PANCRASE305に参戦の近藤有己が郷野聡寛との13年ぶり3度目の対決について想いを語る!「相手は郷野さんですから、いやが応にも燃えます」
5月26日、新木場スタジオコーストで開催される「PANCRASE 305」で、近藤有己(パンクラスイズム横浜)と郷野聡寛(GRABAKA)が対戦する。
これが3度目の対戦となる両者。一度目は、2001年12月、近藤が郷野に3RでTKO勝利。郷野は右眼下底骨折の重傷を負い、長期の欠場を余儀なくされた。
二度目は5年後の2006年12月。PRIDEで郷野がスプリット判定で近藤に勝利している。
それから13年――。三度目の対戦を目前にした近藤に話を聞いた。
――お2人の試合は、なんと13年ぶりになります。
「えっ、13年ですか!? そんなに経つんですか……。昨日のことのように思っていたので本気でビックリです」
――試合が決まった時はどんなお気持ちでしたか?
「まずは『試合が決まった』という喜びが大きかったですね。試合ができるんだということが嬉しかったです。ましてや相手は郷野さんですから、いやが応にも燃えます」
――ブログにも「みなぎる!」と書いていらっしゃいましたね。
「やはり、前回負けているというのが大きいです。新しいところで負けたくないですね。たとえ前に何回勝っていたとしても、直近で負けていたら、それは自分が弱い、負けだということですから。今回勝って、自分の勝ちにしたいですね」
――13年ぶりということで、今さら感はなかったですか?
「全然ないです。そういうのは、自分的にはまるでなかったですね。もしかしたら、そういう風に思う人もいるかも知れませんけど、それとは逆に、待っていてくれた人もいるかも知れません。2人の試合をもう一度見たかった、と13年待っていてくれた人もいるんじゃないかなと思います。その人たちが満足できるような、いい試合をしたいです」
――最近は、パンクラスも若い新顔のファンの人たちが増えています。
「そうですね。そういう人たちは僕たちのことを知らないかも知れないですけど、今度の試合を見て知ってもらいたいです。そこで興味を持ってもらえたら。なんだこの人たちは、と思って歴史をひもといたら、13年前にこんなことがあったんだ! と。MMAの歴史を見てみるきっかけになれたらいいですね。
あとあと知ると楽しいことってあるじゃないですか。少し前のことを知ることで、『こうだったんだ』とハマっていくことってありますよね。どんなジャンルでもそうですけど、例えば歌だったら、ある歌手が、この曲の前はこんな曲を歌ってたんだ、以前はああいう曲もあったんだ、と、どんどん興味を持っていくような、そんな感じで見てもらえたら嬉しいです」
――郷野選手は、近藤選手にとってどんな存在なのでしょうか。
「最初パンクラスに来た時、すごく強い人だと思いました。1回目の試合の時も、勝てるなんて思いもしなかったです。本当に強い人だという印象はいまでも変わりません。そう思っている存在とライバルみたいな感じで見ていただけているのは、すごく光栄です」
――郷野選手は、キックや外国での闘いなどを経て、2017年、12年ぶりにパンクラスに上がりました。
「そういう動向は、やはり気にはしていましたね。一昨年、パンクラスに上がると聞いたときは『オオッ』と思いました」
――今回はどんな試合になりそうでしょうか。
「練習は全体的に、全部やって来ました。郷野さんと僕と言えば、おそらく打撃の展開になると思います。でも、そうじゃないものも、あるかも知れない、かも知れない……ですね(笑)。試合は何が起きるかわかりませんから」
――前回2試合を踏まえて、これをやりたい、こうしたいことって何ですか?
「やっぱり、前回負けているので勝ちたいです。『勝つ』ということ。はっきりとした形で勝ちたいですね」
――さて、この11日、近藤選手はパンクラスに入門されて25年になったそうですね。
「そうなんですよ。僕、数字とか計算とか苦手なんですけど、なぜかそれだけは覚えていて、毎年『ああ、この日だったな』と思うんです」
――25年と言えば、そのとき生まれた赤ちゃんが、もう大人ですからね。その長い間、近藤選手は格闘技と向き合って来られました。いま、近藤選手の中で格闘技とはどんなものになっていますか?
「いい意味で変わって来ていますね。自分の中で本当に好きなものになって来ていますし、練習そのものが喜びで、毎日楽しくやらせてもらっています。僕は頂いたオファーって基本、断らないんですけど、断る理由っていうのがよくわからないんですよね」
――以前勝っている人とはやりたくないとか、色々あるみたいですが……
「そうなんですね。僕、算数が苦手ですし、計算が全然できないから(笑)。本当に、計算ってまるでできないんですよ。子供のころも、ソロバンとか塾とか『絶対行かない!』って断ってましたから。そしてやっぱり、試合ができるってありがたいですし、嬉しいことですから」
――試合の時は淡々としてらっしゃるように見えます。
「そう思っていただけているのなら、それ、すごい誉め言葉です」
――20代の頃はギラギラされていましたけど、今はそういう雰囲気ではないですよね。
「単純に誰かと闘ってどっちが強いかということだけではなくて、今は、いかに自分を鍛えるかということを考えるようになりましたね。身体もそうですし、自分そのものをいかに鍛錬して行くか。それを、格闘技を通してやっているような感じですね」
――こういった変化は、何かきっかけがあったのですか?
「何かがあったわけじゃなくて、自然にそういう風になって来ました」
――以前、死ぬまで現役でいたいとおっしゃっていましたが、今のお話をお聞きすると、近藤選手の格闘技は、まさに終わりのない道ですね。
「うん、そうかも知れないですね」
一度目の試合のあと、近藤は「郷野選手は、パンクラスのことを馬鹿にしたような発言が多かった。それに対する悔しさを晴らしたという意味でお客さんも喜んでくれたと思うが、そういうのは今回で終わりにしたい。自分たちの闘いは憎しみ合いじゃないので」と語った。
この試合は、パンクラス対GRABAKAの対抗戦でもあり、パンクラス生え抜きの近藤は、絶対に負けるわけにはいかなかった。パンクラスを席巻しようとする新勢力に、パンクラス勢の強さを徹底的に見せつけなくてはならなかったのだ。
しかし、13年の時が経ち、パンクラスも、格闘技界も、近藤も変わった。
「試合」である限り、勝敗はもちろん大切だ。しかし、最近の近藤は、それを超えたところを見ているようでもある。「勝ちたい」と語っていたが、そこに滲み出る人間味も同時に味わいたい一戦だ。
<文・佐佐木 澪>
<写真提供・PANCRASE>