RIZIN年末総括。男を萌えさせる女の格闘技。3つのトーナメントで見えた人間模様

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2017年のRIZIN年末決戦が終わった。3つのトーナメントの決勝戦はいずれも熱闘だったが、そこで色々な人間模様を感じさせられた。
【文・フリーライター安西伸一】

まず、キックルールの4人トーナメントで優勝した那須川天心。すごい存在感だった。まだ19歳の青年なのに、その放たれる気迫、圧倒的なムードで、まず相手が負けていた気がする。この圧力は会場で見ているだけで伝わってくるのに、対峙した選手はなおさらだったはず。

どんなに対戦する選手がモチベーションを高めてリングに立っても、ここまで威圧感があるとは、対峙するまで相手にもわからないものなのかもしれない。

準決勝の対戦相手、浜本“キャット”雄大は、日本国内のミャンマーラウエイの大会で昨年6月、ミャンマー人選手に勝っている。判定決着はなく、素手にバンテージを巻いた状態で殴り合い、素足で蹴り合うこの競技。グローブをつける打撃系格闘技とは違う痛みを乗り越えて闘う覚悟が必要になるが、この競技を経験した浜本でさえも、那須川と対峙すると腰が引けていた。

決勝戦の相手、アマチュアボクシングのキャリア輝く藤田大和でさえも、試合が始まると、あの有様だった。

昨年秋のRIZINでの総合ルールでの両者の対戦では、那須川が3-0で判定勝ちしたものの、接戦といえば接戦ともいえる内容だった。今回はキックルール。もちろんルールが違えば間合いも違うが、前回の対戦では倒しきれなかった藤田を、なぜ今回は1ラウンドで圧倒して勝つことができたのか。

2018年元旦の一夜明け会見で聞くと、「怒りが出ましたね。前回、判定だったんですけど、全然勝ってたなと思ってたんですけど。あとあとインタビューで『いや、きいてない』とか『余裕だった』とか言われたんで、これはやってやんねえとなと。その怒りモードが出たと思います」。

あの威圧感の源は怒りだったのか。でも、それだけではないと思う。ほかの選手と比べて、明らかに違うステージに、高いステージに那須川がいた。恐るべき19歳。間違いなく、とんでもない逸材だ。

違うステージにいると感じさせた、もう一人の選手が堀口恭司だ。

スピード。パワー。現代の総合格闘技の技術の中でも、ケタはずれに高い技術力を保持している。それは、試合が始まればすぐにわかる。それほど展開が早く、次々と様々なテクニックが出てくる。対戦相手は、その勢いと圧迫感で、すぐに追い込まれていた。

寝技になればテクニックもさることながら、パウンドも含めて、殴れるチャンスを見逃さない。隙あらば殴る。これはUFCで培ったものなのか。

一夜明け会見では、堀口は「自分はRIZINをもっともっと有名にしたい」と発言。もうバンタム級では敵がいないのではと聞かれると「階級を上げることも考えている」と答えたが、「まだまだバンタム級にも世界には強い選手がいる。そういう選手たちをRIZINにおびき寄せられたら、と思っています。そうすればもっともっと盛り上がって来ると思うので」と答えた。

最も参戦して欲しい選手を一人あげるなら、との問いには「デメトリアス・ジョンソン」の名をあげた。デメトリアスは無敵のUFCフライ級王者で、UFC時代の堀口に唯一、黒星をつけた男。とにかくエイリアンのような存在で、別次元の強さをUFCでも誇っている。そんなデメトリアスにさえ「(今なら)勝てます」と言い放った。

もし今実現すれば、世界の総合格闘技ファンが大注目するカードになるが、今は夢として…。夢の中でシミュレーションしてみるしかない。でも、明日はどうなるのかわからないのが、この世界。実現に向けて誰かが動いたら、もしかしたら…。

さて、個人的に選ばせていただくとしたら、年末のRIZINのMVPは浅倉カンナだ。

4人トーナメントの決勝戦。相手はRENAだ。判官びいきもあってか、会場内の声援は浅倉の方が大きかった気がする。それはもちろん、“頑張れ!”という気持ちを込めながらも、浅倉の方を格下と見てのもの。

でも、20歳の浅倉のこの1年での成長は、まさに目を見張るもので、試合が始まりリングでRENAと向かい合うと、浅倉には全く臆するものを感じなかった。

4度目のタックルでテイクダウンを完全に奪い、すかさずサイドポジションからバックマウント。この時、あろうことかRENAの首はガラ空きになっていた。まさかと思ったが、あっという間に背後からのチョークが決まり、意識がとんだRENAを見てレフェリーが試合をストップ。

わずか1ラウンドで決まった攻防だ。そこには浅倉が、レスリングとブラジリアン柔術で鍛えた組み技、寝技の技術が凝縮されていた。

勝った直後、立ち上がって拳を振り上げて叫ぶ観客たちの姿が見えた。大晦日、一番のサプライズだ。館内の歓喜! それは絶対女王RENAが今年、成人式を迎える女子に陥落した瞬間だった。

試合中継の中では、RENAと浅倉の仲の良さを強調する映像が流れていたが、浅倉に聞くと「本当に仲が良くて。一緒に電車で帰る時、ずっと話していることもあるし、練習も一緒にしているんです」と言う。これでは、闘う以上は私情を振り切ってやると、試合前に両選手が公言していても、そうとう闘いづらかったことだろう。

特にRENAは打撃の選手。グラウンドで浅倉を追い込んだら、マウントパンチやパウンドで、かわいい後輩の顔をボコボコにしなければならなかったかもしれないのだ。妹分の浅倉の顔を、本気で打ち込み難い気持ちがよぎったとしても、誰がとがめることができるだろう。仲良しになりすぎたカンナちゃんとの対戦。打撃はメンタルな部分が相当影響する。

それが怒りでいい方向に出たのが那須川なら、RENAの状況ではいい方向には向かなかった、と言えるのかもしれない。

逆に浅倉は、寝技でパウンドに行く気配もなく、美しいムーブでサイドポジション、バックマウント、チョークで試合をまとめ上げた。打撃で“破壊”する試合ではなく、“仕留めて眠らせる”戦法だった。

不謹慎なことかもしれないが、失神してリングに体を投げ出すRENA、負けて泣く後ろ姿のRENAには、切なくも美しいものを感じた。

格闘技は真剣勝負。勝敗以外に価値はない。『勝者は絶対』なのだ。だから、敗者への情けは無用である。

でも試合後のリングには、女子だけが醸し出せる優しさと可憐さに満ちていた。なんだか見ていたら泣けてきた。

「ああ~。やっぱり女っていいなあ!!」

男の僕は素直に、そう思うのである。女子格闘技は、魅惑の宝庫なのだ。

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