90歳で亡くなった“過激な仕掛け人”新間寿さんをレジェンドたちが追悼。“初代タイガーマスクの秘蔵っ子”が未来を紡ぐ
- 2025-6-17
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- リアルジャパンプロレス

12日、東京都・後楽園ホールにて『初代タイガーマスク ストロングスタイルプロレスVol.34 THE 20th ANNIVERSARY―“過激な仕掛人”新間 寿 追悼興行―』が開催された。
新間さんは日本プロレス時代の力道山さんから指導を受け、新日本プロレス入社後は『アントニオ猪木対モハメド・アリ』を実現させ、『初代タイガーマスク』を生み出すなど“過激な仕掛け人”としてプロレス界を盛り上げてきた偉人。アントニオ猪木さんのスポーツ平和党でも幹事長を務めるなどリング内外で猪木さんを支えた。
2019年にはWWE殿堂入り(レガシー部門)を果たし世界にその名を轟かせ、晩年は初代タイガーマスク・佐山サトルとともに『ストロングスタイルプロレス』を年に数回開催。自分の足で後楽園ホールのリングに上がりしっかりとしたマイクを行っていた。
リング上で愛孫を背中に乗せて腹筋ローラーを転がすなど年齢からは考えられないパワフルな姿を見せてきた新間さんであったが、ここ数年は体調の悪化によりファンの前に姿を見せられないことも増えていた。そんな中、今年4月21日には新間さんが肺炎で亡くなったことが報じられた。
今大会は、新間さんの追悼大会として実施。
追悼セレモニーでは、所属選手である間下隼人、スーパー・タイガーに続き、参議院議員の和田政宗コミッショナー、新間会長の奥様・新間陽子さんと孫で初代タイガーマスク・マスコットガールの野尻栞理さん、藤波辰爾、藤原喜明、前田日明、猪木啓介さん、ザ・グレート・サスケ、中嶋勝彦、高森城さん、北沢幹之さんがリングへ。参戦選手はリングサイドに集まる。
そんな中、軽やかな足取りで颯爽とリングに現れた初代タイガーマスクと前田が並び立つと場内はざわめきに包まれる。
挨拶のためにマイクを取った初代タイガーは「私達の昭和のプロレスの父を失いました。新間さんとの約束通り、私は新間さんとここに2人で立つと約束して、今日皆さんの前に立たせていただいた次第です。新間さんはずっとここにおります。ちょうど僕は歩けなかったのですが、新間さんのお導きで『佐山さん治りますよ』と声をかけていただき、いい病院を紹介していただいて、今日こうして歩けるようになって帰ってきました。このまま行けば1年後には再デビューできそうです。新間さんが僕らの姿を見て、一番喜んでくれると思います。皆さん、新間さんの功績、力、これをもっと心に秘めて気を引き締めて。前田くんと1時間位電話したんですけど、新しいプロレスラーを育てようと思ってます。ニューヨークに負けないような、選手を育てていって、敏捷性があって、力があって、そういうしっかりとした選手を育てていきます。本日はこの宣言を基に新しいプロレスがここに始まります。皆さんよろしくお願いします」と語り、前田との共同プロジェクトを指導させることを宣言した。
初代タイガーと前田にはUWF時代に確執があり、これまではずっと疎遠のままだった。
しかし、前田が新間さんのお通夜に出席した際に初代タイガーと偶然控室が一緒になることに。気まずい思いをしながら控室に入った前田だったが、霊感の強い前田は初代タイガーの横に新間さんが立っている姿を見る。
そのとき、前田は以前新間さんが『お前佐山と仲良く出来ないのか。会食の場を設けるからなんとかしてくれよ』と言っていたのを思い出し、「それだったら、そういうことなんだな」と初代タイガーと和解に向けて歩み寄ったのだという。
これを機に、初代タイガーと前田は急接近。2人で一緒に選手を育てていくという少し前には考えもつかなかった自体へと発展した。死してなおプロレス界の発展のための“仕掛け”を遺した新間さんの偉大さを感じさせる展開となった。
また、今大会には新間さんに縁が深い選手たちが多数参戦。

中でも目を引いたのは、今回がストロングスタイルプロレス初参戦となったMIRAI。
岩手県で生まれたMIRAIは2011年に東日本大震災で被災し、初代タイガーマスクが被災者を招待した大会によってプロレスに出会い、プロレスラーの道を志した。“初代タイガーマスクの秘蔵っ子”としてとして2019年にデビューし、現在は自らも初代タイガーのように子どもたちを導けるような“ちびっこたちのヒーロー”を目指して驀進中だ。
この日の試合を終えたMIRAIは「新間さん……見ててくれたかな。MIRAI、成長見せられたかな。新間さんのおかげでこのプロレス界に入ることが出来て、色々ね、七転び八起きありますが、ここまで自分はプロレスラーとしてやってきました。これからももっともっとプロレスで輝いていきたいなと思っているんで……新間さん、見ててね」と目をうるませながら語った。

ユニバーサル・プロレスリングでデビューしたディック東郷は「今日の試合も天高く上から見守ってくれたと思うんだけど、まだまだ貴方が授けてくれた巌鉄魁!現・ディック東郷!まだまだ現役バリバリでやってますから。この先も上から見守っててください!」とメッセージ。

新間さんの仕掛けによってWWFでのMSG出場を果たしWWFジュニアヘビー級王座戴冠も果たした藤波は、この日の村上和成とのケンカファイトを振り返りつつ「久々にあんなファイトだったから新間さん、怒るな。『カンピオン!なにやってんだ!』って新間さんの声が聞こえましたよ。自分がここにいられるのも新間さんがプロレスを愛するもので1人のレスラーが生まれたんで。僕だけじゃなくて、佐山タイガーもそうだし、猪木アリ戦もそうだし。そういう意味では、だから尚更今日は悔しい!もうちょっと燃えるもんが欲しかったな!」と新間さんに捧げる闘いが思うように出来なかったことを歯噛み。

ストロングスタイルプロレスの女子マッチ等を担当する相談役として活躍していたジャガー横田は、記者会見という公開の場で新間さんから凶器を持ち込むヒールファイトを批判された際にその場で相談役辞任を表明して帰ってしまうなどシューティングな仲違いを起こしたこともあった(※後に和解)。
この日、ジャガーは藪下めぐみとともにSSPW女子タッグ王座を防衛。ジャガーは「新間会長がお決めになったタイトルでもありますし、試合もレベルを上げて闘わなければあの世で新間会長が怒っていると思いますので、思い切ってやったところを褒めていただけるのではないかと自分では思ってます」としつつ、この日も凶器を持ち込んだことについて「怒られるかもねえ(笑)でも堂々と持ってきてないようにしたんだよね。許してくれると思う!(笑)」と茶目っ気溢れるコメントを残した。

そして、この日のメインイベントで新崎人生からストロングスタイルプロレスの至宝・レジェンド王座を防衛した船木誠勝は「新間さん、自分は死ぬまでストロングスタイルです。やっぱり、託されたんじゃないかなと思います。自分はストロングスタイルしかやってきてないんで、そういう意味では自分を、デカく言えば、みんな自分を目指してきてくれれば、自分もしっかりストロングスタイルで受け止めますね。若い選手、どんどん来てほしいと思ってます。それが自分の使命だと思ってます」と亡き新間寿さんの思いを背負っていく覚悟を語った。