KIDと共にチャリティイベントを開催した魔裟斗が1年4カ月ぶりにリングに上がり、エキシビション2試合と全力のローキックを披露!
7日、東京・六本木ヒルズアリーナで元K-1 WORLD MAX世界王者の魔裟斗、総合格闘家の山本"KID"徳郁が発起人となり、格闘家による『東日本大震災 復興支援 チャリティ・ファイトイベント〜立ち上がろうニッポン!〜』が開催された。
当初、このイベントではエキシビションとはいえ、2004年の大晦日以来となる魔裟斗vs.KIDが実現する予定だったが、UFCでの試合に向けて練習を積んでいたKIDがケガをしてしまったため、残念ながらKIDはリングに上がることが出来なくなってしまった。そこでKIDのプロデュースにより、まずは修斗初代環太平洋ライト級王者の佐藤ルミナと、被災地である岩手県釜石市でグラップリングアカデミーを主宰している平野仁が総合ルールのエキシビションを行うことに。
「リングに立ちたかったんだけど、ケガしちゃって立てなくなってしまった。すごく悔しいですけど、みんなと一緒に1人でも多くの人と触れ合えたらいいなと思っています」と挨拶したKIDが解説として放送席で見守る中、3分2Rのエキシビションがスタート。ガブりから抑え込んだルミナに対し、平野は下からの腕十字を狙うが、ルミナは三角マウントの体勢からそのまま三角絞めを極め、2分45秒一本を取った。
エキシビションのためさらに試合は続行され、2Rではルミナはカカト落としから再びマウント三角に捕らえるとそのまま、2R1分14秒2度目の一本を取った。ルミナは平野のスーパーマンパンチをかわしてタックルからヒールホールドへ。声をあげながらも必死で堪えた平野は、逆にアキレス腱固めを仕掛けていくが、ルミナはうまく脱出。それでもなお平野は浴びせ蹴りから腕十字を狙ったが、ここで終了のゴング。
平野は「岩手から来ました。自分ん家なくなっちゃって、自分の道場もいまは使えなくて、自分の弟子たちの中にはまだ見つかっていない奴もいるし、兄弟や親をみんな亡くしています......今日集まってくれた人たちに感謝します。僕から皆さんに伝えたいのは、俺も自分ん家がなくなって、友達や弟子たちがみんなこんなにいっぱい死んじゃうんだって、地震、津波が来るまでは1回も考えたことなかったです。だから何があるか分からないから、皆さんいまを大事に100%、好きな人にはいま『好き』って言ってください。俺は仲間に言えなかったことがいっぱいあります......。家族や仲間を大事にしてください。毎日毎日100%生きてください!」と涙で言葉を何度も詰まらせながら語った。これには思わずKIDも涙。
そして引退してから約1年4カ月ぶりに魔裟斗がリングに上がると、場内からは大歓声。黒のキックトランクスにレガース、ヘッドギアを装着した魔裟斗は、お互いにTシャツを着たままシュートボクシングのS-cup2006王者の緒形健一とキックルール2分2Rのエキシビションを行うことに。解説についた小比類巻太信も「現役時代に見たかったカードですね」と語ったこの対決だが、魔裟斗が序盤から現役時代とまったく遜色ないローキックを飛ばしていけば、緒形もプレッシャーをかけていき、魔裟斗と真っ向から蹴り合っていった。
4分間のエキシビションを終えると、K-1 WORLD MAX 2009日本代表トーナメント優勝者の小比類巻と、泰国ラジャダムナンスタジアム認定ウェルター級王者の武田幸三がリングに上がり、試合をしない代わりに武田が"景気づけ"としてバット折りを披露。見事3本のバットをローキックで叩き折ってみせた武田は「もう1回魔裟斗君がやるんですが、もうちょっとバチバチ見たいですよね?」と観客を煽る。
そして再びリングに上がった魔裟斗はTシャツを脱ぐと、空手の道着を着たK-1 WORLD MAX2005世界代表決定トーナメント3位の安廣一哉と、この日2度目のエキシビションを行う。積極的に右のパンチを伸ばしていく魔裟斗に対し、安廣も回し蹴りで応戦するが、魔裟斗の右が非常によく伸びる。安廣も真正面から打ち合いに応じ、武田が煽った通りのバチバチの打撃戦に! 2Rには魔裟斗の右ストレートをくらって安廣がグラつく場面もあったが、最後まで試合さながらの展開に場内も大盛り上がり。あっという間に4分間が経った。
エキシビションを終えた魔裟斗が締めの挨拶をしようとすると、そこにジーンズ姿に工事用のヘルメットを被りラダーを持った、元プロボクシング日本フェザー級王者で現K-1ファイターの渡辺一久が乱入! 「ちょっと待ってくださーい! 魔裟斗さん、誰か忘れないですか? みんな魔裟斗さんを倒せないから、やっぱり俺がやらないと」とリングに上がってきた渡辺は総合用のオープンフィンガーグローブを付けて魔裟斗に対戦要求! 「相変わらずキミはKYだね」と苦笑いする魔裟斗に対し、渡辺は「じゃあ俺が魔裟斗さんの本気ローを5発耐えられたら、1Rでいいんでやってください」と提案。
根負けした魔裟斗は渡辺の要求を受け入れ、渡辺にローキックを5発打つことに。ただでさえ元ボクサーの渡辺はローキックを受けることに馴れていない上に、蹴るのは元K-1世界王者の魔裟斗である。「じょ、徐々に力を入れていってくださいね!」と、さすがにビビり気味の渡辺に対し、魔裟斗は笑みを浮かべながらも徐々に力を込めてローを蹴っていく。4発までは我慢した渡辺だが、明らかにダメージは大きい。そして最後の一発は「やめたほうがいいよ」と言いながらも、渡辺の「俺も魔裟斗さんも本気を出すことで、みんなが何かを感じ取って募金よろしくお願いします!」という申し出に応えて「じゃあ本気で行きます」とレガースを外した魔裟斗。
そしてスネで渡辺の左腿に本気(?)のローキックを叩き込むと、さすがの渡辺ももんどりうって倒れ込み、ついにギブアップ! 残念ながら魔裟斗vs.渡辺の一戦は実現しなかったが、場内を大いに盛り上げた。そして魔裟斗は「いまの僕があるのは格闘技があったお陰なので、僕は格闘技に助けてもらったと思っています。その格闘技に感謝する気持ちを込めて、格闘技で被災者の人たちの力になれればいいなと思い、このイベントをやることにしました」と挨拶。最後はKIDらと一緒に募金箱を持ち、会場に詰めかけ約2000人もの人たち1人1人と握手を交わした。
イベント終了後、囲み取材に応じた発起人の魔裟斗とKID。久しぶりにリングに上がった感想を聞かれた魔裟斗は「自分の思うようにいかなかったですね。昔だったらもっといろんなパンチが出たのに」と苦笑い。それでも渡辺への蹴りは「全力ですよ」と、いまの状態での100%で蹴ったことを強調。KIDも「俺も1発くらい入っておけばよかったなぁ」と、何も出来なかったことが悔しそう。今回を期に現役復帰する可能性を聞かれた魔裟斗だが、両手で大きく×印を作ると「100%ありません。今回は特別です」と完全否定し、"1日限定"であることを強調した。
なお、集まった募金は全額日本赤十字社を通し、義援金として東日本大震災の復興支援金となる。金額は後日オフィシャルサイトで発表されるとのこと。
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