【コラム】「レスラーたる者、恐怖心に打ち勝ってこそ戦いに挑む資格がある!」とホラー映画『樹海村』の試写会に挑んだ全日本プロレス所属選手の面々。果たしてその結果は……?
コロナ禍で売上9割減の全日本プロレス経営危機を、予想以上の配当金で救った東映映画『犬鳴村』。その次回作が計画されたとき、全日本プロレスは迷わず新たなタッグパートナー=東映 の恐怖の村シリーズ第2弾『樹海村』にも出資を決めた。本作品の清水崇監督は日本人で初めて全米週間興行収入第1位を獲得した世界的有名人で、本編にゲスト出演しているTAJIRIとも共通点がある。
所属選手向けの試写会に先立ち、全日本プロレス福田社長からこんな言葉が…。
「これは私が本当に経験した話です。大手企業の研修所を借り切って病院に仕立てて撮影していたときのこと。エレベーターの中から私が出ようとしているのに、精神科医役のドランクドラゴン塚地さんが傍若無人にエレベーターに乗ろうとしてすれ違う場面。私は「おい、降りる人が先だろ!」と睨みつけるチョイ役でスタンバイしていました。扉はスタッフが開けたり閉めたりエレベーターの中で操作できる状態。全ての準備を整え、塚地さんが歩いて来るのを扉を開けて待っていました。すると突然、扉が閉まって上へ上へと動き出してしまったのです。誰かが上の階でエレベーターを呼んでいる?「えー、なんで???」 もうパニックですよ。やがてエレベーターは止まり、扉が開くとそこには誰もいない漆黒の闇が広がっていて…そこはもちろん、誰も入ることが出来ない空虚な部屋。まさに怪奇現象。怖くて怖くてゾゾー、全身鳥肌。でも一緒に乗っていたスタッフさんは軽~く「ホラー映画に怪奇現象はつきものですよ、アハハ!」と明るい笑顔。怪奇現象などよくあることのようです。今日の試写会で何かが見えたり肩を叩かれたりすることなく、無事に見終わることを祈ります。さあ、これから上映を始めましょう」
真冬の怪談話から始まった『樹海村』の上映。場内、静寂のまま鑑賞を終えた感想は…。
諏訪魔「樹海は実在の場所なので、怖さが身に染みたよ。でも途中から完全なファンタジーで物語に引き込まれ満足度は高い。オレたち全日本プロレスも、この満足度の高さを目指さなきゃいけない。一番怖かったのが、樹海で襲ってくる村人たちの姿。画面を見ながら、こいつらを相手にどう戦うか考えたんだけど、大自然の強大なパワーを自由に利用できる彼らには、いくら今が全盛期のオレでも勝ち目はないよ。隣の国からパワー大臣を連れて来ても無理。開始1秒でギブアップして、全力で逃げるに限るね」
石川修司「怖いだけの映画かと思ったら、家族愛とか仲が悪かった姉妹の邂逅が心に刺さって見応えありました。自分は体は大きいんですけど、心は繊細なんで感動しやすいんですよ。映画の中で、ダイビング・ボディプレスで若者がKOされる場面がありましたが、あれだけは食らいたくないですね。3月18日に葛西純選手と戦う時もパールハーバー・スプラッシュには充分に気を付けます」
大森隆男「TAJIRIはジャパニーズ・バズソー、『樹海村』はジャパニーズ・ホラーの神髄…どちらも世界で通用するスゴイものですよ。この映画を見たら、いくらオレ自慢の斧爆弾アックスボンバーでも樹海の木は倒せないような気がしてきました。いや、ちょっと頑張れば倒せるかな?」
イザナギ「今日は来る予定も無かったのですが身に付けたばかりの秘法を使ってみたくて誰にも気付かれず会場の椅子に座る事に挑戦してみました。まあうまくいったのですが、周りの人を驚かせてしまい失礼しました。この映画を見た感想ですが、プロデューサーと監督がどういう意図でこの映画を作る事にしたのか、最も奥深くにある動機と情念とを離れた場所から読み取ってみます。富士の樹海の大きな存在感+人智を超えた自然現象とあまりに小さく無力な人間とを対比させる壮大なテーマを世に提起したかったのか、あるいは去年『犬鳴村』が予想以上にヒットしたので忘れられる前に急いで作ってみた二匹目のどじょうなのか…?実に奥深い映画です」
大森北斗「ホラー映画は大の苦手で震えながら目を半分閉じながら見たけど、これは感動する場面もあって面白かったから最後まで見られたぞ。前の『犬鳴村』も見たけど全然違う新しい映画で、でも前作のキャラが再登場したりして何かがつながっている感じ。いつもは敵対している TAJIRIの野郎が画面に急に出て来て、意外なところで『役者TAJIRI』が見られてちょっと感動したよ。つい、戦ってばかりじゃなくいつか一緒に組んでみたいな、って思っちゃったじゃないか…バッカだな、オレ」
この映画の主なロケ地は静岡県 裾野市。偶然にも全日本プロレスでは2月21日にすぐ近くの沼津で試合を行う。そこで特別コラボ企画として『樹海村』の入場券の半券を会場に持参して下さったお客様に TAJIRI選手の直筆サイン色紙をプレゼントするとのこと。
また、この映画に出演した縁もあって TAJIRI選手は ” コトリバコ ” という映画のキーワードを用いた新技を開発したとか。どんな技なのか注目しよう。
映画界との関係をより深化させている全日本プロレス。これまでと違う取り組みには賛否分かれるかも知れないが、何かが確実に変わってきている。まだまだ第一歩と言ったところだが、このコロナ禍の中でもエンターテイメント企業として着実に前進し、上昇ムードにあるのは確かである。
文…日々樹アキラ