『あれ見てこれ読んであそこ行ってきた』#3
- 2017-8-6
- WWEネットワークの散歩道
残念ながら自分は会場に行くことができなかった、先日のレスリング・マスターズ後楽園ホール大会。友人からもらった感想メールで印象的だったのが「あと何回、会場で昨夜出場したレスラーのテーマ曲聴けるかなって涙しました」というもの。選手たちの入場曲に強いこだわりと思い入れを持っているのは、ファンの世代間のどこかで深い断絶があるように思います。
さて今回紹介する清野茂樹アナの『1000のプロレスレコードを持つ男』は、その強いこだわりと思い入れで書かれた音楽コラム、対談、捜査ルポルタージュを1冊の本にまとめたものです。マニアの収集は入場曲、チャンピオンベルト、サイン、試合映像に行きつくという話がありますが、今はインターネットの普及により入場曲は研究の成果が動画サイトですぐに確認でき、試合映像も「まさか!」というものも容易に見られる恵まれた時代です。まぁ試合映像は持っていても抱え込んでしまうマニアも多いので、存在そのものが確認できないものも多数あるのでしょうけれど。
入場曲についてちょろっと書いておくと、ちょっと前のプロレスファンあるあるで「演奏するバンドの名前は知らないけれど、ハードロック、ヘビーメタルで知ってる曲は妙に多い」というのがありますね。これはオリジナルテーマが団体から用意されることが増えたことや、そもそもそういう系統の曲が入場曲に選ばれなくなったため、近年では減少傾向にあるかと思います。
あと個人的には新生UWFが試合後の客出しに使用していた曲のリストが知りたいと思っていますが、これは何人かのマニアの方にお伺いしても誰も覚えていないんですよね~。ジョン・レノンの『スターティング・オーバー』、フィル・コリンズの『ドゥー・ユー・リメンバー?』、10CCの『アイム・ノット・イン・ラブ』、U2の『終わりなき旅(ゴスペル・バージョン)』、ゲイリー・ムーアの『スティル・ガット・ザ・ブルース』が把握しているリストの全てです。
そうそう、今では動画サイトで検索すれば簡単に見つかるディック・マ-ドックの入場曲ですが、これはマードック自身がカセットテープで持ち込んだということもあり、長らく曲名が分からなかったのです。今ではこの本の協力者でもあるプロレステーマ曲研究家のコブラさんにより、ウェストテキサス大学のフットボールチームの応援歌であることが判明しています。
そしてウェスト・テキサス大学のフットボールチームの名前はザ・テキサス・ロングホーンズ。これは第二回MSGタッグリーグでのスタン・ハンセン、ディック・マードック組のチーム名でもあります。ところが著名なレスラーを多数生み出した大学として有名なウェスト・テキサス大学ですが、マードックは入学もしていないというのが興味深いところです。それだけ大学のフットボールチームが地元に根付いているという証明なのかも知れませんが。
この本に話を戻すと、例えばこれまで定説とされていた「日本で初めて入場曲が使われるようになったのはマイティ井上がテレビ局に進言したため」という説もまた違った証言が紹介され、前田日明の入場曲の『キャプチュード』が選ばれた経緯についても最近別の場所で違った証言が明らかになるなど、調べれば調べるほど謎が深まるという(そしてそれをあれこれ考えるのが楽しい)プロレスの楽しさが味わえます。そう、80年代にターザン山本さんが書いていた、『プロレスについて考えることは悦びである』にここでもつながっていくのです。
『1000のプロレスレコードを持つ男 ー清野茂樹のプロレス音楽館ー』 清野茂樹著
https://www.amazon.co.jp/dp/4845630222
また今週末には清野さんが初めてDJを行うイベントが渋谷で開催されます。深夜からのスタートですが、女性入場無料、コスプレ入場無料とのことなので、興味を持たれた方はいかがでしょう。入場曲について聞いてみたいことがあれば、出番待ちの清野さんにお伺いするチャンスもあるかも。「メインイベントに出る選手はそれまで客前に姿を見せない」とする長州イズムを発揮されるかもしれませんが(笑)。
『レッスルミュージックマニアウィークエンド』
渋谷ロフト9 8月11日 深夜0時スタート