パンクラス12.13有明大会 石渡vs.ビクターのバンタム級K.O.P戦、神部vs.武蔵のライトフライ級王者査定試合、川村vs.ジバゴ
PANCRASE 273
日時:2015年12月13日(日)
開場:13:30 開始:14:00
会場:東京・ディファ有明
観衆:2011人(超満員)
本戦1部
▼第1試合 フライ級 3分3R
○中村龍之(Lotus世田谷)
3R終了 判定2-1
●渋谷和樹(NEXUSENSE)
▼第2試合 バンタム級 3分3R
●大橋悠一(P’sLAB大泉)
3R終了 1-2
○前野辰一(グレイシーバッハ東京)
▼第3試合 フェザー級 3分3R
●工藤修久(禅道会 小金井道場)
1R 2分39秒 TKO(グラウンドのパンチ→レフェリーストップ)
○佐藤ヒデキ(reversal Gym横浜 グランドスラム)
本戦2部
▼第1試合 ライト級 3分3R
●伊藤崇文(パンクラスism)
1R 2分39秒 TKO(グラウンドのパンチ→レフェリーストップ)
○松岡嵩志(フリー)
▼第2試合 ストロー級 3分3R
●松永義弘(禅道会 新宿道場)
3R終了 判定0-3
○潤 鎮魂歌(HARVEST)
▼第3試合 フライ級 3分3R
○荻窪祐輔(K-PLACE埼玉格闘技道場)
3R終了 判定2-1
●上嶋佑紀(BRAVE)
▼第4試合 ウェルター級 3分3R
○佐藤 天(TRIBE TOKYO M.M.A)
3R終了 判定2-1
●エリック・マイケル・フォート(ノヴァウニオン ジャパン)
▼第5試合 ミドル級 5分3得3R
●一慶(フリー)
1R 3分38秒 TKO(グラウンドのパンチ→レフェリーストップ)
○ボブ・アームストロング(ALIVE)
▼第6試合 フライ級 5分3R
●山本あつし(フリー)
1R 2分51秒 チョークスリーパー
○仙三(FREEDOM@OZ)
▼第7試合 フェザー級 3分3R
○稲葉 聡(秋本道場jungle junction)
3R終了 判定3-0
●渡慶次幸平(P’sLAB吉祥寺)
▼第8試合 ライト級 5分3R
○長岡弘樹(総合格闘技道場DOBUITA)
3R終了 判定3-0
●ガブリエル・ミランダ(CM System)
▼第9試合 ミドル級 3分3R
○川村 亮(パンクラスism)
3R終了 判定3-0
●ジバゴ・フランシスコ(CM System)
▼第10試合 フライ級 5分3R
○安永有希(東京イエローマンズ)
3R終了 判定2-1
●マモル(シューティングジム横浜)
▼日沖発 挨拶
▼第11試合 フェザー級 5分3R
●タクミ(パラエストラ大阪)
3R終了 判定0-3
○田村一聖(KRAZY BEE)
▼第12試合 フライ級 王者査定試合 5分3R
●清水清隆(TRIBE TOKYO M.M.A)
3R終了 判定3-0
神酒龍一(CAVE)
▼第13試合 ライトフライ級王者決定戦 5分5R
[ランキング1位]○神部建斗(ALLIANCE)
1R 1分33秒 TKO(ヒザ十字固め→レフェリーストップ)
[ランキング2位]●武蔵幸孝(フリー)
※この結果により、神部が第2代ライトフライ級王者となる
▼第14試合 バンタム級キング・オブ・パンクラス タイトルマッチ 5分5R
[王 者]○石渡伸太郎
5R終了 判定3-0
[挑戦者]●ビクター・ヘンリー
※第2代王者・石渡が3回目の防衛に成功
第9試合
足の怪我から約1年半ぶりの復帰を果たす川村。怪我以降、総合格闘技からは遠ざかり、佐藤光留主宰の「ハードヒット」等に上がっていたが、ついにパンクラスに帰って来た! しかも、この大会でデビュー10周年を迎える。是非とも勝利で飾りたいところ。セコンドには北岡悟、渡辺大介、山宮恵一郎らパンクラスの面々がつく。
1R、回る川村。ジバゴは右ハイキックから組んで金網へ押し込む。入れ替え合う両者。何度か入れ替わったあと、川村が払い腰でテイクダウン。ジバゴは腕を取っているが、川村は外して立つ。ジバゴは金網へ押し込むが、川村は入れ替えてボディブローを入れたところでゴング。
2R。ジャブ、フック、ボディと打撃で攻める。川村らしい闘いだ。手をゆるめずパンチを出し続ける。ジバゴは組んでヒザを打ち込むが、川村は金網へ押す。ジバゴは足を引っ掛けながら倒れ、足を取る。殴る川村。ジバゴが上になるが、川村も上を取り返す。鉄槌、ヒジを落とし、フロントチョークを狙うジバゴだが、川村は首を抜く! 殴ったところで終了。ジバゴはややスタミナ切れか。インターバル中、川村は気持ちを盛り上げるようにケージ内を早足で歩く。
3R、「行くぞ! 行くぞ!」と声に出し、自らを奮い立たせる川村。回ってジバゴを金網へ追い込み、パンチを集める。上になり鉄槌、ヒジを落としまくる。ジバゴは下から三角絞めを狙おうとするが弱々しい。川村は更に殴り続けゴングを迎えた。もう少し時間があれば、TKOを狙えたか。
裁定が下るより先に、会場に向かって「やり切ったぞ!!」と川村は吠えた。川村が経営を離れ、パンクラスは大きく変化した。それを認めつつ、一方では守るべきものも抱えてきた。そして怪我により、ケージでそれを見せることができなかったもどかしさ。他の選手らが試合をするのを横目で見ながら、裏方に徹してきた。そのもどかしさをここにぶつけた。また、佐藤光留の活躍や、鈴木みのるの店で店長として働くことで、先輩たちに勇気づけられてきた。そういった様々な思いがこの一戦に結集していたのだ。
判定は3-0で川村! 後半はややスタミナが落ちた感があるものの、特に後半は危なげない闘いが光った。ラッキーではなく、しっかりと相手を上回っての勝利だ。これをきっかけに、再びミドル級タイトル戦線への復帰が期待される。
<試合後コメント>
川村亮
「久しぶりに上がって、パンクラスは川村亮だと思った。Pancrase is Ryo Kawamura.何も特別なメッセージはない。俺のパンクラスだ、それだけです」
日沖発 挨拶
また1人、大物選手がパンクラスに参戦する。
ブラリアン柔術黒帯を持ち、元SRCフェザー級王者にして、元修斗世界ライト 級王者、元TKO世界フェザー級王者の日沖発だ。修斗、PRIDE、戦極などで活躍したあと、2011年には修斗とSRCのベルトを返上、UFCにも参戦している。
日沖「初めまして、名古屋から来た日沖発です。パンクラスには世界じゅうから強い選手がどんどん集まって来ています。僕は面白いことも言わなければ派手な試合もしませんが、でも、一所懸命やって純粋なMMAを見せたいと思います。新人のつもりで、イチから一所懸命やります」
日沖はパンクラスと複数契約を結び、初戦は来年1月31日のディファ大会で横山恭典と対戦する。これを足がかりに、再びUFCへの挑戦を目指す。
第12試合
防衛回数5回を数え、記念のゴールデンベルトも授与された清水。しかし、2012年12月以降、パンクラスでは1戦したきり(2014年3月、山本篤戦)で、他団体に上がっていた。戦績は1勝5敗。パンクラス王者の権威を著しく落としたという理由で、王者にふさわしいかどうかの査定試合が組まれた。この試合は、負けはもちろん、勝っても内容如何ではベルト剥奪という厳しいもの。ベルト死守を誓い、背水の陣で練習に打ち込んできた。
対戦相手の神酒は元修斗バンタム級王者。今年10月パンクラス初参戦、古賀靖隆を判定で下している。勝てば、次期王者決定戦への切符を手にすることができる。
1R、神酒はパンチやローキックで攻めていく。清水はローを返す。神酒は前蹴り、パンチ。速いテンポで攻める。清水は距離をとり、パンチで飛び込むが、有効打は得られない。神酒は自分の距離とペースで打撃、清水は目をカット。タックルにも入れない。お互い距離を取り、狙うがゴング。ジャッジは三者神酒を支持。
2Rも神酒のペース。パンチ、蹴りと多彩な攻めを見せる、清水はローを返しているが、まだペースがつかめない。神酒がテイクダウン! バックを奪う。逃れようと回り亀になった清水に神酒はバックマウント。清水はなんとか立つが、神酒はバックを取ったまま金網へ押し込み、ヒザを打つ。向き直っては慣れる清水。そこへ神酒のパンチがヒットし、清水は文字通り吹っ飛んだ。神酒はすぐにかぶさりパウンド、ヒジ! 清水は下からボディブローを打つ。神酒は頭部にヒジを打ち、サイドポジションに移行する。エビで返そうとする清水だが、神酒は逃がさない。清水は立とうとするが、神酒は立たせずサイドで押さえ込んだままパンチを打ってゴング。ジャッジ三者とも神酒。
最終ラウンド。後がない清水はKOか1本極めるしかない。ローキックを放ち、遠い距離からのタックル。しかし神酒は倒れない。組み合って上になり、上からパンチを見舞う。清水、立ちたいが立てない。清水は下から蹴りあげるも、立ち際にハイキックをもらい倒れてしまう。神酒はすかさずパウンド。連打していく。清水は身体を抜けないまま試合終了。清水は顔が血だらけになっている。
判定は3-0で神酒が完勝。清水は肩を落とし、ケージを下りた。
第13試合
今年で廃止されるライトフライ級最後のタイトルマッチ。勝者は上の階級または下の階級の王者への挑戦権を手に入れることができる。
両者パンクラスで無敗のままこの試合を迎えた。1位の神部建斗、19歳。2位の武蔵、27歳。お互いの世代のプライドを懸けてベルトを獲りにいく。
1R、神部、左ミドルキック。武蔵は右ハイキック。パンチを振る神部に武蔵がタックルからテイクダウンを奪う。しかし、神部は足を取っている。そこからヒールホールドを狙う。武蔵は回転して抜けようとするが、金網際でスペースがない。尚も足を抜こうとする武蔵だが、神部はヒザ十字へ。武蔵は耐えるが…。ギリギリという音が聞こえる。武蔵タップ。神部がパンクラス最年少で王座に就いた。
神部はベルトを巻かれると、会場に来ていた母親をケージに呼び込んだ。神部は母1人子1人で育ち、最も尊敬する人は自分をここまで1人で育ててくれた母だと言う。格闘技の世界に入り、高阪剛のもとで修行してきたのも、母の後押しあってこそだった。「かっこいい男になれと言われて育った。母にベルトをプレゼントしたい」と言っていた言葉を現実にした。
母の顔を見て思わず感情が噴き出し、涙を流す神部。同じく涙する母にベルトを持たせ、最大の親孝行を果たした。
神部はケージ上から「マジで最高です! オレのお母さんが見に来ていたので、絶対勝たないといけないと思ったし、かっこいいところを見せたかった。今後は、上の階級か下の階級かまだ決めてないけど、下ならぶっとばさないといけない人がいる。砂辺(光久、ストロー級王者)さんでしょ」と挨拶した。
<試合後コメント>
神部建斗
「マジで腹をくくって出て来たので、負けたら死ぬぐらいの気持ちだった。やっぱり一番の原動力はお母さん。かっこ悪いところは見せたくない。自分が育てたのはスゲー息子だったと思ってほしかった。
言えなかったけど、実は試合の1週間前、追い込みが終わった翌日に腰を傷めて、しかも神経系で、病院でもヤバイと言われた。朝、起きたらまっすぐ立てなくて。でも、自分の足で立てるうちはやるっていうのが(髙阪)先生の考えだし、自分も同じ考えだった。やらない選択肢はなかった。先生は試合前に“絶対やれる”と言ってくれて、それで気合いが入った。
あのヒザ十字は得意なパターン。本当は打撃で終わらせたいと思っていたけど、テイクダウンを切るのは腰のせいで厳しかったんので、倒されたら絶対に極めるしかなかった。でも、足関節はふだんから得意だし、練習しているパターンだった。最近はあまり下にならなかったので出なかったけど、全て得意。でも、今日はお尻の位置がずれていたので戻せというアドバイスが飛んで、そのおかげで極まった。
調印式でも言ったけど、5分5Rやるつもりはなかった。1Rか2Rで終わらせるつもりだった。
母は、今まで見に来たことはなかったけど、今回は絶対に呼ぶと決めていた。オレにとって一番尊敬する人。かっこいいところを見せたかった。ふだんスゲー気が強いし、イケイケなことばっかり言ってくるけど、やっぱり息子が闘っているのを見るのはつらかったと思う。ケージで、“やっぱりやったね。信じていたよ”と言ってくれた。かっこいところを見せられたので、もう呼ばないと思う(笑)。こうして、息子は最高だ!と証明できたので。マザコンはここで終わりです(笑)。
来年から階級をどうするかは、まだ決めていない。ケガも治さないといけないし、身体がでかくなってきているので、もし上にするなら1年ぐらいかけてしっかり身体を作りたい。
試合後、かっこよかったですとか、一緒に写真を撮ってくださいとか声をかけてもらって嬉しくて、やってよかったと思う。
格闘技はスポーツだけど、やるか、やられるか。全て持っていくか、全てなくすか。だからケージの中はかっこいい。格闘技界には新しい波が必要だと思う。その真ん中に自分がいたい。背負えるものは背負えるだけ背負って闘いたい。どんどんプレッシャーをかけてほしい」
第14試合
挑戦者のビクターはジョシュ・バーネットのもとで練習を積み、所英男、上田将勝ら強豪を破ってパンクラスに参戦。パンクラスでも中島太一、福島秀和らを下して「日本人キラー」と呼ばれるつわもの。まさに最強の挑戦者だ。
王者の石渡は昨年11月にノンタイトル戦でジョナサン・ブルッキンズに判定で破れたものの、大晦日にDEEPで大塚隆史に快勝。しかし、今年1月に左上腕三頭筋腱断裂という大けがを負い、最前線から退いていた。今回は約1年ぶりの試合にして、いきなりの防衛戦だ。
1R、両者、ローキックを入れる。様子見ではなく強烈なローキックだ。石渡がパンチで前に出る。ビクターは組んで金網へ押すが、石渡は豪快な払い腰でテイクダウン! サイドを取る。ビクターが下から絡んでくると、石渡は立って再び打撃。これも様子見でなく、倒しに行くパンチだ。跳びヒザのフェイント。スロースターターと言われることもある石渡だが、その影は微塵もなく、最初から全開だ。ビクターは網へ押してヒジを打つ。石渡は離れるが、ビクターのローキックがローブローとなってしまう。声を上げて苦しむ石渡だが、3分弱休んで再開される。
ビクターは右ハイキックからプレッシャーをかけていく。ステップを踏んでペースを取り戻す石渡。ローキックから、金網際で激しい打撃戦に! ビクターが飛びついてギロチン! 石渡は前に倒したが、ビクターは外さない。残り30秒。このまま決まってしまうのか!? 固唾をのんで見守る会場。石渡は30秒を耐え切り、2Rへつなげた! しかし、ジャッジは三者ビクターを支持。
2R、ゴング後すぐに止められ、石渡のドクターチェックがおこなわれる。左の目頭に近いまぶたをカットしている。再開。パンチで前に出る石渡。金網を背負わせ、パンチを打ち込む。しかし、ビクターのパンチの圧力も強い。組みにいくビクター、付き合わない石渡。お互い全く退かない。終了間際、石渡がタックルからテイクダウン! ビクターが立ったところでゴング。ジャッジは三者が石渡。
3R。石渡にやや疲労の色が見えるか。しかし、尚もパンチを出していく。金網へ押し込んでヒザを打ち込む。ビクターは離れてローキック。蹴る音が会場に響く。石渡のパンチにビクターはローキックで応酬。組みにいったビクターだが、石渡はテイクダウンさせず投げる! すぐに立ったビクターは金網へ押すが、石渡は入れ替え。ビクター、バックキックで奇襲するも、石渡はかまわずパンチを振り、打ち合ってゴング。ジャッジは三者が石渡を支持。
4R。ポイントをリードされているビクターは下がるわけにはいかない。ローキック、ミドルキックで前に出てくる。石渡がテイクダウンを奪い上になるが、立って打ち合いに。全く力を緩めない両者。ビクターが倒してサイドを取ると、石渡がリバース! ビクターは下から三角絞めを狙うが、石渡はさせない。立って金網へ押し込む石渡。お互い。かなり消耗しているはずだが、全く手をゆるめず、一瞬たりとも気が抜けない。石渡が血を流している。鼻か、口のカットか。しかし、委細構わず両者激しく打ち合う。金網へ押し込むビクターだが、石渡は上に。ビクターはガードポジション。石渡は大きく鉄槌を落とす。足を絡めてくるビクター。石渡はさらに鉄槌を連打、立ったところでゴング。ジャッジは二者が石渡、一人がビクターを支持。
ついに最終ラウンド! 石渡はパンチをもらいかなり顔が腫れているが、パンチ力は全く衰えていない。ビクターは少しペースが落ちたか。しかし、右ハイキック、アッパー、ヒザとたたみかける。上下打ち分ける石渡。緊張感がみなぎる中、お互い攻撃の手をゆるめず、最後の30秒はまたも激しい打ち合い! 石渡、全くペースを落とさず、最後まで攻めきった!
ジャッジは3-0で石渡。ボロボロになりながらも3回目の防衛を見事に果たした。日本人キラーを破ったことで、バンタム級日本最強を証明したと言えるだろう。技術もだが、何より最後まで闘い切った心の強さが素晴らしい。ビクターという強い挑戦者を相手に、死闘と言っていい闘いの中で、ダメージを負いながらも全く心が折れなかった。
普段はスタイリッシュで、誇り高くスマートなイメージのある石渡だが、プライドを鼻にかけて格好つけるのではなく、誇りを守るためには泥水をも飲む。まさしくKOPの名にふさわしい貫禄で熱い感動を与えてくれた。チャンピオンに、改めて「お帰りなさい」と言いたい。
石渡はケージ上から「今オレ、どんな顔してる? まず、ただいまパンクラス! 大けがをしてもう帰って来られないんじゃないかと不安だったけど、帰って来られて本当によかった。みんなが応援してくれたお陰で帰って来られました。そして、第2代キング・オブ・パンクラスは世界で勝負できます。勝負させてください!」と挨拶。
<試合後コメント>
石渡伸太郎
「だいぶ殴られた。1Rを取られて、(相手は)この流れでやるなと思ったので、殴らせても殴ってやると思った。だから、こんな顔になっちゃった(笑)。
相手は、まずサウスポーだった。そういうのもあるかもと思ってはいたけど、なるほど、想定を違うことをやってくるなと。ビクターは普通に強かった。いい蹴りを出してくるし、もし綺麗にやり合っていたらビクターの方が強いと思う。でも、俺は削り合いを挑んだ。1Rのギロチンは苦しかったけど耐えられた。コツコツボディを当てていったので、後半は相手の動きが落ちたのがわかった。そこから顔につなげたかったが、ビクターも返してくるのでいけなかった。でも、全部受けてやろうと思って。ここで退いたら負けると思った。顔は腫れているけど、視界は悪くなかった。見えていないパンチはなかった。
1Rを取られて時点で、もう1つもやれないと頑張った。ビクターも最後まで出て来たので、一発いいのをもらって印象が悪かったかも知れないけど。痛かったです。
終わったから言えるけど、怪我をしてからは、半年くらい日常生活もできなかった。もう二度と出来ないんじゃないかと思ったこともあった。今日は自分をほめてあげたい。世界と勝負という話もしたけど、まずはちょっと休みます。左腕の怪我も含め、全部オーバーホールしないと。
オレ英語わからないんで何を言ったかわからないけど、ビクターは試合後、オレをほめてくれたみたい。いい奴そうですね(笑)。
今回は根性みたいなものだけで勝ったので、UFCとか言うのは恥ずかしいけど、でも、こうして競り勝ったのでよかった」
【写真・文/佐佐木 澪】