『あれ見てこれ読んであそこ行ってきた』＃２
- 2017-4-12
- WWEネットワークの散歩道
ＤＶＤやプロレス関連の書籍やイベントチケットを自腹で購入して、それについての雑感を書いていくコラムの２回目です。取り上げるものに偏りがあるのはご容赦いただければ。今回は『１９８４年のＵＷＦ』出版に伴い著者の柳澤健さんと、昨年出版されて大反響を巻き起こした『真説・長州力』の著者である田崎健太さんとのふたりで講談社ビルで行われたものと、２冊目となる『痛快無比!!プロレス取調室』の書泉ブックタワーで行われた２つのトークイベントについてです。
柳澤健さんと田崎健太さんの共通点と言えば、あくまでノンフィクションライターでありプロレス業界でのライター業をメインとされていないことが第一に挙げられます。ここで「業界で仕事をしていないから踏み込んだことが書ける」とするのはつまらない見方かと。自分を鑑みるに、長らく見ていたからこそ特に疑問に思わずに常識として捉えていたことが多々ある中、俯瞰的、客観的に見た別の考察が出るのは、プロレスについて考える材料としてまた新しいものを得られると考えています。
大先輩である小佐野景浩さんにお話しを聞かせていただいた時に印象に残っている言葉として、「Ｇスピリッツでは『これが答えです』という書き方はしていなくて、『この新しい材料で、またプロレスについて深く考えてください』という気持ちで書いているよ」というのがあります。いち読者としては読んだ本をただ全肯定するのではなく、自分のこれまで見聞きしてきたものと照らし合わせ、自分の中での答えを見つけていきたいですね。
これは自分が勝手に思っていることですが、おふたりがプロレスを題材として取り上げることの魅力としては、選手の素の部分とプロレスラーとして作り上げたパブリック・イメージやキャラクター、虚像の部分とがごちゃまぜになったキテレツな人間像や事象が面白いと考えているのではないかなーと。絡まった糸を丹念にほぐしていく作業にも似ているだろうし、自分も読んでいてこの数行を書くためにどれだけの労力を費やしたのかと思いを馳せることが多々ありました。
イベントではノンフィクション・ライターとしての２人のアプローチの違いがお互いを分析するように語られました。選手個人よりも現象を描きたい柳澤さんと、逆にプロレスラーの人間像そのものに興味があり描いていきたいとする田崎さんという２つの個性を頭に入れて、今後のおふたりの著作を読んでいくつもりです。
『１９８４年のＵＷＦ』 柳澤健 著
https://www.amazon.co.jp/dp/4163905944/
『真説・長州力』 田崎健太 著
https://www.amazon.co.jp/dp/4797672862
ノンフィクションを書いていく手法として、田崎健太さんは「調べた資料で年表を作成して取り調べのように追い込む」といったことをお話しされていましたが、こちらはそのものズバリ、取り調べをタイトルとしている座談会形式のインタビュー本です。居酒屋で行われる取材で、玉袋筋太郎さんのイメージから飲み会の模様をそのまま収録されているかのようですが、読んでみるとかなり裏取りをした上で聞き出していることが伺える内容となっています。
この日は玉袋さん（以下、玉さんとさせていただきます）が別の仕事が伸びたところから、まずは椎名基樹さん、堀江ガンツさんの２人だけでイベントはスタートしました。記事本編では描かれない、現場の状況が裏話を交えて語られ、集まった参加者からのリクエストに応えて約１０年前となるリングス・ロシアのエカツェリンブルグ大会での思い出話なども飛び出しました。
ニコライ・ズーエフさん、ウラジミール・パコージンさんといった、リングスファンには懐かしい方たちの男気あふれるエピソードやスリリングな体験など、まるで『スベラない話』のように淀みなく語られていくのですが、その話のちょうどキリのいいところで主役である玉さんが登場しました。イベントのトーク部分は一時間ちょいだったかと思いますが、後半部分から登場した玉さんの圧倒的な座長感というか、大人数の飲み会での中心に座り、ちょっと離れたテーブルの人たちも耳を傾けるかのような空間に一変したのはさすがでした。
玉さんが加わったことで場の空気も変わり、あたかも自身が変態座談会のゲストとして招かれたかのように、『１９８４年のＵＷＦ』ならぬ『１９８７年のたけしプロレス軍団』の話が語られていきました。たけしプロレス軍団の主要メンバーであるビッグバン・ベイダーも、４月に行われる藤波辰爾選手の４５周年記念ツアーへの参戦が発表されました。あらためてたけしプロレス軍団の同窓会が変態座談会の場で行われることに期待したいですね。
『痛快無比！プロレス取調室 ~ゴールデンタイム・スーパースター編~』 玉袋筋太郎＋プロレス伝説継承委員会
https://www.amazon.co.jp/dp/4620324337
