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夕陽ロングインタビュー【第1回】

夕陽ロングインタビュー【第1回】

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現役国立女子高校生プロレスラーとして活躍していたZERO1野良犬道場の夕陽が、2014年2月11日のZERO1後楽園ホール大会のリング上で、「2年前の4月にデビューして学校生活とプロレスを並行してやってきました。卒業するにあたって進路を決定するにあたり、新たにやりたい事が見つかったので、引退します。一人でも多くの方に元気を与えられるように、最後まで精いっぱい頑張りたいと思います」と、突然引退を発表した。
3.31『YUHI FINAL 卒業 SUNRISE』までの“引退ロード”が決定した直後の夕陽を直撃し、なぜ高校を卒業すると同時にプロレスも引退しようと思ったのか、約13000字及ぶロングインタビューで語ってもらった。【取材・文/佐瀬順一】

ーー突然の引退発表、本当に驚きました! 改めてなぜこの高校卒業と同時にプロレス引退という思いになったんですか?

夕陽 夏頃から学校の先生やみんなと進路の話をするようになったんですね。大学に行くとか、専門学校行くとか、就職するとか、いろいろな考えがあってその中で先生から「夕陽さんはどうするの?」って聞かれたんですね。そのときは「プロレスをやっているので」って答えたんですけど、家に帰ってからじっくり考えたとき、進路って一生とまでは言わないまでもこの先ずっとやっていくお仕事を考えるじゃないですか。

ーーそうですね。とくに高校を卒業したあとの進路は、後々後悔しないためにもよく考えたほうがいいですからね。

夕陽 そうですね。だからプロレスを一生やっていくかって考えてみたときに、正直「いや、どうなんだろう?」っていう迷いが生じたんですね。自分がプロレスをやることの意義とか意味とか、もっと先の将来のことまで考えてプロレスがそこにどう結び付いていくのかなってところまで考えたんです。

ーー最初から「プロレスを続けます」だけじゃなくて、ほかの選択肢もいろいろ考えてみたんですね。

夕陽 はい。いろいろ考えてみたんですけど、そうやって考えている時期もプロレスの試合をやらないといけないじゃないですか。試合をやっている最中は楽しいんですけど、試合が終わったあとは身体にダメージが残っているじゃないですか。「痛いなぁ」って思いながら、これをずっと続けていけるのかなぁって考えるようになって……。で、翌日また学校に行ってっていう日常生活に戻って。プロレスって見ている人からすると非現実的なものじゃないですか。でも私には学校っていうすごい現実的なものもあって、その両方を行ったり来たりしていることで、どんどん頭の中がごちゃごちゃになってきましたね(苦笑)。

ーーただでさえ将来のことについて悩む時期に、非現実的な世界であるプロレス界と行ったり来たりするのは、確かにいっぱいいっぱいになりそうですね。

夕陽 プロなので基本的にはお客さんに喜んでもらうのが第一というか、自分のためというよりはお客さんに喜んでもらえるようにいい試合をしようとか、もっと頑張ろうって思うじゃないですか。その一方で進路は自分のため、自分のことをまず第一に考えないといけないので。だから私の中でお客さんのためを取るか、自分のためを取るか、どっちを取るのかみたいな考えにだんだんとなってきて……。

海外に行ってみたいという思いが強くなった

ーー夕陽選手に期待していたプロレスファンは多いですからね。その期待に応えたいという思いは当然あったと思いますが、その一方で“プロレスラー夕陽”としてではなく、“18歳の夕陽”という一人の人間として、この先の人生のことを考えるのは当然だと思います。

夕陽 プロレス以外にやりたいことをいろいろ考えてみたときに、海外に行ってみたいっていう思いがあったんです。修学旅行でオーストラリアに行ったんです。国が違うので当たり前なんですけど、そのときに人柄だったり、考え方とかも根本的に日本人と違うんですよね。海外の方って自分のやりこととか楽しみたいことを、ストレートにやる方が多かったんですよ。正直、私は自分を抑えていた部分もあったので、そういうところに魅力を感じて海外に行ってみたいなっていう思いが強くなっていきましたね。

ーー夕陽選手の場合、ZERO1の外国人選手と一緒に練習したりする機会も多いですし、スターダムでもダーク・エンジェルやケリー・スケーターとか、外国人と交流する機会が比較的多いですよね。

夕陽 はい。中学生の頃から結構英語は好きで、高校に入ったと同時にZERO1道場で練習するようになったんですけど、すごく外国人の選手がいっぱいいたので、学校で習った英語で話してみたりとかしてコミュニケーションを取ってました。「あなたの国にはどんなものがあるの?」って聞いたら「こんなものがあるよ」ってケータイの画像を見せてくれたりして、単純に「わぁすごいな。行ってみたいな」っていう思いはずっとありましたね。

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ZERO1にはいろいろな国から外国人選手が参戦し、皆で一緒に道場で汗を流すことも多い

ーー海外留学をしてみたいという思いはよく分かったのですが、何もプロレスを引退する必要はなかったんじゃないかなと思うんです。まだ10代ですし、プロレスを“無期限休養”として一旦プロレスから離れるみたいな感じじゃダメだったんですか?

夕陽 う〜ん……根本的に私は小さい頃からプロレスラーになりたいと思っていて、プロレスラーになったわけじゃないんです。

ーー確か最初は小林聡さんのブクロジムに入門して、キックボクシングを習っていたんですよね。

夕陽 そうです。そこで小林さんに出会って、日高(郁人)さんに出会って「プロレスをやってみないか?」って感じで誘っていただいたんですけど、そのときも正直悩んだんです。プロレスのことをまったく知らなかったので、何をするんだろうって思って。

ーープロレスを観たこともなかったんですか?

夕陽 なかったです。テレビでもやっていなかったし、すごく不安だったんですけど、小林さんが「不安はあるだろうけど、とりあえずやってみたらいんだよ」って言ってくださったんです。すごく前向きな言葉をいただいて、「そうだな、何でもやってみるのはいいことだな」って思ってプロレスをやってみることにしたんです。ずっとプロレスラーになるのを目指していた方には失礼なことかもしれないですけど、トントン拍子でプロレスラーになっていったって感じで。あ、でもプロレスをやってみると決めてからは真剣に練習しました。

ーーそれは分かりますよ(笑)。プロレスに対する知識や考えがゼロの状態でプロレス界に飛び込んできて、一生懸命やってきたからこそ、次の道に進むためにはプロレスに対してきちっと線引きをしたいという感じですか?

夕陽 そうですね。プロレスをやっていて、どこがゴールか分からないんです。トップを獲るのがゴールだとしたら、何をしたらトップを獲ったことになるのかがよく分からないし、東スポさんの女子プロレス大賞っていうのが分かりやすい目標かなとも思うんですけど、賞を取るために試合をするっていうのも違う気がするし。

まったく知らなかったプロレスでいろいろ考えるように…

ーー最近で言えばフィギュアスケートの浅田真央選手みたいに、4年に1度のオリンピックに出場して完全燃焼して引退みたいな明確なゴールをプロレスでは設定しずらいかもしれないですね。例えばシングルのベルトを獲ったら、そこがゴールかと言ったらそうじゃない。王者としての闘いの始まりだったりするわけですからね。夕陽選手はデビュー戦の相手が愛川ゆず季さんでしたが、愛川さんは自分の中で両国までっていうゴールを決めて、2年半という期間を全力で駆け抜けていきましたが、愛川さんの影響を受けている部分はありますか?

夕陽 いや、誰かを参考にするとかはないです。それに私はプロレスをはじめたときからゴールを決めていたわけじゃないんです。ファンの方が持っている私のイメージって、師匠の影響もあるので“野良犬”とか“殺伐”とかそういう感じだと思うんですけど、本来の自分とのギャップもって、それこそ浅田真央さんじゃないですけど(苦笑)、頭が真っ白になって分からなくなっちゃったことがあって、それからいろいろ考えるようになりました。

ーー確かに夕陽選手はZERO1野良犬道場所属ということもあって、厳しい蹴りと関節技に加えて空中殺法を武器にした一匹狼というか、まさしく野良犬的なイメージはあります。リング上で笑顔を見せることも少ないですけど、素顔はとっても明るい女子高生ですからね(笑)。

夕陽 スターダムに定期参戦していても自分はヨソ者だし、ほかの選手とどう接していいか最初は分からなかったですね。いまでは普通に話したりはしていますけど、私はどうしてもそういう普段のことが試合に出ちゃうタイプなんです。だからスターダムの選手と対戦するときに、以前ほど殺伐とした雰囲気が出ていないのが自分でも分かるんですよ。じゃあ、誰とも話をせずに一人でいればいいのかっていうと、そうじゃないと思うし……

ーー愛川さんも現役中は極力選手たちと交流しないようにしていたと聞きました。彼女も普段から仲良くなってしまうと試合に影響が出るタイプらしく、引退する寸前になってようやく(高橋)奈苗さんやワッキー(脇澤美穂)に心を開いて、いまではすっかり仲良しですけどね(笑)。

夕陽 もう最初の頃は普段の自分と、リング上の夕陽を切り替えるっていうのも難しくて。普通の高校生の自分としては仲良くしたいし、面白い話もしたいっていう思いはあるんですけど、仲良くなった相手を思いきり蹴れるのかって考えたら、その辺の切り替えがなかなか……

ーーそれでもずっと定期参戦してきたスターダムには愛着みたいなものはありますか?

夕陽 ありますね。最近ほかの団体に出るようになってから、控室の雰囲気とかも含めてスターダムの居心地の良さみたいなものを感じましたね。

ーー以前、夕陽選手に話を聞いたとき、スターダムで思い出に残っている試合は愛川ゆず季さんが引退直前に行った17番勝負(2013年4月14日、スターダム新木場1stRING大会)だと言ってましたけど、それはいまも変わらないですか?

夕陽 そうですねぇ。あの試合は一度引き分けで終わったんですけど、最後に「もう1回やらせてください」って志願したんですよね。あれは本当に「引き分けのままじゃ終われない!」っていう自分のリアルな感情が出たし、一応記録として愛川さんに勝てたので(笑)。

ーー先ほどは「愛川さんの影響は受けていない」ということでしたが、デビュー戦の相手でもあるし、タッグを組んだ時期もあるし、プロレスラー愛川ゆず季から刺激を受けたというか、傍で見ていて何か感じたものはありますか?

夕陽 なかったわけではないし、デビュー戦の相手っていうのは記録にも記憶にも残るものですし、デビュー戦でまず愛川さんにプロの洗礼みたいなものを受けたので。だから自分の原点でもあるし、自分のプロレスの中に愛川さんのプロレスも入っていると思いますね。プロレスのことをまったく知らない状態からプロレスに入って、練習してきたんですけど、いざデビュー戦のときに愛川さんの蹴りをお腹にもらって、すっごい痛かったんです。そのときに、だったら私も全力で蹴ってやり返してやるって気持ちの面で吹っ切れた感じがしましたね。

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2012年4月24日のZERO1後楽園で行われた夕陽のデビュー戦。愛川ゆず季さんとバチバチ蹴り合った

第2回につづく

夕陽(ゆうひ)
1995年7月30日、埼玉県朝霞市出身出身。156cm、53kg。小林聡と日高郁人の指導を受け、2012年4月24日のZERO1後楽園ホール大会での愛川ゆず季戦でデビュー。その後は日高が過去に指導したことのある高橋奈苗や夏樹☆たいようが所属するスターダムを主戦場にして活躍。同年12月には「ROOKIE OF STARDOM2012」で優勝して新人王となった。

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