【インタビュー】PANCRASE325でタイトル初挑戦の宮澤雄大がストロー級KOP戦を前に「パンクラスのベルトを獲って各団体のチャンピオン狩りをしたい」

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 3大タイトルマッチが組まれている『PANCRASE 325』(12月12日、USENスタジオコースト)。その中で、タイトル戦に初挑戦するのがストロー級の宮澤雄大だ。
 宮澤は2018年に初参戦。参戦当初こそ連敗したものの、徐々に力を発揮。今年5月、ついに王座への挑戦権を手に入れた。「パンクラスのベルトの価値を高めたい」と言う宮澤に、タイトル戦を前にした心境を聞いた。

――タイトルマッチを前にして、今どんな心境でしょう。
宮澤「5分5Rが初めてなので。練習とかでやり始めてしんどい場面とかも経験してきて。でも、今まで通り平常心でやっていけているので、(試合が)非常に楽しみです」

――あまり心が揺れずに当日を迎えられそうですか。
宮澤「(頷いて)そうですね。緊張ももちろんしますし、ベルトっていう、自分が一番欲しいものを目の前にして非常に緊張感もあります。でも、いつも通りやっていけば必ず勝てるって信じているので。常にその気持ちでここまで来ました」

――ここで、宮澤選手自身のことについてもお聞かせください。格闘技を始める前というのは、どんなスポーツをされていたのでしょうか。
宮澤「小学校の時にサッカーをやっていて、中学校から野球をやり始めたんですけど、それだけです」

――ずっと球技だったんですね。
宮澤「そうですね、球技をやってきましたね」

――チーム競技から個人競技である格闘技に移ったきっかけというのは何だったのでしょうか。
宮澤「ケンカとかで負けた悔しさとか、そういうのがありました。でも、一番のターニングポイントは、20歳の時に自分の親父を亡くしたことですね。その時に、気持ちをもっと強くしなきゃいけないと思って、格闘技の道場に初めて入りました。男として強くならなきゃいけないなって思いました」

――最近では、20歳で格闘技を始めるのはちょっと遅めな方ですよね。最初からプロを目指されていたのでしょうか。
宮澤「極端な話をすると、その時は『ケンカが強くなりたい』っていう感じでした。気持ちももちろんそうですし、とにかく強くなりたくて。
 最初に長野でやっていたときの先生にボコボコにやられて悔しくて、練習して必ず超えてやろうと思ったのがプロになるきっかけです」

――目標ができて意識が変わっていったんですね。
宮澤「変わりましたね。格闘技を通して自分より強い相手を知って、“この人を越えよう”っていう目標ができて。それで、格闘技すごく楽しいなって思って今まで来たっていう感じです」

――最初の試合は、ZSTでしたね。
宮澤「はい、アマチュアZSTですね。一番最初は(格闘技を始めて)4ヶ月くらいで出場しました」

――早いですね。
宮澤「はい、かなり早いと思います。だから、何も知らないで、もう『1発殴られたら3発殴り返せ』みたいな感じでしたね、技術も何もないんで」

ーー練習と実戦の違いはいかがでしたか。
宮澤「力が入っちゃってガチガチでしたね。とにかく一発当てて勝つ、みたいな。もう度胸試しみたいな、そんな感じでした」

――試合をして、また意識は変わりましたか。
宮澤「そうですね、試合をするごとに、試合を通して『ここはダメだった』って分析するようになって、格闘技の楽しさを知ったんですよね。それから、相手の映像を見たりとか、格闘技の追求っていうのが自分の中でどんどん出来てきて。それから自分で、自分が強くなっているっていうのが分かるようになりました」

――もう一つのターニングポイントはジムの移籍だと思うんですが、ここ(K-PLACE)を選んだきっかけは何だったんでしょうか。
宮澤「一番最初は、ZSTの時に代表の小池さんから『ウチに出稽古に来ないか』って言われたのがきっかけでした。
 長野にいた時は、アマチュアの選手しかいなかったので、強い選手に触れ合う機会がなかなかなかったんですけど。でも、K-PLACEで練習するようになって、一発目(から衝撃)でしたね。自信を持って出稽古に来させてもらうんですけど、何も出来ない。もう、ボッコボコに、ぐっちゃぐちゃにされるような感じで。『上には上がいる』って思いました。
 何度か通わせていただいて『ここが強くなれる場所だな』って思えたんで(移籍を決めました)。『ここに来て強くなりたい』と思ったのが(移籍した)理由ですね」

――ある程度プロとしてやっている段階で移籍というのは、なかなか出来ないことですよね。でも、強くなりたい気持ちが原動力になったと。
宮澤「はい、そうですね。それで、長野から出てくる時に心に決めたことが『チャンピオンになること』だったので。それを目標にここまで積み重ねて来られました」

――それとほぼ同じくらいのタイミングでのパンクラス参戦でしたね。
宮澤「はい。パンクラスに参戦するのも、それこそ『本腰を入れるならパンクラスだ』って思っていたので。それもやっぱり、うちの先輩の荻窪(祐輔)さんの試合を見て『僕はここで一番になりたい』と思ったのがきっかけです」

――パンクラスのどんなところに魅力を感じましたか?
宮澤「もちろん雰囲気もそうですし、強い選手が集まっているっていうのが一番の印象でしたね。それに、華やかじゃないですか。それに惹かれて『ここで一番になりたい』って思いました」

――宮澤選手の試合はいつも激闘です。このスタイルはどこから?
宮澤「自分はそんなに強くないって思っていて、とにかくちょっとでいいから相手より強ければいい、っていう。ぶっつけ本番じゃないですけど、その都度、少しずつ壁を超えていくような感じでした。とにかくガムシャラですね。それが参戦当初だったと思います」

――意識が飛びながらやっていた試合もありました。
宮澤「そうですね。ありました。多分、組みついたりはしてると思うんですけど、全く意識がない状態で、途中からハッっと戻って、そこから冷静さを取り戻すというか。
 フラッシュダウンする時って、自分の中で余裕っていうか、調子に乗ってる感じなんですね。で、意識を飛ばされて『ヤバイ』って思ってからエンジンがかかるんです。それじゃ遅いんですけど、ケツに火がつくとやるタイプっていうか、エンジンがかかるのが遅いんです。そういうスタイルなんでしょうね(笑)。だから、毎回、意識が飛んでからって感じになるんですけど(笑)」

――技術とか体力はトレーニングで上がりますけど、心の強さはなかなか育てられないと言いますが、そこは常に意識している?
宮澤「そうですね、絶対に負けたくないっていう気持ちがありますし、K-PLACEで毎日揉まれているという自負もあります」

――ここ数戦、強くなっていると感じますが、どのようにスキルを上げてきたのでしょうか。
宮澤「自分のことを客観的に見るようになれたのが大きいです。自分に今何が必要なのか、どういう練習をしなきゃいけないかっていうのを分析できるようになってから、試合に向けて何を用意していくのかっていうのを作れるようになりましたね。
 人から教えてもらって『やらなきゃいけない』っていうのじゃなくて、自分が『この試合に勝つために何をしなきゃいけない』っていうのを考えるようになって、試合でそれが出せるようになったっていうのが一番大きいと思います」

――プロとしての自覚も、ここで学んできたんですね。
宮澤「(大きく頷いて)はい、そうですね。小池代表をはじめ、チームのみんなにも厳しくしていただいたりとかの中で身についてきましたね」

――いよいよタイトルマッチです。ここまでの道のりは長かったですか? 短かったですか?
宮澤「苦労される方もいらっしゃると思うと、僕はここまで、けっこうあっという間に来られたのかなと思っています」

――相手の北方選手に対しては、どのような思いがありますか。
宮澤「オールラウンダーで、非常に強い選手だと思います。でも、僕もこの日のために積み重ねてきたものがあるので、自分が劣っている点は全然ないと思います。当日、気持ちを振り絞れるように、挑戦者として全力でぶつかっていきたいと思います」

――相手との違いや、ご自分が有利な点はどういったところでしょうか。
宮澤「ほとんど似ているような選手なんですけど、僕は挑戦者。守ったりとかっていうつもりはなくて、全力で獲るつもりでいくっていう気持ちの面です。勢いは確実に僕の方があるので」

――この試合のキーになるのはどういったところでしょうか?
宮澤「技術面もそうなんですけど、精神面で5分5R闘い抜いて、最後まで立っているのは僕だと思います」

――どんな勝ち方がしたいですか?
宮澤「そうですね……スタンドでKOですかね。ぶっ飛ばしてやります」

――前々回、ケージで「小さく見えた」と話して、意地が見えたんですけど、やはりああいうところから勝負の駆け引きがあったのでしょうか。
宮澤「うーん、単純に僕の方がでかいなと思ったんで。裏を読んだりとかもなく、もう単純に僕の方がでかいなと思いました」

――チャンピオンにオーラを感じなかった?
宮澤「そうです」

――チャンピオンは他団体へも出場していますが、そのあたりについてはどう思われていますか。
宮澤「北方選手がいない間、僕がパンクラスのストロー級で勝ち上がってきた、盛り上げてきたので、もう北方選手いらないよと。僕がチャンピオンになってパンクラスを一番にするっていうのが僕の夢だし、目標になっているので。今回必ず勝って、それを証明したいと思います」

――パンクラスのストロー級を支えてきたのは自分だという自負があるんですね。
宮澤「はい」

――さて、宮澤選手といえば見事な肉体が思い浮かびますが、肉体改造についてもK-PLACEに来てから変わったのでしょうか。
宮澤「そうですね。板橋の方に島田トレーナーっていう本格的にボディメイクしてくださる方がいらっしゃって、今その方に、MMAに特化したメニューを考えていただいています。K-PLACEに来てから、そういうのもやるようになりました」

――フィジカルの強化は、試合にどのように出ていますか。
宮澤「たとえば、パンチを打つとき、体幹のブレっていうのがけっこう重要になってきます。体幹がブレるとパンチが打ち出せなかったりとか、バランスが悪いんで、打てても次の動作に行けなくなったりするんです。それを、全身を強化することによって、ブレずに次の攻撃に繋げるという点ですね。
 あと、組み力も全然変わってきましたね。自分より上の階級の人と練習しても。全然組み負けないような力もつきました。それが自信になっているので、成長しているのかなと思います」

――出るものなんですね。
宮澤「そうですね。それは普段の練習もそうですし、トレーニングしたことを道場に持って来て、スパーリングの中で自分に落とし込んでいくっていう作業ができているので、結果的にそれが試合に出ているんじゃないですかね。
 今、水垣(偉弥)選手にもMMAに特化した技術を教えていただいているんで、次はそれを試合で見せられるのがすごい楽しみです」

――格闘技を始めた長野時代から、だんだんご自分で環境を整えて来たんですね。
宮澤「はい。自分に『今』必要なものをチョイスして。当時は多分、必要なかったこともやっていたと思うんですけど、現在は、今の自分に必要なものを選択できるようになったっていうのが大きいと思います」

――宮澤選手にとってパンクラスのベルトというのはどういう存在なんでしょうか。
宮澤「僕にとって、昔は『夢』だったんですけど、いまは『目標』。獲って当たり前と言うか。自分が真の王者という証明だと思います」

――どういう勝ち方で、それを手に入れたいですか。
宮澤「全局面で圧倒して、KOなりしっかりした形で獲れるような、そういう試合にしたいと思います」

――今後、どういった格闘技人生を描いていますか。
宮澤「パンクラスのベルトを獲って、各団体のチャンピオン狩りをしたいなって思ってます。僕はパンクラスを本当の意味で一番の高みに持って行きたいと思っています」

――今大会はスタジオコーストでのラストマッチとなります。このスタジオコーストでの闘いには、どんな思いがありますか。
宮澤「パンクラスに出場してずっとスタジオコーストなんですけど、初めて(出たとき)スタジオコーストの会場の広さだったりとか、照明だったりとかに圧倒されました。プレリミナリーで出させていただいた時も、多分15秒くらいでKO負けして(※2018年8月、リトル戦)。そこからここまでスタジオコーストで成長してきた集大成だと思うので、ここでしっかりベルトを獲って感謝の気持ちを出せたらなって思います」

 K-PLACE小池義昭代表は「初めて見たとき、ストロー級で相手をワンパンで気絶させるような力を持っていた。ただ、まだMMAというものが身についていなかった。パンクラス参戦当時は連敗していたが、勝ち方を覚えたと思う。最初バタバタしてしまい、1回殴られてちょっと落ち着くっていうタイプなので、勝った試合ほど顔が腫れていたりする。そこが、良いところでもあり、悪いところでもある選手(笑)。打撃だけでなく、組みに特化した練習もしてきたので、立っても寝ても大丈夫に仕上げてきた。北方選手も宮澤も、どちらも勝てるので、本当の力比べになると思う。キャリアでは勝てないが、若さゆえの勢いや、怖いもの知らずの、守るのではなく攻めるという闘いで挑んでいきたい。自信を持って送り出せる選手なので、必ず獲りたい」と話した。

(写真・聞き手/吉田了至、構成/佐佐木 三桜)

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