「俺もう辞めるなんて言わねえ!絶対に帰って来る!」ガンと闘うフジタ”Jr”ハヤトが高橋ヒロムと“3分”の一騎打ち!

13日、東京都・後楽園ホールにて『みちのくプロレス2025年東京大会第1弾 ~フジタJrハヤトプロデュース大会~』が開催。フジタ”Jr”ハヤトと高橋ヒロムがシングルマッチで対戦した。
フジタJrハヤトは、高校時代にレスリングの全国大会に出場し、みちのくプロレス入団後に山本”KID”徳郁に師事して総合格闘技も習得したハイブリッドな実力派レスラー。新日本プロレスの『SUPER J-CUP』や『BEST OF THE SUPER Jr.』に出場するなど他団体でも活躍しており、東北ローカル団体の選手ながらその知名度は高い。
ハヤトは2017年から膝の靭帯完全断裂によりリハビリ生活を続けていたが、その最中でガン(脊髄腫瘍髄内腫瘍上衣腫)が発見されさらなる闘病生活を強いられることになった。それでもハヤトは折れずに「師匠が出来なかったことを俺がちゃんとその想いを背負ってまたリングへ帰って来たいと思います」と復帰を宣言し、一度は2019年6月の後楽園ホール大会での復帰が決まりかけるも抗癌剤治療による体調面の問題から延期に。
しかし、ハヤトは「上から徳さんも見てるしまだやらなきゃいけないことがあるんで、絶対死ねない」と復帰を諦めることなくリハビリを続け、紆余曲折の末に2022年7月1日の後楽園ホール大会で復帰。復帰戦でMUSASHIから東北ジュニアヘビー級王座を奪取し、2023年7月にはLIDET UWF世界王座も戴冠するシングル二冠王に。さらに同年には新日本プロレスのIWGPジュニア王者・高橋ヒロムとのシングルマッチを岩手県・矢巾のみちのくのリングで実現するなど、あっという間にプロレス界の中心人物となっていった。
しかし、ハヤトは2023年12月にガンの再発を告白し再び欠場へ。昨年1月に手術を成功させるも、保持していた2本のベルトは返上。同年末には宇宙大戦争への導入マイクを行うなど快復した姿も見せていたが、選手としての復帰はまだ不透明な状況だ。

この日は、フジタ”Jr”ハヤトプロデュース興行として行われ、ハヤトこだわりの珠玉のカードが目白押しに。
第4試合では、フジタ”Jr”ハヤトvs拳王のトークバトルが実施。若手時代からバチバチ蹴り合うライバル関係であったものの、だからこそ公私ともにほとんど会話をしたことが無いという2人は距離感を測りかねた様子でまごまご。絶妙なギクシャク感から生まれるほのぼのとした空気は場内に笑顔を呼んだ。

メインイベントでは、高橋ヒロム&卍丸vsKen45°&拳剛のタッグマッチが実施。ヒロムは入場時にハヤト&拳王が座る放送席へと向かい、ハヤトとガッチリと握手。拳王にも握手を求めるが、拳王は応じず。

ヒロムが「俺以外みんな顔怖いんですけど!」と怯える中、顔の怖いKen&拳剛がヒロムを袋叩きに。ヒロムが「卍さん!卍さぁ~ん!」と半泣きで助けを呼ぶも、卍丸はさらに怖い顔でヒロムをじっと見つめるのみで助け舟は出さず。
なんとかヒロムが自力で生還すると、卍丸は拳剛にケンカキックからのSTF。カットに来た拳剛をヒロムがSTFで捕らえることで奇跡の競演が実現。卍丸もこれで心を許したか、ヒロムのトラースキック+卍丸のケンカキックの合体攻撃に応じて勝機を引き寄せ、最後はヒロムがKenにヒロムちゃんボンバー、TIME BOMB、TIME BOMB IIと畳み掛けて3カウントを奪った。
試合後、拳剛がヒロムとのタッグで東北ジュニアタッグ挑戦を持ちかけると、ヒロムも快諾してガッチリと握手。観衆が大歓声を贈る中、ヒロムの背後にコスチューム姿のハヤトが現れて場内はさらなる熱気に包まれる。

マイクを取ったハヤトは「本当はこの格好で試合がしたいなあと思ってました。そしてホントに、ホンットにギリギリまで解説しながら見てて……ちょっとどこまで出来るか分かんないけど。色んな意見があるのも分かってます。別に試合をするためにコスチュームを用意したわけじゃないし、俺はいつでもレスラーなんで、いつでも誰かが怪我したら俺が出ればいいやって気持ちでコスチュームを持ってきた。先生に怒られちゃうんで、3分でいいんで俺と殴り合ってくれません?」とヒロムとの一騎打ちを要求。
ヒロムも「色んな意見なんでクソ食らえだ!ハヤトさん、やろうぜ!」と叫び、ゴングが打ち鳴らされる。

試合が始まると2人は手4つで組み合い、ハヤトがロープに押し込んで離れ際に強烈なエルボー。
ヒロムは逆水平チョップで、ハヤトはエルボーバッドで足を止めてバチバチの打ち合いを展開。ハヤトが膝をつく場面が目立つも、ヒロムが「半端な覚悟じゃねぇんだろ?!打ってこい!」と鼓舞すると、ハヤトは雄叫びを上げながら全力のエルボーを猛連打。
最後の最後、ハヤトが渾身のミドルキックをヒロムに叩き込むが、ヒロムは倒れず仁王立ち。逆にハヤトが倒れ込む中で3分経過を告げるゴングが鳴らされた。

試合後、マイクを取ったヒロムは「ハヤトさん、俺さ、貴方とやったシングルマッチが忘れられないんだよ。あの打撃、エルボー、ヘッドバッド、そして重たい重たいキック。最高に気持ちよかったです。でも貴方がもう1度ちゃんとみちのくプロレスのリングで完全復帰するまでは、アンタの蹴りを食らって倒れるわけにはいかねえんだよ!これは俺の意地だ!でも最高に楽しかった。ありがとうございました!もう頑張りすぎてる貴方に言うのも失礼だけど……お互いに頑張りましょうよ。そしてもう1度このリングで闘ってください。約束です」としっかり握手した後にガッチリと抱擁を交わした。
後を受けたハヤトは「僕がこのリングに上がること、俺は試合をしてる側だったら『ふざけんな』って思ってると思います。俺なんかが上がっていいリングじゃないってことも、自分でも分かってます。メインは『もう後輩に譲っていいな』っていう試合ではあったので、色んな思いがありますけど、色んなことが最近プロレス界では、イヤなニュースが流れてきて、余計に俺は『ダメだ、辞めるべきだ』って自分でも、今でも半分思ってます。何が正解か分かりません。しんどくてしんどくて仕方ない。でも試合を見てると悔しい。そして試合をして思った。やっぱ俺はレスラーだって!俺の試合を見る=怪我人を見送ることみたいな風に思ってる奴ら、大丈夫だ。フジタ”Jr”ハヤトはそんなに弱くない。そして俺、もう辞めるなんて言わねえ!必ず戻ってきて、お前を絶対超える!そして解説にいる真っ赤な金髪のカッコいい奴(拳王)!俺とシングルで蹴り合おう!こんなのさ、無理に決まってんじゃん!ホントは俺がここに出たかったよ!そして解説で隣でずっと蹴り合ってた奴がいて、一緒に喋ってるだけ!もうこれは拳王、ヒロムくん、そしてみちのくプロレスの全員、約束だ!俺は絶対に帰って来る!」と力強く叫んだ。
一足先にバックステージに戻ったヒロムは「失礼かなあ、やっぱり。ハヤトさんが今どんな状態か知ってる俺からして、今のハヤトさんと3分間やるだけでも正直ビビっちゃった。怖かった。もしこれでハヤトさんがどうにかなったらどうしようって。なにも責任取れない。でもそれはプロとして失礼だ。だから俺は3分間やりました。でもやっぱり怖かったんですよ。だからハヤトさん、俺に怖さを忘れるくらい、完璧な状態で帰ってきてください。じゃないと俺は本気出せないですよ。俺に勝つって言ったよな?へへ、そんな簡単な話じゃないぞ。完璧な状態でも俺には勝てないだろう。完璧以上、最強になって帰ってきてくれよ。じゃないと俺も思いっきり打てないからさあ。でも最高でした。ハヤトさん、やっぱり俺は貴方とやるの最高に楽しいです」と複雑な心境を吐露しつつハヤトにエール。

一方、ハヤトは「これが俺の大好きなプロレスですね。ホント、ギリギリまで迷った。でなくてもいいと思ったし。……怒られるなあ。ホントになにも決まってなかったからね。マジで。俺が試合するはずだっただろう、じゃない。マジで最後の最後までビビってたし『試合をしちゃいけない』って思ってました。でも、俺が今出来る最大はこれです。でもこのままじゃよくないから。次はもうコスチュームで上がるときは完全に復帰します。でも迷ってるのが正直な気持ちだけど。それがこの病気だなって思います。やってくれる人に失礼なんでね。MUSASHIが言ってましたから。『アイツとやっても「どうせ病気のアイツとやった」ってなっちゃう』って。そのとおりだと思うからね。それほど失礼なことは無いから。もう選手としてそれを言わすのは今日が最後。次に俺が選手としてリングに上がるときにはそんなことは言わせないんで。そうじゃなかったら辞めます。ここからは自分との勝負。病気がどうのこうのなんて分かりきってることなんで。でもリング上で約束して、リング上で言ったことは全部叶ってるので、叶えます。自分に勝つ。もうそれだけ」と胸中を語った。
ハヤトは一度はガンを克服して一気に2本のシングル王座を手にするなどプロレスファンのみならず、ガンに苦しむ人達にも勇気を与えた。ハヤトがまたガンを蹴っ飛ばし、再びリングで輝く姿を見せてくれることを切に願いたい。