【激白・第2章】心を病み生活苦の夏すみれに甘い言葉を囁く男。買収提案に軽い気持ちで乗った先に待っていた闇
心を病んでいた2年間の欠場中、生活費に困った女子プロレスラー夏すみれへある男が囁いたプロレス団体の買収話。
初めは疑っていた夏すみれも徐々に惹き込まれ、周りのレスラーも巻き込む投資話へと発展する。
ノンフィクションの実録話は思わぬ展開へと進んでいく。
■事業計画書は正直未だになにも鵜呑みに出来るものではなかった
――女子プロレス団体の買収ですか……!
「最初は『何を言ってんだコイツは』と思ったわけですよ(笑)正直言い方が難しいですけど、言うなればお金に余裕のあるプロレスファン“あるある”で、プロレスが好きっていう気持ちを持っている人だからお金に余裕があるとこっちの業界に入ってこようとしちゃうんですよ。その人に限らず、そういう人って結構いっぱいいて。私は正直そういうの好きじゃないんです。やっぱり好きで応援してお金を出すのと、業界の中で仕事をしてお金を出す感覚って絶対違うから。その人と話している限りは業界にいっちょ噛みたいって感じがしたんで『あっ、出た出た(笑)』みたいな感じで流していたんです。でも、当時周りに1人フリーランス転向を考えている選手がいて、私が面白半分で『ちょっと聞いてよぉ~(笑)』みたいなノリで『●●さんが女子プロ団体買収するとか言ってんのよ。何言ってんだろね~』みたいな感じで話をしたら、その選手からしたら今後の環境を変えて選手活動をしていく中で、どこか地盤になるところが欲しいっていう話をしてたんですね。だから買収云々の話じゃなかったとしても『上手いこと自分たちの望んでいる形でフィットして、なおかつ私もなにか関われるような形で話がまとまるのであれば興味があります』と言われて。私もその一言で『出た出た(笑)金持ってるプロレスファンあるあるね』みたいな感じだったのが、『1回ご飯でも行って話を聞いてみるか』と思うようになって、3人で会ったんです」
――雲行きが怪しくなってきましたね…
「私たちは軽い顔合わせ程度の気持ちで行ったんですけど、その男性、仮にA氏としましょうか。A氏は事業計画書みたいなものをExcelで作ってきて、私達に見せてきたんですよね。でも平常のプロレス業界からはあまりにもかけ離れすぎているような大きい数字を出してきて、『いやいや現実的に考えてこんな大きい金額の事業計画は1~2年じゃ無理です』と言ったんですけど、A氏からは『プロレスは国民的スポーツだった時期もあるし、今からまたその時代が来ると思っている。だからこそ可能性に賭けてこの金額を出す。2~3年は何億かの赤字は覚悟している。それでもやってほしい』というふうに言われたんです。いくら面白いことをしたり、いい試合をしたりしても、それがちっちゃい100人程度のキャパの会場でしか試合ができない環境なんだったら、世間的には“無い物”にされちゃうわけじゃないですか。だから、そうしないためにも資本って大事で、大きい金額だからこそ出来ることってあるなって思ったんですよね。それを、そういう熱い想いで『出します』と言ってくれるのであれば、『やりますか』という形で話に乗りました」
――具体的にどういう形でその話はスタートしたのでしょう
「私がその時に提案したのが、『今このプロレス業界、女子だけ見ても団体がありすぎる。ただでさえ乱立している中で新たに団体を立ち上げるのは意味がないんじゃないか』という話をしたんです。興行ビジネスっていう点でもコロナのご時世で、いずれ落ち着いたとしてもいま新規参入するのは違うんじゃないかって思ったし、特に今はネット配信とかでその場にいなくても新しいファンを取り入れることが出来る環境だから、どうせなら今まで通りのものじゃなくて、ネットとかを駆使してプロレスっていうジャンルを扱った新しいことがやりたいなと感じたんです。“映像作品としてのプロレス”みたいな形で、それが生の興行としてのプロレスにもリンクするみたいなものを作りましょうということになって。それが2021年1月とかの話なんで、そこからはずーっとその“映像作品としてのプロレス”というものを実現させるために動いていました」
―― 一緒に話を聞いていたという、もう1人の選手はなんと言っていたのでしょう?
「もう1人も、その時点では私と気持ちは一緒でしたね。正直事業計画書を見る限りでは『いやいやいや……』って感じだったんですけど、A氏が本当に言う通り『2~3年は赤字でも構わないから将来的にこういうものを作りたい』という形で見てくれるのであれば、それはやってみる価値はあるんじゃないかって感じです。A氏が提出してきた事業計画書は正直未だになにも鵜呑みに出来るものではなかったんですけど、心意気としてやってみるのはアリだみたいな。当時、もう1人の選手も自分自身で好きに動ける環境ではなかったので、主として動くのは私とA氏ということで、その選手には演者として参加してもらう形で話が固まって。そこからはずっとその企画を実現するために動いてて、身近な映像業界で働いているディレクターさんだったり、そういう俳優さんだったりに映像制作の現場についての話を聞きに行ったりとか、実際に出てほしい選手1人1人と直接お話して『こういうことをやろうとしているので一緒にやりませんか』と声をかける形でずっと動いていました」
■自分が会社を設立して社長として何かをやっていくなんて一切考えになかった
――そのときにはA氏から稼働費は出ていたのですか?
「その当時は稼働費っていう形では受け取ってなかったですね。打ち合わせするのにも会議室とか場所代がかかるじゃないですか。会議室を用意していただいたりとか、そういう経費的なものは出していただいていたんですけど、給与とか報酬とかって形では受け取っていなかったので、貯金を切り崩しながら。とりあえず『この企画が実現さえすれば』と思って動いていたので、お金は受け取っていなかったです。でも、話が進むに連れて段々方向性が変わってきて、当初はA氏がとある団体を買収して自分(夏)に動いてほしいってところから話が始まったんですけど、私はあくまでもA氏が代表で、私はその内容面を補佐する役目なんじゃないかと感じていたんですけど、気がついたら私自身が代表になって会社を設立して、その会社にA氏の会社が投資をするみたいになってたんですよね」
――ずいぶん話が食い違ってきましたね
「私としては『欠場中も肩吊ってでも出来る仕事ないかな?』みたいな気持ちで持ちかけてるから、自分が会社を設立して社長として何かをやっていくなんて一切考えになくて。『話が大きくなりすぎてないか?そんな会社を設立して云々って話じゃなかったよね?』って思ってはいたんです。でも私も私で深く物事を考えずに、『そういう形でないと資本金を用意できないのであれば別に会社設立するくらいいいか』って無責任に考えてた部分があって。だから、ちょっとずつ話が変わってきている中で、その違和感を見て見ぬ振りをしたまま話を進めてしまって。そのまま、出る選手も決まって、映像を作ってくださる映像制作会社さんとの打ち合わせも終わりました、2週間後には撮影を開始しますって状態まで行ったんです。でもこのタイミングで、A氏から資本金について当初は“投資をする”ってお話だったのが、“A氏の会社の投資案件としてプレゼンして、その結果次第で投資をする”って話に変わっていたんです。それだと、大きく話が変わるじゃないですか。絶対に投資をしてもらえる環境と、してもらえないかもしれない環境ってぜんぜん違うし、なんならその工程って選手とか映像制作会社とかに声をかける前にやるものなんじゃないの?って。全部金額が確定した上でオファーをかけたりするわけじゃないですか。A氏から『2021年の10月くらいまでには映像の配信を開始したい』みたいにちょっと急かされていた部分もあったので、選手のオファーとか映像制作会社の方へのお仕事依頼も私の仕事だったので話を進めていたんですけど、蓋を開けてみたらまだ投資できるかどうかも分からなかった状態だったんです。私からしたらお金の部分は完全にA氏に任せていたので、A氏はA氏で話をつけてくれているものだと思っていたので、『まだ話付けてなかったの?!』みたいになって」
――残り2週間で投資の交渉を夏さんが満額で終えなければいけない状況になったと
「A氏の会社の方ともお話したら、どうやら会社側にも話を一切通さずに私に好きなようにやらせていたと。会社側の人からしたら『会社のお金なのになんで突然得体の知れない女子レスラーが現れて既定路線かのように動いてるんだろう?』って思ってたみたいなんです。そこで私もようやく今置かれている現状の理解が出来て。私からしたら会社のお金云々とかは私側の話じゃなくて向こうの話なので、そこで『プレゼンしてくれ』と言われて『話が違うよ!』と。でももう色々話を進めていたので、それをやらなきゃお金を渡せませんって言われるんだったらやらざるを得ない。だから慣れないPowerPointとかを使ってA氏を含む取締役の方数人の前でプレゼンしたんですけど、他の取締役の方からしたら、突然よく分からないプロレスというジャンルで会社のお金を使って大きいことをしようとしてるわけじゃないですか?それは他の方からしたら『はあ?』って感じなんですよ。A氏の事業計画自体、今のプロレス業界の現状では無理なものなんです。だけどお金の話はA氏の言う通り、『いやこれ無理だろ』と思いつつ説明したんですけど、案の定他の方は鈍い反応で出ていかれたわけですよ・・・残された私としては『これ明らかに払ってもらえないだろ』って空気が漂ってたんです」
――プレゼンの手応えが全く無い状況で放置されて、流石にそれは焦りますね
「なのでA氏に『元々お金を出すと言っていたから、それを前提に動いていたけど、出せない可能性はあるんですか?』と聞いたら曖昧な態度で誤魔化されて。『出せないという話になったらどうするんですか?』と聞いたんです。撮影は始まってなかったんですけど、打ち合わせは何回かしていて、既に構成作家の方とかにはもうお仕事はしてもらっていたので、その時点ではもう既に発生してるお金があったわけですよ。『そういうお金とかもこちらはいただける前提で動いていたんですけど』と言ったら、『僕が払えばいいんですよね?』ってちょっとキレ気味に言われたんですよね。それでこっちも『お金云々もそうだけど私の信用問題どうなんねん!』と。もう選手とかには『もうこれはやるからね』って形で声をかけてて、出演していただく選手の中には団体所属の選手もいたので、その団体さんの代表さんにも企画書とともに話を通して、快く選手を貸し出していただいていた状況でした。『あの話、やっぱ無しで!』なんて言ったら少なからず私のプロレス界における信用ってなくなるわけですよ。そういう部分の責任もある中で、『僕が払えばいいんですよね?』じゃねーだろと。お金を払ってもらっても信用は帰ってこないわけですから、そういう投げやりな対応に私が腹を立ててしまって、その日は会議室を出たわけです。そこから気持ちとしてはさんざん風呂敷を広げるだけ広げておいて、たたむことも出来ない状況で『やっぱり無理です』ってなっちゃったらどうしようっていう不安が大きかった。企画がスタートした年明けから7月までの7ヶ月間、資本金さえ入っていればそこから生活も賄えばいいと思って一切他にバイトとかもせずにこの企画のために動いていたんで、貯金とかもほぼほぼ無くなってたんですよ」
――最初は『肩吊った状態で出来る仕事無いかな』の話が、とんでもない方向へ発展してしまったわけですからね
「そう。だからホントにお金もなくて。しかもそのとき私自身は、当時お付き合いしていた方がいたんですけど、その仕事に専念するためにその方とはお別れをして、事務所兼自宅として使えるような広いところに引っ越していたっていうのもあって、生活費の部分もそこをアテにして大きく出ちゃってた部分があって・・・この話が破綻しちゃったら、貯金も無くなっていた私は生活すら出来ないわけですよ。そういうの含めて、そこからメンタルが総崩れしました……」
第3章へ続く
『NOMADS' vol.2』
日程:2022年8月5日(金)
開始:19:00
会場:東京都・新宿FACE
チケット購入URL:https://nomads-fs.shop/
▼シングルマッチ
雪妃真矢
vs
櫻井裕子(COLOR‘S)
▼6人タッグマッチ
真琴/小林香萌/関口翔
vs
安納サオリ/本間多恵/尾崎妹加
▼シングルマッチ
水波綾
vs
網倉理奈(COLOR‘S)
▼夏すみれ復帰戦 タッグマッチ
夏すみれ/高瀬みゆき
vs
[galaxyPunch!]SAKI(COLOR‘S)/清水ひかり(COLOR‘S)
▼タッグマッチ
山下りな/優宇
vs
高橋奈七永/松本浩代