【コラム】2021年ブレイクの予感!?『陰湿』というネガティブワードを武器に変えた全日本プロレス・青柳優馬の強み

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ここ最近、全日本プロレス・青柳優馬にブレイクの予感が漂っている。きっかけは、秋頃から頻繁に登場するようになった『陰湿』というキーワードだ。

「そもそも『陰湿』というキーワードを使い始めたのは宮原健斗なんです。私生活ではそういうことは全く言わないくせに、某週刊誌の取材のときにここぞとばかりボクを『陰湿陰湿』と。あれは間違いなく、自分の陰湿さを隠すためにボクへ陰湿を押し付けたんだと思います」(青柳優馬)

このキーワードで、青柳優馬の本質に沿った独自な個性が明確となった。そして、それからである。青柳が本領を発揮し、白星という現実的な数字にも勢いが反映され始めたのは。

「プロレスラーとしての個性の位置付け的には、そう呼ばれることが実は嬉しくて仕方ない感じなんですけど。全日本プロレスの歴史でも、陰湿と呼ばれて喜んでいるレスラーなんて初めてかもしれませんね」

『陰湿』というネガティブなキーワードも大歓迎だという青柳。しかし、そこには青柳の深すぎる全日本への思慮と、周囲の目を気にしすぎることへ疲れ果てた現代社会への警鐘が込められていた。

「陰湿と呼ばれることにためらいは全くありません。そもそもプロレスラーって、実は全員根は陰湿だと思います。それにボクは自分でも決して性格は良くはないと思っていますし。そして…いまは皆がイイ子ちゃんぶってるじゃないですか」

例えば…青柳はあるレスラーの名前を挙げ具体的に話し始める。

「ジェイク・リーは、ボクよりも絶対に陰湿だと思うんですよ。普段は綺麗な言葉ばかり並べているくせに、平気な顔で、笑顔で人を蹴るじゃないですか?だけど、もしかしたらそれは陰湿とは言わないのかもしれないけれど、それは彼の性格の悪さ…ジェイクは、性格の悪さでは全日本でいちばんだと思います。最強タッグ最終戦でボクは彼から初勝利していますんで。来年は彼のことを、楽しいおもちゃと思ってちょっかい出していきますよ」

そして、青柳の主張で肝心なのはここからだ。

「そもそも、全日本プロレスはファンが陰湿なんだと思います。だって、時代が変われば選手も変わるし、スタッフだって変わるわけで。それなのに、いまだに王道がどうだとか、四天王がどうだとか言い続けている人もいる。変わるんですよ、そんなもの。時代と共に。あなただって必要に応じて変わってきているでしょ?そういうことを言う人たちは、本当に性格が悪いと思います。だけど、そうやってみんな性格が悪いから、本当は、心の底では性格が悪い人を応援したいのではないかと。これまでの全日本って、建前では皆スーパーヒーローを目指している人ばかりだったじゃないですか?リングの上だけでなく、私生活でも善人と思われたい人とか。そういう押しつけがましい中で一人だけ、道を外れた人が出てきたら皆がホッとしてくれるのではないか?と。もしかしたらファンの人たちは陰湿というネガティブなキーワードのおかげで楽になったのではないかと?そう思っています。これまでの押しつけがましい全日本が苦しかったのでは?とも。もしかしたら」

それはファンだけでなく、選手においても同様だと青柳は言う。

「昔は皆、鎖に繋がれている感じでしたね。がんじがらめで。だけどいまは、皆が思ったままにノビノビやっているような。特に若手はそう見えます。皆がそれぞれ好きな方へ自分自身を解放して。今年の中盤以降から、皆に個性や色が出てきたのが何よりの証拠だと思います」

それは自分にも当てはまり。

「ボク自身もそうなのかもしれません。地が出てきたのかも。自由にやれるようになって。だけどそっちの方が、いまの方がメンタル的に断然楽にやれてます。来年も自分に忠実に、陰湿にやっていきます」

そして、青柳の言葉に最も力がこもったのはここからだ。

「お客さんも、いまはネガティブになりつつある。誰かがネガティブなことを言い始めると多くの人たちが同調する。皆、ネットに管理されすぎて疲れているんですね。あるいはヘタなことを言うとすぐに叩かれるじゃないですか。そして、プロレスラーもそういう感じだと思います。言いたいことも言えない。だからファンは、本当のことを言ってくれる人を求めている。なので、ボクはジェイクに言いたいことを言った。こういうことが、全日本が本当の意味で変わるきっかけになればと思っています」

しかし、そんな強い言葉の裏には柔軟な思考も備わっている。

「しょせん、人間なんて十人十色なんで。性格の良い人もいれば悪い人だっている。愛の形は人それぞれ。歪んでいても愛は愛。こうしてエラそうなことばかり言ってしまいましたけど、これはしっかり書いておいていただきたいんですけど、ボクは人の心を操作したいなんて大それたことは全く考えていないので。そんな意図は全くありませんので。そこのところだけは勘違いしてほしくないな、と。そうではなく、ボクは自分自身を自由に解放したいだけ。だから今回、こういうことを自由に語らせていただいただけであって」

最後に、青柳は来年の抱負を語った。

「青柳優馬は一番とか二番ではなく、絶対に三番か四番なんです。だけど、それでいいんです。適材適所。無理しない。つい最近、今年半ばまでのボクなんて、一番どころかザコでしたよ。浮上のきっかけすら見いだせなかった。だけど、最強タッグに優勝したいまでも、自分はそういう位置付けなんだという気持ちでやっています。そして、だけど来年は三番手か四番手が一番になっちゃおうかと。ボクは宮原のように明るくもないし、諏訪魔のように象徴的な強さもない。だけど、いつもボォーっとしている四番手がいきなりトップになったとき、お客さんがどんな反応をするのか?それを見てみたいんですよ、ボクは陰湿だから」

最後も陰湿というキーワードへ話を終結させてみせた青柳。本来はネガティブであるはずのキーワードを自身の武器へと転化させる事に成功した今年。そんな前代未聞の個性が自然体で2021年へ突入するとき、これまで誰も見たことのない光景が全日本プロレスに繰り広げられることは必至である。

文…日々樹アキラ

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