『被災地キャラバン』を始めて10年。女子プロレスラーが語る『プロレスで復興』【#これから私は】
- 2021-3-20
- ニュース
現在存在している恒常的に興行を行っている女子プロレス団体において、一番歴史がある老舗団体となった『アイスリボン』(2006年設立)。その団体の取締役選手代表として顔役となり、豊田真奈美からジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックスホールドと“飛翔天女”の名を継いだ藤本つかさは、2018年度女子プロレス大賞も受賞し業界全体を盛り上げるべく選手活動を続けている。
そんな藤本が活動のテーマとして掲げている一つに『被災地復興』がある。自身の地元である宮城県は2011年3月11日の東日本大震災で甚大な被害を受け1万人近くが死亡。
藤本はどの選手よりも身近に被害に接し、地震から4ヶ月後には東日本大震災被災地を回る『被災地キャラバン』を開催。リングを建てずにマットや路上でもプロレスができるアイスリボンが、プロレスの力で現地の避難民を元気づけて回った。
当時の実際の被災地の状況に関して藤本はこう振り返る。
「4月1日、当時は新幹線が動いていなかったので、車で宮城県に帰省しました。
見慣れた景色が一変し、震えた。道路には屋根があって車が横転していて、隣に船があった。よく遊んでいた海辺は、泥と瓦礫だらけになっていて、経験したことはないが、まるで戦争みたいでした。
情報がないまま、停電で寒い中、過ごした。ガソリン不足で弟のバイクからガソリンが盗まれたりもした。生き残った人達も生きるのに必死だったのかもしれない。
友達に会った。「震災で何もできないのはわかるけど、毎日毎日同じテレビでうんざりだし、私だって美容院行ったり、ネイルしたり、もっと娯楽がしたい。息が詰まる。」と言っていたことが引っ掛かり、人生に娯楽は必要だと感じた。
その後、被災地にプロレスを届けようと決意して、7月に被災地キャラバンを企画実行しました」
あれから10年。藤本つかさは『これから』に向けて地元・宮城県利府町の観光大使に。大震災、新型コロナウィルス、新たな地震と戦い続ける利府町で4月18日(日) 午後1時からプロレスの興行を開催する。
「一本の電話からでした。知らない番号から電話。利府町長からでした。私の弟の同級生のお父さんさんから「利府町出身者で頑張ってるプロレスラーがいるから、応援してあげて!」と言われたそうです。
丁寧に連絡頂き、お会いすることになりました。そこから、観光大使のお話や利府町大会のお話がスタートしました。
打ち合わせの段階から、役場のみなさんは温かく迎え入れて下さり、誰かの話をするとそれは誰かの知り合いだったりで、利府町はみんなと繋がってるんだと実感。大会が始まっていないのに泣きそうでした。
去年はコロナで大会が中止になり、今年やっと開催できる…となったところで、2月の地震で体育館が一部破損。開催が危ぶまれましたが、関係者のみなさんの計らいで、修理を早めて頂き、正式に4月18日開催となりました。
震災で救ってもらった利府町から、今度はみなさんを明るく照らしたいです。
東日本大震災、今回のコロナと未曾有の経験をしたことで、プロレスで復興へとかける想いを伝える大会にしてみせます」
アイスリボンの合言葉は「プロレスでハッピー」。老人ホームや介護施設での試合や、サンリオピューロランドでハローキティとコラボレーションした試合など老若男女が楽しめるプロレス団体として活動を続けてきた。
東日本大震災の震災復興はまだ終わっていない。10年一区切りではなく、藤本つかさはこれからもプロレスの力で被災者へ元気と勇気を与え続けていく。