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朱里ロングインタビュー【第3回】

朱里ロングインタビュー【第3回】

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近年の朱里は一時期ほど他団体に出場はしていないものの、Wrestling New ClassicとREINA女子プロレスの二団体で試合をしていた。今年3月には様々な団体で活躍している木村響子と対戦して勝利。さらに1月に“第二の故郷”であるフィリピンでプロレス興行を開催し、4月にはメキシコのメジャー団体CMLLに参戦。聖地アレナメヒコでのTVマッチでタイトルマッチを行った。
プロレスラーとして充実した活動をしているが、同時進行で日々キックボクシングの練習も積み、3月にはKrushの初代女子王者に輝いた。もうこれだけで充分偉業なのだが、朱里は7月13日『Krush.43』で行われる初防衛戦の先に、11月3日代々木第二体育館からスタートする新生K-1への出場を目論んでいる。
プロレスでも格闘技でも勝てる、誰が見ても強い選手になる……これまで何人ものプロレスラーが挑戦してきたが、なかなか達成できなかった偉業を朱里はやってのけている。ところが、本人がビックリするほどメディアなどで取り上げてもらえず、注目度が低い。すると朱里はさらに舞台出演などの芸能活動も積極的に行うようになり、より一層ハードなスケジュールに身を置くようになった。
プロレス+キック(ボクシング)+芸能活動……すべてを同時進行でやり続け、すべてで結果を出そうとする朱里。彼女がそうまでして“発信”しようとしている先は、プロレスメディアや女子プロファンだけではない。もっともっと“外”に向けて発信し続けている!
【取材・文/佐瀬順一】

ーー2013年12月にCMLLのラ・コマンダンテ選手に勝って、プロレス三冠王者となりました。2014年からはレイナ・コーポレーションと提携してWNC-REINAの所属となり、1月にもう1つの故郷であるフィリピンでプロレスの大会を開催と、昨年末から今年の頭にかけて朱里選手にとってはポイントになりそうだ大きな出来事が続きましたね。

朱里 そうですね。元々海外でやりたいっていう思いはあったし、やっぱり(2013年11月にフィリピンを直撃した)台風の被害のこととかもあったじゃないですか。お母さんもフィリピン人ですし、REINAのオーナーもプロレスが好きで「何かフィリピンに恩返しが出来ないか」って言ってくれて。それで自分がハーフってことで、いろいろなものがつながって1月にやるってことになったんですけど、すごくいい経験になりましたね。それにフィリピンの人は、本当に純粋にプロレスを楽しんでくれたんで気持ちよかったし、こういうところで試合をしていきたいなってすごい思いました。

ーー日本のプロレスファンは目が肥えているというか、良くも悪くもマニアが多いですから、厳しい見方をされることもありますからね。やっぱりほとんどプロレスを見たことがないフィリピンの人たちとは反応が違いますか?

朱里 日本のファンの方がプロレスを深く見てくれるのもありがたいんですけど、人によっては「どこを見ているんだろう?」って思うような人もいるじゃなですか(苦笑)。言い方が悪いですけど、変に知ったかぶると言うか。それと比べると、海外の人は本当に楽しんでくれるんですよ。

ーー変に深読みしたり、裏側を探ろうとしたりせず、自分がいま目の前で見てるリング上のことを単純に「すごい!」と喜んでくれるっていうのは新鮮かもしれないですね。

朱里 そうなんですよ。エルボー一発でも「わー!」って沸いてくれて、すごいって思いましたね。何かプロレスを見たことによって、ちょっとは元気になってくれたんじゃないかなっていうのを感じることが出来ましたね。だからフィリピンでもまだまだプロレスを見たことがない人はいるので、たくさんの人に見てもらいたいなって思いましたし、フィリピンに行ったときに思ったのが、発達しているところは発達しているんですけど、貧富の差がすごい激しくて「こういうところもあるんだ…」って思うようなところもありました。だからそういう人たちにもプロレスを見てもらって、何か得るものがあったらなとかって思いましたね。

木村響子戦→Krush→主演舞台→千秋楽の翌日にメキシコ遠征へ

ーーかつては日本でも高度経済成長の時代に、プロレスを見て人々が元気になったことを考えれば、そういうのってプロレスの原点なのかもしれないですね。その一方で、日本では2月に新生REINA女子プロレスを旗揚げし、最初の山場が3月の新宿FACE大会での木村響子選手との一騎打ち。逆に日本の女子プロレスマニアも注目するカードだったわけですが、木村選手の印象は?

朱里 格闘技もやっているのは知っていたんですけど、それまであまり関わったことのなかった選手なので。何かのときに一度やっているんですけど(※2013年8月のVKF東京大会でタッグマッチで一度対戦している)、そのときに「この選手とだったらすごい熱い試合になるんじゃないかな」っていう予感みたいなものはあって、シングルでやりたいなぁとはずっと思っていたんですね。だからシングルでやるって決まったときは、すごいワクワクしていました。

ーー試合後、木村選手が「フリーで自由に動ける自分っていうのが物差しになるんじゃないですか?」と言っていましたが、ここ最近の朱里選手は他団体の選手とガンガンやっている印象がなかったので、各団体でトップクラスの選手と対戦している木村選手は、三冠王者となった朱里選手がどこまで強いのかを測るには最適の対戦相手だったと思います。

朱里 私も久し振りにワクワクして、早く闘いたいなぁって思ってましたね。

ーー総合格闘技のバックボーンを持つ木村選手と、キックボクシングがバックボーンの朱里選手、共に格闘技経験者でありながらジャンルは違うし、どことなく異種格闘技戦のような独特な緊張感のある試合でしたね。初対決でいきなり名勝負になったというわけではないですが、この先何度も見てみたいというか、この2人の対戦でしか味わえないような面白さを感じました。

朱里 そういう緊張感みたいなものはありますね。だから木村さんとのシングルは何回も重ねていきたいなっていう気持ちは、私もあります。木村さんと次やったときは、このあいだの試合よりもっとすごい試合が出来るんじゃないかなっていう気持ちもありますね。あのシングルが始まりだと思うので、これから木村さんとのストーリーをどんどん作っていければなって思います。

ーーまたすごいのが木村戦のあとは3月にKrushの初代女子王者になって四冠王になったと思ったら、4月には戸野廣浩司記念劇場で行われた『フィリピン人の父に投げっぱなしジャーマン』という、レイナコーポレーション主催の舞台で主演女優を務めるという(苦笑)。本当にすごいスケジュールですね!

朱里 本当にそうなんですよ!(笑)結構、キックで勝ってベルトを巻いてすごく嬉しかったんですけど、もう次の日から芝居の稽古で。ほかの人たちはその前からもう稽古をされていたので、すごいビクビクしていたんですよ。それで稽古場に行ったら、もうみんな台本をはずしてたんですよ。

ーーわー、それは焦りますねぇ。

朱里 もう、うぇぇぇぇぇぇぇって思って(笑)。ヤバイ、ヤバイって思いながら2日間稽古をやったあとに、(脚本・演出の)MARUさんから「明日、台本はずしてきてね♪」って言われて、「Oh〜」って思って(苦笑)。何とか台本はずして、通しで稽古もやったんですけど、やっていくうちにどんどん楽しくなってきて。みんなすごくいい人だし、キャラも濃いので(苦笑)、この作品をいいものにしたいなぁっていう気持ちが強くなっていきましたねぇ。

ーーじゃあ精神的にはいい感じで本番を迎えられた?

朱里 そうですね。すごくいいものになったと思うし、MARUさんの凄さも感じられましたし、周りの役者さんたちにすごい助けてもらったし。本当によかったなぁというか、千秋楽とかは「もうこれで終わっちゃうんだぁ」って思うと、やる前からすごい泣きそうになってました(笑)。

ーー実際拝見させてもらいましたが、主役の朱里選手、妹役の床田菜摘(翔月なつみ)さん、そして脚本を書かれたMARUさん、3人ともハーフだしプロレス経験者。実際、それに沿ったお話でしたし、プロレスファンとして胸の熱くなるシーンもありましたね。

朱里 だからこの舞台はもっとたくさんの人に見てほしかったなって、すごい思いますね。

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4月の舞台『フィリピン人の父に投げっぱなしジャーマン』の演出・脚本家のMARU(右)と朱里の妹役を演じた床田菜摘さん

ーーただでさえプロレスとキックの二足の草鞋なのに、加えて芸能活動までやっているのはすごいなと思うんですけど、本人的にはプロレスでもキックでもチャンピオンになり、いい意味で心に余裕が出来たというか……

朱里 余裕? う〜ん……詰め込んでいるだけ! どんどん追い込んでいるんです(笑)。追い込みたいのかなぁ? でも忙しくはなりたいですね。元々は芸能をやりたかったし、有名になりたいっていうのがあるので、芸能の仕事が入るのはすごい嬉しいし、それに向かって全力投球していきたいので、どんどん忙しくなれ!って思ってます。

ーーまさしくその言葉通りですが、何と舞台の興奮冷めやらないうちに、今度はメキシコ遠征に行くという……(苦笑)

朱里 はい、(千秋楽の)次の日にはメキシコに飛んでました(笑)。

ーーメキシコに行かれた経験はありましたか?

朱里 一昨年に(ウルティモ・ドラゴン主催の)ドラゴマニアで。その次もドラゴマニアにゲスト出場させていただきましたね。

ーーでは、今回チャンピオンとしてCMLLのアレナメヒコ大会に出場したのは、これまでのメキシコでの試合とはちょっと違いますね。

朱里 いや〜、有り難かったですね。9泊11日間で5試合も入れてもらったんですね(苦笑)。

ーー5試合“も”(苦笑)

朱里 もう着いたときに、体調が悪くなってしまって……。しかも(メキシコの)食べ物も合わないので。でももう食べ物は自分的にハンバーガーとアレチェラっていうお肉だけ食ってればいいっていうのが分かったので。でもそればっかり食べていたら、逆に太っちゃったんですけど(苦笑)。

ーーダハハハハ! 体調悪いのに太る!(笑)

朱里 OKUMURAさんの練習にも参加させていただいたし、CMLLの練習にも参加させていただいたので、本当に勉強になったしこの練習を続けていたら、また何かを得られるんだろうなって思ったので、もっと練習に参加したかったですね。まぁ日にちがそんなになかったし、試合も5試合あったので。4試合アレナメヒコで、1試合アレナプエブラでやらせてもらったんですけど、あんなデッカイ会場でやれたのは嬉しいですし、テレビ中継も入っていましたし。

ーーアレナメヒコはルチャリブレの聖地ですからね。

朱里 スペイン語がしゃべれたらもっと良かったなぁと思ったので、今度行くときはちょっと勉強して行こうとは思っています。

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現地時間の4月20日、メキシコのアレナメヒコでタイトルマッチを行った朱里。残念ながらアマポーラに敗れて王座陥落!

ーー日本でもお馴染みのダーク・エンジェル選手も一緒に出ていたようですね。

朱里 そうですね。サラ(=ダーク・エンジェルの愛称)さんは日本語もある程度分かるんですけど、それでもスペイン語がしゃべれたほうが絶対いいですね。サラさんにはすごい気を使ってもらって、やっぱりすごい人って違うなって思いましたし、やっぱりスターってそういうところも違うなって感じましたね。

ーーKGの時代もルチャっぽい技を使ってましたが……

朱里 “っぽい”ってなんですかー!(笑)すっごい練習したんですよー!

ーーいやいや、分かってますよ(苦笑)。でも新人の頃に一生懸命練習して覚えたルチャの技と、いまの格闘技をベースにした殺気のあるスタイルの朱里選手に、本場メキシコで修得したルチャテクニックが、新たな引き出しの1つとして加わるのじゃ、また意味合いが違うじゃないですか。

朱里 なるほど、そうですね。

女子プロレスだけをやっていてもダメだと思うんですよ

ーー今後もフィリピンやメキシコなど、海外で試合をしたい気持ちは強いですか?

朱里 はい。海外でやりたいって思いますし、アメリカとかでもやってみたいですね。今回のメキシコ遠征では、本当にCMLLっていう団体のすごさを分かりましたね。CMLLはメキシコのメジャー団体ってことは知っていても、日本にいたら実際どれくらいすごいのかって分からないじゃないですか。本当に日本じゃ考えられないくらいちゃんとしていて、テレビの人から警備の人から、もうCMLLの興行にどれだけの人が関わっているんだろう?って思うくらい規模が大きかったんんですよ。しかも自分が出たときは、新聞にも雑誌にもテレビにも出させてもらって、本当にすごかったです。

ーー師匠のTAJIRI選手はWWEを経験したことで、現在のスタイルが完成したと思いますが、朱里選手もCMLLでルチャ・リブレ……というか、ワールドワイドなエンターテインメントを吸収してみたいという気持ちはありますか?

朱里 そういうのも経験していきたいですね。

ーー三冠王者に加えて、Krushでも王者になっていまだ負けなし。さらにCMLLのアレナメヒコ大会にチャンピオンとして出場して、メキシコではテレビや新聞にも取り上げられたのに、日本ではあまりメディアに取り上げてもらえないジレンマがあるのを感じます。

朱里 そうですねぇ……やっぱりオーラを含めて自分にしか出せない雰囲気だったり、存在感みたいなものを出したいし、海外でやっていくっていうのも含めて、もう日本のメディアが取り上げざるを得ない状況にしていきたいですね。芸能のほうも含めてめちゃめちゃ有名になって、もう無視できない存在になります!

ーー他団体のチャンピオンや大物選手と対戦したり、もっと突飛でマスコミが食い付きやすいネタをやるという手もあると思いますが、朱里選手の場合は海外とかキックとか芸能とか、プロレスの外で有名になって、結果的にプロレスメディアが一番取り上げるのが遅いくらいになるかもしれないですね(苦笑)。

朱里 たぶん私の場合、女子プロレスだけをやっていないことが中途半端に思われていると思うんですけど、女子プロレスだけをやっていてもダメだと思うんですよ。女子プロレスだけを見ている人に対しては届くとは思うんですけど、それは小さな世界であって、一般の人やメディアへの発信力なんてないようなもんじゃないですか。もっとプロレスの外にいる人たちやメディアまで発信することができれば、プロレスだって盛り上がるだろうし、格闘技だって盛り上がるだろうし。やっぱり自分が有名になって、いろんな人にプロレスも格闘技も知ってもらう……そういう存在になっていきたいです。

この項終わり

朱里(しゅり)
神奈川県出身。2008年10月にファイティング・オペラ『ハッスル』で「KG(カラテ・ガール)」としてデビュー。ハッスル活動休止後はSMASHに移籍し、リングネームを「朱里」に改名。2009年12月にはJEWELSに参戦し、シュートボクシングルールの試合に出場。
2012年1月からは立ち技格闘技イベント『Krush』に参戦。同年4月にSMASHからWrestling New Classicに移籍。2013年11月にWNCがREINAと提携したため、WNCとREINA女子プロレスの二団体所属に(キックボクシングの際はボスジム所属)。

朱里がコラムを期間限定連載!
2013年7月23日に東京・後楽園ホールで行われる『Krush.43』で、Krush女子王座の初防衛戦を行うことが決定した朱里。
そこで今回のインタビューであまり詳しく聞くことが出来なかったキックについて、タイトルマッチを前にしての心境などを、急遽、朱里自身がコラムで執筆することになった。
タイトルマッチ前までの期間限定連載となるが、試合後の感想を綴った“ボーナストラック”も一応予定している。コラムは毎週金曜日更新、大好評連載中!
所属していたWNCが事実上活動休止になることについても書いています!

朱里の『トレーニング・モンタージュ〜K-1への道〜』

【期間限定掲載】

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