【インタビュー】ライト級キング・オブ・パンクラスに挑む久米鷹介「格闘技のない生活なんて考えられない」
8月15日夜、名古屋市東区のALIVEにて、ライト級キング・オブ・パンクラス タイトルマッチを控えた久米鷹介に話を聞いた。
久米は2011年よりパンクラスに参戦。2012年からはROAD FCで7戦し、4勝3敗の成績を残す。昨年からパンクラスに復帰し、奥野“轟天”泰舗、石川英司を判定で破っている。
この日の久米は、指導と、プロ選手を交えてのスパーリング、補強、そしてミット打ちと休みなく動き、まさに格闘技漬けだった。ミット打ちではALIVE・鈴木陽一代表に希望を出し、話し合いながら取り組んでいた。1つ1つ確認し、考えながらの練習が印象的だった。
久米は「いい感じに仕上がってきています。ミット打ちは、どんどん打ち込むときもありますし、こういう風にやりたいということお願いして、話しながらやるときもあります。どちらにしても、テーマを決めてやっていますね。社長にはいつも協力していただいて、本当にありがたいです」と話す。その時間の中で、引っかかることや疑問に思うことを残さず、頭でも身体でも納得して終えているようだ。
久米といえば、見事に鍛え上げた身体が印象的だが、一方メンタル面はどうトレーニングしているのだろうか。調印式のときには「これまでチャンスを逃がしてきた」と話していた。ここにはメンタル面も関係があったのだろうか。
「そうですね。そういう部分が小さくはなかったと思います」
と久米は語り、その克服法について続けた。
「ポジティブになるように心がけています。これまで、試合の最中にもネガティブになってしまうことがありました。でも今回は、自分を信じてポジティブに闘いたいです。自分を信じて出し切ることですね。試合で、もっと思い切って仕掛けていくことを考えています」
と語る。具体的には、どのようなことを実践しているのだろうか。
「そうですね、自分で目標や日課を作ってやり切るということを続けています。例えば(日沖)発さんにアドバイスをもらったとして、それを書き出したり、人に話したり。インプットするだけでなく、アウトプットすることも意識していますね。発さんとメールでやり取りさせていただいたりもします。
これをやることで、特に、試合が決まって、自分が伸びてきたと感じていますね。僕は今まで1人で閉じこもって考え込んでしまう部分があったんですけど、人に話すと頭の整理ができるので、とても役立っています。
あと、詰め将棋をやったりもするんですけど、途中でやめないこと。決めたことをやり通すのを大切にしています。コツコツやっていって、やるべきことを明確にする、テーマを作ってそれをやり切り、反省する。準備して、行動して、反省して、次に進む。そういうことが、これまでの自分には足りていなかったです」
ヨガなどをやって集中力を高める選手もいるが、久米の場合はもっと地道に、城郭の石を1つ1つ積み上げるような手堅い練習だった。しかし、石を1つ1つ積み上げなければ、決して城は出来ない。小さな成功体験という石を積み重ねることで、久米は大きな城を造り上げようとしているのだ。
では、逆に肉体面ではどうなのだろうか。特にタイトルマッチは5分5ラウンドという苛酷な試合。選手にとってはスタミナ面の調整も非常に重要になってくる。
「そうですね、5分5ラウンドを想定したメニューにしています。たとえば、山を走ったり。クロスカントリーのコースを走ります。これはスタミナもつきますし、足腰の強化にもなります。スタミナに特化してトレーニングですけど、もちろん実戦ありきで、フィジカル面のベースを上げるための練習です。スパーリングだけでは上げられない部分を上げる感じですね。あと、早めに体重を落としてコンディションを整える意味もあります」
と話す久米。試合前に一気に体重を落とすのではなく、徐々に落としていく。それによって体力のロスをなくし、より万全に地階状態で試合を迎えようと考えているのだろう。
そこまで思う「格闘技」。そもそも、久米が総合格闘技をやろうとしたきっかけは何だったのだろうか。
「現在の場所に移る前のALIVEが、大学へ通う通り道にあったんです(笑)。僕は高校時代、柔道をやっていたんですけど、そのころPRIDEとか流行っていて、格闘技に興味があったんですね。それで、軽い気持ちで入会しました。最初はたまにしか練習に行かなかったんですけど、だんだん試合に出るようになったり、発さんや杉江(“アマゾン”大輔)さんを近くで見ていて引っ張っていただきました」
最初は軽い気持ちだったのに、プロ格闘家になってしまったという久米。そんな久米にとって、格闘技とはどんな存在なのだろう。
「格闘技は、本当にやって良かったと思います。今は格闘技のない生活なんて考えられないですし、考えたこともないです。それから、格闘技を通じて築けた人間関係に感謝しています。僕の人生にとってものすごく大きいですし、素晴らしい人たちに出会えて本当に良かったです」
そこで決まったタイトルマッチ。久米はどんな勝ち方を思い描いているのだろうか。
「一番は、どんな展開になっても、意地でも勝ちたいです。判定にしても1本勝ちにしても、まずはとにかく勝つこと。練習したことをしっかりぶつけること、全て出し切れば、勝てないことはないと思っています。それから、自分を応援してくださる人やサポートしてくださっている人にベルトを巻いた姿を見せたいです。ドロドロでもいいので、絶対につかみ取りたいです」
試合は9月11日、ディファ有明で行なわれる(「PANCRASE 280」)。あの、シルバーに輝くベルトを目指してケージに立つ久米は、必ず一皮むけているはず。「やり切る」——決して諦めずに、最後の最後まで王者に食らいついていくことだろう。徳留か、久米か。絶対に見逃せない1戦だ。
(写文/佐佐木 澪)