【インタビュー】REBELS.52のメインでISKA世界バンタム級王座に挑む小笠原瑛作が胸中を語る!「僕は負けて強くなった。『負けキャラ』の希望になりたい」(後編)

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(※インタビュー前半 http://battle-news.com/?p=31850

<負けを経験するたびに、もう一段階強くなった>
 7月31日現在、プロ戦績は29戦26勝(14KO)3敗。この中で印象的な試合として、小笠原は「3敗」を挙げる。
「負けるのは嫌ですけどね(苦笑)。負けたら、タイ人の先生や会長とかみんなにボロクソに言われて居場所がないし、人生、見てるものが全部灰色ですよ(苦笑)。僕は楽しいことが好きだし、キツいことなんか本当は好きじゃないですけど、やっぱり勝たないと楽しく生きられない。嫌な競技を選んじゃったな~、なんて思ったりもするんですけど。
 振り返ると、僕は『負け』が分岐点になっているんです。9連勝して、初めてベルトを巻いて(REBELS-MUAYTHAIフライ級王者)、10戦目で加藤竜二選手のバックキックで失神KO負けして。その次はカンボジアでの試合で、最初に相手をボコボコにしたんですけど、ボディを効かされて倒されました(苦笑)。会長とタイ人の先生に『ボディで負けるなんて!』とボロクソに言われて。
 その後から12連勝して、RISEバンタム級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦が村越(優太)選手との試合(16年7月30日)。勝てば、次は『天心戦』でそれが頭にあって『ここはバッチリ倒さないと』って倒し方とかを考えて。今、考えたらメンタル的なものが上手くいかなかったし、連勝するうちに『負けることの恐怖』もあったんです」
 村越戦では1ラウンドからパンチで攻勢を掛けたものの、村越のボディ攻めで失速。3Rに陣営がタオルを投入してTKO負けとなった。

 山口会長「油断ですよね。12連勝でみんなが『村越戦は余裕だ』と見てたし、僕は大田区総合体育館のクンルンファイトとの合同興行の準備で忙しくて、全く瑛作を見てなかった。僕も『大丈夫だろう』と思ってしまった。勿論村越選手が瑛作より強かったという事なんですけど。でも、瑛作の良さは『負け』をきっかけに、もう一段強くなるところです。村越戦で負けて、瑛作は一段階気持ちが引き締まったし、僕やトレーナー陣もそうです。
 村越戦があったからワンチャローンに勝てたんですよ。ワンチャローン戦の1ラウンドが終わってコーナーに戻ってきた瑛作の顔を見てみんな『村越戦のパターンか?』と思った。でも瑛作はそこで踏ん張りましたから」

 1年前の村越戦から何が変わったのか。
 村越戦の敗北の後、山口会長から出された「指令」があったという。
「僕が村越戦で負けした1週間後、T-98(タクヤ)さんが会長に『野木トレに行ってきます』と言ったら、会長が僕を見て『アイツも連れてけよ!』って言ったんです。気持ちも落ちてて、行きたくないと思ったんですけど『嫌です』なんて言えず(苦笑)。T-98さんについていって、階段ダッシュをして、キツすぎてゲロを吐いた(苦笑)。それが最初です」
 ボクシングの白井具志堅ジム、野木丈司トレーナーが主宰する「野木トレ」。その過酷な階段ダッシュには白井具志堅ジムのボクサー以外にも八重樫東、所英男、KANAら競技や団体の枠を超えた豪華メンバーが顔を揃え、メンバーの中から大雅(K-1 WORLD GPスーパーフェザー級王者)や比嘉大吾(WBC世界フライ級王者)ら、次々と王者が誕生している。
 小笠原はこの1年間、そんなメンバーと切磋琢磨してきた。
「周りのメンツが凄いです。世界チャンピオンが二人いますし、その中で自分が負けたら居場所が無くなりますし『これだけのメンバーと練習してる』と自信にも繋がります。勝てば、所(英男)さんや世界チャンピオンのボクサーが『おめでとう』と言ってくれますし『ここのメンバーの一員でいなくちゃいけないし、恥ずかしい試合は出来ない』という自覚につながってます」
 中でも、同い年の比嘉大吾には刺激を受けているという。
「白井具志堅ジムの若いボクサーたちがみんなを引っ張るんですけど、中でも大吾君は一番速いし、彼の中でプロとして『世界を獲る』という自覚が世界挑戦の前からあったと思うし。それで『自分もこんなところで止まっていたらいけない。近づかないと』と思うようになりましたね。
 参加した頃は先頭集団に付いていけなかったですけど、今は結構先頭の方で走るようになりました。今でも行くのが嫌ですし、当日の朝にカーテンを開けて雨が降ってると『シャー!』ってガッツポーズが出るぐらいキツいです(苦笑)。でも、やり切ると、確実に返ってくるものがありますから」
 小笠原の必死の努力に、山口会長も「愛のムチ」で応えた。
「村越戦でボディで負けたのに、その次の試合が工藤選手とで(REBELS.46)、またボディ攻撃の強い選手と組むという(苦笑)。でも、そこで勝ったからこそ、KNOCK OUTに呼ばれましたし。そういう僕のストーリーを会長が考えてくれて、ポイントポイントで出してくれてるのかなって思います」

<苦悩の末のワンチャローン戦。そしてこれから、小笠原瑛作はどこへ向かうのか?>
 今年6月のワンチャローン戦は、小笠原にとってリスクの高すぎる試合だった。
 「倒し倒され」の激闘を繰り広げるワンチャローンは、タイの人気選手であり、現役の王者である。だが、日本におけるワンチャローンは「那須川天心にバックキックでKOされた選手」。それだけに、勝っても負けても那須川と比較されて、小笠原の評価が下がるだけ、という結果に終わりかねなかった。
「KNOCK OUTからワンチャローン戦のオファーが来た時、会長に『俺は断った方がいいと思うよ』と言われて。僕も、天心と比べられるだけし、弱い選手じゃないし、はっきり言ってリスクしかない。で、最初は『やりたくないです』と会長に言って断ったんです。でも、KNOCK OUT側はやらせようとするんですよね。
 そんな時、ウーさんだけはすごく盛り上がっていたんです。『お前なら絶対に勝てる!』って。ウーさんはタイでワンチャローンを教えてて、元の生徒と今教えてる僕の試合を見たかったと思うんです。ウーさんは僕が勝つと、飛び跳ねて、超喜んでくれるのでそれがすごい嬉しくて。
 だから、ウーさんのために頑張って試合しようという気持ちもあって試合を受けました。ウーさんに伝えたらすごく燃えてて『ワンチャローンに勝ったら凄いことだぞ!』って。
 信頼するウーさんに『勝つ姿を見せたい』と思いましたし、やると決めたら『天心があれだけの勝ち方をしてるけど、自分は何かそれを超えるものを見せたい』と思ったし。ネガティブになっても仕方ないんで『いい試合が出来るんじゃないか』とワクワクに変えて、練習量を増やして臨みました」

 結果は5ラウンドTKO勝利。これでKNOCK OUTでは旗揚げ大会から実に4連続KO勝利をマークした。
「試合後の反響がこれまでと全然違いました。ある意味、倒し倒されの激闘になって、結果的に良かったのかな、と。試合前から『天心みたいな倒し方は出来ない』と言ってましたけど、違う倒し方になりましたし、お客さんも『感動した』と言ってくれて、よかったかなと思いますね。
 本当に、負けなくてよかったです。そういう意味でKNOCK OUTのマッチメイクはえぐいな、と(苦笑)。でも、勝ったらかえってくるものも大きかったので、結果的にやってよかったです」

 そして、山口会長は新たなテーマを小笠原に与えた。それは「自分の価値を高めること」。
 そのための舞台がホーム、REBELS。小笠原にとって初の世界タイトルマッチ、そして初めてのメインイベント起用である。

●9月6日、東京・後楽園ホール
「REBELS.52」
 メインイベント:ISKA・K-1ルール 世界バンタム級王座決定戦 小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)対 ジョヴァンニ・フランク・グロス(フランス)

 ISKAの世界バンタム級タイトルを保持するのは、オリエンタルルール(ヒジなし)が那須川天心、ムエタイルールが志朗。小笠原がK-1ルール王者となれば、この二人と肩を並べることになる。

 山口会長「ワンチャローンに勝って、さらにステップアップをはかるいいタイミングですよ。メインをやると選手の意識は変わります。前座でどんなにいい試合があっても、メインがつまらない試合だったり、お客さんの期待に応えられない試合だとそのイベントが駄目になる。興行はメイン次第です。
 瑛作はそういうメインイベントの責任を果たすべき時期に来てて、一度経験させたいと思っていました。KNOCK OUTだと第一試合や第三試合をやらされちゃうんで。
 あの子は、目立つ場でやる方が力を発揮できるタイプです。目立たない場よりも『自分ひとりを見てくれる場』だと、期待以上の力を発揮する。今回は瑛作が思う存分、目立つ舞台を用意したんで、これで一段階、選手として上がってほしい。
 プレッシャーはかなりのものですよ。あの梅野(源治)選手がセミで、瑛作がその後で『興行を締める責任』を果たせるのか。瑛作にはこのプレッシャーも利用して、跳ね飛ばしてほしい」

 当の小笠原も、今回の「初メインイベント」には驚き、そして試合に向かう気持ちがより高まったという。
「めちゃくちゃモチベーションが上がりました! これまでの試合よりもさらにハードルをグッと上げてきて、会長はそういうストーリーをズバッと作ってきますよね(笑)。僕をメインに選んでくれて、とても大事な1戦になりました。これを乗り越えたら、自分はまた成長できるし、一皮剥けて、階段をまた一つ上がれると思うので」
 ただし、ことさら「メインだから」という意識は持たずに「等身大の自分」で勝負する。それは過去の敗北から学んだことだという。
「メインだからといって、格好をつけて、ひっと飛びした戦い方は僕には出来ないので。これまで積み重ねた、等身大の自分でやって、さらにステップアップした試合をする、というだけですね。
 メインの自覚もすごくありますけど『いい試合が出来なかったらどうしよう?』や『メインの仕事が出来なかったらどうしよう?』は抜きにして、シンプルに、等身大の自分で仕事をして、それが結果につながればいいかな、と。ワンチャローン戦もそう考えて結果につながったんで」

 今回のタイトルマッチは「ISKAのK-1ルール」。ヒジ打ちなし。また、現行のK-1ルールとも違い「掴んだら、ワンアタックはOK」(山口会長)という。

 山口会長「瑛作は元々、KNOCK OUTに出るまでヒジなしルールでやってきたので問題ないです。瑛作はこれからタイのベルト(ムエタイ王座)を視野に入れていくのもありだと思うし、パンチでも倒せるからREBELSではヒジなしルールでやっていくのもいいと思うし。
 彼は、より輝く場所にいた方がいいんですよ。本人も目立ちたいし、その方が力を発揮するし。ルールにこだわらず、彼が一番輝く舞台で勝負させたい」

 よく話題に上る「那須川天心戦」についても聞いてみると、山口会長は「今はまだその時期じゃない」という。

 山口会長「僕が瑛作に言うのは『天心君とやりたい、やりたいと言えば言うほど、相手はやりたくなくなるよ』ということ。今は、瑛作自身のブランド価値を高める時期。価値が高まって、向こうから『やりたい』と言うような立場にならないと。

 小笠原にとっても「天心戦」には特別な思いがある。だからこそ「いつ、どの舞台でやるか」にこだわりたい。
「僕は別に『天心とすごいやりたい!』ではないです。僕の性格上、ある意味ではやりたくない。ただ、格闘技が今、一般向けに知られてない中では、実力もないと駄目だと思うんですよね。本物でなければ認められないと思うんです。
 その意味で、同じ階級で、同じ日本人に天心がいちゃうんで『やらないといけない』と思うし、天心を倒さないと自分が本物になれない、と思っています。僕がメインとして今よりももっと輝いてくれば、ファンの人から余計に『天心との試合が見たい』っていう声が上がるだろうし。
 ファンの人の間に『8月のKNOCK OUTで天心とやるんじゃないか?』と言う声もあったんですけど、僕はただ単にやるだけでは意味がないと思っています。
 天心は天才で、子供の頃から鳴り物入りで来ましたけど、そんな『天才』を、コツコツと『努力』を積み重ねてきた僕が倒せたらストーリー性があると思うし。今、ジュニアの試合で何もできない、弱い子供たちにも夢を与えられるだろうし。
 その意味でも、天心はグッと行ってますけど、僕ではまだ知名度が全然足りないです。だからタイミングは今じゃなくて、もっと盛り上がったところでやりたい、という気持ちがありますね。
 僕はキックボクシングをもっと盛り上げたいし、一般の人にもっと知って貰って、一般のスポーツに並ぶぐらいに持っていきたい。
 今までスポーツを見たことのない人が、僕の試合を見て『すごい感動した』と言ってくれたり、喜んでくれたりするのを見ると、何か特別な力が格闘技にはあると思うし。
 昔のK-1はすごく色がありましたよね。須藤さんは須藤さんの、魔裟斗さんには魔裟斗さんの。佐藤さんや武田さんも、この曲が流れたらこの人が出てくるって。イメージとキャラクターとすべてが立ってて、そんな『役者』さんたちが並んで戦うから感動するし。日本人はそういうのが大好きなのかな、って思うんですよ
 そういう『役者』はたくさんいた方が盛り上がると思うし、今だと、天心は天心の立ち位置があるし、武尊さんは武尊さんの立ち位置がある。僕は僕で、早く僕の立ち位置を確立したいです。今、ネットでも『天心対武尊が見たい』ばかり言われるじゃないですか。もし『那須川天心対小笠原瑛作』が組まれても『あ、やるんだ。でもここまで来たら天心対武尊が見たい』と言われてしまう。
 それではダメなんで『小笠原瑛作がやるの?早く見たい!』ってみんなが思うようにならないと。そう言われるようになるまで、僕が頑張っていければ。
 将来の目標は、俳優です。舞台もまだ2回ぐらいしか立ったことがなくて、突き詰めていくと『違うな』と思うかもしれないですけど。キックをやる前から和太鼓もやっていますし、何か自分の体を使って人前で表現することが出来たらいいな、と。そこはやっているうちに固まってきて『これだ』というものが出来てくると思うんで。
 まず9月6日、初めてのメインイベント、初めての世界戦で会長やファンの人に『小笠原瑛作がメインで良かった』と言って貰えるように頑張ります」

○プロフィール
小笠原 瑛作
所  属:クロスポイント吉祥寺
生年月日:1995年9月11日生まれ
出  身:東京都
身  長:170cm
戦  績:29戦26勝(14KO)3敗
タイトル:REBELS52.5kg級王者

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