【インタビュー】「闘龍門、再会。vol.2」“世界の究極龍”ウルティモ・ドラゴンインタビュー「同窓会でありながら未来を見据える。何が起こるかわからない。とにかく会場に来てください!」

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 1999年1月31日に衝撃の日本逆上陸を果たした闘龍門は、ウルティモ・ドラゴンがメキシコに開設したプロレス学校である。プロレスラー養成学校、しかも海外という前代未聞のアイデアから生まれた選手たちはメキシコでトレーニングを積み、日本に凱旋する形でキャリアを重ねていった。いまでは各主要団体にウルティモの遺伝子が受け継がれていると言っても過言ではなく、闘龍門がなければ現在のプロレス界はどうなっていただろうかと思うほど、多大な影響を日本マットにもたらしたのである。2004年にはDRAGONGATEが闘龍門から独立したが、19年にウルティモが参戦。そして20年1月31日、逆上陸と同じ日、同じ後楽園ホールで「闘龍門、再会。」という同窓会興行が開催された。今年6月3日には2年4カ月ぶりに第2回大会が実現。そこで、大会を前に“闘龍門校長”ウルティモ・ドラゴンにインタビュー。教え子たちが再び集結する大会に向けての思いを聞いた。(聞き手:新井宏)

――「闘龍門、再会。vol.2」が6月3日(金)東京・後楽園ホールにて開催されます。まずは、20年1・31後楽園ホールでの第1回大会を振り返っていただきたいのですが。
「久しぶりに昔の仲間が集まったわけですけども、ただ、自分とみんなの仲間たちの関係って違うじゃないですか」

――そうですね。ウルティモ選手は教える立場の校長であり、闘龍門で学んだ選手たちはプロレス学校の教え子ですね。
「そうです。なんといっても選手たちが喜んでたんじゃないですかね」

――大会後、選手から感想など聞かれましたか。
「昔を思い出して楽しかったので、また集まれたら是非(やりたい)、という声を聞きました。みんなで集まれたことが、なによりもうれしかったみたいですね」
――こういった大会でもない限り、選手たちが集まる機会はほとんどないでしょうからね。
とはいえ、ただの同窓会としては終わらなかったことが、さすが闘龍門だと思いました。たとえば、闘龍門時代のユニットが復活しただけではなく、当時のDRAGONGATEのユニットが乱入。闘龍門とDRAGONGATEの遭遇という、ありえないことが起こりました。
「そうですね。レジェンドの興行って懐メロ的な感じがあって、昔を思い出して昔のファンの方が来る。もちろん、それはそれでいいと思うんですけど、ただ、業界的に言ったら未来がないというか、我々としてはいつも何かを発信していないといけないと思うんですよね。懐かしさから、さらに新しいものを生み出していかないといけない。それって自分たち、プロデュースしている者の使命だと思うんですよ。クラシカルなファンの人の中では、現在進行形のDRAGONGATEの選手たちが乱入してくるのはどうかというのもあったんですけど、自分の考えとしては違うんです。そこでまた新しいものが生まれれば、それが一番いい形になるんじゃないかと思うんですよね」

――懐かしいと言っても、闘龍門出身の現役の選手たちは現在進行形であり、まだまだ老け込むようなキャリアでもなければ、レジェンドというほどの大ベテランでもない。過去と現在の融合が新しく、大会の新しい形を見たような気がしました。逆上陸したときもまったく新しいプロレス、新しい大会の形を見たのですが、前回もまた違った意味で新しい形があったように思います。
「なるほど。そうですね」

――前回の試合後のコメントで、ウルティモ選手の方から「一年に一度くらいこういう(同窓会的な)大会があってもいいのかも」という発言がありました。ただ、そのあとに新型コロナウイルス禍によって世界が変わってしまいました。社会情勢が通常であれば、昨年も開催される予定だったのでしょうか。
「あのときはとにかく通常の興行をこなしていくのが精いっぱいで、まったくそういうことは考えてなかったです」

――本来の興行をやれるかどうか、というところでしたからね。
「そうなんですよ」

――世界的にみると、日本は制限がありながらも有観客興行が早く復活した方なのですが、ウルティモ選手が拠点としているメキシコはどうでしたか。つい最近、メキシコの大会に出場されましたよね。AAAのトリプレマニア(4月30日、モンテレイでペンタゴンJrに勝利)、元WWEのスーパースターと組む試合もありました(4月28日アグアスカリエンテスでアルベルト・エル・パトロン&カリートとトリオ結成)。
「ええ、出ましたね。いまはもうメキシコの大会は通常通りにやってますね。メキシコ、アメリカとも戻りましたよ。メキシコでは声援もありましたし活気がありました。アメリカやメキシコでプロレスのような興行をやってお客さんを入れた時点で、静かに見てろというのは無理ですよ(笑)」

――確かに無理ですね(笑)。
「楽しみに来てるのでね。やるということは、お客さんの声援で盛り上がるってことですから」

――そうですね。再び日本に戻ってきて闘龍門再会の第2弾が控えているウルティモ選手ですが、開催のいきさつを教えてください。
「選手のみんなからね、そろそろじゃないですかという声が上がっていたんですよ。自分は先生という立場であって主役は選手たちなんですが、みんなの意識が高まってやりたいというのであれば、いいんじゃないのということです。この大会に関しては、あくまでも自分が主導しているものではないんですね」

――DRAGONGATEではK-ness.選手の引退をきっかけに過去のユニット(M2K、ジミーズ)が限定復活する流れがありました。その流れから、第2弾開催が発表されたわけですが。
「なるほど。その辺のことも選手たちが独自にやってることなので、自分は詳しいところはわからないんですけどね」

――選手がウルティモ選手に最終決定の許可をもらいに来たという感じですか。
「ハイ、そんな感じです」

――前回はカードすべて当日発表だったのですが、今回は?
「今回もそうなると思います」

――いまのところ24選手の参戦が発表されています。が、これ以外にも何かサプライズがあるのではないかと期待されます。前回はユニットの復活を明言、引退されていたミラノコレクションA.T.さんの登場もありました。今回は?
「まあ、いろんなことがたぶん起こると思いますよ。実際、自分は何が起こるかわからないです。選手の考えもあるしね。なんとなく自分で予想がつくものもあるんですけど。まあ、とにかく会場に来てくださいということです。カード発表をした方がいいんじゃないかという案もあったんですけど、両国とか東京ドームクラスのビッグマッチなら別ですけど、(海外の)ハウスショー的大会って本来カード発表しないじゃないですか」

――確かにそうです。
「自分のベースってアメリカやメキシコなんでね、出る選手さえわかればそれでいいんじゃないかなって」

――すでに24選手は発表されていますからね。
「そこで何が起こるか楽しんでほしいんですよ。誰と誰がシングルだから見にいこうってもの(大会)ではないでしょ」

――そうですね。パッケージで楽しむ大会だと思います。
「ハイ。闘龍門というのは、ボクの中で極めてシンプルなんですよ。メキシコのルチャリブレがベースで、アメリカのWCWやWWEで学んだことをやってるだけなんです。べつに自分が考えたわけでもなんでもなくて、当然どこかでヒントがあるわけですよ。アメリカやメキシコのお客さんって、エンターテインメントをシンプルに楽しみに来てるじゃないですか。(日本の)団体も、お客さんにそういう道へ導いてあげないとね」

――なるほど。探るわけではないですが、今回は、前回出られなかった選手が出る可能性もありますか。現役だったり、すでにリングを下りた選手であったり。
「それは当日行って見てください。ボクにはわからないですし、何が起こるかわからないです」
――“何が起こるかわからない”、は今大会を見る上でのキーワードになりますね。
「ただひとつだけ自分から言えるのは、ボクは常に未来を見据えてます。同窓会でありながら、未来を見据える。過去ももちろんあるけど、過去よりも自分の中で大切なのは未来なんです。それが唯一、いまのボクからお客さんに言えることです」

――なるほど。ところで、ウルティモ選手は19年7月から参戦。同年9月には最高顧問に就任しました。現在のDRAGONGATEはいかがですか。
「選手は地方大会でも全力でファイトしますしね、会社としての結束力もすごい。リングの搬入、会場設営撤収も含めて、みんな自分らでやってるんですけど、すべてが完璧すぎですね。プロレスの技術に関しては世界中にすごいところありますけど、会社としての結束力、オーガナイズがホントに素晴らしい。自分、海外のいろんなところに行きますけど、世界中どこにも負けないと思いますね」

――世界を知るウルティモ・ドラゴンからみてもそうだと。
「それって、すごいことだと思いますよ」

――日本でも一番ですか。
「ダントツじゃないですか。そこは斎藤了GMが先頭に立ってね、彼が指揮を執って、みんな自分が何をやらないといけないか、わかってる。会場で無駄な動きをしてる子がひとりもいないんですよ」

――指導する必要もないと。
「自分が口出ししたら逆に変になっちゃうんで、いま以上は無理だろうってくらいに完璧です」

――黙って見守っていればいいと。
「そうですね。見守ってるというか、見ていて感心するだけです」

――ご自身の試合はどうですか。
「まずは、(DRAGONGATEに)いることが自分の役割だと思っているんですよ。いることの存在感ですよね。もちろん、自分の中で選手としてこうするのもああするのもおもしろいかなと思うこともあります。だけど、ボクにしかできない役目もあるので、あえて若い人たちと肩並べて何かやろうとか思わないですし、正直、非常に居心地がいいですよね」

――なるほど。ところで、ウルティモ選手は、デビューから35年になりますよね。
「そうです、今年35年。36年目に入りました」

――長期欠場もありましたが、その間もプロデュースをしてきました。この35年間を振り返っていかがでしょう?
「自分の場合。プロレスに入るときからして他人と違ったじゃないですか。普通とは違うプロレスラーとしての道を歩んできて、途中で正直、心が折れそうになることも何回かありました。それでも(信念を)貫いてやってきて、メキシコという国で自分の人生が変わった。そこから自分の夢がかなえられた以上にもっと広がって、アメリカにも行ったし、世界中で闘った。正直、自分が見ていると、次の世代、その次の世代とかに自分のような選手って現れないんじゃないかと思うんですよね。日本で活躍してる子はいます。でも、ホントの世界規模でカバンだけ持って単身出ていく選手ってなかなかいないと思うんです。日本の団体の名前で行くのは別ですけどね。個人の名前だけで(世界で)やっていく子っていないじゃないですか。プロレスって素晴らしい仕事だと思うんですよ。カバンひとつで出かけて契約書もかわさず電話で(交渉する)。いまはスマホとかメールもありますけど、ホントに簡単な口約束だけで行ってイチかバチかですよ。行った先でどんな相手が出てくるかわからないし。そうして世界中を旅して、稼いで。特殊というか特別というか、こんな人生ないなって思いますね。すごく自分は恵まれている。そういうことにもっとトライする人に、日本人で出てきてほしいなって思います。もっともっと冒険した方がいいですよ」

――ウルティモ選手の特殊な経験によって、後進の若い人たちの夢をかなえている部分も大きいですよね。
「よかったかどうかは自分ではわからないですけど、自分が道しるべとして闘龍門を作ったじゃないですか。それによって意外と簡単にできちゃった子もいるわけですよ。自分の場合はやっぱり簡単じゃなかったですよ」

――プロレス学校、しかも海外に作るなど、前例がないことでしたからね。
「そうそう。あの手この手いろんなことを考えてやってきました。自分が経験したから、それって自分のものなんですよ。それを人から教えられたら、たぶんけっこう簡単にできるかもしれない。その辺が自分とは違うのかなってたまに思ったりもしますね。なので、若い子にはもっと貪欲さを持ってほしいと思います」

――35年間やってこられた秘訣ってなんでしょう?
「簡単に言えば自分はラテン気質。いろんなことあまりマジメに考えないですし、日本のレスラーってみんなマジメだから。自分にももちろんポリシーはありますよ。自分のポリシーって、日本のレスラーのポリシーとは違うんです。プロレスラーでいる間はメキシコをベースにして、メキシコのスタイルでルチャリブレというのがボクのポリシー。日本のレスラーは全力で闘って、控室に帰ったらフラフラという人が多い。でも自分はまったく違って、リング上というのはパフォーマンスなんです。その辺のアプローチって違うのかなって。自分は35年間、そういう感じでやってきて、リング上で自分を表現して楽しんできました。自分のプロレスラーとしてのポリシーは守ってね。日本のレスラーって、やってることにはアタマが下がるし、すごいなって思います。だけど、自分の中のプロレスの信念スタイルとは違うなって思います」

――なるほど。では最後に、6・3後楽園はどんな大会にしたいですか。
「まず、お客さんが第一です。お客さんがハッピーな気持ちになって、コロナ禍がちょうど終わりかけてるのかな、終わるのかな、わかんないけど、このような状況でプロレスを見に来てくれる。ボクとしては当然、ハッピーな気持ちでお客さんに帰ってもらいたい。おもしろかったね、また行きたいねと言ってもらえるようにね。あと、選手たち。選手たちが昔の仲間と会えて、また来年もやろうよと、そう思ってもらえるように。選手もお客さんも団体関係者も、自分自身も、ハッピーな気持ちになれればいいと思います。みんなが幸せになれるような空間にしたいですよね。そういう興行にしたいし、それがDRAGONGATEの、話が大きいかもしれないけど日本のプロレス界の発展につながるのだったらうれしいかなと思いますね」

――DRAGONGATEはもちろん、いろんな団体から集まってきますから、そこから波及していけばいいなと思いますね。
「そうですね、そう思います」

 クレイジーMAX、M2K、イタリアンコネクションの復活に懐かしさをおぼえ、このユニットが団結し進行形のDRAGONGATEに対抗するサプライズが発生したのが前回の大会だった。第2弾となる今大会もまた、懐かしさと新しさが同居することになるのではないか。ウルティモ・ドラゴンが作り出した世界観は現在にも受け継がれており、だからこそ両団体のファンはもちろん、どちらか一方の団体しか知らないとしても楽しめること間違いなし。ウルティモが言うように、「何が起こるかわからない。とにかく会場に来てください」なのである。

『闘龍門、再会。vol.2』
日程:2022年6月3日(金)
開始:18:30
会場:東京・後楽園ホール

【出場選手】
ウルティモ・ドラゴン/ドン・フジイ/ドラゴン・キッド/望月成晃/神田裕之/新井健一郎/このまま市川/堀口元気/望月ススム/斎藤了/セカンド土井/しゃちほこマシーン/SUWAシート/大鷲透/近藤修司/“brother’’YASSHI/高木”ジェット”省吾/松山勘十郎/田島久丸/新井小一郎/新井注一郎/高梨将弘/CHANGO/ミラニートコレクションa.t./大原はじめ

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