堀口、天心、RENAが激闘を連発!RIZINが作り上げた最高の舞台に2日間で計3万3千人が集結!
格闘技イベント、RIZIN(ライジン)がスタートして丸2年、3回目の大みそか興行は、12月29日、31日の両日とも「神興行」と呼ぶにふさわしいものとなった。
名作「フィールド・オブ・ドリームス」は主人公が「それを作れば、彼はやってくる」という謎の声を聞き、とうもろこし畑を潰して野球場を作るところからストーリーが始まる。格闘技イベントの場合、どんなに素晴らしい「それ=リング」を作ってもそれだけでは不十分だ。そこに素晴らしい才能を持ったファイターを立たせたら、世界中のファイターが集結する。
RIZINは2015年の大みそかに旗揚げし、この時の目玉カードは曙対ボブ・サップの再戦だった。当時、山本KIDや五味隆典、秋山成勲ら、知名度のあるMMA選手たちは軒並みUFCと契約している状態で、世間にもう一度「大みそか格闘技イベント」をアピールするためには「昔の名前」を引っ張り出すしかない状態だったのだ。
だが、この2年間でRIZINは素晴らしい選手を獲得した。シュートボクシングの絶対女王として君臨していた「ツヨカワクイーン」RENAと、キックボクシング界の最高傑作「神童」那須川天心を「MMA挑戦の場」として参戦させることに成功し、さらに「UFC王座に最も近い日本人」堀口恭司と契約することに成功。世界トップクラスのファイターをRIZINのアイコンとすることで「彼、彼女と戦いたい」と熱望する、モチベーションの高いファイターを日本の他団体や世界中から集めたのだ。
それによって試合は白熱し、彼らが繰り広げる激闘をライブで味わうために観客が会場に足を運び、その評判がさらなる集客に繋がる好循環を作りだした。この12月29日と31日の2日間、さいたまスーパーアリーナに集結した観客は合計3万3千人にも達し、31日は前売り券完売、急遽増席するというRIZIN始まって以来の緊急事態も起きた。大観衆は堀口、天心、RENAらが繰り広げたスリリングな戦いと、巨大スクリーンや豪華な照明とクリアな音響を駆使した圧巻の場内演出を堪能し、両日ともRIZINというリングは眩いばかりの輝きを放った。
その裏では、凄まじいプレッシャーとの戦いがあった。堀口、天心、RENAはそれぞれの出場トーナメント優勝が至上命題。結果は堀口と天心が優勝し、RENAは決勝で浅倉カンナに敗れて準優勝に終わったが、3人とも楽な戦いではなかった。
両日ともメインを務めた堀口は準決勝のマネル・ケイプ戦で偶然のバッティング(頭突き)を受けて意識が朦朧とする場面も。また、天心は「MMAを見に来てるお客さんを盛り上げて『キックボクシングも面白い』と思わせるには分かりやすい勝ち方をしなければ」と2連続KOでの優勝を自らに課し、見事に達成したものの、試合後「普段の試合とは違うプレッシャーがあった。これで自分が優勝できなかったら『キックボクシング、ダメじゃん』となってしまう。最高の結果が出せてよかった」と安堵の表情を見せた。
そして「私のためのトーナメント」と公言し、様々なメディアに出演して「大みそかRIZIN」をPRしてきたRENA。準決勝を圧巻の1ラウンドKOで突破したものの、決勝戦では浅倉カンナのチョークスリーパーで絞め落とされて、実に6年ぶりの敗北を喫した。リング上では終始号泣し、足早に控え室に戻っていく後ろ姿にショックの大きさがうかがわれたが、気丈にも全試合終了後の表彰式に出席して準優勝のトロフィーを受け取り、大会後のインタビューでも普段通りに記者たちの質問に丁寧に応じた。
「(敗北が)久しぶりすぎて、みんなが腫れ物に触る感じ(苦笑)。でも全然大丈夫なんで、もっと普通に接してくれたらいいのに。(リング上の涙は?)ウソ泣き、と言いたいですけど、心の汗がにじみ出ちゃいましたね(笑)」
質問が表彰式の話に及ぶと、RENAはその時の心情を明かした。
「応援してくれる人に、最後まで悲しい思いをさせたくない、安心させたい、と思って。『私はまだ腐ってない』と伝えたかった」
そうして、RENAは現在の心境をこう吐露した。
「ちょっと油断してました。思った以上に(浅倉のタックルが)切れたので調子に乗った。今まで6年間、上手く行き過ぎてたんです(苦笑)。私、リング上で(浅倉に)言いましたよ。『私は必ずやり返すから』と。最終的に1番になるのは私なんで。その覚悟は試合前から決まってたので」
この敗北がRENAをさらに成長させて、彼女は輝きを増していくことだろう。そんな彼女に勝つために急成長した浅倉カンナ、そして「打倒RENA、浅倉」に燃える世界中の女子ファイターがRIZINのリングに集結してくることだろう。
RIZINの2018年は5月6日、マリンメッセ福岡で始まる。今年もRIZINとRIZINファイターから目が離せない。
(スポーツライター茂田浩司)