新しい風景が出来つつある全日本に、良くも悪く馴染まないKENSO
TARUによるスーパー・ヘイト暴行事件により、全日本プロレスは大きく変わらなければならなくなった。ヒールユニットだったブードゥー・マーダーズは解散し、TARUは事実上追放となった。鈴木みのるもたまたま時期的に契約満了だったため、全日本を離れることになった。
ブードゥーや鈴木のようなヒールが、プロレスの興行において果たす役割は非常に大きい。いまの新日本プロレスを観れば分かると思うが、単にヒール=悪いことをするだけでなく、飯塚高史や矢野通のように反則攻撃こそするが、彼らが暴れ回れば回るほど会場は盛り上がる。
現在の全日本プロレスにヒールはいない。だが、全日本プロレスとはそういう運命にあるのか、かつて長年ヒールではないが、反体制側として全日本マットを盛り上げてきた天龍源一郎がSWSに移籍した際、かなり多くの選手も全日本を離脱して窮地に追い込まれたのだが、残っていた三沢光晴さんや川田利明、小橋建太ら若い選手が、ジャンボ鶴田さんやスタン・ハンセンといった巨大な壁に向かっていくことで全日本を甦らせたことがあった。
それと似たように、諏訪魔という強いチャンピオンを頂点に、カズ・ハヤシや近藤修司、船木誠勝といったベテラン選手が脇を固め、そこに真田聖也、征矢学、KAI、大和ヒロシといった若い選手がぶつかっていくという構図が出来つつある。ベビーvs.ヒールのような分かりやすい構図ではないが、試合内容で"魅せる"ことは出来る。
7・31愛知大会では真田が諏訪魔の三冠ヘビー級王座に挑戦。武藤ゼンニッポンの生え抜き選手同士による初の三冠戦がメインを飾った。さらに8・13後楽園大会ではKAIの世界ジュニアヘビー級王座に同期の大和が挑戦。これまた武藤ゼンニッポン生え抜き選手同士の対決が見事にメインを飾った。
再出発をした全日本は少しずつ"新しい風景"が出来上がりつつある。ただ1点気になるのはKENSOの存在だ。
KENSOは面白い存在なのは間違いない。ヒールというわけではないが、明らかに異質! 同じ新日本出身でありながら、KENSOから武藤イズムを感じる部分がほとんどない。一応どちらもワールドワイドな活躍をするレスラーというのが共通点で、現在KENSOとグレート・ムタは世界タッグ王者コンビでもあるのだが、徐々に出来つつある全日本の新しい風景にKENSOがどう入っていくのかが想像しにくいのだ。
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