“ミスター聾プロレス”友龍が2・26新木場でのHERO12周年記念大会に向け打倒ワイルド・ベアーを宣言
「バリアフリープロレスHERO」(主催=NPO法人バリアフリー・エンターテイメント・サポート、協力=GPSプロモーション株式会社)が2月26日、東京・新木場1stRINGで「HERO.30~再起動 旗揚げ12周年記念大会」を開催する。同団体は新型コロナウイルス感染拡大のため、昨年8月13日、東京・新宿FACEでの「HERO29」をもって一時活動を休止しており、半年ぶりの再開となる。
同団体は新日本プロレス黎明期に練習生として在籍しながらも、耳にハンデがあるため、デビューがかなわなかったヤミキさん(故人)が設立し、聾レスラーが闘う場として、10年2月20日に新木場で旗揚げした。新日本でデビューできなかったヤミキさんは、「HERO」で念願のプロレスラーになる夢を果たしたのだ。
当初、同団体は“聴覚障害者と健常者の架け橋”になるようなプロレスイベントを標榜した。だが、16年春にヤミキさんが急逝したことを契機に、「バリアフリープロレスHERO」に名を改めた。これに伴い、聴覚障害者にかぎらず、視覚障害者や車イスでの生活を余儀なくされている方を始め、一般のプロレスファン、プロレスを見たことがない方など、幅広く誰もが楽しめるイベント運営に転換。
聴覚障害者のため、受付やリング4方向に手話通訳を配置し、リング上でのあいさつやマイクアピールなどを手話で説明。会場内には大型スクリーンを設置し、字幕をつけ、映像での演出に力を入れ、視覚障害者向けとして、無料でラジオを貸与し、実況・解説を流している。車イスの方へは、バリアフリーに対応した会場でのイベント開催を行うなど工夫を凝らしている。数あるプロレス団体のなかで、障害者が気軽に楽しめるような配慮をしているプロレス団体は唯一無二だろう。
その「HERO」のなかで、「12周年記念大会」に向け、燃えに燃えているのが同団体のエースで、“ミスター聾プロレス”と称される友龍だ。友龍は08年に闘聾門JAPANでデビューし、ヤミキさんが興した「HERO」の旗揚げに参加。ヤミキさん亡き後、旗揚げメンバーで残っているのは友龍ただ一人だ。
友龍は20年2月23日、新木場での「10周年記念大会」でワイルド・ベアーとのコンビで、WBC(ワールド・バリアフリー・チャンピオンシップ)タッグ王座を戴冠。男子の聾レスラーとして、プロレスのベルトを初めて巻く快挙を成し遂げたが、昨年2月20日、新木場での「11周年記念大会」でリッキー・フジ、大和ヒロシ組に敗れて王座から陥落した。
同王座は年齢、国籍、性別、障害のあるなしなど、すべてのバリアを取り払った世界で類をみないベルトだが、王座から滑り落ちた友龍とベアーはコンビ解消を決断。同4月18日、カルッツかわさきでの「the SPECIAL ONE vol.2~田中稔に任せとけ!」ではタッグマッチで対戦したが、試合後にベアーが友龍にバックドロップを見舞う暴挙をはたらき2人の間に遺恨ができた。
しかし、その後、ほどなくして「HERO」が活動休止になったため、決着戦を行う場がなかったが、今大会でようやく友龍VSベアーの一騎打ちが実現する運びになった。
元来、友龍の正規軍とベアーのワイルド軍は長年にわたって抗争を繰り広げていたが、ワイルド・セブンが亡くなり、ワイルド・シューターが病気のため長期欠場となって、ワイルド軍が窮地に陥り、軍団の枠を超えて2人が合体した経緯がある。
決戦を前に、友龍は「もともとベアーとは敵対していたから、組むのは複雑な気持ちもありました。やりやすい面もやりにくい面もありましたけど、ベルトを巻けたのは光栄でした。しかし、去年の川崎で試合は終わってるのに、バックドロップを食って許せなかった。今回のシングルでは絶対にお返ししてやろうと思ってます。もちろん勝つの私です。HEROの再開は待ち望んでいました。ベアーとの闘いで、その気持ちを爆発させたい」とキッパリ言い切った。
一方のベアーは「原点回帰。これが何を意味するか、26日に答が出るよ。友龍! 無事にリングから降りられると思うなよ!」と不穏な発言を残した。
現在、友龍には正パートナーが不在だが、「心に『あの人なら』という選手はいますし、ベルトも狙ってます。ですけど、今はベルトより、まずベアーを倒すことに集中したい」と、目の前の課題が打倒ベアーであることを明言。
「HERO」が12周年を迎えることについて、友龍は「長いようで短かった。あっという間に感じます。20周年、30周年と続けられるようにしていかないと。前回(昨年8月)藤波(辰爾)さんとタッグを組みましたけど、試合後に『いつかシングルで闘いたい』と話しました。これもいつか実現したいです」と夢を馳せた。
聴覚障害を抱えて、健常者のレスラーと試合をすることに関して、「ハンデと思わないところもあるけど、思うところもある」と吐露する友龍は、そのハンデを強い気持ちとトレーニングで克服できるように心がけている。
12周年大会を目前に控え、友龍は「今コロナ禍で大変ですけど、苦しんでいる人に、元気や勇気を与えられるような試合をしたい。ぜひ新木場に見に来てほしいです」と目を輝かせた。