倒し倒されの大激闘は、新日本キック王者勝次が不可思をヒジ打ちで仕留めて名門の実力を示した!

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 6月17日、東京・水道橋のTDCホールで開催された「KNOCK OUT vol.3」。激闘に次ぐ激闘で、全7試合中、実に6試合がKO決着。気持ちと気持ちのぶつかり合いに場内のボルテージも最高潮。旗揚げ以来の2大エース、梅野源治と那須川天心が不在ながら、キックボクサーたちの「この舞台でのしあがる」という覚悟と気合いが最高の格闘空間を作り上げた。

 観客の興奮はメインイベントで頂点に達した。片や「KNOCK OUTの新エース」の座を掴むべく、厳しい減量をして「KING OF KNOCK OUT初代ライト級王座決定トーナメント」にエントリーした不可思(クロスポイント吉祥寺)。対する勝次(藤本ジム)は新日本キックボクシング協会のライト級王者。老舗団体の新日本キックは、過去に武田幸三や石井宏樹ら日本を代表するキックボクサーを多数輩出しながらも、他団体と交流することはほとんどなく、独自路線を歩むことで知られる。その中にあって他団体王者との対戦を希望してきた勝次にとってKNOCK OUTは待ちに待ったチャンスだった。

「日本で一番強い自信があるので、こういうチャンスをいただいて証明できるのが本当に嬉しい」(勝次)
 試合は、不可思が前に出て、勝次が下がりながら反撃する展開でスタート。1ラウンド終盤にいきなり試合が動く。不可思の右ストレートに下がった勝次が、ロープの反動を利用しながら飛び上がって右を打ち下ろす(スーパーマンパンチ)。不意を突かれた不可思はダウンしたが、すぐさま反撃。2ラウンド、今度は不可思が思い切り踏み込んで得意の右クロスを打ち込み、立て続けに2度のダウンを奪う。
 ここで不可思は仕留めに掛かる。勝次をロープ際に追い込んでパンチを連打。だが、勝次は冷静に右のカウンターを決めてダウンを奪い返すと、跳び膝からの右ストレートでこの回2度目のダウンを奪った。これで勝次はペースを掴み、3ラウンドにも跳び膝からのパンチでダウンを奪う。不可思も右を当て、ローを打ち込んで巻き返しをはかったが、勝次は要所で反撃し、不可思のペースにはさせない。

 最終5ラウンド、不可思陣営の指示は「ポイントで負けてる。行け!」。勝次陣営は「不可思がパンチを狙ってくるところにヒジを合わせろ」。この指示が当たった。逆転を狙ってパンチを振るう不可思に、勝次はヒジのカウンターを合わせて不可思は大量出血。ドクターチェックで「鼻骨骨折の疑い」と診断されて、勝次のTKO勝利となった。

 試合後、勝次は「パンチを受けすぎて試合内容をほとんど覚えてないです(苦笑)。(試合前に)にらみ合いをしたところだけは覚えてます。ヒジで勝ったんですか? よかったです(笑)。早く動画が見たい」。指導する鴇稔之コーチは「今日の出来は45点。褒められるのは根性だけ(苦笑)。全然テクニックが使えてない。あれでは世界は獲れないよ」と苦言を呈し、勝次は神妙な面持ちで聞いていた。「勝って、盛り上げたからOK」では済ませないところに名門、目黒藤本ジムの強さがある。
 KNOCK OUTが「ヒジありのキックボクシングルール」で旗揚げした際、ある関係者は「新日本キックには強い選手がたくさんいる。交流戦をしないのであまり知られていないが、彼らが出てきたら面白い」と話していたことを思い出す。次回8月20日のvol.4には、新日本キックからアンディ・サワーやT-98(タクヤ)に勝利した実績を持つ緑川創(藤本ジム)と現日本フェザー級王者重森陽太の参戦が決定。新日本キック勢がKNOCK OUTの勢力図を塗り替えてしまうかもしれない。

 なお、小笠原瑛作は元ムエタイ2階級王者のワンチャローンと大接戦を演じ、5ラウンドTKO勝利。ワンチャローンは、旗揚げ大会で那須川にKO負けした印象が強いがムエタイのトップ選手であることは間違いない。小笠原にとって今回の勝利はかねてから希望する「那須川天心戦」実現に向けて大きく近づいたことになる。次回8月20日の「KNOCK OUTvol.4」(大田区総合体育館)には那須川天心の参戦が決定しているが、小野寺プロデューサーは「天心の相手は未定です。小笠原の可能性? それはあると思いますが、少し考えていきたい」とのこと。
 また「野良犬2世」森井洋介は強豪ワンマリオ・ゲオサムリットに3RTKO勝利(タオル投入)。梅野源治が判定勝ちした相手をKOしたことで、こちらは「KNOCK OUTの新エース」の座を固めつつある。

(スポーツライター茂田浩司)

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