【インタビュー】亀井晨佑がPANCRASE340で平田直樹と対戦!パンクラス30周年を締めくくる大会への今の心境を語った!
鹿又智成、髙橋“Bancho”良明、徳留一樹……数々の名選手を排出してきたパラエストラ八王子。彼らはただ強いだけではない。熱い心を持ち、リングで、そしてケージで持てる情熱の全てをぶつけ、見る者の胸を震わせてきた。記録ももちろんだが、それ以上に記憶に残る選手たちである。
亀井晨佑もその流れをくむ選手の一人だ。いまのパンクラスを見ているファンなら、亀井のポテンシャルを知っているだろう。冷静でいながら時に感情を爆発させ、見る者の心をとらえる。次もまた見たいと思える期待の選手だ。
亀井は 2017年のプロ昇格TNTを経て、同年12月、TAG戦でパンクラスデビュー。3R、パンチでのTKO勝利は、多くのファンに強い印象を残した。2022年にはフェザー級暫定王者決定戦に挑戦。さらに今年9月、フェザー級第10代王者決定戦にも挑戦した。
残念ながらベルトは巻けなかったが、3ヶ月を経て、平田直樹との対戦が決定。パンクラス30周年を締めくくる大会で復帰戦に臨む亀井に話を聞いた。
――コンディションはいかがですか。
「そうですね、結構体重も落ちてきてるんで、いい感じです」
――あまり調整に苦しむっていうイメージはないですけど……
「きついですけど。プロっていうのは、ちゃんと落とすと決まってるんで、頑張っています」
――前回(今年9月、新居すぐるとのフェザー級第10代王者決定戦)は残念な結果となりましたが、それを踏まえて、今どんな心境ですか。
「前回はもう前回で、もうしょうがないって切り替えています。まあ、引きずっていてもしょうがないんで。もう切り替えて(今度の試合は)全く別物、もう1回イチからやるしかない。勝ってまた次に繋げていくっていうイメージでいますね」
――ちなみに、落ち込んだ時とか試合に負けてしまった時って、どうやって回復してますか。
「この間の場合はちょっと本当に結構悩んで、負けて終わった夜、ジムに来て館長(塩田歩・パラエストラ八王子代表)と少し話したんです。今までそういうことってなかったんですけど。うん。前回は本当に落ち込みました。でも、格闘技が好きだったらそうなんじゃないかなと思うんですけど、負けても、やっぱり格闘技をやりたいって気持ちが湧いてきて、いつの間にか勝手に回復してるっていうか、もう次を考えてるという感じですね」
――何かを忘れるために特に何かをやるとか、そういうことではなく。
「はい、忘れるために特別何かをするってことはないですね。まあ息抜きにちょっとキャンプ行ったりはしますけど。そうなんです。特にこれといったことはないです」
――新居選手に対して、亀井選手はすごく上手く対応してらっしゃったと思うんですけど、最後に……という感じでしたね。
「ああいうスペシャルな部分を持ってる選手は本当に突出してるんで、はねられたらもう どうしようもないんだなって改めて思いました」
――試合の時は、どんな感じだったんですか。
「落とされて、目覚めた時みんながこう、目の前にいて、最初、意味がわかんなかったんですよ。『いや、試合終わってないよな?』って。試合が終わってないのに、なんでこんなに人がいるんだろうと思って、そこで、あ、俺、落ちたんだとわかって。やっちまったって感じでしたね、目覚めてみたら」
――「負けて、自分はこんなにベルトが欲しかったんだと思った」っておっしゃっていましたね。
「超悔しかったですね、マジで。なんていうか、変な話、負けるはずもないって思ってたところもあるんで。それはたまに今でも思ったりはするんですよ。負けてはいるんですけど、『やっぱり負けるのはないよな』って思っちゃうところはあります」
――新居選手が防衛していけば、またいつか当たることになると思うんですけど、それまでにもっとこうしたいなとかっていうのはありますか。
「やっぱりトータルで闘えるようになりたいですね。自分の場合、打撃が突出してるっていうところもあるんですけど、見てる人に、バランスもいいし、何で闘っても安心して見られる選手って思ってもらえる選手になりたいなと思います」
――会見とかで、相手に「打撃の選手ですよね」って言われるよりは「オールラウンダー」ですよねと言われるような。
「そうです、そう言われたいですね。穴が少ないっていうか、勝つのが難しそうな相手とは言われたいですよね」
――さて、今度の試合ですが、先日のカード発表会見で相手の平田直樹選手に直接会われてどんな印象でしたか。
「背丈は結構ちっちゃいなって思いました(亀井182cm、平田168cm)。でも、それであれだけ組み力があるってことは、やっぱり怖さはありますよね。組まれたらやばいだろうなと思います」
――身長は、去年闘った透暉鷹選手と同じくらいですよね。
「そうだと思います。透暉鷹選手と身長も同じくらいだし、同じような組みの選手なんで、イメージが湧きやすいっていうか。打撃のイメージの方もそうなんですけど、あんまり心配はしてないわけではない……ですけど、わりと調整はできるのかなと思っています」
――亀井選手と平田選手は年齢も同じですね。
「同じ97年生まれなんですけど、もしかしたら1個下かもしれない(※亀井が1月生まれ、平田が12月生まれなので、学年は平田が1つ下)」
――同世代って、やはり何か感じるものはありますか。
「ありますね。ミドル級KOPの内藤由良くんもそうですし、ストロー級KOPの山北(渓人)選手もそうですけど、やっぱり同じ世代の子たちがベルトを獲ったりしてるので、すごく刺激になっています。自分と平田選手もそういうところに入ってくるってなると、ちょっと意地でも、ここは自分が勝たないとなって思いますよね」
――これまでの平田選手の試合をご覧になったかと思うんですけど、どんな感じを受けましたか。
「実は自分、全然、試合見てなくて。ちょうど今日見たんです。以前はよく相手の試合とか映像を見てたんですけど、最近は、試合の1週間、2週間前に見るようにしてて。映像を見て思ったのは、イメージしていた通りっていう感じですね。打撃は徐々にうまくなってきてて、形にはなってるんですけど、多分、自分が当てられるし、倒せるなって思います。組みも、頭の中ではかなり強いイメージを想定してたんですけど、対処できるかなとは思っています」
――平田選手はパンクラスで3連勝していますが、今回は亀井選手が相手ということですごく対策をしてきてると思うんですけど、亀井選手としては、対平田選手として特にしてきたことはありますか。
「対策っていうのは本当になくて。結構前のインタビューでもそうだったんですけど、自分のテーマがやっぱり“打撃で倒したい”っていうことなんです。その中で組み技は最低限、強くなってないといけないっていう。 だから組み技の練習量を増やしていくっていうのは変わってないですね。常に自分という選手を強くするっていうか、全体にレベルを上げるというか……説明するのが難しいですけど、つまり、とりあえず“対策”はあんまりないですね。組み技はしっかりやらなきゃいけないっていうので多めにやっていて、その中で倒せるような練習はしています」
――練習の手応えはいかがですか。
「そうですね、練習で最近ようやく良くはなってきてるっていうか、前まで雑だった部分とかも丁寧にやれるようにはなってますね」
――練習は、対処っていう部分か、それとも自分が極めにいくという部分か、どちらでしょうか。
「どっちかっていうと、対処の方ですね。自分がいいポジションを取れたり組み手が良かったりすれば、自分から攻められるっていうのを意識しています。8割がたは対処とさばき方ですね」
――もし極めて勝ったら、すごい!
「アハハ! 可能性はゼロじゃないかもですね(笑)。相手がなんかポロッとミスしたりしたら。柔術とかの練習でも、紫(帯)の人とやったり、自分より上の人とかとやっても、まあ、割とできないこともないかな? と思ったり。もちろん黒(帯)とかになってきたら、やっぱり強いですけど、(自分が極める)可能性はゼロではないかな、アハハ」
――再びベルトに向けてって思ってらっしゃると思います。来年とか……
「3年連続でタイトルマッチやる選手っているんですかね? もしそうなったら本当に嬉しいですけど、周りが黙ってないかもしれないですね。『お前ばっかやりすぎだろ』って(笑)。でも、文句がない相手に勝っていればいいと思います。 チャンスがあれば全然、挑戦したいですけど、まずベルトの前に、ちゃんと強い相手を倒せるっていうところを証明したいですね」
――今度の試合の話からはズレるんですけど、この先、ベルト獲得が目標なのは当然として、どこで闘ったりとか、どういう選手になりたいとかっていうのはありますか。
「そうですね。ちょっと前から言ってるのは、海外の選手だったりとか、海外で闘いたいっていうのがやっぱり一番ですね。RIZINもすごいですけど、僕の場合、大きさは関係なくて。海外ではUFCが一番ではあるんですけど、ローカルの団体でもいいので闘ってみたい。海外って、そういうところにも強い選手が絶対いると思うので、そういうとこでやってみたいっていう気持ちはあります」
――日本だと、あまり体格のいい選手と当たらないですよね。
「そうですね、そういうのもあります。 せっかく格闘技をやってるんですから、知らない選手やものすごく強い選手、あと環境が違うところでやってみたいっていう気持ちがありますね」
――それは、パンクラスで外国人選手を呼んでくれたらいいとかっていうことじゃなくて、全然知らないところでやってみたいと。
「はい。でも現状、自分は海外に行って試合できるレベルにはまだないので、もしパンクラスで外国人選手を呼んでもらえるなら闘ってみたいと思います。先日のカード発表会見では、急遽発表ということで髙橋(遼伍)選手とキム(・サンウォン)選手の試合も決まったじゃないですか。高橋選手は海外(ONE)で闘ってた選手ですし、キム選手もRoad To UFCで活躍した選手なので、もしそのうち絡めたら面白いなと思います」
――海外で興味のある団体は?
「TFLとか興味ありましたし、今って中東とかアブダビとかも結構今盛んじゃないですか。一時期、館長の真似してるのか、ケースWもなんか面白そうだねとか。でも、実力がないと出られないところなので。あとはLFAとかも興味がありました。まあでも、海外の団体だったらどこでも興味はあるっていう感じですね」
――海外で闘う、いいですね。ほんとに外国人って、どんな強い人がいるかわからないから。
「そうですよね。やっぱりUFCって言いたいんですけど、現実を見ると、自分のレコードもそうですし、実力だとか考えるとそんなこと言ってられないんで、ちゃんと着実に目指せるところを目指して、その延長線上にあればいいなと思っています」
――ファンも期待が高まると思います。前回の試合前、立川ステージガーデンに向かう路上でファンの人に声をかけられていましたよね。写真撮ってくださいって。また、試合が終わった後も声をかけてくれるファンがいました。応援されるという嬉しさももちろんあると思うんですけど、プレッシャーを感じたりすることはありますか。
「プレッシャーは感じないかもしれないです。結局自分のためにやってるんで」
――声をかけてきてくれた人は知っている人だったんですか。
「知ってる人もいれば知らない人もいたりって感じですね。試合後に残ってくれてたのは家族とか、親戚とか知り合いとか友人とかだったんですけど、多分あっちの陣営の人も何人かいたような気がします」
――悔しさを隠さないで素直にさらけ出しているところにも、ファンに愛される理由があると感じました。では、最後に、ファンの皆さんに向けて一言お願いします。
「前回タイトルマッチで負けて、自分もそうですけど、応援してくれているみんなも悔しい思いをしたと思います。今回は今年を締める大事な試合になるので、いい形で終わって、来年またタイトルに挑戦できるよう頑張りたいと思います」
取材当日は、青木真也のグラップリングクラスの日だった。打撃練習のあと、亀井は休憩もそこそこに、クラスに参加。熱心に指導を受けていた。青木の評価も高いという亀井。組みの強い平田を相手に、練習の成果が発揮されるのが楽しみだ。再びのベルト獲りを見据え、激闘は必至だ。
(写真・文/佐佐木 澪)