『あれ見てこれ読んであそこ行ってきた』第11回

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今回は”熱血プロレスティーチャー”こと元週刊ゴング編集長の小佐野景浩さんによる約600ページの大作、『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』

の紹介です。鶴田さんは自分が取材の仕事を始めた時にはもう引退されていたので、馬場さん同様、神話の世界の住人というイメージです。

ではさっそく本の内容について。
序文には「最強説が根強いにもかかわらず真のエースになれなかったのはなぜなのか」という一節があります。”完全無欠のエース”というニックネームがつけられ、三冠王者時代の圧倒的な強さを目の当たりにしていた人にとっては違和感を持つ記述ではないでしょうか。
それを考えるヒントとして小佐野さんがテレビでの解説(2017年頃)で、秋山選手の「実力があればチャンピオンにはなれるけれど、エースには実力さえあればなれるというものではない」という言葉を紹介していたことがあります。
今にして思うとこの本の執筆にとりかかった時期でもあったのかもしれませんね。

ただ自分がプロレスを本格的に見始めた1984年頃には若きエースとは呼ばれながらも、ファンからそれほど熱狂的な支持はされていなかったというのが正直なところです。それを端的に表しているのがある深夜番組の1コーナー、その名も『真夜中の鶴田コール』でした。
85年から86年頃に放送されていた『小峯隆生のオールナイトニッポン』で、これからのプロレス界でジャンボ鶴田、藤波辰巳、長州力、天龍源一郎の4人の中で誰に期待するかという投票を呼び掛けたところ、鶴田さんは大差を付けられての最下位だったのです。
そこでパーソナリティーである小峯さんが『真夜中の鶴田コール』というコーナーを立ち上げ、ラジオリスナーに電話をかけて、深夜2時半過ぎに電話越しに鶴田コールさせるという趣旨のものでした。まぁ応援というよりはバカにしていた内容ですね。

ちょっと余談が長くなりました。本の内容に戻ると、読了した人の多くからは「試合展開の詳細が多く、ゴングらしさを感じた」という意見が多かったです。これは自分も感じたものですが、今や公式非公式と過去にさかのぼって数々の試合を見ることができる時代です。小佐野さんはそれを書くことで試合そのものにも触れてほしいという意図があったのではないでしょうか。
またこれはちょっとうがち過ぎかもしれませんが、亡くなってからある意味誹謗中傷とも取れる関係者の発言も目にすることがあります。これらについても丁寧に、そしてやんわりと否定していくための検証作業もじっくりと行われているように感じました。

この部分も取り上げてほしかった、という箇所をあえて考えるのなら、鶴田さんが一線を退いた後に四天王プロレスについては苦言・・・とまではいかないものの、手放しではほめられないような発言をしていたので、そこを小佐野さんの見解も含めて読みたかったですね。
それは小佐野さんから「四天王プロレスは馬場さんが教えたプロレスとは別物。馬場さんの教えたプロレスはもっと論理的だから」という話を聞かせてもらっていたから、というのもあります。

これに限らず小佐野さんからは自分自身バックスステージでも多岐にわたって教わることがあります。その中で印象的だった言葉のひとつに「Gスピリッツは『これが答えだ』というつもりではなく『さぁこの新しい材料でまた深くプロレスについて考えてくださいね』というつもりで作っているよ」というものです。
今回の『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』でも同じようにこれらの新しく知った事柄から、ジャンボ鶴田という不世出のレスラー、そしてプロレスについてをまた深く考えてほしいなと思っているのではないでしょうか。

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