【インタビュー】元全日本プロレス取締役・青木謙治氏がケンドーカシンと10年ぶりの再会を果たしたわけ
8月にケンドー・カシンに関する『フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで』という本が発売された。この本ではケンドー・カシンの語られなかった過去が綴られている他、ボンバー斎藤レフェリーに加え、元・新日本プロレス管理部長であり元・全日本プロレス取締役の青木謙治氏が対談を行っている。
2006年のキングスロード以降プロレス界から離れていた青木氏に、今回の経緯に関してインタビューを行った。
――まずは今回こういう形で話がありいかがでしたか?
「突然の連絡でした。業界離れて10年なんで、未だにこういうお誘いがあるのは嬉しかったですね。この業界にいたという思い出になればいいかなと」
――この本を読まれてみて、如何でしたか?
「面白かったです。あっという間に読み切れますね」
――カシン選手はどういった関係だったのですか?
「運営者側と選手という立場だったですけど、一緒に新日本から来た仲間ということで、ここにも書いてありますけど非常に心配してくれてましたね」
――青木さんから見てカシン選手の人物像は
「ちょっと理解不能かと思います(笑)でも、本質的には僕にとってのカシンは温かい人だなと。多分本人の前で言ったら『ふざけんな』って胸ぐら掴まれるんでしょうけど(笑)」
――カシン選手とはどういうエピソードがありますか
「詳しくはこの本に書いてあるんですけども、カシンが辞めた理由っていうところでいうと、選手に対して固定費が多いという部分で、思惑はあったのかもしれないけど会社経営が楽になるだろうというところが発想だったと思いますね。全日本の時代の話ですね」
――当時のプロレス界の状況はどういう状況だったのでしょう?
「今よりも業界の熱はあった時代だったと思うんですけどね、当時新日本から全日本に行くっていうときは今の新日本よりもちょっと落ちた……いや、同じくらいかな。業界の勢いが悪くなっちゃってたところで。そのくらいの新日本のところで独立していったところで、カシンがなんで動いたかってところを僕は理由は知らなかったんですね。この本を読んで知ったことが反対にあったぐらいで。まあ『面白かった』『楽しかった』という時代ですね、ホントに」
――当時は新日本で言うと、誰が活躍していた時代でしょうか
「基本的には三銃士の時代。橋本真也が離脱してZERO1に行って、そのあとの世代の人間がPRIDEとかに出るようになった頃ですから、カオスな状況だったんですよね」
――その頃から考えて、今の新日本プロレスの状況は想像できました?
「ちょっと全く出来ないですね。ちょうど棚橋が加入したかしないかくらいかな。棚橋があそこまで行くとは思わなかったです」
――当時から光っていた選手はいましたか
「今のオカダ選手にしろ棚橋選手にしろ、当時はそこまでは。離脱した頃にはオカダ選手はいなかったのかな」
――闘龍門に居た頃?
「新日本時代には居なかったです。間違いなく。棚橋さんが武藤さんの付き人をやっていて、全日本に入ってしばらくしてから棚橋選手に誘われたっていう感じ」
――光っていたといえば、宮本和志選手のキングスロードについてお聞きしたいのですが
「ここでちょっとカシンが絡んでくるんだよね。キングスロードの旗揚げ戦で、失敗した原因のひとつになるんだけどね……ホントに黒歴史というか、話したくないことの一つなんだけどね。旗揚げ戦のカードの第4試合だったかな?ターザン後藤vsブルージャスティスというカードを入れたの。当然ケンドー・カシン。ケンドー・カシンが試合の前日飛行機を乗り逃して明日日本に行けないと言う。行けたとしても試合ギリギリで終わっているかもしれないと連絡があって、中止にするかどうしようかって話になったんだけど、代役を立てるからと言ったのが、もう亡くなったけどカニさん(愚乱・浪花)です。あの試合を中止にしておけばよかったかなと。あの試合でツッコミどころ満載のキングスロードになってしまったなと」
――元々は、王道の試合のみを行う団体になる予定だった?
「そうしたかった。その中でホントにケンドー・カシンは自分から『青木さんのために出ますよ』と言ってくれた選手なんです。『一試合だけですよ!』と言いつつ。国際電話かかってきてね。そういう優しさを持った選手なんです。でも、ホントに間に合わないのであれば中止にすればよかったなという後悔と、カシンの心が優しいところ。まあ試合後に『こんな会社はすぐ潰れる』というコメントもありましたけど、まあ、その通りにはなりましたけどね(笑)」
――同時代にはビッグマウス・ラウドなどもありましたが、ライバル視はしていましたか?
「全然全然。別路線でしたし、上井さんとは仲良かったですし。選手の貸し借りとかはなかったですけど試合を手伝いに行ったりしましたから」
――その後、同団体がなくなってから上井ステーションでご一緒されていたかなと思うんですけど
「ご一緒というか、当日人が足りないというので手伝いに行ったとか、それくらいですよ。それは昔の先輩後輩っていうのがあるんで」
――その時代の選手が最近また活躍しているのを目にする機会が増えたように思います。上井さんも復活されていますし、青木さんもプロレス界に今後積極的に関わっていきたいという思いはありますか
「プロレス界に100%なんていう言葉はないけど、100%ありません(笑)懲りたって言うわけじゃないですけど、外から見てる方がプロレスは楽しいなって」
――最近カシンさんの試合は見られてますか?
「見ましたよ。カシン対パンディータを」
――なぜその試合を…
「最高のレスラーだなと思いましたよほんとに(笑)フェアリー日本橋の杖を持って魔法使いになったりとか、見てみたかったですね~」
――ボンバー斉藤さんもこの本に名前を連ねていますが
「ボンバーは全日本時代のレフリーですから。カシンの高校時代の後輩で、アマレスのチャンピオンになったのかな?まあ、いいとこまでいった選手で」
――この本の中で『ここを見て欲しい』『ここは注目だ』という部分はありますか
「カシンの高校時代の話だね。知らないことが多かったので、びっくりすることが多かったです」
――今回こういう本に関わられましたが、今後ご自身で本を出したり語っていきたいものはありますか
「ないですね。カシンのこの本が僕の記念本です(笑)」
<フツーのプロレスラーだった僕がKOで大学非常勤講師になるまで ケンドー・カシン>
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