打撃系格闘技を志す者なら一度は見ておいて損はない『ラウェイ』が日本初開催!

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10月27日(木)東京・後楽園ホールでミャンマーラウェイの大会「ラウェイGPinJAPAN2016」が開催された。主催はファーストオンステージ。
 これまで日本の格闘技の大会の中でラウェイの試合が行われたことはあったが、興行全部がラウェイの試合であることは、日本では初。全5試合とも3分5ラウンド(インターバル2分)、ミャンマーのMTBF公認試合として行われ、ミャンマーラウェイ・フェデレーションが今年8月20日に改定したルールにのっとって行われた。
 ボクシンググローブはしないが、拳の部分にわずかな緩衝材を乗せ、その上からバンテージを巻き、手首もガッチリ巻いて固めて、この状態で殴り合うのが大きな特徴。有効な攻撃は、腕と足を使ったあらゆる打撃で、ヒジうち、ヒザ蹴りもOK。頭突きもOK。故意でなければ金的に当たってもOK。クリンチ(首相撲)、投げもOK。
 選手がダウンするか、著しい劣勢になった時、4ラウンドまでならセコンドがタイムを1回だけ要求でき、2分間のインターバルを得ることができる。これは1ダウンとカウントされる。
 また、1ラウンド内で3度のダウンを喫するとTKO負けとなるが、ダウンカウントが8に達していなければ、ダウンには数えられない。

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 リングは神聖な場所なので、レフェリー、セコンド、テレビクルーなどを含めて、リングに上がる者は靴を脱いで上がることも、ラウェイの決まり。女子の試合もあるが、通常はリングは女人禁制なので、ラウンドガールもリング下を一周回ることになる。
 判定はなし。決着はKOかTKOのみ。勝者には金メダルが、敗者には銀メダルが与えられ、引き分けの場合は両者に金メダルが贈られる。
 また、試合前には神様にささげる踊りを20秒前後、両選手が踊り、試合後は勝者が、ドローの時は両選手が踊る。踊りの時は、会場の楽隊が演奏する。また試合中も、常に楽隊の演奏がある。楽隊にはミャンマーの民族楽器、打楽器のほか、なんとキーボードもあり、現代的な電子音も会場に鳴り響いた。

 ルールの特性上、引き分けた場合、無傷で終わることはなく、顔を大きく腫らしていても試合後、必ず踊る選手は踊っていた。
音楽や踊りに関しては、ムエタイと少々似てはいるが、音色も旋律もポーズもムエタイとは違っていた。

 第1試合では、16歳と17歳の選手が、ボコボコの殴り合いを展開。それでも試合後にはお互い敬意を見せ、ノーサイドになる。日本の同世代では、なかなかこういうハードコアのガチの試合はできないだろう。なんというか、精神が違うというか、生きている土壌が違う。
 若い選手の中には首相撲が苦手な選手もいたが、ムエタイの練習をしているのであろう選手になると、首相撲もうまい。でも首相撲を仕掛けてヒザ蹴りを打っていると、相手選手のボディブローの格好の餌食になってしまう。ボクシンググローブをしていないので、ラウェイの試合ではボディブローがかなり効くことがわかった。ボディブローで、悶絶してダウンする選手もいた。

 セミファイナルでは、4ラウンドに右目の下を切った69キロ級世界王者のソー・リン・ウーが、5ラウンドに首相撲で逆転。でも極真空手も学んだという75キロ級世界王者のトゥー・トゥーにボディブローを食ってしまい、互角の攻防の末、試合はドローに。

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 メインはタイ・フェニックスジムで修行するオーストラリア人のアデム・フェニックスジムと、今年7月「巌流島・公開検証4」有明コロシアム大会に来日した、トゥン・トゥン・ミンが対戦。トゥン・トゥン・ミンは不慣れな巌流島ルールでは、コンゴ出身の柔道家ルクク・ダリにパウンドで一本負けしたが、ラウェイでは80キロ級の世界王者だ。
 この試合も激しい打ち合いが見られたが、ペースを握っていたのはトゥン・トゥン・ミンで、5ラウンド58秒、アデムに強烈な右フックを叩き込み、マットに沈めて勝利を勝ち取った。
 でも、トゥン・トゥン・ミンは鼻骨骨折。かたや敗者のアデムは試合後、リングサイドに駆け寄ってきた観客との記念撮影に笑顔で応じるなど、人気者になっていた。
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 判定決着がないのでドローになることも多いが、5試合中、誰もドローを狙って逃げ切ろうとするような闘いぶりの選手はおらず、最後まで全力で闘い切ろうとしていて、それには驚かされた。ラウェイはスポーツというより『根性試し』というか『男の意地の張り合い』のように見えた。神に捧げるものなので、魂のこもっていない闘いはできない、ということなのだろう。
 大会は、ミャンマーの雰囲気をそのまま持ってくる、がコンセプトだったので、楽隊のほか、試合中の打撃に合わせて「ハヤー!! ハヤー!! 」とマイクで叫ぶリングアナも来日。「ハヤー!! 」の意味は、「男だろ!行け!」というような意味だそうだ。
会場は、ほぼ満員。どの試合後も、大健闘した二人の選手に対し、大きな拍手を送っていた。ミャンマーの駐日大使も会場で、選手へのプレゼンターを勤めていた。
 打撃系格闘技を志す者なら、一度は見ておいて損はない。なにを感じるかは、あなた次第だが。次回開催は2月、都内の会場でおこなわれる。

(写真・文/安西伸一)

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