本当に感謝しています。いつも皆さんに助けてもらって、1人じゃないんだなと思っています。ほんとに、こんなところで辞めていられない。負けたままでは終われない。ダウンしているので、少し休まなきゃいけないですけど、次のラウェイでリベンジしてやります! 6月(※16日)にはTDCホールで殴り合いますよ!」

 蓮實の左目の下は大きく腫れていたが、骨は折れていない。そして、蓮實の心も折れてはいなかった。
「格闘技は結果が全てです。今回、勝てていれば、“復活!”っていう感じで、もっと堂々と言えたんですけど。でも、今回、ラウェイに参戦させていただいて本当に良かったです。いい経験になりましたし、今後のパンクラス復帰も含め、自分の格闘技に対する気持ちを確認できた気がします」

 「栃木の殴り屋」が、ラウェイで得たものが何なのかは、まだわからない。しかし、ラウェイは、蓮實の中の何かを確実に変えた。今後、それを見せてくれることを期待し、復帰を待ちたい。

(写真・文/佐佐木 澪)

『ラウェイ イン ジャパン3〜GRIT〜』
日時:2017年4月18日(火)
開始:18:30
会場:東京・後楽園ホール

▼第1試合 60kg契約 3分4R
○サ・ライ・チャン・メェイ・コー
3R 2分09秒、TKO
●BAKI(SHIROI DREAM BOX)

▼第2試合 60kg契約 3分4R
○ チャー・バーヘイン
2R 0分45秒、TKO(棄権)
● コディー・モベリー(ムエタイ/アメリカ)

▼第3試合 80kg契約 3分5ラウンド
○ソー・ンガ・マン
1R 2分13秒、TKO(ドクターストップ)
●久保輝彦(空手/禅道会)

▼第4試合 56kg契約 3分5ラウンド
△ティン・タイ
5R終了、ドロー(時間切れ)
△浜本“キャット”雄大(キックボクシング/クロスポイント吉祥寺)

▼第5試合 69kg契約 3分5R
△ピャン・トゥエ
5R終了、ドロー(時間切れ)
△ アラナ(空手/FSA拳真館USA支部)

▼第6試合 セミファイナル 3分5R
○ター・テ・タプイン
2R 1分18秒、TKO(4ダウン)
● 蓮實 光(MMA/パラエストラ栃木)

▼第7試合 メインイベント 80kg契約 3分5R
△ デーブ・レダック
5R終了、ドロー(時間切れ)
△アデム・フェニックスジム

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