“お芝居”と嘲笑されるアクトレスガールズが痛みの伝わる“プロレス”で虚実皮膜の世界に一石を投じる
29日、東京都・後楽園ホールにて『ACTwrestling 後楽園ホール公演』が開催。茉莉がMARUとのハードコアマッチを制してキング・オブ・リングエンターテイメント王座の2度目の防衛に成功した。
アクトレスガールズには技術・演技力などリング上でのパフォーマンス力を測る【実力】、パフォーマンス力を高めるための練習・習得技術などへの【努力】、集客力と物販の売上などファンへのアピール力を測る【人気】、サイコロの出目で加算ポイントが決まる【運】といったポイントを数値化して大会前に集計し、ポイントで上回った選手が試合で勝利することが決まる『ポイントマッチ』のAWG王座が存在している。
それに加え、プリンセス天功さんのペットであるホワイトライオンのKINGくん(1歳)がコミッショナーに就任したキング・オブ・リングエンターテイメント王座が新設。今年10月の後楽園ホール大会で茉莉が初代KINGとなった。
茉莉はREINA女子プロレスで2015年にデビューし、2018年にアクトレスガールズ所属に。2021年末にアクトレスガールズがプロレス団体としての活動を休止すると、プロレスラーとしての活動は辞めることなく“アクトレスガールズ”として専念することとなる。
現在のアクトレスガールズは、舞台演出にプロレスの要素を取り入れた『アクトリング』、女優・声優・グラドル・プロコンカフェ嬢といった面々がプロレスを行っている『アクトレスリング』という2つの活動を行っている。
アクトレスリングは団体側も“プロレス”と言い切っているものの、事前に試合の内容・勝敗・マイク等の内容が決まっている『ポイントマッチ』という真剣勝負のプロレスとは全く違う性質の試合がメインストリームにある。
これがしばしば嘲笑の的になることについて、初代KING戴冠後の茉莉は「アクトレスリングはお芝居だからプロフェッショナルレスリングじゃないとか、なんか耳に挟んだこともありますけど、じゃあこの気持ちはなんなんですかね!?この痛みは何なんだろうな!?」と悲痛な想いを叫んだ。KINGのベルトを“闘いのベルト”にすることを誓った茉莉は、虚実皮膜の極地とも言えるアクトレスリングに一石を投じた形となる。
この日は、元JDスター女子プロレスの選手であったMARUが茉莉に挑戦。
MARUは現在“ストロング暴力スタイル”を掲げる悪のユニット【Actwreskiller’Z(アクトレスキラーズ)】の首魁として活動中。茉莉もキラーズの一員だが、MARUは「お前のそのベルトが強さの称号、闘いのベルトなら話は変わってくる」と挑戦表明。年末の後楽園ホールというビッグマッチで両者の王座戦が行われることが決まった。
この試合は、ノーDQ・場外カウント無し・凶器使用がOKのAWG Extremeルールで実施。
チェーンやイスといった大量の凶器が乱れ飛び、南側客席階段上からのダイブ、リング上に立てた巨大ラダーから場外のテーブルに向けてのダイブなど新体制アクトレス始まって以来の激しいハードコアマッチが展開。アクトレスガールズの“強さの象徴”を決める試合にふさわしく、仮に“女子プロレスラーの試合”として見たとしてもハイレベルな闘いが繰り広げられる。
終盤になると互いに自身のダメージを一切厭わずにラダーやイスへ突っ込んでいく“骨を断たせて肉を切る”と言える捨て身の攻撃を見せるように。壮絶な削り合いの末に茉莉が全力で蹴り抜くバズソーキックからブラジリアンキックを決め、イスの上への奈落落とし(※ハイジャック・ボム)で3カウントを奪った。
試合後、闘いを通してMARUとさらに絆を深めた茉莉は「キング・オブ・リングエンターテイメントっていうベルトの名にふさわしい試合がこのアクトレスのリングで出来た」と感想を語り、引き続きストロング暴力スタイルを以てアクトレスで暴れまわっていく覚悟を語った。
プロレスファンの一部は「アクトレスは試合の勝敗・展開まであらかじめ全部決まっているからお芝居だ」と悪しざまに言う。その内容自体はアクトレス側が公表している事実だ。
ここで言う“お芝居”の意味は、プロレスをよく知らない人間が使う“プロレス”に近い。予定調和・八百長・ニセモノ・まがい物・茶番といったものを嘲笑する際に使われる言葉だ。
アクトレスがリング上で表現するものを何と呼び、どう解釈するかは個々人の解釈による。しかし、人に何かを伝えるために苦悩した時間、磨き上げてきた技術、積み重ねてきた努力を以て表現されるものは、どういう名前で呼ばれるものであれ“本物”だ。
虚実皮膜のド真ん中を駆け抜け、紛れもない“本物”を魅せているアクトレスリングの今後の闘いにも期待していきたい。