今回、砂辺が伝授されたのは"GAME OVER"。相手の片腕を、両足を使ったハンマーロックで固めた状態で極める変形クロスフェイスだ。まず砂辺がKENTAに技を自らかけられ、「イタタタタ！」と苦しんだ。続いて砂辺がKENTAの指導でかけ方を「伝授」された。KENTAは「さすがチャンピオン！ 飲み込みが早い」と砂辺を絶賛していた。砂辺は「この技は、今までいろいろ教えていただいた中で一番試合に使えそう。ぜひ使いたい。下になったら、一度、三角を極めながら上になって、この技を極めたい。リスクを背負ってでも極めます。その時は、総合だからってフェイスロックなんて言わずに、GAME OVERと言ってください」と話した。
　2選手はこれまで交流があったわけではないが、プロレス好きの砂辺、また総合格闘技の選手とも練習しているKENTAはお互いをもちろん知っていた。公開練習を通し、砂辺は「KENTA選手はプロ、プロレスラーという匂いをプンプン放っている。ぜひそれを身をもって経験したくて、今回、技を教えていただいた」。KENTAは「砂辺選手がやろうとしていることは、僕がやりたいと思っていることと同じ。リングで存在感を示したい。これからも刺激し合っていけたら」と意気投合していた。

　11月10日のパンクラス・ディファ大会で、宇津木正和を相手にフライ級初防衛戦をおこなう砂辺。東京では1年ぶりの試合となる。意外なことに、メインを務めるのはきれが初めてだ。「沖縄や大阪ではありましたけど、東京でのメインは初めて。タイトルマッチでもセミとかでしたからね。でも今回、山本（篤）選手や近藤（有己）選手が出場するなか、メインを張らせてもらうのは大きな意味がある。僕が見て来たパンクラス、船木（誠勝）選手や鈴木（みのる）選手がやってきたメインに近づく、超える気持ちで闘います」と意気込みを語った。
　大会2週間前に、東北でグラップリング大会に出場し、また、炊き出しや公園作りのボランティアに参加した。「2週間前なのに余裕だね、なんて言う人もいましたけど、そうじゃない。2週間前だからこそなんです。選手である前に人として、東北の人たちのお手伝いをしたいというのは当たり前のことだと思います。そして、マスコミで伝えられていない現状を見られてよかった。また、お手伝いをという気持ちで行ったのに、寒いのに大丈夫かとか、頑張れよとか、東北の人たちの強さや温かさで、かえってこちらが励まされました。に試合をして以来、少し間が空きましたけど、その間、遊んでいたわけではなくて、刀を磨いていた。東北に行ったことで、さらに研ぎすまされたと思います。いま、僕は東北の人たちの気持ちも背負っています。だから、"負けられない"じゃなく、負けません」と話した。

　新生パンクラスでは初めての試合となる。「いまパンクラスは世界標準を掲げています。石渡（伸太郎）選手や佐藤（豪則）選手が世界を目指すことは何も間違っていない。でも僕は、世界を目指すとかじゃなくて、パンクラスを盛り上げたい。もし世界標準というならば、世界のやつらが僕に挑戦して、このベルトを獲りに来ればいいと思う。僕がパンクラスの標準になりたいですね」と、パンクラスが変わっても砂辺は決してブレない。
　「僕の動きは全てハイブリッド・レスリングです。自分からどんどん動いて仕掛けて、王者らしからぬ動きで王者らしい結果を残す、それが今回のテーマですね。相手は勢いがある選手ですけど、僕はずっと勢いがあるので大丈夫です（笑）。いまパンクラスには、パンクラスというものを体現できる選手が少なくなっていると思います。もちろん勝ち負けは大切ですけど、それだけじゃないのが僕の憧れたパンクラスです。それを表現することができれば、オールドファンも戻って来てくれると思う。"昔ながらのパンクラス"を体現する試合をします」。パンクラスファン、そして東北の人々の思いを背負って、砂辺は闘う。（文／佐佐木 澪）