【試合詳細】12・8 PANCRASE新木場大会 【ストロー級暫定QOP】藤野恵実vsチャン・ヒョンジ 三村亘vsサイモン・オリベイラ 秋葉太樹vsルサンド・ビコ
『PANCRASE 311』
日時:2019年12月8日(日)
会場:新木場スタジオコースト
開始:16:30
観衆:2019人
[プレリミナリーファイト]
▼第1試合 フライ級 3分3R
●山中憲次(FREEDOM@OZ)
判定1-2
○聡―S DATE(Team DATE)
▼第2試合 フライ級 3分3R
●水谷健人(AACC)
判定0-3
○西村大輝(ALLIANCE)
▼第3試合 バンタム級 3分3R
●工藤修久(禅道会 小金井道場)
判定0-3
○板谷一樹(GRABAKA)
▼第4試合 フェザー級 3分3R
●渡辺謙明(パラエストラ東京)
1R 1分40秒、TKO(三角絞め→レフェリーストップ)
○高橋祐樹(坂口道場一族)
▼第5試合 バンタム級 3分3R
○関原 翔(リバーサルジム東京スタンドアウト)
判定3-0
●飯嶋重樹(ALLIANCE)
▼第6試合 ストロー級 3分3R
●DIANA(AACC)
判定0-3
○華蓮DATE(Team DATE)
▼第7試合 バンタム級 3分3R
―後藤丈治(TRIBE TOKYO M.M.A)
試合中止
―ルスラン・ベックザッド(Kara-kulja sport club)
[メインカード]
▼第1試合 フライ級 3分3R
○有川直毅(K-PLACE)
判定2-1
●加マーク納(総合格闘技道場コブラ会)
▼第2試合 フェザー級 3分3R
○林 大陽(CAVE)
判定3-0
●小森真誉(GRABAKA)
▼第3試合 ストロー級3分3R
○前山哲兵(フリー)
1R 2分29秒、TKO(グラウンドのパンチ→レフェリーストップ)
●リトル(GUTSMAN)
▼第4試合 フライ級 5分3R
●上田将竜(緒形道場)
判定1-2
○神酒龍一(CAVE)
▼第5試合 フライ級3分3R
○鈴木 万季弥(志村道場)
判定2-1
●法DATE(Team DATE)
▼第6試合 フェザー級 5分3R
●亀井晨佑(パラエストラ八王子)
判定0-3
○ビクトル・ウーゴ(ASTRA FIGHT TEAM)
▼第7試合 フライ級 5分3R
●秋葉太樹(総合格闘技道場reliable)
判定0-3
●ルサンド・ビコ(PESFA)
▼第8試合 セミファイナル 67kg以下契約 5分3R
●三村 亘(パンクラス大阪 稲垣組)
1R 1分14秒、TKO(フロントチョーク→レフェリーストップ)
○サイモン・オリベイラ(ASTRA FIGHT TEAM)
▼第9試合 メインイベント ストロー級暫定クイーン・オブ・パンクラス決定戦 5分5R
○藤野恵実(FIGHT FARM/52.15kg)
3R 3分20秒、チョークスリーパー
●チャン・ヒョンジ(THE SSEJIN)
藤野恵実がヒョンジを撃破し悲願のストロー級暫定QOP戴冠!オリベイラが急遽代打の三村に圧巻勝利!
第1試合
今年4月にプロデビューしたばかりの有川。初戦は中嶋悠真に肩固めで一本勝ち、続く6月は水谷健人から判定勝ちを収めている。
加納は元GLADIATORフライ級王者。パンクラスには2016年より参戦し、これが4戦目。前回は今年6月、杉山廣平に判定負けを喫している。連敗は避けたいところ。
1R。距離を見ながらパンチを出す加納。有川はロー、ハイキックと足を使う。距離を合わせてきた加納がパンチ、ボディ。有川の蹴り足を取り、殴る加納。加納がタックルに入るが、有川はこらえ、ケージへ押し込む。入れ替えた加納が、有川に尻もちをつかせたところで終了。加納は鼻から出血している。
2R。お互いに打撃を出す。有川がタックルに入ると、受け止めた加納がギロチン。しかし、有川は回って立つ。再び鼻から出血している加納だが飛び膝。有川はタックルからケージへ。立って突き放す加納。お互いパンチを出し合い終了。加納の表情が険しい。
3R。有川ロー、加納はバックハンド。有川のローがローブローとなるが、ダメージは少なくすぐに再開。可能が組んでケージへ押す。有川が入れ替えてヒザ、しかしブレイクがかかる。
加納ミドル、有川ローから打ち合い、有川が組んでケージへ。可能がバックに回るが、離れる。加納が「かかって来い!」のジェスチャー。お互いパンチを出すが、決め手がないまま終了。
ジャッジは29-28で二者が有川、1人が加納。2-1で有川がギリギリの試合を制した。
第2試合
林は2015年よりパンクラスに参戦。バンタム級で5位につけていたが、この7月よりフェザー級に転向。フェザー初戦はコンバ王子と対戦。2Rまでは押していたが、3Rでパンチをもらい、苦いKO負けを喫している。今回は勝って、この階級での存在感を見せたいところだ。
対する小森は今年7月、7勝2敗の戦績をひっさげ、パンクラスに初参戦。TAG(7月)、近藤孝太(9月)と2連勝している。年内最終戦で連勝記録を伸ばせるか。
1R。パンチ、ハイキックと先制する小森。林もパンチで出る。林が組んで尻もちをつかせるが、小森は立つ。倒したい林だが、こらえる小森。林は殴り、ケージへ押し込む。
ブレイクがかかると、小森が右ハイキックから組んでバックに回り、ケージへ。小森が殴って終了。
2R。パンチででる小森。林が組むが、小森がバックを取り投げる。しかし、林が返して上に。ボディを殴り、差し手を外してハーフマウントへ。パウンドを落とすが、小森に立たれてしまう。お互いパンチ。林が組むが、小森が離れて終了。
3R。お互い、疲労の色を見せている。小森がプレッシャーをかけながらタックル、尻もちをつかせる。バックに回る小森。しかし、林が正対して立った! 離れてパンチを繰り出し、組んでケージへ。お互い入れ替え合う。林が投げてサイドを取ったところで終了。
ジャッジは三者29-28、3-0で林が勝利。
第3試合
前山は2016年よりパンクラスに参戦。前戦(今年6月)は、TUFに出場経験のあるアダム・アントリンと初の国際戦が組まれたが、圧倒され何もできずに終わってしまった。これまでのところ4勝4敗。勝ち越して今年を終えたいところだ。
一方のリトルは2014年よりパンクラスに参戦。リトルも今年2戦目で、前戦(今年5月)はかつて闘った宮澤雄大にリベンジされてしまった。前山とも2016年11月に闘っており、リトルが判定負けを喫している。今回はリベンジできるか。
1R。リトルがロー、パンチからタックルへ。しかし前山は切って付き合わない。リトルはバックブローを放つが、前山はこれをかいくぐってタックル。尻もちをつかせるが、リトルは立ち、離れる。右ミドルを入れたリトル。さらに右パンチがヒット、前山がダウン!
立った前山が組んでケージへ押し込み、投げる。バックに回り、また投げてパウンドを入れていく。しかし、リトルが立つと、前山も突き放す。前山がパンチを打ち込むと、リトルがダウン! 前山がカバーに入り、パウンドを落とすとレフェリーが止めた。
▶︎前山 ケージ上コメント
「ギリギリでした。みなさん、見てくれてありがとうございます。喜ぼうと思います。勝ったぞ!!」
第4試合
上田は2013年よりパンクラスに参戦、同年NBTフライ級で優勝している。昨年12月、小川徹をハイキックでKOし、4連勝を挙げてタイトルマッチ挑戦をアピールした。今年7月、翔兵を相手に暫定王座決定戦に挑戦したが、ペースを握られパウンドでKO負け。今回より職場の理解も得、再起戦に臨む。
対する神酒は2015年10月からはパンクラスに参戦。2016年には第3代フライ級キング・オブ・パンクラシストに輝いた。しかし、2017年、マモルに破れタイトルを失うと、2年間の欠場。今年3月の復帰戦では秋葉太樹にスプリット判定で敗れたが、6月には初代バンタム級王者・井上学と対戦、2ラウンド膝蹴りで鮮やかなKO勝ちを飾った。今回は復帰第3戦となる。
お互い、新章を歩み始めた両者。どのような闘いを見せるのか。
1R。上田はフェイントをかけながら様子を見る。時折ハイキックも出すが、距離は取ったまま。神酒はジャブ。お互いなかなか間合いに入らない。上田の蹴り足を取ろうとした神酒だが取れず、パンチで出る。上田はプレッシャーをかけていく。お互いロー。
パンチで出て組んだ神酒がケージに押し込む。神酒が崩そうとするが、こらえる上田。離れてパンチ。神酒もパンチ、蹴りを出すが終了。お互い踏み込めないまま終わった印象。
ジャッジは三者10-9で上田。
2R。上田がロー。神酒がタックルに入るが切られる。上田は身体を振り前蹴り、ロー。神酒はペースがつかめず、やや焦りが見えるか。
神酒が距離を詰め始め、出入りしてパンチを繰り出していく。プレッシャーをかける上田に対し、神酒がジャブ、左ハイキック。さらに上田の蹴り足を取ると神酒がテイクダウン! 上田が回って上になるが、神酒もさらに回って上を取り返す。パウンド、ボディを殴る。残り30秒でラッシュに入った神酒だが、終了ギリギリで上田が立ったところで終了。
ジャッジは三者10-9で神酒。
五分で迎えた3R。神酒は祈るようにグローブを合わせる。
前に出る神酒。左ミドル、さらに入ってパンチ、ヒザ。上田もパンチを返すが、単発のみ。神酒がさらに入ってパンチ。タックルに入るが、これは上田に切られてしまう。
しかし、神酒がリズムをつかんで来たか、前に出る。上田が飛び膝を合わせるがもらわない。前に出始めた神酒に対し、上田は慎重なまま。パンチを出してはいるが、間合いに入らない。神酒がプレッシャーをかけ、入ってパンチ。さらに片足タックル。上田はこらえ、倒れない。離れる。残り30秒。今度は上田がタックルに入るが、神酒が切り、バックブローを放ったところで終了。
ジャッジは29-28で二者が神酒、1人が上田と割れ、スプリットで神酒が辛勝した。両者とも決定打のないままだったが、3Rで神酒がやや押したか。
試合前、「格闘技は表現である」と話していた神酒。一時は引退も考えたが、自分が表現したいことは格闘技を通じてしかできないと思い至り、ケージに帰って来た。
神酒の使っている入場曲はMYST.というグループの『零』という曲だ。これは室町時代の僧・一休宗純をテーマにしたもの。アニメでもおなじみの一休さんだが、木製の大太刀を腰に差して歩いたり、仏教で禁じられている肉食や飲酒をしたりするなど、戒律や形式にとらわれない人間くさい生き方をし、民衆の共感を呼んだ。つまり、自分をさらけ出し、ひとりの人間として生きた人だった。
神酒は、試合前に「見に来てくれた人にボールを投げるのが、プロとして続けて行くためのテーマです」と話していた。神酒にとって格闘技とは、ただ殴り合ったり、単に勝ったから喜ぶといったものではなく、もっと深層にある何かを表現することであり、同時に表現すべき何かを探していく旅のようなものなのかも知れない。
一方の上田も、暫定王座決定戦で敗れたあと、引退を考えた。しかし、このまま辞めたら後悔すると思い直し、もうできないというところまで続けようと吹っ切れたという。上田にとっても、自分にとって格闘技とは何か、格闘技を人前でやっていくとはどういうことかを深く考える時間だったのではないだろうか。
そして、環境も変わった。これまでプロとして格闘技をやっていることを職場に隠していたが、暫定王者決定戦のポスターを職場の人がSNSで見たことをきっかけに、正式に上司と話し合い、格闘技を続けていく許可を得ることができた。「超えて行きたい」と話した上田の口調は明るく、力強かった。
神酒と上田、二人の新章はまだ始まったばかりだ。これからの闘いに注目して行きたい。
神酒 ケージ上コメント
「全然ダメな試合ですみません。皆さんが温かく見てくださっているのに、自分は最低でした。上田選手はリーチが長くて、遠い間合いで厳しかったです。自分から入って行こうと思いましたが、入ったところに待っていて、相手が巧かったです。どっちが勝ったか、見ている人も分からないくらいの試合でした。首の皮一枚で命拾いした感じです。
今後、自分が上に行くという目標もありますが、試合を見に来てくれた人にもっと良いものを出したいし、見せたいです。まだ未熟者ですが、応援してください。来年も、厳しい試合、面白い試合があると思います。神酒も、パンクラスも面白くなっていくと思います」
第5試合
キックボクシングをベースとする鈴木は、昨年12月、パンクラスに初参戦。シッジ・ホッシャにパウンドでKO負けを喫した。今回がパンクラス2戦目となる。
対する法DATEはDEEP JEWELS、Road FC、アイスリボンを経て初参戦。
9月にストロー級暫定王者トーナメントに出場予定だったが、3.2kgと大幅に計量オーバー、不戦敗となった。今回は階級を上げて計量をクリアしている。
1R。法DATEがサイドキックを出していく。鈴木がケージへ追ってロー。法DATEの蹴り足を取った鈴木がケージへ押し込んでヒザ。法DATEもヒザを返し、テイクダウンを狙う。潰して背中に乗り、殴ったところで終了。
2R。サイドキックの法DATE、鈴木はパンチ。ケージを背負わせて鈴木がローを打ち込む。法DATEが組むと、入れ替え合って離れる。
法DATEは前蹴り、ハイキック、バックブローと推していく。しかし鈴木が組んでケージへ。バランスを崩した法DATEの上を取る。法DATEは足を絡ませているが、鈴木が鉄槌を連打して終了。
3Rも法DATEがサイドキック。パンチで出る鈴木。組んでケージへ押し込む。いったん離れてロー、蹴り。鈴木が再び組んでケージへ押しつける。倒してパウンドを落とすが、法DATEは足を狙っている。残り1分。足を抜いて立ち、脱出した鈴木が殴って終了。
ジャッジは30-27鈴木、29-28法DATE、29-28鈴木と2-1で鈴木が勝利を収めた。
鈴木 ケージ上コメント
「前回は1年前にパンクラスに出させていただいて、すごいボコボコになりました。今回、少し成長したところを見せられたんじゃないかと思います。納得いかない試合ではありますけど、成長はしていると思います」
第6試合
亀井は2017年よりパンクラスに参戦、昨年はNBTフェザー級優勝を果たしている。今年は内村洋次郎に敗れているが(4月)、気持ちの強さを見せ、期待のかかる選手だ。
対するウーゴはパンクラス初参戦。ムエタイ、キックボクシング、ルタ・リーブリ、柔術をベースとし、現在8連勝中だ。現バンタム級KOP、ハファエル・シウバと同門で、初めての来日やパンクラス参戦に際し、さまざまなアドバイスを受けて来たという。
1R。お互いロー。ドタドタした感じで組みにいくウーゴ。受け止めた亀井がケージへ押し込んでいく。お互い何度も入れ替え合い、ウーゴがテイクダウン。細かく殴る亀井。上半身を起こすが、ウーゴがすぐに寝かせてしまう。亀井が立ち上がるが、バックを取っているウーゴ。投げた! しかし亀井は立つ。殴るウーゴ、ヒジを入れる亀井。亀井がヒザを入れて正対したが、ウーゴがパンチ。終了。
ジャッジは三者10-9でウーゴ。亀井が右目のあたりから出血している。
2R。亀井が蹴り、パンチ。すぐに距離を取る。ウーゴの右パンチがヒット、ぐらついた亀井だが、すぐに立った。しかしウーゴがテイクダウン! ハーフマウントからサイドへ移行し殴る。しかし亀井立った。場内から拍手が起こる。
しかし、組みついて再びテイクダウンしたウーゴ。亀井は腕を狙う。離れたウーゴがパンチから組む。亀井入れ替えてヒザ! さらにパンチで出るが、ウーゴはロー。さらにパンチで出た亀井だが、ウーゴが組んでテイクダウンしたところで終了。
ジャッジは三者10-9でウーゴ。一発一発が重いウーゴの打撃で、亀井の左目の下が腫れている。
3R。ウーゴがパンチ。亀井もパンチで果敢に攻めるが、ウーゴが組んでテイクダウン。一度立つが、亀井は立たず下から足間を狙う。ウーゴも足を取りヒールホールドか? しかし、ウーゴは上になりパウンドへ。残り2分。
ウーゴ再び足を狙うか? 亀井は足をつかんでいるが、残り1分。起きそうになった加盟をすぐにカバーし、バックを取って殴るウーゴ。ハーフからチョークへ。亀井これは外すが、ウーゴが強烈なパウンドを連打して終了。
ジャッジは三者30-27、フルマークでウーゴが勝利。
ややフラついている亀井。思うように攻めさせてもらえず、初めての国際線は苦い敗戦となった。
第7試合
秋葉は2015年よりパンクラスに参戦。大阪大会で頭角をあらわし、2018年からは東京大会でおなじみとなっている。安永有希、荻窪祐輔を下したあと、翔兵に判定負け。今年は3月に元KOP神酒龍一を破ったが、10月のRoad to ONEでは清水清隆にKO負け。出直しの一戦となる。
対するビコは初参戦。衝撃だったボカン・マスンヤネと同じ南アフリカ出身。柔道がバックボーンで、ナショナルチームの一員として、日本の東海大学で合宿を行なったこともあるという。MMAデビュー戦の相手はマスンヤネ。マスンヤネ同様、衝撃の日本デビューとなるか。
1R。お互い蹴り。秋葉がプレッシャーをかけていく。左ハイキックから、うまくタックルに入るが、受け止めたビコが押し込む。パワーがありそうだ。離れた秋葉。再び組む秋葉。ビコがケージへ押し込み、片足をつかんでさらに押し込んでいく。秋葉はヒジ、殴って耐える。ビコはさらに押し込み、ヒザ。苦しい秋葉。しかし離れた!
パンチ、飛び膝を出す秋葉だが、ビコが組んでケージへ。足をかける秋葉だが倒せない。投げ! 秋葉は膝をつきながらこらえる。ビコは足をかけて引き込もうとするが、耐える秋葉。殴るビコ。秋葉が鼻から出血している。しかしヒザ。ビコもヒザを入れ、倒そうとするが、秋葉はこらえる。残り20秒。
ヒザを連打するビコ。見た目にも痛そう。さらに投げを狙うが、秋葉が倒れず踏ん張って終了。
ジャッジは三者10-9でビコ。
2R。ビコが前蹴り、バックキック。秋葉がパンチで出ると、ビコは受け止めてテイクダウン! ハーフマウントに。ガードから上体を引きつける秋葉、ボディを殴るビコ。秋葉が立つが、ビコはまだ捕まえており、ケージへ押し込んで行く。秋葉がヒザから投げ! しかし、ビコはすぐに立ち、さらにバックを取っている。
潰して上になったビコ。マウントからバックマウントへ。しかし、秋葉が回って上になりパウンド! 会場から拍手が起こる。立ってケージへ押し込んだ秋葉だが、ビコが入れ替え。寝かせたいビコだが、秋葉は背中をつかずこらえる。ビコがボディを殴っていき、秋葉が立ったところで終了。
ジャッジは三者10-9でビコ。身長150cmと小さいが、恐ろしいほどのパワーだ。
3R。全くスタミナ切れしていなそうなビコ。秋葉は一発逆転できるか。
秋葉がパンチを振っていくが、ビコが組み、潰して上に。ボディを殴る。しかし秋葉が返した! パウンドを落とすが、ビコがまた倒す。しかし秋葉が立った。ビコが投げて上に。強引に力でねじ伏せるかのような投げだ。ビコはハーフマウントからボディ、パウンド。秋葉も下から殴る。上体を惹きつけ、さらにヒジ。ビコはボディを連打し立たせない。なんとか立ちたい秋葉は必死で動く。しかしビコは上を譲らない。残り40秒。鉄槌、パンチを落とすビコ。残り20秒。諦めず、なんとか立とうとする秋葉だが、ビコがガッチリ押さえ、殴って終了。
ジャッジは三者30-27でビコが初参戦初勝利を飾った。
マスンヤネと違い地味な印象だが、パワーとスタミナが素晴らしいビコ。秋葉にほとんど何もさせなかった。
秋葉は力及ばなかったが、随所に意地と根性を見せた。ビコは押しても動かない壁のような相手だったが、最後まで諦めず、折れない心で立ち向かっていく姿には、会場から大きな拍手が送られた。10月の清水清隆と同様、体格の小さな相手だったが、この2戦で学んだものは大きかったのではないか。2019年を勝利で締めくくることはできなかったが、一層の成長へのステップとしてほしい。
第8試合
当初は金太郎(パンクラス大阪 稲垣組)と組まれていた試合だったが、金太郎がギックリ腰で計量前日に欠場となった。
代打となった三村は、11月にDEEP & PANCRASE大阪大会に出場したばかり。減量が間に合わず67kg以下解約となったが、急すぎるオファーも快諾した心意気や良し。金太郎とともに対策を練ってきたことが活かせるか。
オリベイラは初参戦。第6試合のビクトル・ウーゴ同様、現バンタム級王者、ハファエル・シウバの同門だ。
1R。開始直後、いきなり入る三村。かわしたオリベイラをタックルで押し込む。しかし、オリベイラがギロチンに取り引き込む! しかし、首を抜いた三村。体勢を入れ替えてケージに押し込むが、オリベイラが三村の首をとらえ、フロントチョーク。そのまま絞め、三村が落ちた!
わずか1分で一本極め、オリベイラがインパクトを残した。
オリベイラ ケージ上コメント
「みなさん、ありがとうございます。チームに感謝しています。この勝利をチームに捧げたいと思います」
第9試合
藤野は2013年よりパンクラスに参戦。昨年8月、現王者ヴィヴィアニ・アロージョと第2代王者の座を争ったが、ボコボコにされTKO負けを喫した。しかし、今年4月の復帰戦ではクセニヤ・グーセヴァに判定勝ち。さらに、正王者であるヴィヴィアニ・アロージョが現在UFCに参戦中のため、この9月に組まれた暫定王者決定トーナメントで、エジナ・トラキナスをTKOで下し、決勝に進出した。
このトーナメントでは、浜崎朱加、紅絹、吉田実代ら団体や競技を超えた盟友であり、王者たちが『#フジノこっちおいでよ』と銘打ち激励するなど、16年の長きにわたる格闘家生活の中で、初戴冠を後押しするムードが広がっている。藤野は調印式で「すごく嬉しいが、プレッシャーもある。“いいかげん獲れ”と思われていると思う。最初は自分のためだけにやっていたが、今はみんなに納得してもらいたいと思っている」と話した。
対するヒョンジは、トーナメント初戦が法DATEの計量オーバーにより不戦勝。これが実質的にパンクラスでの初試合となる。調印式では「前回、試合ができなかったのは悔しかったが、試合をやっていたとしても、タイトルマッチは間違いなくやっていたと思う。決勝戦当日は、自分が持っているものをその日に出し、全力を尽くすことだけ考える」と話していた。若いに似合わず冷静な語り口だったが、試合ではどんなファイターなのか。そして、ベルトを手にするのはどちらなのか。
入場では、リズムに乗り腕を突き上げながら歩いていく藤野。その後ろに、藤野を応援する仲間たちが続く。緊張する場面ではあるが、いつにも増して明るく楽しげな入場だ。全員と握手やハイタッチをし、セコンドとハグをして、全てのパワーを吸い込むかのように呼吸し、藤野がケージに上がった。
1R。プレッシャーをかけていく藤野。低めに構えて回る。藤野が左右パンチ。ヒョンジもパンチを返す。パワーは強そう。回りながらじわじわとプレッシャーをかけ、パンチを出す藤野。相手にパンチをもらっても倍くらい返している。藤野、連打。ヒョンジも打つが、藤野が返して終了。
ジャッジは二者10-9で藤野、1人がヒョンジ。
2R。このラウンドも藤野が回りながらパンチを出していく。ヒョンジは距離を取っているが、藤野がタックル。これは切られてしまう。しかし、藤野がパンチから組んでケージへ。ついにとらえた。ヒザ連打! 首を抱える。ヒョンジが入れ替えるが、藤野は離さない。ガクッとヒザをついたヒョンジ。藤野が顔面にヒザ! 残り1分。ヒザを打ち続ける藤野。しかし、しぶといヒョンジ。終了。
ジャッジは三者10-9で藤野。
3Rも藤野がプレッシャーをかけていく。ボディブローから藤野が組み、ヒザを入れていく。首の下に腕を入れた。これはヒョンジに防がれるが、藤野がバックに回った! 残り2分、藤野がチョーク! ガッチリ極まった! ヒョンジがタップ。藤野がついにベルトに届いた!
その瞬間、会場が爆発した! ケージによじ登り、会場に向かって大きくアピールする藤野。会心の笑顔に、会場は惜しみなく大きな拍手と歓声を送った。
藤野 ケージ上コメント
「“あっち側”へ私も入りました! 15年、これまで諦めそうになったこともありましたけど、沈むことなく、みんなが持ち上げてくれました。自分だけでは獲れませんでした。最後にですか? ババアナメんな!!」
藤野 試合後コメント
「入場の時はビックリしました。嬉しいのと、何でみんなこんなに集まってるのって思いました(※セコンドの杉山しずかが1ヶ月前から声をかけ、シークレットで準備していたとのこと)。でも、ノリノリでいつも通りに入場できました。
作戦は、右に回りながらプレッシャーをずっとかけることでした。相手が右を振ってくるのは分かっていたので、右に回ってプレッシャーをかけ続けようと。1ラウンドが終わった時、セコンド(※夫君の津田勝憲)に珍しくこのままで大丈夫と言われました。いつもなら怒られるんですけど(笑)。
ストレートをちょっともらっちゃいましたけど、大丈夫かな、このくらいは、と。組んだらバックに回れと言われていました。思ったよりかんぬきが強くてガブりましたけど、相手は力が強かったです。2ラウンドでは、追い詰めて同じチャンスがあったんですけど、極めきれなかったので、極まってよかったです。
周りにセコンドが多くて(笑)。どのコーナーでも、誰かがアドバイスを飛ばしてくれて。会場中にセコンドがいるみたいでした。最近、全然極めていなかったので、極めて一本勝ちできて良かったです。結構粘られたので、2ラウンドで力を使ってしまってどうしようかと思いながらやっていました。
一本で終わらせられたのは大きかったですね。暫定というのはありますけど、圧倒的なところを証明しなくてはならなかった。誰もが納得する結果を出せて良かったです。
ベルトは、巻いていただいたんですけど、ふわふわして、まだよく分かってない感じです。いつもの勝利と同じ感じかな? まだ実感はないです。
次ですか? 1回戦で闘ったエジナ(・トラキナス)から『藤野がベルトを獲ったら挑戦しに行くから!』と連絡をもらっています。年内にこういう結果を出すことができて、本当に良かったです」
パンクラス年内最終戦は、藤野の戴冠でハッピーに締めくくられた。女子の格闘技がもてはやされている昨今だが、女子格闘技がここまで来るのには、長い年月がかかった。
個人的な感傷ではあるが、元DEEP女子ライト級王者・MIKUが引退セレモニーで語った言葉が忘れられない。
「もし私が男だったら、UFCへ行ったり、もっとたくさん試合をできたのに」
あれから9年。現在の女子格闘家は、UFCをはじめ、当たり前のように様々な舞台で活躍している。そして、その間には、多くの選手が誕生しては引退して行った。
女子の格闘技は難しい。女性には結婚、出産など様々なライフステージがあるからだ。なぜ、女性なのに殴り合わなくてはならないのか? そんな風に聞く人も多かった。ほんの15年ほど前は、まだまだそんな時代だったのだ。
藤野は、その歴史を肌身で感じながら格闘技を続けてきた1人だ。デビューしてからの選手生活を振り返れば、まさに隔世の感ではないだろうか。
ともすれば、男子の陰に隠れがちだった女子格闘技。昔は「女子と同じ大会になんて出られない」と出場を拒否する選手までいたほどだ。そんな中、女子のレベルを上げ、男子の試合と変わらない感覚で自然に見られるようになったのは、女子格闘家たちのたゆまぬ努力があったからだ。今回、藤野の後ろには、会場に集まった仲間たち以外にも、女子格闘技黎明期を一緒に走った格闘家たちも、密かにパワーを送っていたに違いない。
選手生活16年目にしてつかんだベルト。多くの女子格闘家たちの夢を乗せ、闘い続ける姿をまだまだ見たい。
(写真・文/佐佐木 澪)