『真説・長州力』の作家・田崎健太が語る1・25藤波辰爾vs長州力“最後の”名勝負数え唄

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『真説・長州力』の取材は、ほとんど夜、それも酒が伴うものだった。酒が進むと、長州はどのような形でリングシューズを脱ぐのかという話をすることがあった。
彼は九八年に一度、引退興行を行っている。その際、多くの人間に見送って貰ったのに今もプロレスを続けていることに引け目があるのか、「ひっそり消えたいんですよね」と呟くこともあった。
また、突然「もう一山当てて、お米(金)を掴んで辞めましょうか」と冗談交じりに言い出したこともある。「最後にヒクソン(・グレイシー)とやったらどうですか?」とぼくが返すと、彼は首を捻ってしばらく考えて「五分二ラウンドならば、まだできますね。うん。その自信はありますよ」と笑って頷いた。
どちらが長州の真意なのかははっきりしない。はっきりしているのはその日が近づいていることだろう。
今回、武道館で藤波辰爾との対戦を打診されたとき、長州は気乗りしなかった。HKT48や乃木坂46らと共演すると聞かされ、自分たちと噛み合わないだろうと思ったのだ。交渉は難航した。その後、主催者側から「普段通りでいい。昭和のエネルギーを今の人間に伝えて欲しい」というメッセージが届いた。そこで長州はやんわりと断るためこう答えた。
「藤波さんがいいといえばやりますよ」
藤波は昨年、腰の手術をしており、十月の自らが主催する「ドラディション」を欠場していた。長州は藤波が試合を受けることはないだろうと踏んでいたのだ。ところが、藤波は、自分たちと違う感性のところでプロレスをやるのは面白いと引き受けてしまった。引っ張られる形で長州は久しぶりに武道館のリングに登ることになったのだ。

2016-01-18長州力vs.藤波辰爾2
五三年生まれの藤波は長州より二つ年下に当たる。彼は中学卒業後、新日本プロレス入りしたため、長州の兄弟子に当たる。そのため、長州からは未だに「藤波さん」と呼ばれている。
二人には八二年十月の「かませ犬」発言以来の長い因縁がある。すでに人気の出ていた藤波に噛みついたことで、ぱっとしないレスラーだった長州はプロレスの世界で頭角を現すことが出来たのだ。
変化があったのは自分だけではないと長州は振り返る。
「ぼくは、あっ、こいつ(藤波)変わっているというのが分かりましたね。たぶん、彼もぼくに対してそう思ったはず。ぼくは彼との試合で動きが止まらなくなっちゃったからね。それでぼくたちのそれは〝ハイスパート〟と呼ばれるようになった。停まらないんですよ。途中からお互い意地になった」
この二人の展開の早いプロレスーーハイスパートが観客を引きつけることになった。
「客が受けているのは分かるじゃないですか? そのときはなぜ客受けているのか分からなかったんですよ」
やがて二人の対戦は「名勝負数え唄」と呼ばれ、新日本プロレスの看板カードとなった。
二〇一一年一月、長州、藤波、そして佐山聡と「レジェンド・ザ・プロレスリング」を立ち上げた。後楽園ホールで行われた旗揚げ興行、十八年ぶりに組まれた長州対藤波のシングルマッチは大きな話題となり、立ち見席まで売り切れるほどになった。
2016-01-18長州力vs.藤波辰爾1
そして今年一月二十五日である――。
レジェンドでは例年通り一月に後楽園ホールでの大会を予定していた。今回は二人の意志を尊重し、後楽園大会を延期。レジェンドの一つの集大成として日本武道館での対戦を了承したという。
この試合が近づき、長州の行動に〝何年ぶり〟というのが増えた。
長州が大切な試合のときに着る黒いスウェットがある。数年前、物に執着しない長州は「もう着ることはないだろう」と関係者にそのスウェットをプレゼントしていた。今回、藤波との対戦に備えて、長州はその黒いスウェットを貸してくれと頼んでいる。
そして年明けの一月七日、レフリーのタイガー服部を連れてサイパン合宿に入っている。サイパンで長州がトレーニングをするのは二年ぶりになる。
成田空港に向かう車の中で、長州はマネージャーの谷口正人にこう呟いた。
「ああ、サイパンもこれで最後だな」
谷口はそれを聞いて、思わず長州の顔を見た。二度目の引退という言葉が頭に浮かんだのだ。
昨年、長州がリングに登ったのはたった三度しかない。
十二月に、長州は白いリングシューズの修理を頼んだ。そろそろ新しいリングシューズに買い換えたらどうですか、と谷口が尋ねると「もう新しいシューズは必要ないよ」と素っ気なく答えたという。
一月二十五日の日本武道館には、サイパンで真っ黒に日焼けして身体を作った長州力が立っていることだろう。
いよいよ名勝負数え歌の最終章である――。

2016-01-18長州力vs.藤波辰爾4

GUM ROCK FES. in 日本武道館
日時:2016年1月25日(月)
会場:日本武道館
開始:18:30(開場:17:00)
チケット:全席指定5,000円(税込)

▼第1試合 新進気鋭バンド 紅白対決
Silent Siren
vs.
Thinking Dogs

▼第2試合 何が起こるかわからない異色の対決
スーパーササダンゴマシン(松竹芸能)
vs.
しずちゃん(南海キャンディーズ)

▼セミファイナル 旬のアイドルグループ 東西対決
HKT48
vs.
乃木坂46

▼メインイベント 因縁の対決!伝説の名勝負を目撃せよ!
藤波辰爾
vs.
長州力

★★★ プレゼント情報 ★★★
当日、日本武道館に ロッテボトルガムを持ってきた方には
1・抽選で50名様にメインイベンターとリングに上がれる権利プレゼント!
2・全員にガムロックグッズをプレゼント!(HKT48クリアファイル / ThinkingDogsボトルガムステッカー / 長州力・藤波辰爾 武道館応援タオル)

(記事・写真提供 レジェンドプロレスリング実行委員会事務局)

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