【インタビュー】WRESTLE-1副社長・近藤修司が愛弟子・芦野の壁となる!「自分のすべてをさらけ出して凌駕する」
3.20後楽園大会で、入門からその成長を見守ってきた芦野祥太郎がWRESTLE-1の頂点のベルトを巻く姿を目の当たりにした近藤修司。しかし、その直後に新王者からの挑発的な逆指名をされると一転して、戦闘モードへと切り替わった。現在は副社長という責務を担う近藤だが、この新体制一発目の後楽園大会でどのような気持ちでタイトルマッチに挑むのか? 話を聞いてみた。
──この間の3月20日の後楽園大会で芦野選手がWRESTLE-1王座のベルトを取り、そこから近藤選手を指名する形で今回の4.19後楽園大会でのタイトルマッチが決まりました。芦野選手の挑発に感情的になっている部分が見受けられましたけど、やっぱりムカつきましたか?
「まあまあ目の前で面と向かってああやって言われるとムカついて感情的になるけど、一歩引いたところから見ると喜ばしいことでもありますよね。自分が育てた選手がこんなに早く成長して、ベルトを取って、自分に対して立ち向かってくるっていうことは悪いことではない。ただ、目の前にしたら感情が先走ってしまいますよね」
──芦野選手はまだデビューして2年ちょっとの選手ですもんね。
「ただ、あそこまでできるのはみんなが考えているより相当早いと思いますよ」
──その成長速度は異常だと。河野さんとのタイトルマッチはどういう目で見ていたんですか?
「まあ、ヤツの芯の強さが見えた試合ですよね。要は徹底してヒザ、何があろうとヒザ。そこを徹底して狙っていった部分ですよね。河野もビックリしたんじゃないかな? 彼がそこまで芯の強さを持って臨んでくるとは思ってなかったんじゃないんですかね」
──攻め方に一切ブレがなかったと。
「いつからあんなに芯の強い人間だったのか? 元々持っているものだとは思うんですけどね。それがもろに出た試合でしたよね」
──近藤選手は芦野選手を入門してきた当時から見ていたと思うんですけど、やはり他の選手とは違うものを感じましたか?
「どこかでアマレスの下地における芯の部分は持ってましたよ。『俺はアマレスやってて、普通の練習生とは違うんだ』っていう」
──アマレスに対するプライドは持っていたと。
「持ってましたね。でも、そのプライドってプロレス界ではダメになる要素の一つなんですよ。過去の自分のキャリアに対してずっとプライドを抱えていてダメになった人を結構見てるんで(笑)。誰とは言いませんけど、そこは怖かったですね。でも、芦野は気持ちをプロレスに対して持っていけたんで」
──芦野選手はアマレスのキャリアがあるのに、プロレスが大好きなんですよね。
「そこですよね。そこが早い成長につながったと思います。まあ、そこは喜ばしい部分ではあるんですけど、やっぱりリングに上がってしまえば僕もプレイヤーなんで、相手を叩き潰すだけとしか言いようがないですよね。今回の試合ではすべてにおいて圧倒したいですよ。キャリア的にも10年以上離れていますから、自分のすべてをさらけ出して凌駕したいっていう感じですかね」
──凌駕したい! でも、芦野選手は近藤選手が最近本気になってないんじゃないかと言っていたんですよ。世界ジュニア王者時代の動きが今でもできるはずなのにそれを出してないと。これまでWRESTLE-1では近藤選手が本気になれる選手がいなかったんじゃないかと言ってたんですけど、どうですか?
「まあ、すぐに怠けるところはあるんで(笑)」
──怠けますか(笑)。
「まあ、怠けるというよりは一歩引くところはありますよ。結局、世界ジュニア王者時代も俺は一歩引いてましたからね」
──ええ!? 一歩引いてああいう凄い試合をやっていたんですか?
「うん。思い返すと世界ジュニア王者時代の防衛戦はほぼ相手のペースだったと思いますよ。ただ、それが俺のプロレスの特徴ですからね。あの時は時代の流れもあったし、時代の波にも乗っていたと思うんですよ。結局やってることは当時とそれほど変わらないと思います。まあ、ハッキリ言わせてもらえれば、今現在いろんな団体の試合を観るけど、どこもやってることは変わらない。『じゃあ、何が違うの?』って聞かれて、ハッキリ答えられるヤツはこの世に存在しないと思いますよ。見る人たちの環境、目が違う。だから俺が世界ジュニアをやってた時の全日本はもの凄く勢いがあったと。今我々はその勢いがあった全日本、あそこを目指してやっているような気がしますよね。そうなれば我々が今やっている試合も凄い試合に見えますよ。ただそれだけなんですよ。逆に言ったら、芦野だって両国ですげえいっぱいの会場で試合をしたらとんでもなく沸かすと思うし。まあ、結局、俺は何も変わってないということですね、当時と」
──年齢的なものも関係ないですか?
「年齢的なものは関係あります(笑)。関係あるけど、もしかしたら関係ないかもしれない。そう思っているだけなのかもしれないし」
──コンディション的には変わっているようには見えませんからね。
「いやあ、傷めているところはたくさん出てきてますよね。無茶ができなくなってきてるなあっていうのは感じてます。ただ、やってることは当時と変わらないですよ」
──なるほど。では、当時と変わらず本気の近藤修司で芦野選手を圧倒すると。
「そうですね。すべてにおいて凌駕しますよ。『もう挑戦してきてほしくない。当分いいです』って言われるぐらいやってやろうと思っています」
──ちなみに4月から新体制になって、近藤選手は副社長になりました。肩書がついたことで気持ち的に変わったところってありますか?
「たぶん副社長としての一番最初の仕事がクレーム処理でしたね」
──ハハハハハ!
「そういうのが俺に来るんだって思いましたね。今まではそういうところに関わってないし、ファンにしてみれば俺に言ったところでっていうのはあったと思うんで(笑)。ただ、リングに上がる上では基本的には何も変わらないですね。まあ、カズさんが一番大変だと思うのでそのサポートですよね。なるべく負担がかからないようにリング内外で協力できればいいなというところですけど」
──カズさんがおっしゃっていたのは近藤選手にやってもらいたいのは現場の取りまとめで、若い選手に自分たちが闘いを通じて培ってきた精神を広めてほしいと。今回のタイトルマッチもそういう部分を期待しているとのことでしたけど。
「まあ、僕はそこまで大それた人間じゃないので。やることがすべて初めての経験なんですよ。だからなかなか慣れないというか。ただ、レスラーって自分の世界を持つ、自分さえよけりゃいいっていうのが理想なんですよね。でも、ウチの団体の現状ではそれがなかなか難しいので、段階を追ってそういうことを若い選手に教えていきたいんですよ。いきなり上から目線でガツンとやってもなかなか伝わらないし、それこそ『ゆとり』なんて言葉を使っちゃあいけないんでしょうけど、若い選手たちに対してそれを感じている俺が年寄りのような感じがしちゃいますよね(笑)」
──若い世代とどうしてもギャップを感じてしまうと。
「はい。よく言うじゃないですか? 『最近の若いもんは』とか。ただ、昔の俺を思い出すともっとひどかったですからね(笑)」
──某団体を素行不良で解雇された経歴をお持ちですもんね(笑)。
「はい、素行不良で(笑)。まあひどかったと思いますよ。あん時俺が先輩だったらどうしたかなと思いますよね。ただ、それに近いものを芦野に感じますよ。何を言われようと俺は俺の道を進むし、みたいな。そういうところを感じますよね」
──だからこそ期待もしているし、だからこそ叩き潰してやろうという気持ちにもなるわけですよね。
「まだまだ彼に教えなきゃいけないことはいっぱいあるんでね。だから、試合が終わったらノーサイド。勝とうが負けようがそれでいいんじゃないかなと思いますね」
──教えるという部分で、やっぱり自分がトップに立って引っ張ったほうがいいんじゃないかっていうお気持ちはないですか?
「元々俺はトップの選手ではないんでね。そのトップの足を引っ張ってきたタイプなんで(笑)。だから、出る杭を打つのは好きですけどね。どんな手を使ってでも引きずり落とすっていうのは好きですよ」
──要は俺が足を引っ張るから、それを乗り越えてみろよということですか?
「そこですよね、たぶん。まあ芦野含めて若い連中が今やれることはそれしかないんじゃないですかね。結局俺もそうだったんですけど、試合に勝てば先輩を越えられるかっていう問題でもないじゃないですか? 逆に負けても越えてる。言ったら、イケメンなんていうのは試合をやらずしてもう俺に勝ってる感じはありますよ。今回のNumberのプロレス総選挙」
──9位にランクインしましたもんね(※4月10日発表の時点)。凄いことですよ。
「そう、9位。『え?』って(笑)。どこの人に推されて、誰に票を入れられたのか? ただ、俺たちが知らぬ間にそれだけプロレスの世界でその存在が浸透していたということですからね。これは完全に抜かれた感覚がありますよ」
──それこそ本人も驚いていたんですけど、芦野選手も30位に入ってましたからね。
「そうですよね。だから、観てる人は観てるんだなって気がします。WRESTLE-1はプロレス界の端っこのほうの団体かもしれないけど、真ん中のほうから一応視界には入っているのかなって。一応ギリギリ(笑)」
──でも、若い2人がランクインしたということは未来が明るいですよ。まあ、投票の締め切りは5月いっぱいまであるらしいんで、芦野選手との試合でもう一度近藤修司の名を知らしめて、若いもんに負けずにランクインしましょうよ(笑)。
「そうね(笑)。でも、副社長的には若いほうに票を入れてくれたほうがうれしいかな。俺が中途半端な順位に入るんだったら、イケメンがベスト10に入ったほうがおもしろいですけどね。まあまあ2つの顔があるということですね。副社長としての顔もあるし、レスラーとしての顔もあるし。そこをうまく使い分けていかなきゃいけないなと」
──なるほど。まあ、大変な立場ですけど、最後に試合に向けてファンにメッセージをお願いします。
「さっきも言ったけど、やってることは俺は世界ジュニア王者時代から変わってないと思う。ただ、相手がフレッシュな選手なんで、俺の動きにどう対応してくるのか?そして、その芦野の対応に俺がどう対処するのか? そういう試合になりますよ。言ってしまえば、今の新日本プロレスがやっている先の読めないプロレスですよね。俺はそういう試合を世界ジュニア王者時代からずっとやってきたし、今回もそういう先の読めない試合になると思います」