「武道・武術が『見て面白い』『やって面白い』になって良い文化になればいいですよね」菊野克紀選手インタビュー！

　MMAをはじめ沖縄拳法空手、システマ、秀徹、イス軸法など幅広く武道・武術の修業を続ける菊野克紀選手、11月23日に格闘道イベント「敬天愛人EXPO」の開催する今の心境をお聞きしました。

――我々格闘技ファンの中ではサンチン立ちからの三日月蹴りがとても印象に残っています
菊野「そうですね、今僕はナイハンチの型をやってるんですけど、その世代の方々には今でもサンチン教えてくださいとか三日月教えてくださいって言われますね（笑）でももう15年ぐらい前ですよね～（しみじみ）」

――驚いたのはコーチング業にも取り組んでらっしゃると。僕の友達にコーチングを職業にしている同級生がいます。自分を分析されて丸裸にされるような感じがして戸惑ってしまいました（笑）
菊野「コーチングにもいろんなやり方とか、流派みたいなものがあって。僕がやったのはアドラー心理学というのをベースにしたコーチングで、その人が自分の人生を自分で決めて進んでいく、歩みをサポートするっていうものでしたね。本音で話せるように、自分で考えて自分で決断していけるように関わる、というのが僕の学んだコーチングでしたね。僕はそれで救われた経験があるんで、うん、なんかいいな～と思って」

――僕はその時もいろいろアドバイスされてるとなんだか強制されてるようにも感じてしまって。
菊野「コンサル的なことを求めている人にはそれがハマるでしょうね。僕のは「自分の本当の思いに気づく手助け」、そして「そこに向かって進む勇気づけ」ですね。徹底的にお話を聞いて本人に気づいてもらうっていうものですね。おっしゃったように人から何か強くいわれると、こうグっと自分を守ってしまうんですよね。役割が違いますね」

――（隙がない防御の姿勢におおっと思いつつ）さて「敬天愛人」はどのようなをコンセプトで運営されていますか。
菊野「はい、まず「親が子どもに見せたい格闘道」っていうテーマを掲げてます。武道・武術・格闘技は人との戦いだから、やっぱりちょっと危険・怖い・ケガ、練習がキツイ、ガラが悪いとか暴力とみなされてしまうっていうこともあると。でも痛い・キツイ・恐いからこそ学べることもあって、その「在り方」が重要だと思っています。皆さん人生の中で戦ってるわけで、やってることは殴ったり蹴ったりですけど、心まで相手を陥れようという精神だとただの暴力になっちゃいますよね。あくまで礼に始まり礼に終わる、相手を尊重する思いがあってこそ美しいもの、素晴らしいものになる。究極のコミュニケーションだと思っています。全力でそういうことを表現したいと思っています。僕らの「在り方」をちゃんと表現しようと」

――今は煽って煽ってから戦う、みたいな形がある種流行ってますもんね。
菊野「例えば「BREAKING DOWN」がすごく盛り上がってますよね。僕も出場しましたし、あれはあれで素晴らしいんですけど、それを求める人がいるわけですから。それとは全く対極の存在ですよね、親が子どもに見せたいな～って、子どもにさせたいな～、かっこいいな～って思ってもらうものじゃないと、未来、100年後も続いていくって思うと子供にね、繋がっていかないといけないので。そういうものにしたいなって。僕自身が武道・武術・格闘技に救われて育てられた人間なんで、その素晴らしさを伝えられたらいいし、良い文化として根付かせたいなって思いますね」

――ご自身の経験からこれは文化として残していきたいと。
菊野「僕はそのおかげで今すごく幸せだし、ちょっとでも共有したいなと。もともと柔道をやってましたけど今すごく柔道人口が減ってるとも聞きますし。キツイとか危ないこともあんまりしないっていう流れもありますけど、そこから学ぶことも大事だよ、怖いところから逃げちゃうと強くなれないよというか。そういうところも伝えたいと思いますね」

――お子さんが生まれてから武道・武術への取り組み方が変わったりしましたか？
菊野「そうですね～、うちの子も空手やってくれてますけど、僕がやらせたいって思っちゃうとまずいかなと思ってて、本人の人生なんで（笑）あくまで自分で決めさせるっていうスタンスでいようと思っています」

――親の気持ちでやらせても本人がイヤだったら身に付かないですもんね。
菊野「他のものより優れてるとか、野球・サッカーより優れてるとかってわけではなくて、これも素晴らしいよ。選択肢のひとつだよってことで（笑）」

――過去開催の動画を拝見すると子供の参加も非常に多いなっていう印象でした。
菊野「鹿児島での大会はとにかく子供たちに見てもらう機会にしたくて5,000人規模の大会になって。武道・武術を体験する板割り体験とか、おやつも食べれるよ、ご飯も食べれるよ、とにかく楽しいよって（笑）自分の出身地である鹿児島で応援して下さる方々にも僕がやってることやりたいことを見てもらおうと。僕が何も分からないので皆さんに助けていただきました。ほんとに大変でしたけど（笑）ルールも僕が作って、お客さんが判定するということにして赤白のボード上げてもらうっていう。一般の方には技術的なことは分からないので「強い」「かっこいい」「面白い」「こっちに勝ってほしい」とか雰囲気でいいですよって」

――判定はお気軽に（笑）
菊野「競技も武術も長く一生懸命やってきて思ったのは、強さっていうのは計れないんですよ。ボクサーが急に柔道では勝てないじゃないですか。柔道の選手がいきなりMMAの試合では勝てないわけですよ。MMAの人もMMAのルールが無かったら素人に敗けるかもしれない。例えばこのコップの水に毒が入ってたら僕もう勝てないじゃないですか。だから細かいことはおいといて、観た人たちがなんとなく自分の気持ちで判断すればいいんじゃないって（笑）」

――X（旧Twitter）を拝見すると浅井星光（ほしみん・浅井流鞭拳空手 @rcollection1）先生、雨宮宏樹（影武流合氣体術 @hirokiamemiya）先生、福地勇人（フルコンタクト空手 @Byakurenyuto）選手などそうそうたる顔ぶれが（汗）
菊野「コロナの功罪といいますか、youtubeが盛んになって石井東吾先生や坂口拓先生がすごく有名になって、その方たちが僕らを引き上げてくれたというか、武術界がにぎやかになりましたね。うちでも4万人登録者がいて、武術ってマニアックなものじゃないですか、それがこんなに目に留まるようになってすごくありがたい話ですよね。それがブームで終わっちゃうとつまんないんで、「見て面白い」が「やって面白い」になって文化になればいいですよね」

――当日は三部構成でどれも内容が違っていて密度が濃いですよね。
菊野「詳細はサイトを見ていただくとして、例えば中国武術なんてマンガ・映画でしか見たこと無いと思うんですけど『それ、見てみたくないですか？』と。発勁ってなんだろう？とか、それが体験できるんですよ、今回。合気道でいえば『あんなので人が動くのかな～』とか、それが体験できるんですよ（笑）他にもナンバ走りとか、それこそ甲冑を付けて何十キロと歩いてたわけですから、昔の人の体の使い方・ケアの仕方ってどんなだったんだろうって。人間の知恵ですよね。戦いが科学技術を引っ張るらしんですよね。なぜなら命とか国の存亡に関わるから、戦いに最先端の知恵が集まると。ミサイルがロケットになったり、レーダーがインターネットになったりとか。昔の知恵の最先端が武術なんですよ。だって命がけですからそこに全ての知恵が集まるんですよね。今は平和になりましたから、それら必要がなくなったからそこに知恵が集中することはなくなったと思うんですけど、昔はそこに全ての知恵が集まってたんですよね、今よりはるかに進んでますからね、体の理解が。だからめちゃんこおもろいですよ」

――では最後に参加を迷ってる方に一歩踏み出せるようなひと言をお願いします！
菊野「今youtubeで活躍されてる先生方を含めいろんな凄くて面白い先生方の知恵や技術を体験できてめちゃくちゃお得でめちゃくちゃ楽しい空間です。あと手合わせっていういわゆる「戦いごっこ」が安全にできる場も用意しますんで。ほんと一日とっても楽しいイベントで、三部構成のスポットでもいいですし、一日通しで参加してもらってもイイですし、ともかく誰でも参加できて楽しめるイベントだと思いますので、気楽に来ていただけたらと思います（笑顔）」

■プロフィール
菊野克紀（きくのかつのり）
1981年10月30日生まれ、鹿児島県出身。170cm、80kg。
武道家として『DEEP』・『DREAM』で活躍後、2014年にアメリカの総合格闘技団体の最高峰『UFC』にも参戦。武道エンターテインメント「巌流島」のエースとして活躍後、「親が子どもに見せたい格闘道」をコンセプトに「敬天愛人」を主催。
2020年からは、プロ格闘技の経験と武術の知恵を凝縮して「誰でも何歳からでも強くなれる」場として「誰ツヨＤＯＪＯｙ」を主宰。