RIZIN 12.31さいたまスーパーアリーナ大会 ヒョードルvs.シング サワーvs.自演乙/「朝日」となったのは個々の選手ではなく、RIZINという大晦日の大会そのものだった

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大晦日のさいたまスーパーアリーナ、RIZIN決戦。同大会を欠場したジェロム・レ・バンナが同時刻、両国国技館でおこなわれていたIGFの大会に出現するという、まさかの事態もあったが、29日に開催された大会より観客動員は多く、観客は好意的な目で復活した大晦日の祭典を楽しんでいた。

29日には会場で流されたPRIDEの大会テーマ曲や、フジテレビが中継時に使用していた曲はもう流れなかったが、新しい打楽器のインパクトが残るRIZINテーマ曲がオープニングで流れ、選手入場時にはLEDの埋め込まれたリングの5本ロープが赤と白に、あるいは青と白に光りだし、あ然とさせられた。光るリングロープなんて初めて見た。
2015-12-29RIZIN_オープニング

 

この日、「朝日」となるのは誰か。予想を超えるほどの多くの選手が、光を放ったが、それによりRIZINという大会自体が朝日となった気がする。

2015-12-31RIZIN_RENAvsイリアーナ第1試合は女子MMA戦(5分3R、踏みつけ・サッカーボールキック有効)。拳を骨折していたRENAはほとんどパンチを打てなかったが、1RからSB戦士として得意な首投げをイリアーナ・ヴァレンティーノに見せる。ヴァレンティーノの伸びのある打撃も素晴らしかったが、RENAは2Rにも首投げ、そして首相撲の展開から飛びつき腕十字を決め、見事にオープニングマッチを飾った。こんな派手なフィニッシュは、なかなか狙っていてもできるものではない。しょっぱなからRENAは素晴らしかった。この試合を第1試合にしたことは大当たりだった。

第2試合は100キロ級トーナメント・準決勝第1試合。キング・モーがテオドラス・オークストリスにジャッジ5-0で判定勝ち。オークストリスは2日前の試合を見る限り、もう少し勝機があるかと思われたが、モーに封じ込められた。

第3試合は同第2試合。ワジム・ネムコフは1R終了後、疲労困ぱいで倒れ込んで動けず、戦意喪失でイリー・プロハースカにTKO負けを喫した。

第6試合はK-1ルール。武尊は2R、ボディブロー連打から右→左→右のストレート連打でヤン・ミンをふっ飛ばし、豪快にKO。ヤン・ミンも前に前に出てアグレッシブに攻める、いい選手だったが、現K-1を象徴する武尊の餌食になってしまった。

第7試合の女子の無差別級MMA戦。ギャビ・ガルシアは序盤、レイディー・タパの左フックをまともに浴び、足元をふらつかせ腰を落としたが、バチバチの殴り合いの末、ガルシアが右ストレート。そのあと右腕をブンと右に水平に振り抜くと、タパの左顔面にもろにヒットした。すかさずガルシアはハーフマウントからパウンド連打。レフェリーのビッグ・ジョン・マッカーシーは試合をストップさせ、TKOで決着がついた。両者とも緊張していたのだろう、習得してきたはずのボクシング技術はほとんど出せていなかったが、迫力だけは超ド級だった。

第8試合はSB(シュートボクシング)ルール(3分3R)。曙太郎とボブ・サップの12年ぶりの再戦。1R1分台、サップの右フックで曙の右耳の後ろが切れ、いきなり出血。ドクターチェックが2度あり、止血を試みたが、試合が始まると噴き出す血は止まらない。サップは相手をコーナーに追い詰め、右腕でオープンブロウ気味に曙の左後頭部へパンチを連打。シーザー武志レフェリーはサップの後頭部への攻撃に対しイエローカードを出した。2R に入っても曙の出血は止まらず、途中で試合は終了。3者の採点が20-18で、サップが勝利した。しかし曙側のセコンドは試合後、イエローカードの後もサップが曙への後頭部へのパンチをやめなかった事を指摘し、大会本部に対し、勝敗に対する審議を要求。SB審判団と共に試合は再検証されることになり、後日、ジャッジは覆る可能性が出て来た。

2015-12-29RIZIN_バルトvs.アーツ第9試合はMMA特別ルール(3分3R、延長1R)。バルトはMMAデビュー戦。相手となるはずだったジェロム・レ・バンナの代役はピーター・アーツだ。1R、いきなりアーツは組まれて倒され、コーナー下でパウンドの連打連打連打。身動きできないアーツはタップ寸前だったが、レフェリーがストップをかけ、リング中央に2人を戻して再開させたので、アーツは九死に一生を得る。そのあとはネックロックのようにして体重をかけてアーツの首を絞めるバルト。1R3分のゴングにアーツは救われた。2Rには同体で倒れたアーツがなんと上になり、バックを取ってチョークの体勢。観客は大歓声だ。さらにアーツは下から腕十字も狙うなど、まさかまさかの攻防を展開。ところが3R、バルトはアーツを怖がらず突進。組みつくとすぐ足をかけ、倒しに行った。上になられているだけで、75.8キロも体重差があるアーツはきつい。結果、判定3-0でバルトの勝利だったが、アーツの健闘が光った一戦だった。日本でキックボクサーとしては引退しているアーツが、意地で輝いた今回の対決。バルトは重量のある相撲出身、柔道経験者として、やるべきことはやっていた。今後も総合を続けるようなので、どう変化していくのか注目に値する逸材だ。

第10試合はMMAルール、アンディ・サワー対長島☆自演乙☆雄一郎。サワーはMMAデビュー戦。猪木-アリ状態で、アリ状態になったサワーに対し、自演乙は踏みつけを狙ってジャンプ。ところがサワーは両足で、ジャンプした自演乙を下から蹴り飛ばした。それでもめげずに自演乙はヒールホールド狙いに。ところがサワーはこれを抜け出し、パウンド攻勢、さらに両者グラウンド状態から右のヒザ蹴りを自演乙の顔面に2発。これがまともに入り、自演乙は大ダメージを受けた。自演乙はこの状態でのヒザ蹴りは認められていないと思い込んでいたそうだ。そしてサワーは踏みつけ。スタンドになっても自演乙は左ストレートをまともに浴び、ボディブローの連打を食らうと背後に倒れた。本人としては猪木-アリ状態のなり、グラウンドに誘うつもりだったそうだが、これはダウンととられても仕方ない展開だった。レフェリーはこれを見て試合をストップ。長島は納得して結果を受け入れ、リングを降りた。

第11試合はMMA戦、クロン・グレイシー対山本アーセン。クロンはこれがMMA2戦目。アーセンは初陣。序盤のスタンドの攻防は、クロンもアーセンも一発で沈みかねないようなパンチの打ち合いになり、ここでアーセンが踏み込んでパンチに執着し、一発いいパンチが入ると状況は一変する可能性もあった。でも2分経過直前、クロンはアーセンをグラウンドに引き込み、相手の右足と左腕を抱え込んで、そこから腕十字に。決まったかと思われたが、そこからアーセンは体を巧みに動かして脱出。会場はうなるような大歓声に包まれた。2分30 秒経過直前、クロンはサイドポジションからハーフマウントを狙うが、その瞬間、アーセンが下から反転。ヒクソンだったらこういうミスはしないだろうが、下になったクロンはすかさずクローズガードでアーセンの動きを止めた。クロンは下から三角絞めを狙うが、アーセンは離れてスタンドへ。この時点で試合は3分8秒が経過していた。クロンはテイクダウンを取り、今度はサイドポジションからミスなくスムーズにマウントポジションへ。この時点で3分48秒経過。一呼吸おいてアーセンは反転し、マウントからの脱出を図るが、密着するクロンは下から再び腕十字を狙う体勢へ。ここからアーセンは右ヒザでクロンの左顔面を一撃。一度は下からからみついたクロンの足は外れたものの、すぐにクロンは三角絞めの体勢に入る。アーセンはこの体勢で相手を持ち上げ、クロンの肩から落としマットに叩きつけたが、これで万事休す。逆にクロンの三角絞めが深々と入る結果になってしまい、アーセンはタップした。ヒクソンは柔らかい詰め将棋で相手を追い込むが、クロンは硬い詰め将棋のように見える。まだクロンには伸びしろがある。アーセンはもちろん、このままMMAだけに専念したら大変な選手になりそうだが、東京五輪のレスリング代表を目指すので、MMAだけというわけにはいかない。それにしてもMMAファンには動向から目が離せない選手になった。

第12試合は3年ぶりに復帰するエメリヤーエンコ・ヒョ―ドル対シング・心(ハート)・ジャディヴ。まずリングに上がった馳浩・文部科学大臣が「ヒョ―ドルの復活を待っていました。総合格闘技を通じてロシアと日本の交流に、そしてスポーツ振興に大きな貢献をしていただいたヒョードルに対して、文部科学省を代表してチャンピオンベルトを贈呈します」と挨拶。黄金に輝くベルトを手渡した。試合は、ヒョードルが開始ほどなくしてテイクダウン。上になってからのヒョードルのバランスの良さは以前と全く変わっておらず、2分25秒経過時にはマウントを取り、少ししてパウンド連打。結局ジャディヴに何もさせないまま、ヒョードルは完勝した。

2015-12-29RIZIN_モーvsイリー第13試合・メインイベントは100キロ級トーナメント・決勝戦。イリー・プロハースカはガードポジションを取りながら善戦。ところがスタンドに戻って前に出たとたん、キング・モーの右フックを浴び、昏倒。モーが1RでKO勝ちした。宮本武蔵に傾倒しているというイリーは2日前、石井彗を圧倒した選手だったが、準決勝の激闘が響いたかもしれない。

なおバンナに対してだが、RIZIN側いわく当夜のリアルファイト契約は済んでいたそうで、訴訟を起こすとのこと。

RIZIN次回大会は4月17日、名古屋の日本ガイシホールでおこなわれる。

安西伸一(フリーライター)

RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2015さいたま3DAYS
IZA(いさ)の舞
日時:2015年12月31日(木)
開始:15:00
会場:さいたまスーパーアリーナ
観衆:18365人

第1試合 スペシャルワンマッチ 女子MMAルール -51kg
○RENA
2R 3分31秒 一本(アームバー)
●イリアーナ・ヴァレンティーノ

第2試合 トーナメント準決勝 トーナメントルール -100kg
○キング・モー
判定5-0
●テオドラス・オークストリス

第3試合 トーナメント準決勝 トーナメントルール -100kg
●ワジム・ネムコフ
1R終了時 TKO(※戦意喪失)
○イリー・プロハースカ

第4試合 スペシャルワンマッチMMAルール※肘あり -83kg
●長谷川賢
2R 1分54秒 一本(リアネイキッドチョーク)
○ブレナン・ワード

第5試合 スペシャルワンマッチMMAルール -61.3kg
○キム・スーチョル
判定3-0
●マイケ・リニャーレス

第6試合 スペシャルワンマッチ K-1ルール -57kg
○武尊
2R 3分00秒 KO(右ストレート)
●ヤン・ミン

第7試合 スペシャルワンマッチ 女子MMAルール
○ギャビ・ガルシア
1R 2分36秒 TKO(レフェリーストップ)
●レイディー・タパ

第8試合 スペシャルワンマッチ Shoot Boxingルール
●曙太郎
2R負傷判定0-3 ※三者とも20-18
○ボブ・サップ

第9試合 スペシャルワンマッチ MMA特別ルール
●ピーター・アーツ
判定0-3
○バルト(把瑠都)

第10試合 スペシャルワンマッチ MMAルール -71kg
○アンディ・サワー
1R 5分29秒 KO(左ボディブロー)
●長島☆自演乙☆雄一郎

第11試合 スペシャルワンマッチ MMAルール -66kg
○クロン・グレイシー
1R 4分57秒 一本(三角絞め)
●山本アーセン

第12試合 スペシャルワンマッチ MMAルール
○エメリヤーエンコ・ヒョードル
1R 3分3秒 TKO(レフェリーストップ)
●シング・心・ジャディブ

第13試合 トーナメント決勝戦 -100kg
○キング・モー
1R 5分09秒 KO(※右フック)
●イリー・プロハースカ

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