DEEP 7.20大田区大会でライト級王座防衛戦を行う北岡「DEEP王者の北岡悟であることに意味を感じている」
7月10日、都内世田谷区のLotus世田谷で、DEEPライト級王者・北岡悟(Lotus世田谷)が公開練習をおこなった。北岡は、20日に開催される『DEEP CAGE IMPACT2015』(大田区総合体育館)で、岡野裕城(マッハ道場)を相手に3度目の防衛戦をおこなう。
北岡は、昨年大みそかのさいたまスーパーアリーナ大会で吉田善行に判定勝ちし、2度目の防衛を果たした。今年に入ってからは、3月のパンクラスでかつて倒した五味隆典の愛弟子アキラに完勝、ワールドスラム トーナメントを制した。日本のライト級ナンバーワンとして、ますます存在感を増している。
挑戦者の岡野は、DEEPウェルター級で闘っていたが、昨年7月に白井祐矢、10月に中村K太郎に敗れライト級に転向した。転向以降は今年2月に江藤公洋、5月に元ライト級王者の中村大介に勝利し、調子を上げている。
北岡は、古賀靖隆をパートナーに技を次々と決めて見せた。軽快な動きからコンディションの良さがうかがえた。快活な笑顔が何度も見られ、リラックスした様子。試合まで10日となった今は疲れを抜いている段階。調整な順調なようだ。
——防衛戦の相手が岡野に決まった時にどう思いましたか?
北岡 5月の試合で勝てば、次の挑戦者は岡野選手だと聞いていたので、そのままで特に問題ない感じです。相手に対しては特にないです。
——岡野選手はウェルター級から階級を落としてきて連勝していますが、どういう印象をお持ちでしょうか。
北岡 日本人で、あの体格はなかなかないですよね。ウェルター級でも大きな方でしたし、世が世ならばヘビー級とかでやるような体格の選手ですよね。
——試合では、どのような攻防を想定していますか。
北岡 あるんですけど、それを説明する気はないです。
——岡野選手は手足が長く、パンチが伸びてくるイメージがありますが…
北岡 体格で言えば吉田(善行)選手も大きかったですし、ストライカーともたくさん戦ってきましたから。岡野選手が優れているとは思っていますけど、僕とやる人はみんな打撃で勝とうとしてくるので、(他の選手と)変わらないかなと思います。
もちろん、強いとは思っています。ただ、体格には警戒していますけど、パーツの勝負では無いと思っているので。攻防の説明は、基本しません(笑)。
——この試合に向けて、特にやって来たことはありますか。
北岡 ありますけど、これも言いません。試合で出るかどうかなので。敢えて「ここを見てくれ」とは言いません。アキラ戦のときも、吉田戦のときも、作ってきたことはありましたけど、見る人に好きに解釈してもらえばいいと思います。
——岡野選手は、挑戦者としてふさわしいと思いますか?
北岡 はい。他にいないですよね。だからこのカードになっているんだし。逆に、ほかに誰かいますか? 僕は宮崎(直人)選手に勝っていますし、下石(康太=今年4月、DEEP OSAKAで吉田善行に勝利)選手とかも、あの試合を見ましたけど1戦勝ったからって僕とやれるなんてことはないですし。岸本(泰昭)選手がいくら大晦日にいい試合をしたと言っても、3連敗の選手(高橋“Bancho”良明)に勝っただけですし。
ただ、岡野選手も上の階級で2連敗しているんですけど、白井(祐矢)さんと(中村)K太郎が相手だったんですよね。白井さんとはスプリットでしたし。
——今回の防衛戦のテーマは?
北岡 今年、DEEPに出るのはこの大会だけになると思います。DEEPでの年に1回の仕事になるわけです。“DEEPでの北岡悟”ってことですよね。佐伯(DEEP代表)さんには「DEEPに出るときはタイトル戦にしてください」と言っています。ノンタイトルでやってもしょうがない。賭けたいと思ってやってるので。
——今、DEEPで自分はどういう存在だと思っていますか?
北岡 僕が中心人物ですよね。僕の名前を挙げない時点でみんな逃げてると思います。それは明白ですよね。大みそかの時点で「7月にDEEPに戻って試合をします」と言っているので、もし抜きん出たいのなら、そこに名乗りを上げるべきだと思います。その間に2連勝したのは岡野選手だけでしょう。もしかしたら試合が組まれなかったとかいう事情もあるかも知れませんけど、時の運も力だと思うので。
かつての僕は、実力はなかったかも知れませんけど、世に出ようとギラギラしていました。でも、今そういう人がいないですよね。なんとかしようと思っていないというか。
——「もっと噛みついて来い!」ということですか?
北岡 別に僕に噛みつかなくてもいいですけど、何なんとなくやってるんじゃないの? と見えてしまうんです。ちょっと追い込んで、スポンサーをちょこちょこ集めて、数万円のギャラで試合をして、それで友達にキャッキャ言われても、大していい思い出にならないよ、ということです。
人から見れば僕も大差ないのかも知れませんけど、僕は普通なら見ることができないような景色を何回も見せてもらってるし、それが見たくて試合をやっています。もがいているし、あがいてもいますよ。それの比べっこですよ。
——対相手じゃなくて、対世間だということ?
北岡 世間まで届いてないよ!(苦笑)。だから、もがいていない、あがいていない、ということなんです。笑えないですけどね。
——DEEPのメインで、チャンピオン北岡悟としてどんな仕事を見せたいですか?
北岡 ただ単に自分の試合を徹底するだけです。いつもと変わりません。帰りたい人は帰ればいいし、価値がわかるなら残ればいい。
——岡野選手は、ウェルター級で挫折を感じて引退を考えたけれど、ライト級に転向して、このチャンスをつかみ取りたいと気合いが入っています。
北岡 人がどう解釈するかわからないですけど、僕はデンと構えて試合するつもりはないし、僕の方がもがいて、あがいているし、それでいいんじゃないかと思います。挫折は僕もいっぱい味わってきたので、彼がどれぐらいの気持ちかわかりませんけど、この階級でもっと大きな挫折を味わってもらえればと思います。
——現在、精神状態としてはどんな感じでしょうか。リラックスされてる感じもしますが。
北岡 いろんな気持ちになりますね。楽な試合なんてないです。本当にそう思っています。試合は本当にきつくて苦しいものです。楽しみたいなんて思っていません。あとで振り返ってみたときに、うっすら「いいな」と思えたら、それでいい。試合を楽しむ気はありません。
これは岡野選手には関係ないことなんですけど、よく「試合を楽しみたい」とか「自分が試合を楽しめば、お客さんも楽しんでくれる」なんて言う選手がいますけど、どれだけ軽いんだと思います。まさに“悦に入っている”状態ですよね。相手にも失礼だし、自分の闘いに対しても失礼だと思うので、僕はそういうことは言いません。
それはさておき、この大会は、日本の総合格闘技界の今年上半期の一番のビッグイベントだと思いますので、メインでやらせていただくことは誉れです。格闘技界の中にDEEPの役割があって、その仕事に何回か携わらせていただいて。大晦日は集大成で、この試合は蛇足といえば蛇足ですけど、大事な蛇足かな。パンクラスにも上がらせていただいていますけど、パンクラス→パンクラスと連戦にはしたくなかったんです。ちゃんとDEEPで仕事をしたかったんですよ。実は、あまり言わないですけど“DEEP王者の北岡悟”であることに意味を感じているので、まだ今はそのままでいたいと思います。石にかじりついても。
【写真・文/佐佐木 澪】