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夕陽ロングインタビュー【第3回】

夕陽ロングインタビュー【第3回】

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デビューしてから約1年のときに行った夏樹☆たいようとの初対決で“プロレスの楽しさ”を知ったという夕陽は、以降、初のタイトル奪取、師匠・日高郁人との一騎打ち、レジェンドレスラーからの3連勝など快進撃を続けていたが、ある瞬間から周囲の人間が「おや?」と思うことが多くなった。
『YUHI FINAL 卒業 SUNRISE』の中で上映されたショートムービーの中で、日高は「夕陽の中で魔法が解けた」と表現したが、最終的にそこから夕陽は“プロレス卒業”という答えを選択。
3.31『YUHI FINAL 卒業 SUNRISE』で夏樹とのプロレス卒業マッチに加えて、SUNSET☆JKとしてのラストマッチ、緊急決定試合と1日で3試合行い、プロレスを卒業した。
このインタビューは卒業マッチを行う前に行ったものだが、敢えて「このまま引退試合まで全力で突っ走ることが出来たら、プロレスでやり残したことないと言えますか?」と夕陽に聞いた。【取材・文/佐瀬順一】

ーー9月にはたまたま日高選手の『天下一ジュニア』1回戦の相手が欠場になってしまったので、急遽夕陽選手が対戦相手に名乗りをあげて、特別試合として師弟対決が組まれました(2013年の9月6日、ZERO1新木場大会)。結果的に最初で最後の師弟対決となりましたが、日高選手とは一度はやってみたいという思いはあったんですか?

夕陽 ありましたね! デビューする前にエキシビションで1回当たっているんですけど、そのときは5分だったんですけど、限られた時間の中で私の技術をお客さんに出来るだけ見てもらうってことに日高さんも徹していてくれたので。そのときから本当の闘いをしてみたいっていう気持ちはどこかにありましたね。

ーー本当に偶然実現した試合ですが、いま思えば結果も出てきたし、迷いもまだなかったし、プロレスラー夕陽が師匠に成長を見てもらうには一番いい時期で対戦出来たように思えます。

夕陽 そうですね。私もそう思います。このときは足を集中的に狙われて、最後もヒザ十字で潰しにきてくれましたからね。

ーーデビュー前のエキシビションでは夕陽選手のいいところを引き出そうとしていた日高選手が、1年ちょっと経ったら完全に潰しにきましたからね。いいところが出せなかったという悔しさはあるかもしれませんが、プロになってからの試合では叩き潰しにきてくれたことに嬉しさみたいなものはありましたか?

夕陽 デレツンですね(笑)。日高さんはやっぱり私が絶対に勝てない相手だと思うんですよ。もちろん試合をしたときは勝ちにいく気持ちでは闘いましたけど、師匠として私の全部を知っているし。厳しくきてくれたことに対しては……(※たまたまインタビューしていた場所に日高選手がいたため、そっちをチラッと見てから)大人気ないなと思いましたね!(笑) もっと蹴りたかったんですけど、それが出来ない状況にされたので。普段の試合ではいくら足を攻められても、どうにか蹴ることは出来るんですよ。でも日高さんにヒザを攻められたときは、本当に一発一発の破壊力が違くて……。本当に蹴ること出来ない状態だったので、本当にまだまだなんだなぁって感じました。

ーーベルトを獲ったり、夏樹選手にも勝ったりして、ちょっとだけ伸びていた鼻をへし折られましたね(苦笑)。

夕陽 はい。でもそうやって一気に落ちることで次の励みにもなったので。10月のはそれがあったからこそだと思いますね。

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最初で最後の師弟対決で夕陽を叩き潰した日高。プロレス以外にやりたいことが出てきた夕陽の心境を「魔法が解けた」と表現した

ーーその10月ですが、センダイガールズの後楽園ホール大会で行われた新星vs.重鎮の超世代闘争で(2013年10月17日)、新星軍の夕陽選手は重鎮軍の豊田真奈美選手、井上貴子選手、ダイナマイト関西選手の3人抜きをやってのけたのが大きな話題になりました。

夕陽 すごいと言われている選手に勝てたのは嬉しかったんですけど、全部クイック(=丸め込み)だったので、そこには納得いっていない部分もあって。

ーーやはり夕陽選手としては真正面からガンガンやり合って、蹴りで倒すなり、関節技でギブアップ奪うなりの勝ち方をしてこそという思いが強いですか?

夕陽 そうなんですけど、あの勝ち方じゃないと勝てなかったから。

ーーなるほど。先ほどレジェンドと呼ばれる選手たちの全盛期をリアルタイムで見たことがないという話がありましたが、新星軍という括りに入って、そういう選手たちと世代闘争というカタチで闘うことに関してはどういう思いがありましたか?

夕陽 奈苗さんと情熱注入マッチとか、そういうカタチでの対戦はありますけど、新星というチームに関してはちびーずのように「一緒に頑張っていこうよ」という感じではなく、これこそ新星の中で自分がどれだけ(ほかの選手と)差を見せられるかってことに重点を置いていたので。その中で勝ち星を取るっていうのは重要なことだから、結果として3人から勝ち星が取れたってことはすごく大きかったですね。誌面(紙面)にも大きく載せていただいたし、新星の中では頭ひとつ抜けたっていう思いはありましたね。でもさっき言ったように勝ち方がクイックじゃなくて、相手の記憶を飛ばすような完全勝利をしたいっていう次なる目標に向いてましたね。

ーーこうやって振り返ってみると、2013年は夕陽選手にとって充実した年になりましたね。

夕陽 本当に早かったです。

プロレスを辞めるか辞めないかで悩んでいたときの不安

ーーでも、話は戻りますが、年明けくらいから進路の悩みが徐々に試合にも影響が出るようになってましたね。試合を見ていて、「おや?」と思うシーンが何回かあって、何度か「ケガでもした?」って聞いたことがありましたね(笑)。

夕陽 そうですね(笑)。ファンの方たちからも世代闘争のあとに「これからもっと頑張って!」って、プロレス界全体での成長とか飛躍を望むような声をかけていただくようになって……。そのときは「はい、頑張ります!」って答えるんですけど、心の中ではプロレスを辞めるか辞めないかで悩んでいたので、申し訳ないなっていう気持ちもあって。そういう期待を裏切ることになるんじゃないかっていう不安はありました。これで「引退します」って発表したらどうなるんだろう、みんないなくなっちゃうんじゃないかなとか、ずっと不安でした。

ーーそして2月11日のZERO1後楽園大会で、高校卒業と同時にプロレスからも卒業することを発表したわけですが、私の周りの反応は圧倒的に「もったいない」という声が多かったです。それにいなくなるどころか、スターダム以外の団体に参戦した際も大きな声援が飛んでいましたし、後押しするような声も多いですね。

夕陽 本当に私の想像していた反応と違って、暖かい声をかけていただくことが多くて、逆にビックリしています(笑)。何か親心で見てくださっているかのような……

ーーそれはあるかもしれないですね(笑)。

夕陽 「次の人生も頑張ってね!」って、私の人生自体を応援してくだっていることが改めて分かったので。それまでは私のプロレスラーのプロレスラーの部分だけを応援してくださっていると思ったので、すごく申し訳ないなっていう思いがあったんですけど、引退を発表したあとも「辞めたあとも頑張ってね」って、一人の人間として応援していただけることがすごくありがたいし、だからこそプロレスを辞めたあとも頑張りたいなっていうエネルギーになっています!

ーープロレスファンの皆さんは優しいですよね。引退までの試合日程というか引退ロードも決まって、これまで上がったことがなかった団体のリングにも上がりますが、スターダムを主戦場にしながらも他団体にも興味はあったんですか?

夕陽 うーん、というよりは一人でも多くの人に見てもらいたいっていう気持ちのほうが強いです。スターダムでやり残したことがあるうちに、いろんな方向に出ちゃうと中途半端になっちゃうという思いがあったので。だからほかの団体に上がって、そこのベルトを狙うとかじゃなくて、一人でも多くの人に夕陽というプロレスラーのことを知ってもらいたいです。

ーーなるほど。せっかくフリーというか、ZERO1野良犬道場という女子プロレス団体じゃないところの所属なのだから、最後にいろいろな団体に出て一人でも多くのプロレスファンに夕陽というプロレスラーの試合を見てもらいたいですよね。

夕陽 そうですね。だからZERO1野良犬道場にも興味を持ってもらいたいなっていう思いもあります。

ーーそして正式に引退試合が3月31日の新木場大会に決まりました。ここでは夕陽選手のもう一つの顔であるSUNSET☆JKもラストマッチを行いますが、そもそもプロレスのことをまったく知らなかった夕陽選手としてはマスクマンのイメージっていうのはどうだったんですか?

夕陽 わぁ、かっこいい!(笑)

ーーダハハハハハ! 分かりやすい! よくマスクを被ると性格が変わるというか、普段出来ないようなことがやれるという話を聞きますが、夕陽選手はどうでした?

夕陽 そうですね。(性格が)変わるし、ファイトスタイルも違うし、普段の夕陽では出せないことも出せますね。前は試合中にアピールをしようとかって思わないんですけど、SUNSET☆JKのときは何かちょっと心の余裕が出来るというか、アピールすることで試合を盛り上げることを学んだりしました。そういうところを普段の夕陽の試合にも取り入れたりするようになりましたね。

ーーじゃあ新たな夕陽の一面を引き出してくれたのが、SUNSET☆JKだったと。

夕陽 あー、そうです! それです(笑)。経験できてよかったです。

自分が持っているものを一番ぶつけられる相手が夏樹さんだった

ーーそして、いよいよ夕陽選手の引退試合の相手は夏樹☆たいよう選手に決まりました。夏樹選手も6月に引退することを発表していますが、夏樹選手に決めた理由はなんだったんですか?

夕陽 夏樹さんっていうのは意外でした?

ーーいや、意外ではないですよ! やっぱり初対決のインパクトが強いですから、いい試合になるだろうなとは思うんですけど、何となく引退試合って辞めていく選手が残る選手に「あとは頼んだ」と託すイメージがあるので。だから個人的には夏樹選手の引退試合の相手が夕陽選手なんじゃないかと思ってました。

夕陽 うーん……まぁ夏樹さんっていうのは即決だったんです。決めたあとに松本さんのほうがよかったかなとか悩んだりはしたんですけど、引退試合の相手を最初に考えたときに夏樹さんが真っ先に浮かんだので。とくに「こうこう、こういう理由で」っていうエピソードらしいエピソードはないし、松本さんのようにすごく仲良かったっていうわけでもないんですけど、真っ先に浮かんだっていうのは自分が一番やりたい相手なんだと思うんですよ。理由を考えてみると、やっぱり両国でやった試合が楽しかったからっていうのもあるし、日高さんから教えていただいたものを最大限に活かして闘える相手だと思うし、自分が持っているものを一番ぶつけられる相手だと思いますね。

ーーうんうん。そうですね。戦績としても1勝1敗ですから、最後にどちらも引退を控えて負けられない状況で決着戦という勝負論のある闘いをするっていうのは、いかにも夕陽選手らしいですね。

夕陽 いまこんなこと言うのもアレかなと思うんですけど(苦笑)、もしですよ! 絶対にないですけど、もし、仮に、私が復帰することがあったとしても、もうそのとき夏樹さんはいないじゃないですか。だからいましか出来ない相手なんですよ、夏樹さんは。

ーーこのまま引退試合まで全力で突っ走ることが出来たら、プロレスでやり残したことないと言えますか?

夕陽 はい。未練はないです。

ーーそれを迷うことなく言ってくれて安心しました。では最後にデビューから約2年間というプロレスラー生活は、高校生活との両立で大変だったと思います。部活動とも違うし、ただ勝つことだけを目指せばいいというものでもない。いろいろ難しい世界であったとは思いますが、振り返ってみてどうですか? 今後の人生に何か活かせそうですか?

夕陽 その時その時は試合で痛かったり、嫌なこともあったし、落ち込んだりしたこともあったけど、いま振り返ってみるとすごく楽しかったです! 私、都合がいいタイプなので嫌なこととか忘れちゃうので(笑)。だから楽しかったなっていう思い出しかないです。ケブラーダとかもあとから映像で見ると、「怖い!」って思うんですけど、度胸というかまずは何でもやってみるって考えになりましたね。ケブラーダだってもしかしたらケガするかもとか考えたら出来ないですから。何でもやってみる度胸とか、人との関係とかはタッグから学んだし。まぁ人して基本的なことなんですけど(苦笑)、すべて大切なことはプロレスから学びました!

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引退興行を終えた夕陽の第一声は「燃え尽きました」。まさしくプロレスで完全燃焼した感じの笑顔だった

この項おわり

夕陽(ゆうひ)
1995年7月30日、埼玉県朝霞市出身出身。156cm、53kg。小林聡と日高郁人の指導を受け、2012年4月24日のZERO1後楽園ホール大会での愛川ゆず季戦でデビュー。その後は日高が過去に指導したことのある高橋奈苗や夏樹☆たいようが所属するスターダムを主戦場にして活躍。同年12月には「ROOKIE OF STARDOM2012」で優勝して新人王となった。2014年3月31日に東京・新木場1stRINGで行われた『YUHI FINAL 卒業 SUNRISE』でプロレスから卒業。

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