【インタビュー】田中将斗がTAJIRIとの“元ECWハードコアコンビ”で18年ぶりの世界最強タッグ出場!「断言します、宮原健斗をテーブルごと壊しますんで」と元三冠王者へロックオン!
11月18日(水)、新宿FACEにて全日本プロレス・2020世界最強タッグ決定リーグ戦が開幕する。
コロナ渦で外人レスラーの参戦が困難な現在『元ECWハードコアコンビ』として海外の香りを感じさせる田中将斗とTAJIRIのコンビは一種「ガイジン枠」と言えるのかもしれない。王道と称される全日本マットに、ハードコアという相反すると思われるカラーを身にまとい参戦する田中は今回の参戦にあたり何を考え、何を目論んでいるのか?話しを聞いてみた。
――全日本に登場するのはいつ以来でしょうか?
「10年ほどぶりですかね?大谷(晋二郎)さんとの炎武連夢で最強タッグに出た記憶はあるんですけど、それ以降参戦したという記憶はないです」(※実際は18年前の2002年世界最強タッグに参戦)
――先日久々に参戦してみて(10/24後楽園大会)その頃の全日本との違いは何か感じましたか?
「あの頃は自分より上の世代もまだまだたくさん活躍していましたけど、今回はすでに自分がキャリア的にいちばん上だというあたりに月日の流れを感じたというか」
――自身の年齢的な部分を意識することはあるのでしょうか?
「それは逆の意味で意識しています。どの団体も、いまは若い世代が頑張っていますよね。そういう世代と比べて自分の方が凄ければ誰にも『田中は凄い』と気付かせることができるので、この状況は逆に手っ取り早いというか。世間には『早く若い世代に道を譲れ』という言い方をする人もいますけど、自分からへりくだるツモリは全然ないです。もちろん実力で地位を奪われるのは何の問題もないんですけど。自分から退く気は全然ありません。まだまだトップ戦線に君臨していたいですから」
――全日本ファンに自身のどのような部分がインパクトを残せると思いますか?
「ハードコアって、全日本ではほとんど見られない世界だと思うので。ファンにもそういった免疫がないでしょうから。実際目にしたらかなり驚くのではないか?と思っています」
――ハードコアな面を全日本マットでどのように出していくのでしょうか?
「チームとしての自分たちを知っている人にとっては、やはりその面をいかに出していくかがメインになってくると思うし期待する部分でもあるでしょうから。プロレスは5カウントまでは反則も許される。あるいはレフェリーのブラインドをついてしまえば反則にすらなりません。そういったルール自体も自在に使うし、そのルールの中で色々なモノを自在に使い戦っていくつもりです。これまでも色々な団体でてそういうスタイルを築いてきているので、身体はそのように自然に動くので問題はありません」
――最近はスポーツライクなプロレスが主流となり、プロレスのそういう面を受け入れ難いファンも多いと思いますが、そういった人たちとの戦いにもなりそうですが?
「まあ、言葉で言っても頭の固い人はわからないですからね。それはそれでいいんです。それぞれが自分のいちばん好きなプロレスというものがあるはずなので。だけど、それ以外のプロレスを実際目にしたときに『凄い!』『こういう試合も面白いな』と思ってくれたら。そう思わせる自信はあるので。そういう頭の固い人には、見てもらえばわからせる自信はあります」
――以前、新日本プロレスで戦っていたときにもそういう手応えは感じたのでしょうか?
「新日本参戦当初は『田中帰れ!』と野次られることもかなり多かったんですよ。だけど試合を重ねるにつれ『田中いいぞ!』と、声援の方がだんだん増えていきました。あれから10年くらい経ちましたけど、いまだに新日本ファンから『また参戦してほしい』という言葉もよくかけられるので。それは自分のスタイルをしっかりと提示し、それが受け入れられたからなんだろうなと思っています」
――田中選手にとってプロレスとはそもそも「なんでもあり」ということでしょうか?
「自分が育ったFMWは男女混合団体で、ミゼットもあって、デスマッチもあって、もちろん正統なプロレスもあって、なんでもありだった。そんな団体で育った自分にプロレスへの凝り固まった『こうあるべき』という固定観念はありません。なんでもありがプロレスだと思っています」
――全日本出身である師匠の大仁田厚選手からは「全日本のスタイルこそが正統」という教えはなかったのでしょうか?
「大仁田さんからも、実際に技術を教えてくれた(ターザン)後藤さんからも『全日本ではこうだからこうしろ』という教わり方をしたことは一度もありません。新日本のプロレスと比較することもなかったし。腕を獲るにしても、首投げをするにしても、受け身を取るにしても『これは、こうやるものなんだ』と。どこがどうだからとか、どうではなく『こうなんだ』という教え方をされてきました。それでも大仁田さんは全日本出身なので細かいところはやっぱり全日本式だったと思うんです。だから新日本から枝分かれして派生したゼロワンでは最初は色々と違いを感じる部分も多かった。だけどどちらがいい悪いではなく、それらの中でどれが自分に合っているか?それをアレンジしミックスしたのがいまの自分のスタイルになっていると思います」
――そもそも王道プロレスとは何だと思いますか?何をもって王道プロレスだと思いますか?
「自分も実際わからないんですけど、新生FMWでハヤブサさんや金村さんやグラジエーターらと皆で毎日必死に戦っていたときは、試合スタイルがいわゆる四天王プロレスにだんだん似てきていたような気がします。実際『新生FMWは四天王プロレスを意識しているんですか?』と各方面から言わましたし。『負けたくない!』という気持ちが強いとそういうスタイルになっていくんですかね?いま自分が使っているローリングエルボーにしても、三沢さんの試合から影響を受けて使い始めたものですし」
――話しを最強タッグに戻しますが、現在のコンディションはいかがでしょう?
「自分、コンディションって若い頃から全然変わらないんですよ。全然落ちてないです。歳をとったから動きが悪くなったとか言われたこともないし、身体がショボクなったと言われたこともないし、自分でもそういう感じがしたことは一切ないし。つい先日も、うちのベルトを持ってる田村ハヤトと戦って30分動いても彼より自分の方が全然元気だった自負もあるし。そういった、スタミナ的な部分でも、スピードにしてもパワーにしても、年齢で劣ったという部分は感じたことすらありません」
――その秘密はどこにあるのでしょうか?
「一つ言えることは、自分にはプロレス以外ないので。プロレスしかできないので、これでメシを食っていくしかない。だから、衰えたくないんです。普段からの練習も、そういう意識を常に持ちながら取り組んでいます。昔のレジェンドで尊敬してるレスラーはたくさんいますけど、そういう人たちの中でも自分の歳でこんなに動けるレスラーは多分いなかったと思います。スタイルが違うからと言われたらそれまでなんですけど、いわゆる『動くプロレス』をしているという点では、この歳ではおそらく自分がいちばんトップどころにいるのではないかと思います」
――今回のパートナーであるTAJIRI選手については?
「ECW時代、アメリカでずっと一緒に住んだ間柄ですね。最初TAJIRIさんの家に住み始める前は日本で『タジリは暗い人間だぞ』なんて周囲から聞かされたこともあったんですけど。確か○○さんがそう言ったのかな?だけど実際には正反対だったし、いまでも仲良く付き合っている関係ですよ。おかげでアメリカ生活も楽しめたし。実はそれ以前にも半年間アメリカへいったことがあるんですけど、いつもひとりな環境で凄くつまらなくて。長期ではもう海外に行きたくないとすら思ったんです。だけどTAJIRIさんと住んだことでアメリカは楽しいと思うように変わった。ECWを共に戦った同志でもあると思います。そんなTAJIRIさんに呼ばれたということは、最強タッグを掻き回すだけではなく、優勝を狙うつもりで呼ばれたはずですから。なので、優勝するつもりしかありません」
――先日の後楽園大会では宮原選手を狙いましたが
「彼は全日本の顔と言うか。三冠を持っていた男だし、諏訪魔選手と宮原選手は全日本の象徴だと思っています。名前もよく聞こえてくるし、最も意識してしまうレスラーのひとりですね。そして他団体に上がる以上は、その団体の顔と勝負しないと上がる意味はないと、自分はいつもそう考えています」
――宮原選手と実際に戦ってみていかがでしたか?
「それほど触れたわけでもなかったんですが、観客を味方につける力が特に凄いなと感じました」
――最強タッグ中いちばんの強敵はどのチームだと思いますか?
「諏訪魔選手と石川選手は、全日本の強さの象徴だと思います。そこはやはり気になりますね。彼らはチームとして完成されていると思いますので」
――11/23後楽園では先日因縁が生まれた宮原&青柳組と戦いますが、どのような戦いになると思いますか?
「彼らがこれまで味わったことがないであろう、ハードコアの世界に引きづり込みます。宮原へのテーブルスプラッシュは未遂に終わっているし。テーブルごと破壊された経験なんて、おそらくまだないでしょうし。それは必ず決めますよ。『断言します、宮原健斗をテーブルごと壊しますんで』大きく書いておいてください。彼はもともと健介オフィス出身ですよね?ハードコアのようなものは否定するプロレスから来ているでしょうし、もしかするとそういうものを毛嫌いしている可能性もあると思います。逆に毛嫌いしてもらっていた方が、そういう世界に引きづり込んだときにこっちは気持ちがいいと言うか。そして彼がハードコアな攻撃を喰らったら、彼のファンは騒然となる大事件になると思います。だけどそれでこそ自分が参戦する意義があると言うか。自分が参戦する目的のひとつもそこにあります。ただ呼ばれて試合をしました、というだけでは意味がないので。インパクトを残さないと意味がないので」
――最強タッグの先に見据えるものもあるのでしょうか?
「まだ最強タッグが始まってもいないので何とも言えないんですけど、もしかしたら戦っていく過程で具体的に…例えば三冠に興味が出てくるかもしれないし。もちろん世界タッグにも。それは自分が最強タッグで戦っていく中で何を感じるか、あるいは相手がどう感じるかによってですね。そして自分、これまでほとんどの主要団体で何らかのベルトを獲ってきてるんですけど、全日本ではまだ何ひとつ獲ったことがないんですよ。なので正直に言いますけど、今回の最強タッグのオファーを受ける以前から、いつか全日本でも何かのベルトを獲ってみたいと思ってはいたんですよ、実は」
――田中将斗選手ほどのレスラーにとって、全日本プロレスとはどのような団体なのでしょうか?
「歴史がある団体。やっぱりそんな歴史のある団体のベルトは…一度巻いてみたいですよね。子供の頃からファンクスやシークやブッチャーの試合をテレビで見て興奮して、そこに自分のプロレスの原点もありますので」
田中選手の言葉の端々から感じられるのは、彼がこれまで歩んできた道のりからの絶対的経験値に基づく『揺るぎない自信と信念』だった。開幕戦での田中組vsヨシタツ組に始まり、vs宮原組、vsジェイク組、vs諏訪魔組など、最近のファンにとってはどれもが新鮮で刺激的なカードがズラリ勢揃いとなる2020世界最強タッグ。田中将斗の揺るぎない自信と信念が、全日本プロレスにとって巨いなる台風の目となるであろうことに間違いはない。
文…日々樹アキラ