【試合結果】2・4 PANCRASE STUDIO COAST大会 【フライ級KOP】仙三vs若松佑弥 アキラvsヒカルド・チルロニ 三浦彩佳vsソ・イェダム 小川徹vs翔兵
『PANCRASE 293』
日時:2018年2月4日(日)
開始:15:30
会場:東京・STUDIO COAST
観衆:2040人(超満員)
【本戦】
▼第1試合 バンタム級 3分3R
●神田T800周一(T-BLOOD)
判定0-2
○林 大陽(CAVE)
▼第2試合 バンタム級 3分3R
●合島大樹(GUTSMAN)
2R 2分25秒、TKO(三角締め→レフェリーストップ)
○河村泰博(和術慧舟會AKZA)
▼第3試合 ストロー級 3分3R
●リトル(GUTSMAN)
判定0-3
○高島俊哉(U-FILE CAMP)
▼第4試合 ライト級 3分3R
●小林 裕(U-FILE CAMP)
判定0-3
○菊入正行(NEVER QUIT)
▼第5試合 ライト級 3分3R
—網 潤太郎(和術慧舟會AKZA)
(丸山の計量失敗のため試合中止)
—丸山数馬(TEAM LTDR)
▼第6試合 ウェルター級 3分3R
○GONO(GRABAKA)
判定2-1
●脇本恭平(T-Rex Jiu-Jitsu Academy)
▼第7試合 フェザー級 5分3R
—コンバ王子(マッハ道場)
(ボンフィンの計量失敗のため試合中止)
—イズマエル・ボンフィン(Cerrado MMA)
▼第8試合 フライ級 5分3R
○端 貴代(和術慧舟會AKZA)
2R 3分20秒、チョークスリーパー
●バーバラ・アシオリ(ADOIS FIGHT)
▼第9試合 ウェルター級 5分3R
●手塚裕之(ハイブリッドレスリング山田道場/TGFC)
判定1-2
○グライコ・フランサ(ASTRA FIGHT TEAM)
▼第10試合 フライ級 5分3R
●小川徹(TRIBE TOKYO M.M.A)
判定0-3
○翔兵(升水組)
▼第11試合 ストロー級 5分3R
○三浦彩佳(TRIBE TOKYO M.M.A)
判定3-0
●ソ・イェダム(Paraestra Cheongju)
▼第12試合 セミファイナル ライト級 5分3R
○アキラ(フリー)
判定3-0
●ヒカルド・チルロニ(ASTRA FUGHT TEAM)
▼第13試合 メインイベント フライ級キング・オブ・パンクラス タイトルマッチ 5分5R
○仙三(FREEDOM@OZ)
5R 2分10秒、TKO(ひざ蹴り→レフェリーストップ)
●若松佑弥(TRIBE TOKYO M.M.A)
※仙三がタイトル初防衛。
【プレリミナリーファイト】
▼第1試合 フライ級 3分3R
○中村龍之(Lotus世田谷)
判定3-0
●立花啓介(スーパータイガージム田中塾)
▼第2試合 バンタム級 3分3R
○萩原一貴(リバーサルジム武蔵小杉 所プラス)
1R 1分14秒、アームロック
●坂本瑞氣(総合格闘技 宇留野道場)
▼第3試合 フェザー級 3分3R
●手塚勇太
判定0-3
○DARANI DATE(Team DATE)
▼第4試合 フェザー級 3分3R
●齋藤拓矢(ALLIANCE)
判定1-2
○渡辺謙明(パラエストラ東京)
▼第5試合 ライト級 3分3R
●上田厚志(総合格闘術 骨法烏合会 矢野卓見道場)
判定1-2
○深谷誠(和術慧舟會HEARTS)
仙三が記憶を飛ばす激闘で若松を降しフライ級KOP初防衛!PANCRASE愛を貫く翔兵が「仙三選手を倒せるのは僕しかいない」と闘志を燃やす!三浦彩佳が不調を覆し辛勝!
15年間ホームグラウンドとしてきたディファ有明を離れ、今年からSTUDIO COASTに会場を移したパンクラス。UFC FIGHT PASS、Abema TVでの生中継のほか、TOKYO MXでも地上波放送され、華やかに新スタートを切った。
指定席は完売とファンの期待も高く、新たに50席を増やすなど2040人の観客で会場は隙間なく埋まった。
場内はディファ有明より少々狭く感じたものの、客席の設営も見やすく、試合を身近に感じることができ、会場は熱く盛り上がった。
また、会場外にはパンクラスロゴの焼印が押されたソーセージはじめ、カレーや焼きそばなどの屋台が並び、観客は会場内外を自由に行き来して試合のみならずお祭り的な雰囲気を楽しんでいた。
第1試合
1R、パンチを出していく林。神田もプレッシャーをかけながらパンチを振っていく。神田がパンチからケージへ詰めるが、ブレイク。終盤、林がミドル。神田は蹴り足を取るが、林は倒れずこらえて終了。
2Rも林が果敢にパンチを振っていく。プレッシャーをかける神田。林の足を取りケージへ押し込んで倒す。しかし、林は殴って立ち、ヒザ連打。ブレイク。林はパンチで出て行き、押し倒すようにテイクダウン。神田が立って終了。
3R。林がパンチで出ると、神田がケージへ押してテイクダウン。林が立ってヒザを入れ離れると打ち合いに! 林は効かされたか。しかし、組んでケージへ押し込む。投げられず離れるが、すぐにパンチで出る。両者ともに疲労が見えるが、下がらない。林がケージ際でテイクダウンするが、神田は立ち、打ち合い! 殴り合って終了。
判定は3-0で林。積極的に前に出る姿勢と手数で上回った。次戦では決め手となる打撃を見たいところ。
第2試合
1R。体を振る合島。河村はスライディングして足を取りに行くが、合島は付き合わない。さらに川村がスライディング。切る合島。河村がスタンドに切り替えると、合島はロー、フックから打ち合う。打撃をはさみ、再びスライディングする川村だが、合島は避ける、河村は組んで引き込み、合島がハーフマウントに。合島は立ちながらヒジ連打。さらにかぶさるが、終了。
2R。近づきたい河村だが、合島は警戒しパンチで距離をとる。お互い打ち合うと、川村が合島のパンチでバランスを崩し、合島が上に。しかし、河村は三角絞め! これが極まり、レフェリーが試合を止めた。
第3試合
1R。パンチからタックルに入るリトルだが、テイクダウンには至らず。次に高島が低い片足タックルを仕掛けるが、リトルも倒れず、そのまま殴る。高島はバックを取りヒザ連打。リトルはヒジを打ち込む。打ち合いとなり、リトルがタックルからテイクダウンしたところで終了。
2R。高島はタックル、片足タックルを仕掛けるが、リトルは倒れない。リトルが組んで殴理、型明日を狙うが、高島はフロントチョークに。どちらかが出血している。ケージ際へ持っていった高島はゆっくりバックに回り、さらにマウント! リトルは消耗しているのか、ボディを殴るのみ。高島がパウンドを落として終了。
3R。お互いパンチ。高島が片足をとりケージへ押し込むと、リトルはパンチ連打。出血している高島が回ってサイドに。殴り続けるリトルが腕を狙うが、高島が首を抜いて上になる。最後はスタンドに戻り、パンチを打ち合って終了。
判定は三者29-28で高島が勝利を挙げた。
第4試合
菊入のセコンドにはISAOがつく。ISAOは小林の実弟だが、菊入と同門。
1R。菊入の蹴り足をとり、小林がケージへ押し込む。ヒザを打ち込んで投げるが、テイクダウンはできず菊入は尻餅状態に。菊入はケージを使って立つ。小林はヒザを入れて再びケージへ。入れ替え合い、小林が殴って終了。
2R。小林が片足タックルからケージへ押し込むが、離れて打ち合う。小林は再び組んでケージへ押し込むが、菊入が離れる。さらに打ち合ったあと、小林がケージへ押し込みヒザ連打、菊入はヒジ連打。菊入が離れると、打ち合って終了。
3R。小林が組んでケージへ押すと、菊入が入れ替える。小林がさらに入れ替え、ヒザ連打。打ち合い、離れると小林が鼻から出血している。菊入のボディが決まる。さらに打ち合って終了。
ジャッジは3-0で菊入が勝利。
網潤太郎あいさつ
試合が消えた網がケージイン、挨拶した。
「1年以上パンクラスのケージに入っていないので、今回試合をするのをものすごく楽しみにしていました。次回は、ちゃんと試合用のパンツを穿いてグローブを着けてここに立てるように、ますます頑張ります」
第6試合
GONOこと郷野聡寛のパンクラス復帰第2戦。昨年10 月、約12年ぶりにパンクラス参戦。ブラジルからの帰国後ということもあり気合いを入れていたが、アキラに判定負け。終わりも決めているだけに、本来のウェルター級に戻し、必ず勝利を挙げたいところだ。
一方の脇本はパンクラス初戦。レスリングがバックボーンで、柔術も紫帯というグラップラーだ。キャリアはまだ2戦だが、ビッグネームに勝てば一気にインパクトが残せる。こちらも必ず勝ちたい一戦だ。
1R。前に出る脇本。ケージへ押し込み、片足をとって転ばせるとハーフマウント。GONOは尻餅状態に戻し、ヒジを打ち込む。しかし、後頭部に当てて試合口頭注意。引っこ抜きたい脇本だが、GONOはすぐ尻餅状態に戻す。脇本は策を変え立って猪木アリ状態から殴る。ここでGONOが反転、上に! GONOが殴って終了。
2R。プレッシャーをかけるGONOに組みついていく脇本。ケージへ押すと、GONOはヒザ連打。脇本もヒザを返すがブレイク。
GONOがパンチからケージへ押し込むが、脇本が投げて上に。頭を抱えて殴る。口や鼻を塞がれ苦しいGONOだが、反転! 会場から拍手が起こる中、肩固めに入るが極まらず。GONOはマウントに移行、殴ったところで終了。
3R。GONOに少々疲れが見えるが、パンチを振るっていく。脇本は突撃タックルからケージへ押し込む。脇本はヒジ連打。GONOが立つと脇本がケージへ押し込む。ヒザを打ち合うが、GONOのヒザがローブローとなり、タイムストップ。
再開。脇本はタックルを仕掛けるが、切られてしまう。残り時間わずかでテイクダウン、パウンドを落としたところで終了。
ジャッジは二者29-28GONO、1人が29-28脇本でGONOが勝利した。
マイクを持ったGONOはお世話になってブラジルの人たちに向かい、ポルトガル語で感謝の言葉を述べた。また、4月に中国で試合が決まっていることも明かし「またパンクラスに呼んでもらえるように勝ってきます」と宣言した。
「44歳ですけど、年齢なんて、ただの数字。大事なのは、ハートがどれだけ強いかです。元気な44歳、また帰ってきます!」
第8試合
端は2004年にSMACK GIRLでプロデビュー。同年、アブダビコンバット日本予選で優勝し、本大会でも3位入賞。さらに、第3代スマックガール ミドル級王者、初代DEEP JEWELSミドル級王者、同バンタム級王者と輝かしい実績を持つ。VALKIRIEなど国内のみならず、ROAD FC、Strike Forceなど海外経験も豊富に持つ。女子格闘技の黎明期を支えた1人であり、現役を続けるレジェンドだ。
2014年には女子のみの総合格闘技大会Invictaにも参戦。Invictaはパンクラスと提携を結んでおり、再び世界へ飛び出すチャンスともなる。
アシオリーはムエタイと柔術がバックボーン。プロデビュー以来4連勝中だったが、昨年7月のInvictaで初めて負けを喫している。
1R。アシオリーはパンチを出していく。橋は冷静に様子をみる。アシオリーの前蹴りの足を取るが、アシオリーはこれを抜き、さらにパンチ。アシオリーは手数を出していくが、端はほとんどもらっていない。端がパンチから組み、ケージへ。ヒザを入れながら押し込んでいく。アシオリーもヒザを返すがブレイク。
アシオリーはパンチを振るっていくが、橋はもらわない。ローからパンチ、さらにアシオリーの蹴りをキャッチしテイクダウン! 橋は鉄槌連打。アシオリーは三角絞めを狙うが極められず終了。
ジャッジは二者10-9で端、1名がアシオリー。
2R。パンチを振っていくが、当てていないアシオリー。端は組んでケージへ。アシオリーが入れ替えるがすぐに戻し、頭でアシオリーのアゴを押し上げてかかとを浮かせテイクダウン! サイドポジションを奪う。アシオリーは足をかけてくるがさせず、ヒジ、パンチを打ち込む。回ったアシオリーからバックマウントを奪い、チョークスリーパー! アシオリーがタップアウトした。
<ケージ上コメント>
端貴代
「Invictaとの提携試合第1弾を組んでいただいてありがとうございます。今日勝って、日本女子MMAの皆さまの架け橋になれたのではないでしょうか。そして私は、これからどこへ行くのでしょうか?(笑)。Invictaにも出たいですし、パンクラスでベルトも獲りたいです。これからもよろしくお願いします」
第9試合
1R、リラックスしている様子の手塚。ローキックでプレッシャーをかけて行く。フランサは前蹴り。パンチで中に入っていく手塚。様子を見ながら右ハイ、ロー、パンチと打っていく。フランサもフェイントをかけながらパンチを出す。終了。
ジャッジは二者10-9でフランサ、1名が手塚。
2R、お互いプレッシャーをかける。フランサがパンチ。手塚はパンチ、ボディ、ミドルと打ち分け、さらにボディ連打。手塚はさらにパンチを振っていくが、フランサの右ジャブがヒット、ぐらつく。すぐに立て直したが、さらにフランサのパンチをもらってしまう。苦しい手塚は組みついてケージへ押し込む。しかし、フランサは離れてロー、左ミドル。手塚も売っているが、フランサの攻撃をもらい始めた。フランサがフック、左ハイ。終了。
ジャッジは三者10-9でフランサ。手数は少ないが、プレッシャーをかけたフランサがこのラウンドを制した。
3R、手塚の疲労の色が濃くなっている。パンチ、蹴りから片足タックルに入るが、フランサに切られてしまう。お互いに打ち合う。手塚は走ってタックル、ケージに押し込むが、すぐに抜けられてしまう。攻撃の手を止めない手塚だが、フランサのペースに引き込まれていき、顔が腫れてくる。
フランサが引き込んで首を狙うが、手塚はバスターで叩きつけて外し、パウンドを連打。終了。
手数は多くないながら、終始、自分のペースを崩さず闘ったフランサが2-1で勝利。
<ケージ上コメント>
グライコ・フランサ
「私は日本で闘うことをとても誇りに思っている。手塚はとてもタフな選手だった」
第10試合
ネオブラッド・トーナメント優勝者同士の対戦。
小川は2015年スーパーフライ級優勝。パンクラスでは9戦8勝、前戦は山本篤にKO勝ちしている。同日メインで闘う若松佑弥と同門で、現在6位。
一方の翔兵は2014年バンタム級優勝。パンクラスでは11戦8勝。前戦は若松にTKO負けし、タイトル挑戦を逃している。現在7位だ。
両者ともに、メインイベントのタイトルマッチを当然意識していることだろう。今後のタイトル戦線含め、見逃せない一戦だ。
1R。翔兵は飛び込んでパンチを打っていく。小川はあまり手を出さず見ている。小川のパンチヒット! 翔兵、少しグラつくが、すぐにまたパンチを打つ。翔兵が距離を取りながら飛び込んでパンチを打ち、手数を稼いでいく。小川は落ち着いてパンチを返していく。小川が片足を取ってケージへ押したところで終了。ジャッジは三者10-9で翔兵。
2R。プレッシャーをかけながらパンチを打っていく翔兵。小川もパンチを返していく。翔兵の右パンチで小川がダウン! しかし、すぐ立つ。翔兵は追い討ちをかけないが、同じようにパンチを打っていく。小川は大きくパンチを振るが。翔兵のパンチで再びグラつく。小川ミドルからロー、そして打ち合いに。出ていく小川だが、パンチをもらってしまう。翔兵のペースで終了。ジャッジは三者10-9で翔兵。
3R。小川のタックルをきる翔兵。小川は大きいパンチを振るう。翔兵はパンチとローを混ぜて攻める。ポイントで負けている小川は、左ミドル、ハイキック、前げりと攻め飛び込んでいくが、決め手が出ない。翔兵が組んでケージへ押し込むが、すぐに離れる。残り1分。小川は出ていくしかない。翔兵は、カウンターのタックルでテイクダウン! バックを取り殴る。小川が立ち、整体したところで終了。判定3-0で翔兵が連敗を止めた。
思わず流れそうになる涙をこらえ、ケージでマイクを持った翔兵は、なぜか「会社で後輩に加齢臭を指摘された話」を披露。前日計量では、周りの人への感謝を口にしていただけに意外だったが、照れ隠しと、翔兵流の観客を楽しませようという精神だったのだろう。以前はペットショップで働いている動物好きな一面を明かし会場を沸かせた翔兵らしいマイクアピール(?)だった。
前日コメントでは、カシアスジムで4ヶ月、みっちりとボクシングを練習してきたと話していたが、その成果ははっきりと出ていた。また、ボクシングをやることによって体幹をブレさせず、バランスの良い動きも身についたという。これが柔道の動きともリンクし、パンチの精度がグンと上がったという。
「時間はかかりましたけど、近距離、遠い距離、それからタックルと、武器をたくさん持つことができて、ポテンシャルも高まりました」と話した。また「小川選手は綺麗なボクシングをするのでやりやすかったです。逆に、向こうはやりにくかったんじゃないかな。いつも、相手の味わったことのないようなことをやってやろうという気持ちで試合に臨むんですが、今回は敢えて綺麗にやらないように心がけました。普通のボクシングに、いろいろな動きを混ぜることによって、読みにくかったんじゃないかと思います」と振り返った。
危なかったところを尋ねると「目を怪我したところですね。パンチが目に入って、見えなくなってしまって。でも、その時、相手側セコンドの“今見えてないぞ!”という指示が聞こえたんです。それで、多分出てくるなと思って、カウンターを取れると思いました。それで、カウンターを狙って行きました。目は見えにくかったですけど、気持ち的には余裕を持ってやれました」と話した。
幸先の良いスタートを切った翔兵。もちろんタイトルを目指して闘っていく(※このインタビューは試合翌日のもの)。
「あのメインは、本当にすごい試合でした。仙三選手のことは普段からリスペクトしていますし、若松選手のこともリスペクトしています。でも、次は自分です。実は、仙三選手に対する秘策はもう考えています。もちろん、もう1試合2試合勝たなくてはたどり着けないと思いますけど、仙三選手を倒せるのは僕しかいないと思っています。その秘策が何かはまだ言えませんが、仙三選手と向かい合うその日まで温めて、磨いて行きますよ」と自信を見せた。
以前から度々話していたように、翔兵はパンクラスが大好きだという。
「僕は最初からパンクラスに上げていただいて、パンクラスでしか試合をしたことがありません。人それぞれ行きたい道があるので、他の選手を否定はしませんが、僕は、日本で、パンクラスで闘って行きたいし、ここで強くなって、“俺と闘いたいなら、ここへ来い!”と言いたいんです。外へ出て行くのも一つの道ですけど、外からこっちへ引っ張り込んで、国内を盛り上げるという方法もあると思う。僕は、日本の格闘技を盛り上げるためにも、ずっとパンクラスで闘って行きたいと思っています。
初めて見たベルトは、パンクラスのベルトでした。あのシルバーのベルトはすごくかっこよくて、本当に輝いて見えました。あのベルトを巻いて、どんどん強い相手を闘って行きたい。年内にはベルトを巻けるよう頑張って行きます」
と語った。始まったばかりの2018年。翔兵の活躍に注目していきたい。
第11試合
髪を切り、かなり無理をして体重を合わせてきた三浦。計量の場では笑顔を見せながらもなんとか質問に答えていた。試合当日は回復している様子だったが、どのような動きを見せるのか。王者・朱里がUFCに参戦中の今、負けるわけにはいかない。
対するイェダムはプロ2勝1敗。本来は寝技を得意とするが、今回はスタンドで勝負したいという。果たしてどのような闘いを見せるのか。
1R。イェダムがパンチで出てくると、三浦は組んでケージへ押し、首投げから袈裟固め。しかし、イェダムは外して立ち、ケージへ押し込んでヒザ。三浦は再び投げ、殴る。固められ動けないイェダム。三浦はアームロックを狙うがこれは行けない。固め続けるが、イェダム返した。バックマウントにナチチョークを狙う。三浦は首は防いでいるものの、抜けられない。残り30秒。イェダムは腕を狙うが終了。ジャッジは二者10-9で三浦、1名がイェダム。
2R。三浦はヒザ、ローからケージへ押し込み、投げて固める。三浦は殴りながらアームロックを狙うが極められない。細かく殴る。このまま三浦が固め続けて終了。
3R。三浦がパンチで出る。イェダムはローからタックルを仕掛けるが、三浦はこれをきる。三浦のパンチに対し、大きくパンチを振るってくるイェダム。三浦も前に出るが、なかなか捕まえられない。しかし、三浦が組んでケージへ。イェダムは踏ん張るが、三浦が投げたところで終了。
ジャッジは二者29-28三浦、1名イェダムで三浦が勝利。
減量のせいなのか、動きはあまり良くなかった三浦。勝ちはしたものの、やはりフィニッシュしなければならなかった。次戦では成長したところを見せて欲しい。
第12試合
ライト級1位のアキラは2013年よりパンクラスに参戦。フィジカルと打撃の強さで8勝2敗1分。負けたのは、北岡悟と第6代王者の徳留一樹のみだ。
対するチルロニは、BellatoR7戦3勝4敗。また、DREAMで青木真也と対戦したリッチ・クレメンティに勝利している強者だ。アキラが勝ってタイトル挑戦に名乗りを上げるのか、チルロニが勝ってパンクラスデビューを飾るのか。
1R、チルロニがいきなり右ミドルを放つ。さらに左ハイキック。アキラはカットしているが、重い音が会場に響く。チルロニは足を使って攻めるが、アキラはパンチを出しながら蹴り脚を取りテイクダウン。チルロニはすかさず三角絞め狙うが、アキラはケージ際に持っていきボディ連打。
いったんブレイクとなり、スタンドから再開。再び重いミドルを蹴るチルロニ。身長差のあるアキラは飛び込んでパンチ。チルロニが少しパンチを嫌がる表情を見せる。チルロニが蹴り、アキラがパンチで攻めて終了。ジャッジは三者10-9でアキラを支持。
2Rもパンチで前に出るアキラ。チルロニは蹴り、さらにアキラのパンチのタイミングにヒザを合わせてくる。アキラがケージへチルロニを押し込む場面もあったが、チルロニが蹴りの強さで三者10-9の支持を得る。
3R、チルロニのローの足をキャッチしたアキラだが、捕まえ切れず。チルロニはヒザを多用するが、ローブローとなりタイムストップ。
再開すると、アキラはパンチで前に出るが、チルロニを捕まえることができない。ケージへ押し込んでもパンチを振るって離れるチルロニ。しかし、アキラはパンチで食らいついていく。右のパンチでチルロニをダウンさせて殴る! チルロニはヒジで応戦。アキラは立ちそうになるチルロニのバックを取り、ケージへ押してヒザを打ち込む。さらに、投げ捨てるようにしてパンチ連打! ジャッジは三者29-28で、素晴らしい追い込みを見せたアキラが勝利。
マイクを持ったアキラは「久しぶりにダウンを取れたんですけど、決めきれなくてすみません。でも、今回、強い外国人選手に勝ったので、次はいいマッチメイクをお願いします」と、タイトル挑戦の意思表明をした。
第13試合
ストライカー同士のタイトルマッチ。
王者・仙三は元プロボクサー。MMA転向後、2014年よりパンクラスに参戦。ネオブラッド・トーナメント優勝は果たせなかったものの、2015年からは7戦1敗の戦績を誇る。昨年8月には、2015年以降唯一の黒星をつけられたマモルからベルトを奪取している。
挑戦者・若松は、2015年からパンクラスに参戦。2016年には、すべてTKO勝ちでネオブラッド・トーナメント同級優勝、MVPを獲得した新鋭だ。NBT後も4連勝中で、判定決着は1試合のみ。一気に1位まで駆け上がっている。まさに破竹の勢いの新鋭は、師匠・長南亮の愛弟子として「リトル・ピラニア」の愛称を持つ。
お互いストライカー同士の対戦。激しい試合が予想される。計量後のコメントでは仙三が海外(UFC)参戦を初めて表明。口にはしなかったものの、若松も当然、海外での闘いを想定しているだろう。今後を占う意味でも重要な試合だ。KO決着は必至、最後に立っているのはどちらか。
1R。開始すぐから仙三が行く気満々。回りながら飛び込んでパンチを打つ。若松はフェイントをかけながらタイミングを窺う。仙三は低い位置からアッパー、パンチを繰り出す。さらにプレッシャーをかけて行く仙三。若松もボディを入れるが、仙三のパンチが効いた! さらに仙三が追い込んで終了。ジャッジは三者10-9で仙三。
2Rも仙三は体を振り、気合が溢れる。フェイントをかけながら、下から打ち上げるようなパンチ。冷静に見ていた若松が右フックを効かせ、さらにパンチ、ロー。しかし、振り回すのではなく、よく相手を見ている。仙三が飛び込んでボディ。若松は左ジャブで終了。ジャッジは二者10-9で若松、1人が10-9仙三。
選手自身が短期決着を予想していたが、3Rへ。若松は前に出てパンチを打って行くが、あとひとつ距離が掴みにくい感じ。仙三はジャブ、ローと打ち込んで行く。若松は首相撲からヒザ。ヒートアップした会場から「仙三コール」「佑弥コール」が湧き上がる。お互い鼻血が出ている。終盤は仙三がパンチからのヒザでの攻め。ジャッジは三者10-9で仙三。
4R。若松はこの9日で23歳を迎える。王者・仙三は35歳。しかし、若松の方に少々疲れが見えるか。仙三は4ラウンドを迎えても勢いが止まらない。どんどん打ち込んで行く仙三に対し手数が少ない若松だが、終了間際、一気に試合が動いた! 若松の右パンチで仙三がダウン! 一気にパウンドを打ち込む若松。なんとか立ち上がる仙三だが、足元がフラついている。若松は首相撲からヒザ、君ついてくる仙三を引き剥がしてラッシュ! これで勝負あったかと思われたが、終了。仙三はブザーに救われた。
ついに最終ラウンドへ。お互い回る。若松はパンチ。仙三は首相撲からヒザ、ケージへ押し込む。先ほどのダメージは残るものの、さらにヒザで攻める仙三。若松は明らかに消耗しており、ガードも下がってしまっているが、それでも諦めず前に出て行く。しかし、仙三の攻撃は止まらない。ヒザを多用し攻め込んでいく。組んだ仙三はケージに詰め、パンチ、ヒジ、さらにヒザ! ついに若松の力尽き、レフェリーが止めた。
仙三が初防衛。仙三はマットに突っ伏し涙を流す。酒井正和・パンクラス代表にベルトを巻かれ、廣瀬隆司コミッショナーから認定証を受け取ると、万感の思いとともに再び涙が溢れた。
壮絶な闘いだった。
前日計量では「過去最高の仕上がり」と語っていた仙三だったが、それは体調ではなくメンタル面のことだったという。ずっと体調を崩し、練習もままならなかった。試合当日も熱があり、試合内容も途中から全く記憶がなかったほどだった。しかし、見ている側にそんなことを全く感じさせず、両拳を骨折しながらTKO勝利を掴み取った。
対する若松も、仙三に対する対策をよく練ってきたことが窺えた。負けてしまったが、気持ちの強さ、そしてポテンシャルは、まごうことなく「リトル・ピラニア」だ。負けても決して恥じることはない。初めての5R、そしてこの壮絶な闘いの経験は、必ず若松を成長させてくれるはず。今後の活躍にますます期待したい。
<ケージ上コメント>
仙三
「今日はたくさんの皆さんがきてくださり、いつも応援ありがとうございます。今回、試合まで色々あって、すごく苦しくて、体調も崩して練習もあまりできませんでした。そして、ずっと一緒に暮らしていた祖母が一週間前に亡くなり、遠くへ行ってしまいました。
すごく不安で、でも、いつも応援してくださる皆さんのおかげで最後まで頑張れました。ありがとうございます(涙を押さえる)
今日の(天を仰ぎ)勝ったぞ!!
最強の挑戦者の若松選手に勝ったので、UFCに行きたいです。自分はUFCファイターに負けない、気持ちという武器があります。必ず面白い試合をするので、オファーをください。誰にも気持ちで負けません。そして、日本で一番強いストライカーは俺です。これからもパンクラスの仙三を応援してください」
<試合後コメント>
仙三
「試合のこと、何も覚えてないです。記憶が飛びました。最初の方は、闘ってるなっていう覚えはあるんですけど。4ラウンドでダウンしたことも、5ラウンド闘ったことも、勝ったことも全然覚えていないです。気がついたらマイクを持っていたっていう感じです。
実は、記者会見(調印式)の時からずっと体調を崩していました。勝ったから言えるんですけど、実は今日も熱がありました。ギリギリまで練習できずにいましたが、試合の5日くらい前に少し良くなったので、打撃のスパーリングをやりました。
二週間くらい前までは苦しくて、心が折れていました。マモル選手に負けた時は入院しましたけど、今回は入院はしなかったけど、なかなか練習ができなくて。ちょっと良くなったかなと思うと、今日も熱が出てしまいました。5ラウンドは絶対できないと思っていましたけど、なんとかやれたみたいです。
絶対に負けない、と、気持ちだけはすごく入っていました。「過去最高の仕上がりです」っていうのは、実はコンディションのことじゃなくて、実はメンタル面のことを言っていたんです。
若松選手は強いので、対策をしても、実際にやってみないとわからないと思っていました。でも、終わってみれば結構、対策ができていたのかなと思います。
自分は打撃で打ち合うと決めていたので、マモル選手の時とは闘い方は変えました。マモル選手は蹴りもタックルもあるので、あまり踏み込みすぎると危ない。若松選手に対しては、上体を上げるとパンチをもらってしまうので危ないと思って、低く構えました。
もちろん、逆に対策もされていたと思います。序盤とか、かわされてなかなかパンチが当たりませんでした。
でも、今日は殴り合うつもりで、殴り勝つと決めていました。寝技もできますけど、若松選手に対しては殴り勝てないとダメだと思っていたからです。
両手の拳が折れてしまったんですけど、覚えていません。ヒジを結構使ったねと言われても、ヒジを打ったことも覚えていないんです(笑)。ヒザは、普段あんまりやってないんですけど、なぜか出ましたね(笑)。結構、そういうことってあるんです。普段そんなにやってないことが、試合で出るということが。
UFCに関しては、やはり自分も海外で闘いたいという気持ちは強いです。年齢のことを言われますけど、自分自身は全然気にしていません。僕の武器は気持ちです。ボクシング時代から、どんな強い相手に対しても、気持ちで負けたことはありません。必ず面白い試合をするので、ぜひオファーをいただきたいです」
カットした右まぶたと両拳から出血していた。曲がってしまった指が痛々しい。しかしそれでも、少しも嫌な顔を見せることなく質問に答えてくれた仙三は真のプロだ。まずは体調を整えてほしい。今後の活躍にますます目が離せない。
(写真・文/佐佐木 澪)